想定外の「喝」を連発されたとき、フリーキャスターが台本通りに戻す方法
プレジデントオンライン / 2020年12月1日 11時15分
※本稿は、唐橋ユミ『会話は共感力が9割』(徳間書店)の一部を再編集したものです。
■自分なりの「キーフレーズ」を持っておく
インタビューをしていると、話が脱線してしまうことがあります。
会議や打ち合わせでも、話が脇道に逸れたり、要領を得ない発言をダラダラと続ける人が現れたりすることって、ありますよね?
同席者たちは「誰か止めてほしい」と思いながら、イライラ。
そんなときは進行役がうまく「キーフレーズ」を使えると、流れを変えてスムーズに進行することができます。
キーフレーズとは、「ご発言中ですが、要約させていただきますと」や「いろいろとうかがいましたが、ここでもう一度、本題の○○に戻ってみたいと思います」など、話の流れに割って入り、その場の流れを変えられる&仕切れるフレーズです。
会話が脱線したとき、話が長すぎて困っているとき、それぞれの場面で自分なりのキーフレーズをいくつかもっておくと便利です。
私は脱線した話も大好きで、時間が許すかぎり聞いていたいタイプなのですが、吞気に構えてもいられない場面もあります。
吉田照美さんとおすぎさんのトークバトルのなかで、「で、唐橋はどっちなのよ⁉」と振られて、「どっちもどっちですよ!」という私のコメントでオチがつくときは、まだいいのです。
脱線してしまうのは、だいたい目上の方だったりします。話が脱線したときも、無理に軌道修正するのは難しかったりするので、わざとらしくなったり、失礼になったりしないよう、注意を払って進行するようにしています。
■軌道修正の突破口となる言葉がないかと前のめりで耳を傾ける
なかには、ご自分で「すみません、脱線しました」「余談でした」と切り替えてくださる方もいらっしゃいます。
ですが、時間が限られているときは、私から「脱線するとこういうお話が聞けるから好きなのですが……」と挟むと、相手も気づいてくれます。その際には「あのお話、次回続きを聞かせてください」と、帰り際にフォローを入れることもセットにしています。
建築家の安藤忠雄さんとお話ししていて、大いに脱線したことがあります。
![唐橋 ユミさん](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/0/250/img_70e535979785fbbd8413c9eb207285ac218606.jpg)
インタビューが進み、安藤さんの信念は、何からインスピレーションを得ているのかというテーマに対し、「旅に行く、人と会う、本を読む」とお答えいただいたのですが、そこから「最近の若いもんは」といった内容にスライドしてしまいました。「ネットで調べただけで行った気になっているのが信じられん!」と、張本さんばりの「喝」を出されていて。
本当はそのあとに、安藤さんの建築物についてのお話をうかがわなければいけないのですが、話がどんどん脱線していきます。
そこで、どこかに突破口となる言葉がないかと、ちょっと前のめりになって耳を傾けていました。すると、「俺たちの頃はな」というフレーズが出てきました。
そこで、すかさず、「そうなんですよ! そこをお聞きしたかったんです。安藤さんの若い頃のお話を聞かせてください‼」
と切り込んで、軌道修正をさせていただきました。
■「そこを聞きたかったんです!」なら否定された感じはしない
そこから安藤さんが若い頃に興味があった建物の話をうかがい、現在取り組んでいる建築物の話に展開していきました。
脱線したら、何かヒントになる言葉がないか、耳を傾けて探します。とくに、その人が話したい方向とは違う方へ、矢印をもって行かなければいけないときは、そのきっかけになる言葉を、感度を高くして待ち受け、何か発した瞬間に「これだ!」とつかんで修正することが大切です。
話をしている側も、自分の話を聞いてもらったうえであれば、否定された感じがないですから、「そこそこ! それを聞きたかったんです‼」と、話の流れを引き戻していくのは有効だと思います。
このような突破口を見つけられるようになったのは、「サンデーモーニング」で張本勲さんの脱線に揉まれてきたからでしょうか(笑)。実はあのコーナー、まったくリハーサルがないんです。だから、本番まで張本さんが何を言うかわからないのです。
■脱線話は面白いものだが…
たとえばゴルフでしたら、「松山、今季メジャー初戦です」といった説明が書かれた項目表を事前にお送りし、それに対して、張本さんが自由に調べて準備をされている感じです。こちらからは、あまり余計なことは言いません。
放送前日にチーフが張本さんに電話をして、「こんな温度でしたよ」という感触は、司会の関口さんに伝えています。ですが、何に賛成、反対なのか、どこで「アッパレ」と「喝」が出るのかは、当日までわからないのです。
2019年の夏のことです。
全国高校野球選手権岩手大会の決勝戦で、当時、高校生史上最速の163キロを投げた、佐々木朗希投手を登板回避させた、県立大船渡高校の判断についてのコメントです。
「怪我を怖がったんじゃ、スポーツをやめたほうがいいよ」
と張本さんは番組内で、そう苦言を呈しました。
これに対して、さまざまな反響がありましたが、メジャーリーグで活躍するダルビッシュ有投手がツイッターで、〈シェンロンが一つ願いこと叶えてあげるって言ってきたら迷いなくこのコーナーを消してくださいと言う〉とつぶやき、ネット上で熱した議論を呼びました。
![唐橋ユミ『会話は共感力が9割』(徳間書店)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/b/200/img_abc9966e5a2faab1190c7ad90d9f12f2157305.jpg)
私は、議論を呼ぶということは、いいことだと思います。
かつてトップアスリートだった張本さんの時代の価値観があるでしょうし、現在のトップアスリートとしてのダルビッシュ選手の価値観があると思います。
以前、ビートたけしさんが、話されていましたが、いつの時代も「おまえら青二才なんかに負けるかよ」と、「おまえらの時代は終わったんだよ」という新旧世代のせめぎ合いのなかで、進化が生まれるのだと。私もそう思います。
ということで、私の話も大いに脱線しましたが、みなさんも、話が脱線してしまったときに備えて、ご自分のキーフレーズを用意しておくと、とっさのときに役に立つはずです。
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フリーキャスター
三桂所属。城西国際大学非常勤講師。1974年、福島県生まれ。実践女子大学文学部英文学科卒業。1999年にテレビユー福島に契約アナウンサーとして入社し、朝の情報番組や夕方のニュースを担当した。2004年3月に5年間の契約が満了し退社した後、三桂に所属し在京キー局の番組に出演している。
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(フリーキャスター 唐橋 ユミ)
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