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「とりあえず定年までは今の会社で」安定を求めた50代に待ち受ける哀れな末路

プレジデントオンライン / 2020年11月23日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

「今の会社で働き続けるのが一番安全」。もしこう考えているとすれば、それは大いなる勘違いだ。人材育成コンサルティング会社代表の前川孝雄氏は「これからの社会では『1つの会社に依存する』という選択自体がハイリスクになる」という——。

※本稿は、前川孝雄『50歳からの幸せな独立戦略』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■今の会社で働き続けるのは本当に安全か

コロナショックは社会全体に大きな影響を与えましたが、特に個人事業主は大打撃を受けました。大企業でもレナウンのように経営破綻に追い込まれたケースはあるものの、会社に属していれば、少なくとも個人でこの暴風雨にさらされるよりはリスクが少ないように見えます。

「早期退職・独立が頭をよぎることもあるけれど、今の会社で働き続けるのが一番安全。我慢して続けるしかないな」。そう考えている50代会社員も多いはずです。

しかし、変化の激しいこれからの社会では、「1社に依存する」こと自体がリスクとなります。

例えば、あなたが今50歳だとして、「10年後に定年を迎えたら、制度を活用して雇用延長で働き続けよう」と今後のプランを立てたとします。

ただ現代は、2011年の東日本大震災、毎年のように起こる局所的な地震や台風・水害、そして2020年のコロナ禍と、100年に一度と言われる非常事態が5~10年に一度起こり続けています。これからの10年の経営環境が一切の無風で、何の変化も起こらないということはまずあり得ません。

■会社や事業自体がなくなってしまう可能性も

今や世界経済を牛耳っているのは、あなたが働き始めたころには存在していなかったGAFAなどの新興企業です。日本の上場企業の中にも過去10年ほどで躍進した新興企業が続々と増えています。これから10年の間に登場するスタートアップがまったく新しい事業で市場を支配してしまう可能性もあり、自社のサービスのニーズが一気になくなってしまうことだって考えられます。

その結果、10年の間にあなたの会社が規模縮小を迫られ、大規模なリストラを進めるかもしれませんし、他社に吸収・合併されてしまうかもしれません。そのときに現行の雇用延長制度がそのまま存続している保証もありません。もちろん会社や事業自体がなくなってしまう可能性だってあります。

私のもとには最近、「新卒入社した会社で所属する事業部ごと他社に譲渡されてしまった。この年で転職は考えられないので急きょ独立を考えている」といった声が届いています。それも一人や二人ではありません。

公園の滑り台に座りはにかむビジネスマン
写真=iStock.com/kumikomini
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kumikomini

このような十分起こりうる変化を想定すると、これからの時代、稼ぐ先は複数に分散しておいたほうが、リスクは抑えられます。逆に、1社に依存してしまうと、その会社が倒れた時点であなたも共倒れになってしまいます。だから、雇用延長は経験を積んできたミドルにとってローリスクに見えて、実はハイリスクな選択肢なのです。

■自分の人生のハンドルを握られているストレス

また、1社に依存した場合、どんな仕事をするか、自分の時間をどう使うかといった人生の重要事項について、会社や上司にハンドルを握られたままということになります。このストレスがどれほど大きいかは、今さら私が説明するまでもなく、皆さん長いサラリーマン生活の中で痛感してきたはずです。

雇用延長を選択した場合、本人が望んでいない事務作業やそれに類する閑職に回されることも決して少なくありません。「こんな仕事をしたいわけではなかったのに……」というストレスが続く可能性もあります。年下の上司の下で働くことにどこかで不満を感じる人もいるでしょう。

「この年齢だし、雇ってもらえているだけでもありがたいと思わないといけないのかもな……」というネガティブな心理が高まり、築き上げてきたキャリアに対するプライドの維持が難しくなって、メンタルにダメージを受ける人も少なくありません。

もちろん、「もう課長や部長ではないのだから」と気持ちを切り替えて、新たな境遇・立場に適応していく人もいるでしょう。しかし、約40年キャリアを重ねてきたシニアにとって、それは現時点で想像するほど容易なことではありません。

■経験値豊富なミドルならではの、堅実な独立スタイル

そんななかで私が皆さんに提案したいのは、人生を懸けた無謀な冒険ではなく、仮に失敗したとしてもダメージを最小限に抑え、やり直すこともできる「ローリスク独立」です。それは、ずばり「ひとり会社」の設立です。ひとり会社とはいえ、社長になることをあなたに提案します。

独立すれば、顧客は自分で開拓し拡大することができます。収入源の数を増やしておくことは、変化の激しいこれからの時代のリスクマネジメントには非常に重要なこと。これは独立の大きなメリットの一つです。

とはいえ、「自分には独立して通用するほどの実績もスキルもない……」と尻込みする人もいるでしょう。しかし、企業で20年、30年とキャリアを重ねてきたミドルに「何もない」ということはあり得ません。蓄えられた知恵、磨かれてきたスキルが何かしら必ずあるはずです。

要は、その知恵やスキルが市場のニーズに対応するかたちで顕在化されていない、時代に合わせたブラッシュアップがされていないということなのです。であれば、皆さんがすでに持っている価値を浮き彫りにするための努力をすればいい。では、何をすればいいのか。その点については、拙著『50歳からの幸せな独立戦略』をお読みいただければと思います。

独立の形は多様です。家族との時間を大切にしながら、一人でコツコツと営むことができる事業はいくらでもあります。「今の仕事を、長年勤めてきた会社から業務委託で受ける」ことだって独立の一種です。

■まだまだ動ける50代こそ行動を起こすべきだ

独立するのは魅力的だが、定年まで働いて、しばらく休んでからでいいのではないか──。そんなふうに考えて、独立という選択を先送りにする人もいます。一見、合理的な人生設計のようにも思えます。確かに独立はいつでもできます。定年後、ゆっくり悠々自適の生活を送ることが魅力的に感じられるのもよくわかります。

前川孝雄『50歳からの幸せな独立戦略』(PHPビジネス新書)
前川孝雄『50歳からの幸せな独立戦略』(PHPビジネス新書)

しかし、定年年齢自体が引き上げられる中、60代の後半、あるいは70代で独立するということを冷静に考えてみるとどうでしょう。今のシニアは元気とはいえ、40代、50代で動き出すのと比べれば、仕事と生活に変化を伴う独立をする際にかかる負荷は大きくなります。

1年、2年とリタイア期間が続けば、ビジネス筋肉は確実に衰えていきます。現場から離れたぶん、本来、その間に得られたはずの最新の知見、技術などに関してもキャッチアップしなければいけませんが、それも厳しくなります。

独立するにあたっては、例えば、今の会社に籍を置いたまま、副業で知人の会社で働かせてもらって、今の企業では経験できない幅広い業務を実地で学ぶことなども必要になりますし、顧客を開拓するためには精力的な営業活動なども必要となります。企業で働き続ける以上に気力も体力も求められるのです。

だからこそ、まだまだ動ける40代、50代のうちに行動を起こすことが重要なのです。

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前川 孝雄(まえかわ・たかお)
FeelWorks代表/青山学院大学兼任講師
1966年、兵庫県生まれ。大阪府立大学、早稲田大学ビジネススクール卒業。リクルートで「リクナビ」「ケイコとマナブ」等の編集長を歴任後、 FeelWorks設立。2017年には初のクループ企業・働きがい創造研究所を設立。主著に『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『上司の9割は部下の成長に無関心』(PHP)、『ダイバーシティの教科書』(総合法令)、『はじめての上司道』(アニモ出版)、『頭痛のタネは新入社員』(新潮社)などがある。

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(FeelWorks代表/青山学院大学兼任講師 前川 孝雄)

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