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「中学受験にもはや国算理社は不要か」謎解き入試、読書感想文入試…ユニーク入試で入れる穴場校リスト

プレジデントオンライン / 2020年11月15日 9時0分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/miya227

例年とは違う入試となる2021年度の首都圏中学受験。前編では、コロナ禍の休校措置により、自学自習できる子と学習リズムを崩す子との学力格差の広がりの実態を報告した。後編は、多様化に拍車のかかる受験方式・内容を掘り下げていく。教育ジャーナリストの鳥居りんこ氏が安田教育研究所の安田理氏に聞いた――(後編/全2回)。

(前編:「コロナで学力二極化」自分でどんどん賢くなる子とダメになる子の親は何が違うのか、から続く)

■「生徒を集めたい学校」が実施するユニークな2021年中学受験

――前編では、中高一貫校のオンライン授業の取り組みについてもお聞きしましたが、この冬、オンライン入試は実施されるのでしょうか。

【安田】在宅によるオンライン入試を実施する学校は、帰国生入試以外では、極めて少ないです。東京私立中学高等学校協会は「オンライン入試は公正・公平性が担保されない」として自粛を決定しています。

――受験生家庭から「オンライン入試は勝手が違うから不安だ」との声を多く耳にしていたので、オンライン入試での混乱は避けられそうですね。

「勝手が違う」といえば、近年は、2月1日から本番を迎える東京、神奈川の受験生も2月3日までに受験を終わらせたいという意向が強いです。各学校も生徒募集の観点から、いわゆる「午後入試」を実施するようになりました。そのため、一昔前とは違い「短期決戦型」になっていますが、来年の「午後入試」の状況はいかがでしょうか?

【安田】今年2月に終えた2020年入試では、東京の私立中学で受験者数が多かった上位30校合計での入試回数は127回でした(複数日、複数回実施校があるため)。1校当たりの入試回数にすると4.23回。共学校は特に入試回数が多い傾向にありました。

特に「午後入試」を設ける学校は増えています。上位30校に限っても、午後入試の回数は47回にのぼります。2010年当時の午後入試は2科4科型(国語・算数の2科目受験か、国算理社の4科目受験を選択可能)でしたが、近年は別形態で行う学校が増えてきています。巣鴨(豊島区)、世田谷学園(世田谷区)は算数入試、共立女子(千代田区)は合科型(記述・論述型)入試、山脇学園(港区)は国語か算数の選択1科入試、探究サイエンス入試などです。

2021年に初めて午後入試を行う学校は獨協(文京区)と神奈川大学附属(神奈川県横浜市緑区)。いずれも、2月1日に2科で実施します。この2校はかなり出願が増えると予想されています。

■選抜方法が多様化「長期間の勉強の積み重ねが必要でない入試」も

――午後入試はもはや珍しくなくなってきましたね。「早く決めてしまいたい」と「全落ちは避けたい」という保護者の気持ちが交錯しているのでしょうか。ただ、受験生にとっては午前から午後まで1日中、試験問題と格闘することになります。今年の例で言えば、2月1日から2月4日まで連続7校受験という子もいました。過酷すぎる戦いだと思います。

また、昨年の栄光ゼミナールの調査では、小6の夏休み以降の平日の平均学習時間で最も多かった回答は「3~5時間」でした。学校もあるわけですから大変です。長期休みの際はそれこそ朝から晩まで講習で、その後、自宅学習。日曜日は模試ということもあります。

これは中学受験が子どもに相当な負荷をかけていることの一例ですが、これに異を唱える入試も出現してきましたね。

【安田】そうですね。最近の入試の特徴に、選抜方法の多様化があります。その背景にはもちろん、学校側の事情もあります。受験してくれる層の掘り起こしとともに、先に述べたように、コロナ禍で教科学力に自信を失っている受験生が増えているという状況を受け、学校側も長期間の勉強の積み重ねが必要でない入試を設けるところが一段と増えているのです。

■国算理社不要「ナゾ解き入試、読書感想文入試、自由研究SDGs入試」

2021年に新設される入試としては、以下のようなものがありますが、これらの入試は、1入試ごとにバラバラで、共通する対策がとれないという面があることに注意が必要です。

【図表】2021年に新設される入試

■リアル脱出ゲームを手がける会社と学校がタッグを組んだ入試問題

――本当に面白い入試が始まっていますね。一昔前には考えられませんでした。特に、吉祥寺にある藤村女子の「ナゾ解き入試」や逗子にある聖和学院の「ビブリオバトル入試」には興味がそそられます。

【安田】藤村女子の「ナゾ解き入試」は、数多くのリアル脱出ゲームを手がける「SCRAP社」とタッグを組んで実施するものですが、国・算・理・社の内容に即した全10問の謎を解き考察力・発想力などを測定し、その後、グループ形式で30分程度の謎解きをしながら課題を解決し、窮地からの脱出を目指すことで、行動力・会話力・洞察力などをみて、合否を判断するものと聞いております。

一方、聖和学院の「ビブリオバトル入試」ですが、聞き馴染みがない言葉かもしれませんね。この「ビブリオバトル」は2007年に京都大学大学院の大学院生だった谷口忠大氏(現立命館大学理工学部教授)が考案したゲームです。参加者が面白いと思った本をひとり5分で紹介し、それぞれの発表の後、参加者全員で本に関するディスカッションを2~3分で行い、どの本が一番読みたくなったか? という投票をする書評合戦です。聖和学院は2016年に「高校生ビブリオバトル関東甲信越大会」で優勝しているほどの強豪校ですので、これを入試に導入したのも合点がいきます。

数学を学ぶかわいい子供
写真=iStock.com/pinstock
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pinstock

■「とにかく生徒を確保したい」算数のみ、英語のみ……1教科入試も

――なるほど。新しいタイプの入試は学校の受験生獲得という思惑も絡んでいますから、これらの入試スタイルがどこまで浸透していくのか注目です。逆に、受験生側からいえば、もし新タイプ入試で不合格だった場合、他に通用する実力が付いていない可能性があることを踏まえておく必要はありますね。

この他にも、1教科型入試の導入に踏み切る学校も増えていると聞いています。

【安田】確かに1教科入試も急増しています。受験勉強の負担を減らすという趣旨で国語か算数1教科にする学校が増えているのです。とりわけ、算数入試が目立ちますが、これは、学校側が、算数が得意な子は入学後に伸びるという確証を持っているためだと思われます。

2021年で1教科入試を新設、あるいは変更する学校は以下になります。

【図表】2021年で1科目入試を新設、あるいは変更する学校

■「理科実験とレポート作成、結果考察発表」だけで合否が出る

――今年は教育改革によって小学生にも英語の授業が加わりましたが、英語1教科入試というのもありますか?

【安田】はい。小学5年生から英語が教科になり必修化されたこともありますが、中高一貫校での「グローバルコース」「インターナショナルコース」の増加に伴い英語入試もこのところ増えています。新設で言えば、以下の学校ですね。

【図表】英語入試もこのところ増えています

そのほか理科1教科というのもあります。

【図表】理科1教科
女子児童
写真=iStock.com/ferrantraite
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ferrantraite

■コロナ不況で公立中高一貫校の志望者増加の影響も大きい

――「総合的な思考力」を問う適性検査型入試は、公立中高一貫校の入試選抜方法ですが、この受け皿を狙った私立中学が、取り入れるようになりました。

【安田】「適性検査型入試」はすでに多くの学校で実施されていますが、2021年度入試でも今後のコロナ不況で公立中高一貫校の志望者が増えることをにらみ、新たに「適性検査型入試」を行うところがあります。

【図表】適性検査型入試

などが、そうです。

■コロナ対策で市川中学は試験会場を例年の1.5倍の広さに

――入試が多岐にわたる背景には、多様化する社会で、思考力や判断力、そして発想力を評価しようとする社会の機運があります。中学入試も社会的需要に応じて、敏感に反応しているということなんですね。いずれにしても、コロナ禍での受験になりますが、試験当日について、何か大きな変更点などはありますか。

【安田】コロナ禍の3密を避けるという意味合いで、他会場を借りて入試を行う学校があります。

例えば、毎年、1月の初回入試で6000人もの受験生を集める埼玉県の栄東中学(さいたま市)は入試日を2日間、会場を3カ所に分散すると発表しています。幕張メッセを受験会場としていることで有名な千葉県の市川中学(市川市)は会場を例年の1.5倍の広さにして実施する予定です。

各学校とも、ネット出願の解禁、出題範囲の限定、試験時間の短縮、トイレ休憩の延長、面接の取りやめ、試験終了後の分散退場、WEB合格発表など、新型コロナ感染防止対策に心を配っているのが見て取れます。

さらに、保護者控室を設けない学校も多数あります。通常の入試では風物詩とも言える校門前での塾の激励も自粛を呼びかける学校は多いです。

このように例年とは異なる入試となっているので、注意が必要です。

――最後に、コロナ禍での受験に保護者の方もナーバスになっていると思いますが、保護者の皆さんへのアドバイスをお願いします。

【安田】今年は勝手が違い、志望校の文化祭や体育祭を見て、モチベーションを高めることもかなわなかった受験生が多いと思います。しかし、全員が同じ条件でもあるわけです。

ここは、もうある意味、開き直って「やれることだけ、やる!」という作戦でいきましょう。こんな状況下でも、お子さんが頑張ってきたことは確かなのですから。それを認めてあげて、これからは特に「前向きな気持ち」をつくる方針でいってください。

また、新型コロナウイルスの猛威は変わらず予断を許さない状況ですので、募集要項の変更が今後もないとは言えません。受験校の最新情報はHPで日々、確認するようにしてください。とにかく、健康第一です。家族全員で感染対策をして、万全な状態で入試に挑めることを願っています。

――ありがとうございました。

【前編・後編を終えて、鳥居りんこ氏の総評】

近年は「社会階層の二極化」が指摘され続けているが、中学受験界にも、その波はいや応なく押し寄せている。コロナ前も私立中高一貫校は少子化という事実を踏まえ、生き残りを賭けて、必死にならざるを得ない面があったが、コロナショックを受け、いよいよ、近い将来、募集停止に追い込まれる中学が出る可能性もないとはいえない。

ただ、多くの中高一貫校を取材している立場から言えば、教師陣の危機感は相当なものがあり、それが逆に「教育現場」を活性化する起爆剤になる可能性もある。

保護者は、これまで以上に学校を見る目を養う必要があると同時に、どの環境に置けばわが子の長所がやがて花開いていくのかを冷静に見極めることが肝要だろう。

(安田教育研究所 安田 理 構成=鳥居りんこ)

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