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心が折れない人が「もう終わりだ」と思ってから発揮する3つの力

プレジデントオンライン / 2020年12月6日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

コロナ禍でメンタルの不調に苦しむ人が増えている。芸能人の自殺が続いたことも大勢の人の心に影響を与えている。どうすれば心を軽くすることができるのか。精神科医で、『感情的にならない本』(新講社ワイド新書)など感情に関する数々のベストセラーで知られる和田秀樹氏が、感情の整理と健康長寿のコツについてまとめた『感情の整理学』(エクスナレッジ)を上梓。そのエッセンスを特別公開する──。(第2回/全5回)

※本稿は、和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

■全部を投げ出したくなることは誰にでもある

生きていると「もう終わりだ」と泣きたくなること、「なにもかも疲れた」と全部投げ出したくなることが、何度もありますね。

そこでポキッと心が折れてしまう人と、なんとか乗り切っていく人がいます。その差は、「心を切り替える力」「やりすごす力」「甘える力」の差だと思います。

心が折れやすい人によく見られるのは、負けず嫌いで完璧を追い求める性格です。物事が理想どおりに進まないことや、理想と現実のギャップにとても苛立ちます。

プライドが高いので人に弱みを見せられず、問題をひとりで抱え込んで孤立しやすい。そして窮地に追い込まれると一気に「もうダメだ」と心が折れてしまうのです。

■「芯の強いがんばり屋さん」がアブナイ

以前、76歳の元農林水産省事務次官が44歳の長男を殺害する事件が起きました。

長男はひきこもりがちで、親に暴力をふるっていました。直前に通り魔殺人事件があり、元次官は逮捕時に「息子も周りに危害を加えるのではと思った」と供述しました。

大手有名企業で女性新入社員がパワハラと過労のために自殺した事件でも、彼女が周囲に見せていたのは「芯が強くて、本当にがんばり屋さん」の顔でした。

どちらのケースも、誰かに相談できていたら、折れずにすんだと思うのです。

■「転ばぬ先の杖」をいくつも持つ

一方、心が折れにくい人は「ストレスをもろに受け止めずやりすごす」。柔道の受け身のようなコツを心得ていて、人に甘えることができます。

たとえば、人生経験豊富な人にアドバイスを求めて、問題解決の糸口をつかむ。気軽にグチを言える相手がいる。心療内科を受診するなど。

また、どんなにメゲていても、好物を食べると気分が少し上がったり、ゲームには没頭できたり、緊張をほぐせる「楽しみ」を持っている人が多いといえます。

「転ばぬ先の杖」をいくつか持っていれば、折れずに持ちこたえられます。

■アドラーが教える「あがけば奇跡が起きる」

そして、もはやこれまでという状況でも、最後の最後まであきらめないこと。私が監修した『アドラー100の言葉』(宝島社)で、イソップ話を紹介しています。

「2匹のカエルがミルク壺に落ちた。1匹は“もう終わりだ”と泣いて、溺(おぼ)れ死ぬ覚悟をした。もう1匹はあきらめず何度も脚をばたつかせると、足が固い地面をとらえた。なにが起きたのか? ミルクがバターに変わったのだ」。

この話をアドラーから聞いた友人は、第2次世界大戦のときナチス・ドイツの強制収容所から奇跡の生還を果たして「収容所にいた間、わたしは希望を失った大勢の人々にこのカエルの短い話をして、心を揺さぶることができた」と語っています。

■Howで考えるのをやめてWhyで考える

また、同じくナチスの強制収容所を生きのびた心理学者フランクルは名著『夜と霧』(みすず書房)に、生死を分けたのは「問い」だったと書いています。

「どうすれば生き延びられるか」とHowで考えた人は、運命に絶望して死んだ。「自分がここにきた意味は?」とWhyで考えた人は希望をつないでよく生きたというのです。

「どうせいつか死んでしまうのに、生きることになんの意味があるのか?」と、私たちはよく問います。

これに対しフランクルは、「むしろ私たちが人生から問われている。人間のほうが、人生に答えるべきなのだ。生きるとは、人生の問いかけに答え続けて人生を有意義にしていくプロセス」と説いています。

人生にどんな難問を出題されても、折れないで答え続けましょう。

■国民性あるある噺が示す「日本人の特徴」

また、日本人にありがちな傾向として指摘されるのが「焦りやすさ」と「あきらめやすさ」。「沈没船ジョーク」として世界でウケている、国民性あるある噺(ばなし)があります。

豪華客船が浸水して救命ボートが足りず、船長であるあなたは乗客を海に飛び込ませたい。乗客にはいろいろな国の出身者がいる。さあどうするか……。

アメリカ人の背中を押すには「飛び込めばヒーローになれますよ」、ロシア人に対しては「ウォッカのボトルが海に浮かんでいます」、イタリア人には「美女が泳いでいますよ」、イギリス人には「紳士はこういうとき、海に飛び込むものです」。そして日本人に対しては、「みなさんもう飛び込みましたよ」……。

主体性がなく、生きるか死ぬかのときにも「みんなについていけてない」ことに大あわて。日本人の国民性をよくとらえています。

東京の通勤ラッシュで行き交う人々
写真=iStock.com/xavierarnau
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xavierarnau

■「焦り」が悪い結果をもたらす

なんでも人任せでは「自分が本当にやりたいこと、いまやらなければならないこと、最終的な目標」はつかめないので、いつも焦って右往左往することになります。常に目の前しか見えないから「後がない」「これしかない」と焦り、手に入れる前は「このチャンスを逃したら終わり」、手に入れば「これを失ったら終わり」となりがちです。

目標も「何月何日までに○○達成」「何歳までに結婚」などと、場当たり的に期限を切って焦りやすい。現実はそう思惑通りにはいかないから、期限が近づくにつれて、自己嫌悪でイライラすることになります。

あきらめも早すぎて、たとえば1回失恋しただけで「あんなすてきな人には、もう2度と出会えない」、事業に失敗すると「人生まっ暗。今さらやり直せない」……。

あなたも、無駄に焦っていませんか?

■「焦りを書き出す」というテクニック

焦りを感じたら、自分を上から見下ろすようにして「わたしはこういう原因で焦りを感じて、いまこういう状態にある」と、焦りのリアルを客観的に紙に書き出します。

和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)
和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)

「なんだ、たいした問題じゃなかった」「こうすればいい」と、なんらかの前向きな対処法が浮かんでくるはずです。これを習慣にすると、焦りに強くなります。

そして「長期的な目線に切り替えよう」と、強く意識してみてください。自分にとっていちばん大切なもの、得意なこと、熱中できることを考えて、仕事でも趣味でもいいので、「これは人生最後の日まで続けよう」と思えるライフワークを見つけます。毎日、数分でもいいからたゆまず続けると、とても心が安定します。

すると小さなことに動じなくなり、「長い人生の明暗が、1回や1日のできごとで決まってしまうことはそうないよ」と、ゆったり構えられるようになります。

■「焦らないメンタル」が幸運を呼ぶ

公私ともに「今回契約がムリでも、○日の商談で勝ち取ろう」「今日ふられても、自分を磨いて半年後に再トライ」……と、七転び八起きの粘りが出てきます。

また、焦らないメンタルを手に入れることで、次のようなことが起こり始めます。

・まわりに流されず、冷静に自分の行動を起こせるようになる
・本当に自分がやりたいこと、大切なもの、人生のテーマを見つけられる
・今まであきらめていたことに再トライする意欲がわく
・信頼でつながる友人、知人の輪が広がる
・失敗が減り、人生にポジティブになって、幸運を引き寄せる

いいことだらけです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
国際医療福祉大学大学院教授
アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。1960年6月7日生まれ。東京大学医学部卒業。『受験は要領』(現在はPHPで文庫化)や『公立・私立中堅校から東大に入る本』(大和書房)ほか著書多数。

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(国際医療福祉大学大学院教授 和田 秀樹)

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