18年連続増収を支えた私の「フェニックス減量法」
プレジデントオンライン / 2020年12月21日 9時15分
■まだお金払ってジムに通ってるの?
2019年の8月に家族会議で「お父さんの体重を1年後に65キログラムにする」と決まったんです。うちは妻と娘との3人家族なんですが、多数決で民主的に決まったから文句は言えません。
この減量チャレンジで、当時72キログラムあった体重が、20年7月には63.95キログラムまで減りました。具体的に何をしたかといえば、「毎日、朝と夜、体重を量る」これだけです。朝と夜、風呂に入る前に体重計に乗って、妻が確認するんです。虚偽申告がないように(笑)。
このチャレンジにはルールがあって、「○月○日までにマイナス○キロ」という目標体重を決め、達成できていなければ家族全員がお酒を飲めないんです。うちは全員がお酒好きで、毎晩3人でワインを2本ずつ空けるほどなんですが、私が目標をクリアしないと全員が飲めないわけです。自分だけなら「俺、酒なくてもいいや」で済むんだけど、家族も連帯責任となると「お父さんのせいで私たちはお酒飲めない」ってぼやかれる……これはなかなかツライもんですよ。
■大病を経験したことがきっかけです
このチャレンジは、私が65歳のときに大病を経験したことがきっかけです。以降、自分自身の健康に気をつけるようになりました。大病というのは、硬膜動静脈瘻(こうまくどうじょうみゃくろう)という病気です。ある日、名古屋で90分間の講演があり、壇上で話し始めたのですが、途中から言葉がうまく出てこなくなった。その後、家族と話しているときに「お父さん、ちょっとおかしいよ」というので病院へ連れていかれたんです。後に医師に聞いたのですが、発見があと3時間遅かったら、私は死んでるか、半身不随になっていたかもしれないとのことでした。
今は2週間に1回、「キレーション療法」を受けています。これは、アミノ酸をビタミンやミネラルとともに定期的に点滴する治療方法で、血管内の老廃物などを取り除く効果や、抗酸化作用によって血管を若返らせて細胞を活性化する効果があるそうです。1回約2時間30分かけて点滴を行い、1年半でワンクールを繰り返します。
このキレーション療法を始めてからは風邪をひかなくなったし、夜はぐっすり眠れるようになりました。以前は睡眠時間が5時間程度でしたが、今は平均8時間ぐらい。昨夜は9時間たっぷり眠りました。仕事のパフォーマンスも向上して、「社長はキレーションをやるようになってから、元気になった」ってみんなに言われています。
あとは運動ですね。コロナで外出自粛の時期は、毎日1時間~1時間半歩いていました。今も「1日6000歩」を目標に歩いています。帰宅途中に歩数を確認して「ああ、これじゃあ、ちょっと足りないな」と思ったら、わざと遠回りして歩数を稼ぎます。駅でもエレベーターやエスカレーターを使わず階段を上る。日々の生活そのものがエクササイズです。週末に高い金を払ってスポーツクラブに通うよりもコスパに優れた最高の運動ですね(笑)。
もう一つ、大切にしているのは、ストレスを溜めないこと。だから、一晩眠ったら良いことも悪いことも全部捨てる。私は昔から「喜びは1日、悲しみも1日」って決めているんです。
こんな生活を続けていると、体重計に乗る前に自分の体重が予測できるようになります。食事や運動を工夫して、うまくいかなかったらその理由を考えて改善する……要はビジネスと一緒で、PDCAサイクルをうまく回していくことが大事なんです。
■禁煙手当20万円で喫煙率ゼロ
今振り返ると大病を経験するまでは、朝6時から夜10時半まで働きっぱなし。社長がこんな働き方ですから、従業員はみんな迷惑していたでしょう。会社が強く大きくなるためには、社員一人ひとりが心身ともに健康な状態で働けることが重要です。そこで当社では、経済産業省が定める「健康経営優良法人制度」を目標として健康増進に取り組み、20年初めて申請して認定を受けることができました。
この取り組みの中で、いくつかの課題が見えてきました。例えば定期健康診断については、受診率は100%だったのですが、受診結果に対してのフォローができていなかった。現在では産業医や健康保険組合と協力して、健診でメタボリックシンドロームと診断されたり、数値に異常が認められたりした従業員には、個別面談で健康指導を行っています。また、従業員全員に健康管理のためのアプリを無償提供しています。このアプリには、過去の健診結果が参照できる機能もあり、健康状態の経年変化が確認できます。自身の健康状態について関心を持つための意識づけになっていると思います。
当社ならではのユニークな制度としては「禁煙手当」があります。受動喫煙対策の一環として改正健康増進法が成立したのは2018年ですが、武蔵野では2000年頃から管理職全員に禁煙を義務付けています。また、タバコを吸わない社員には禁煙手当として年間最大20万円支給しています。喫煙を罰するのではなく、従業員自身が「禁煙してよかった」と実感できる禁煙手当という方法で社内の禁煙化を進めてきたのです。その結果、現在では社内喫煙率はゼロになっています。
有給休暇については、新たに「有休消化日」を導入しました。これは、「年間有給休暇の75%は、会社が定めた日に休みを取るという制度です。ただ、100%強制的に取らせてしまうと、病気の際に有休を使えなくなるので有休消化率が75%になるように設定しました。土日を含めて9日間連続で休める長期休暇制度は以前からありましたが、その対象は幹部に限られていました。今回は、一般社員も対象に加え、年に一度、水・木・金・土・日と5連休が取れるようにしています。
今後も、新たな制度の導入と効果検証を行って、健康経営の推進を図っていきたいですね。
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武蔵野代表取締役社長
1948年、山梨県生まれ。89年より現職。赤字続きだった武蔵野を18年連続増収の優良企業に育てる。2001年より同社の経営の仕組みを紹介する「経営サポート事業」を展開。
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(武蔵野代表取締役社長 小山 昇 構成=梅澤 聡 撮影=小田駿一)
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