ヘトヘトになるまで筋トレすることが科学的に完全に間違いである理由

プレジデントオンライン / 2020年11月19日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Sergey Nazarov

「筋トレ」を始めるとき、なにに気を付けるべきか。ダルビッシュ有選手などのパーソナルトレーナーを務める山本義徳氏は「体の能力を100だとしたらトレーニングに必要な負荷は101だけ。けがのリスクを抑えて、適切な負荷と頻度でトレーニングすることが重要だ」という——。

※本稿は、山本義徳『最高の健康 科学的に衰えない体をつくる』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■激しい筋肉痛は筋トレ失敗の証拠

筋トレに必要なのは、「疲弊期」に陥らない程度の適度なストレスです。ただ、自分にとって、どれくらいの負荷が適度なストレスかを判断するのは難しいでしょう。

特にありがちなのが、適度なストレスがわからないうえに早く結果を出したいと思うあまり、トレーナーの指示よりも過度なトレーニングを行ってしまうことです。そして怪我をして、それまでがんばっていたトレーニングが無駄になってしまう人も少なくありません。

筋トレを行った次の日に動けないくらい激しい筋肉痛が出た場合、私はそれを過度なストレスだと考えます。筋肉を増やすのに激しい筋肉痛は必要なく、ほんの少し筋肉が痛む程度で十分。体の能力を100としたとき、それに対するトレーニングは101のストレスでよく、120や130ものハードなストレスは無意味です。それが私の提唱する「101理論」です。

■普段のトレーニングより「少しだけ」頑張ればいい

私がこの理論に行き着いたのはトレーナーになってからで、ハードなトレーニングを行っていたアスリートに比べ、ダイエット目的で軽いトレーニングをしていた女性のほうが効率よく筋肉量が増えていることに気づいたからです。

120や130のストレスを与えるハードなトレーニングよりも、ダイエット目的の軽いトレーニングによる101程度のストレスのほうが、筋肉を増やすには効果的かもしれない。そう考えた私は、試しにアスリートのトレーニング量を2分の1や3分の1程度に減らしてみました。すると、以前よりも格段に速いスピードで筋肉量が増えていったのです。

人の体にはホメオスタシス(恒常性)という、体内環境を常に一定の状態に保とうとする働きがあります。暑いときは汗を出して体温を下げ、反対に寒いときは体を震わせて体温を上げようとするのも、このホメオスタシスという働きがあるからです。

そして、筋肉においてもホメオスタシスは働き、トレーニングによるストレスがホメオスタシスの範囲内だと筋肉の量は変化せず、筋肉を増やすには、このホメオスタシスの範囲を突き破るストレス量が必要です。

私が「101理論」を打ち出す以前は、ホメオスタシスの範囲を大きく超えたほうが、筋肉もたくさんつくと考えていました。けれど、アスリートとダイエット目的の女性のトレーニング結果から、それが間違っていたと気づきました。

ホメオスタシスの範囲をわずかに超える、つまり101のストレスで筋肉が発達するスイッチを押すことはでき、120や130のストレスは、スイッチを強く押し続けているだけにすぎないとわかったのです。

■筋トレ時間を短縮することのメリット

なぜ「101理論」は、より効果的に筋肉をつけることができるのか。それは、少ないトレーニング量で必要最低限のストレスを与えるだけなので、筋肉の回復にさほど時間がかからないからです。体が動かないくらいの筋肉痛を治すには、最低でも2〜3日の休養が必要です。

でも、軽い筋肉痛だったら、中1日あける程度で回復しきってしまい、すぐにトレーニングを再開できます。そして、トレーニングの頻度が増すから、より短期間で筋肉を発達させることができるのです。

また、「101理論」には、そのほかにもアスリートにとって、うれしい効果がありました。それは、トレーニング量が少ないため筋トレにかける時間が短縮でき、その分、技術力向上の練習に多くの時間を費やせるようになったのです。

その結果、競技におけるトータルパフォーマンスが飛躍的に向上したアスリートもいました。もちろん、筋トレの時間を短縮できるメリットは、忙しいビジネスパーソンにとっても有益です。筋トレに2時間も3時間もかけることは難しくても、ホメオスタシスの範囲をわずかに超える101のストレスは、数十分のトレーニングで達成できます。それに、ハードなトレーニングである必要もないので、誰もが気軽にトレーニングに取り組むことができるのです。

■「自分の弱点を知る」ことからトレーニングは始まる

では、いざ筋トレを始めるとなって、どのようなトレーニングから行えばよいかわからない人もきっと多いと思います。そんな方は、まずは自分の弱点から鍛えてみてはいかがでしょうか。

私がプロのアスリートにトレーニング指導を行うとき、初めにやることはその人の弱点を見つけることです。たとえば、空手など打撃系の格闘技の場合、背筋や腕を伸ばす力、肩の筋肉や体をひねる筋肉、足を踏み込む筋肉が必要になってくるのですが、その人のフォームをチェックして、どこの筋肉が足りていないかを考えます。

もちろん、私はその競技のプロではないので、フォームだけで判断できないこともあります。そんなときは、さまざまな筋力テストを行い、ほかのアスリートの平均値や、その人の体全体の筋肉量のバランスなどから、もっとも弱い筋肉の部位を探り出すのです。

■弱い筋肉から鍛え始めることが健康への第一歩

なぜ、最初に弱点を見つけ、その部位の強化から始めるのか。それは、弱点の部位がボトルネックとなり、ほかの部位のトレーニングの妨げになるケースもあるからです。最終的な目標は背筋を鍛えることであっても、そのためにまずは足腰の弱さを克服する。

一見、遠回りをしているように思えるかもしれませんが、最終的にバランスのよい肉体を手に入れるには、どの部位から鍛えるかという順番が重要なのです。

自分にとっての弱点から鍛え始めるのは、なにもアスリートに限った話ではありません。健康を目的とした筋トレでも、やはり自分の弱点を探し出し、そこから強化することが最高の健康を得るための第一歩です。そして、その弱点は、日常生活の悩みから導き出すことができます。

苦しそうな表情で腕立て伏せを行う女性
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

たとえば、何をしてもすぐに疲れてしまい、人より疲労が溜まりやすいという悩みがあるとします。この「疲れやすい」というのは、疲労物質が溜まって、それが抜けない状態のことを指しますが、その原因は筋肉が固まって血管を圧迫しているからです。

つまり、血管が圧迫されることによって疲労物質がうまく排出できず、「疲れる」という状態に陥ってしまうのです。

■「全身が疲れた」と感じるのは脳が勘違いしてるだけ

では、「疲れやすい」といった悩みは、どのようにすれば改善できるのでしょうか。それは、すぐに筋肉が固まらないようにトレーニングを行って筋肉量を増やすことです。そして、そのためにまず行うのは、自分の体のどの部位の筋肉が凝り固まっているのかを探すことです。

1日の仕事を終えて家に帰ったとき、「今日は疲れたな〜」と思って全身がだるいこともあるでしょう。この「全身の疲れ」というのは、実は脳が判断しているだけで、肉体的には体の一部のみに疲労物質が溜まっている場合がほとんどです。

普段より多く歩いたのなら足の筋肉が固まり、腰に負担がかかる体勢を長時間したなら、腰の筋肉が固まって、そこに疲労物質が溜まっているはずです。

山本義徳『最高の健康 科学的に衰えない体をつくる』(KADOKAWA)
山本義徳『最高の健康 科学的に衰えない体をつくる』(KADOKAWA)

脳は、その部位の疲労を察知し、今以上に疲労が蓄積しないように動くのをやめるシグナルを出し、その結果、全身がだるく感じるのです。

ですから、全身のだるさを解消するには、疲労物質が溜まっている一部の筋肉をほぐせばよく、だからこそ、自分の体でどの部位がもっとも疲れているのかを探すことが大事なのです。

そうして、疲れを感じるたびに本当は体のどの部位に疲れが溜まっているのかを探し続けるうちに、自分はどの部位が疲れやすいかを知ることができ、それが自分にとっての弱点だとわかります。そして、その弱点を克服するトレーニングを行うことで、「疲れやすい」といった悩みそのものも解消できるようになるでしょう。

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山本 義徳(やまもと・よしのり)
パーソナルトレーナー
1969年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。ボディビル・パワーリフティング界のレジェンドで国内、海外の大会では優勝も多数あり、知らぬ者はいない。トレーナーとしては格闘家から一般人まで幅広いクライアントを指導する。これまでに、格闘家はニコラス・ペタス、フランシスコ・フィリォ、神取忍、メジャーリーガーではダルビッシュ有、松坂大輔をはじめ、多くのクライアントを指導。1998年、NPCアイアンマン・アイアンメイデン(ライトヘビー級)優勝。2005年、NPCトーナメント・オブ・チャンピオンズ(ヘビー級)優勝。

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(パーソナルトレーナー 山本 義徳)

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