「冷蔵で届いて、日持ち4日間」急成長する"つくりおき惣菜"のすごい品質

プレジデントオンライン / 2020年11月20日 11時15分

鶏もも肉を調味料や香辛料に1日漬け込んで、素揚げにしたバッファローチキン(写真は4人分)。一切手抜きなし。これに副菜が1品か2品ついて、1食分となる。 - 写真=市来朋久

外食がテイクアウトを充実させたことで、ますます激しくなる中食の競争。そんななか、勢いよく伸びている食事宅配サービスがある。その名も「つくりおき.jp」。おいしいおかずが届くと言えば平凡だが、「サービスのクオリティが高い」と評判だ。どんなサービスで、どのようにユーザーの心をつかんでいるのか。その秘密に迫った——。

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■都心から火がついて、提供エリアを拡大中

「つくりおき.jp」は、今年2月にサービス開始したばかりの手づくり惣菜宅配サービスだ。契約数を順調に伸ばし、8月までの7カ月間で累計10万食だった提供数は、11月末時点では25万食とここに来て急激に増加。10月までは東京都心の13区のみを対象にしていたが、11月から23区内全域が対象になり、2021年には神奈川県など首都圏全域に拡大予定だ。

注文はLINE経由のみ、料金プランも2種類のみと実にシンプル。定額制・送料込で、料金は週当たり7800円+税と1万2800円+税。いずれも週1回のデリバリーで、4人家族想定で3食分が届くか、5食分が届くかの違い。たとえば、月曜日に5食分が届くようにしておけば、月~金までの夕飯を考えてつくる苦労から解放され、土日は家族の好きなものをつくってあげる、ということが可能になる。

気になる1人前あたりの料金は約650円。届くのはおかずのみで、決して安くはないが、なぜこれほど急激に成長しているのか。何が客をひきつけるのか。ユーザーに話を聞くことができた。

■働くママにとって、別次元のクオリティ

IT企業で働く木村千恵さん(30代、仮名)は、ご主人と中学生の男の子、小学生の女の子との4人家族。夫婦ともフルタイム勤務のため、定期的に惣菜が届く宅食サービスは一通り使ってきた。ネットでたまたま見つけた「つくりおき.jp」を試してみると、これまでのサービスとは別次元だったという。

「まず、お料理の見た目が違います。しっかり手づくり感があって、食卓に出したとき、『今日は手が込んでいるね』という印象になります。感激したのは、野菜がたくさん入っていること。そして、家庭では惜しみがちな一手間二手間がくわえられていることです。最近だと『かぼちゃの揚げ煮』というメニューがあったのですが、かぼちゃを煮ることはあっても、一度揚げてから煮るという手間はなかなかかけられません」

子供でも無理なく食べられるようにと、やさしい味付けでつくられている。専任のシェフを中心に丁寧に手づくりされたものだ。

「うちの子供たちは、基本的に魚が苦手です。でも、『つくりおき.jp』の魚料理だと自ら食べる。野菜も、こういう料理なら食べるのか、と驚くことがあります。たとえば『人参しりしり』という人参や卵にツナやお豆腐が入っている炒め物があるのですが、こういう味付けなら食べるんだ、と気づかされます。非常に参考になって、自分でも作ってあげるようになりました」(木村さん)

木村さんが絶賛するつくりおきおかずの数々は、どのようにつくられているのか。運営する株式会社Antwayを訪ねた。

惣菜は保冷バッグに入れて届く。黒いパックが主菜、白いパックが副菜。
写真=市来朋久
惣菜は保冷バッグに入れて届く。黒いパックが主菜、白いパックが副菜。 - 写真=市来朋久

■しくみとして、「おいしいメニューばかり」になる

Antwayのマーケティング・プロダクト責任者、小川未来CMOによると、メニューづくりは、ユーザーへの徹底したアンケートを起点にしているという。

「毎週R&D(研究開発)をしています。LINEで週次アンケートを実施して、人気トップ3を毎週ブログでお知らせします。大変ではあるのですが、評判のよくなかったメニューや調理法も、『先週の課題はこれでした』と必ずレポートする。毎週お届けしているメニューの7~8割が新商品です。低評価のメニューを入れ替えながら、評価の高いメニューだけをレパートリーとして残していく仕組みにしています」

かつて評判のよくなかったメニューに、「かぼちゃサラダ」があった。試作ではおいしかったのに、なぜか人気がない。保存形式を変え、細かく切ってセントラルキッチンまで届けられていたのを大ぶりに変更し、鮮度が向上。リニューアルしたかぼちゃ系メニューは、人気ランキング上位の常連となった。アンケート結果から、改善メニューを生み出していく。そのノウハウやデータは、毎週、厚みを増していく。

■業界でも随一「冷蔵で届いて、4日間も日持ち」

「つくりおき.jp」の長所は、「おいしさ」だけではない。大きな特徴は、冷凍ではなく冷蔵で届く点。「つくりおき」を名乗るだけあり、魚料理もふくめ、冷蔵庫で4日も日持ちするサービスはかなりレアだ。冷蔵で届く他の宅食では、「当日中にお召し上がりください」とうたうものもある。日持ちの裏側には、調理から運搬まで、高度な技術がある。「ここが一番の企業秘密」と語るのは、創業者の前島恵CEOだ。

「つくりおき総菜といえば、佃煮やひじき煮など、味が濃くて塩気の強い保存食が中心でしたが、調理や冷却方法、殺菌や衛生的な運搬技術などを徹底することで、保存食でなくても、冷蔵で届けられるようになりました。たとえば、ほうれん草のくるみ胡麻和え、ポークビーンズ、シーフードグラタンなど、ごくふつうの献立が並んでいます」

おいしさ、日持ちと、食事宅配サービスに必要な魅力は備えているように思うが、小川CMOは、「それだけでは、お客様に満足してもらえない」と言う。

届いたばかりの惣菜が並ぶ、木村さん宅の冷蔵庫。ワンプレートに盛り付けられた惣菜にご飯も盛って食べる長女。
写真提供=木村さん
届いたばかりの惣菜が並ぶ、木村さん宅の冷蔵庫。ワンプレートに盛り付けられた惣菜にご飯も盛って食べる長女。 - 写真提供=木村さん
運営会社Antwayの前島恵CEO(右)と小川未来CMO。サービスの内容や名前から、「女性2人でやっていると思われる」という。
写真=市来朋久
運営会社Antwayの前島恵CEO(右)と小川未来CMO。サービスの内容や名前から、「女性2人でやっていると思われる」という。 - 写真=市来朋久

■魚屋から、早朝に電話が入るように

「月当たり数万円をお支払いいただいているお客様がいらっしゃる。価格に見合う満足を感じていただくために、便利、おいしい、安全に加えて、食に対する喜びや外食のような楽しさも一緒にお届けしたい。あまり馴染みのない食材にも、積極的にチャレンジしています」(小川CMO)

たとえば、好評だったのが富山県で獲れたシイラという魚。ハワイではマヒマヒという名で通っている高級魚だ。この赤身を青のりのフリットにして提供したところ、その週の11品中2位の高評価を得た。

「耳慣れないめずらしい魚でも、味がよければ積極的に仕入れるので、最近では『おもしろい魚が入ったよ』と魚屋さんから電話がかかってくるようになりました。早朝にたたき起こされることも増えました(笑)」(小川CMO)

こうした作り手の姿勢は、ユーザーの思わぬ行動につながっていく。

■もっとおいしく、たのしく、顧客がアレンジ

前述の木村さんは言う。

「届いた惣菜を料理の具材に使うこともあります。もともと味付けが工夫されているので、ご飯を混ぜて味を調えるだけで、一味違う炒飯が簡単にできます。水菜とジャコの炒め物にバターを足した炒飯はおいしかったです。ハンバーグサンドに、お惣菜のラタトゥイユを加えたら、おしゃれなサンドイッチになりました。かぼちゃの煮物に、クリームチーズとナッツ、ガーリックパウダーを入れたおつまみは、ワインにとてもよく合いました」

顧客によるメニューのアレンジは予想していなかった、と小川CMOは言う。

「つくりおきは数日間食べていただきますし、管理栄養士も確認しながらメニュー作成しているので、薄味に設定しているものが多いです。そこで、好みに合わせて味を足したり、他のメニューにアレンジしたり、というのはみなさん結構やっていらっしゃって、こうやってアレンジしたら美味しかったです、と教えてくださるお客様もいます。お互いに料理の楽しさに触れられるのは、思ってもみないうれしい展開でした」

思わぬ効果といえば、管理栄養士による監修効果か、「『つくりおき.jp』でダイエットに成功しました!」という声も、いくつか寄せられているという。

おいしくて、日持ちがして、楽しい。食事宅配サービスとしては申し分ないが、前島CEOが実現したかったこととイコールかといえば、そうではない。

保冷バッグについてくるメッセージカード(撮影用にパックに張り付け)。木村さん宅では、子供も読めるように、ダイニングテーブルに置いておく。食材の漢字を覚えるのに役立つこともあるという。
写真=市来朋久
保冷バッグについてくるメッセージカード(撮影用にパックに張り付け)。木村さん宅では、子供も読めるように、ダイニングテーブルに置いておく。食材の漢字を覚えるのに役立つこともあるという。 - 写真=市来朋久

■創業者の思いは「大きくて深い課題を解決したい」

「起業するときに考えたのは、『大きくて深い課題』を解決するということでした。オーストラリア人のピーター・シンガーという哲学者の言葉から発想したものです。正直に言えば、食にこだわっていたわけでもありません。今の日本で『大きくて深い課題』は何だろう、と考えたとき、思い当たったのは女性が抱えている問題でした。日本では、法律や権利の面では女性の問題は整備されていますが、文化や慣習の面ではまだまだ解決されていないことが多い。それが顕在化しているのが家事領域です。『家事は女性の仕事』という認識は日本にまだまだ根強く残っているからです」

と言う前島CEOは、自身の母親から、「仕事をしながら子育てや家事をすることが難しく、キャリアをあきらめて今も悔いている」と言われたことがある。そういった経験もあり、家事領域でできることはないか、と考えたという。

「ミールキットや家事代行は、利便性やコストの面で利用しづらい。味でも利便性でも既存の宅食サービスが今一歩届いていない領域があるのではないか、と仮説を立てて、この事業を始めました。そこにCMOの小川がマーケティングやメニュー開発のノウハウを持ち込んでくれて、今のお客様からのご支持につながっています」

■実家の母親のように、支えてくれる

ユーザーの木村さんは、「つくりおき.jp」は「実家の母親の存在に似ている」と言う。

「子供がまだ小さくて家事と育児、そして仕事にと全く手が回っていなかったとき、母がやってきて料理を作って助けてくれました。そっと寄り添って支えてくれていたあの感じが、このサービスにはあるんです。誰でもいいから助けてほしい状況で、手を差し伸べてくれる感じ。精神的に支えられ、余裕を与えてくれるんです。私がバタバタせずにリラックスしていると、家族の雰囲気が明るくなった気がします。こんなにいい影響が出るんだなと、あらためて感じています」

木村さんがとくに感動したのが「メッセージカード」だった。料理に関する豆知識や旬の食材の話、ちょっとした気遣いの言葉が書いてあるカラフルで小さなカードが、おかずと一緒に届く。

「これまでの宅配サービスとは違う雰囲気を感じました。作り手の気持ちとか、暖かみを感じるんです。『頑張りすぎなくていいんだよ』と言ってくれている気もします。意見をメニューに反映してくれますし、本当に私たちを見守ってくれるサービスだと感じています」

ユーザーの強い支持を受ける「つくりおき.jp」。今後、どのように展開していくのか、前島CEOに聞いた。

「今後も、大きくて深い課題に取り組んでいきます。おかげさまで、『つくりおき.JP』が支持をいただいているので、エリア拡大を行う予定ですが、食の分野にとどまらず、女性の機会平等につながる事業には、積極的に取り組んでいくつもりです」

(PRESIDENT HOME取材班)

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