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和田秀樹「アスペでコミュ障の私が精神科医に」人間関係に悩むすべての人に伝えたいこと

プレジデントオンライン / 2020年12月9日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AntonioGuillem

コロナ禍でメンタルの不調に苦しむ人が増えている。芸能人の自殺が続いたことも大勢の人の心に影響を与えている。どうすれば心を軽くすることができるのか。精神科医で、『感情的にならない本』(新講社ワイド新書)など感情コントロールに関する数々のベストセラーで知られる和田秀樹氏が、感情の整理と健康長寿のコツについてまとめた『感情の整理学』(エクスナレッジ)を上梓。そのエッセンスを特別公開する──。(第3回/全5回)

※本稿は、和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

■「アスペ」「コミュ障」の私に母が放った一言

「秀樹にはサラリーマンは勤まらないから、弁護士とか医者とか、なにか資格を取らないと生きていけないよ」

私は母親から、いつもそう言われて育ちました。

子ども時代の私は空気が読めず、上級生や教師にも平気で突っかかっていました。友達にも思ったことをズケズケ言ってはイジメられ、仲間はずれにされるけど、まったく懲りずに何度でも同じことをくり返す。

いわゆる「アスペルガー障害(自分の関心、やり方、ペースが絶対で、人と臨機応変に交われないのを特徴とする精神発達の障害、現在は自閉症スペクトラム障害と呼ばれる)」「コミュ障(一方的にしゃべり続ける、人の目を見て話せないなど、人とのやりとりが苦手で、苦痛に感じる)」の典型みたいな子どもでしたから、会社勤めなんてとても無理だ、と母は思ったのでしょう。

■「視点転換」と「メタ認知」が人生を変えた

実際、学校でイジメられて人嫌いになり、コミュ障のまま生きていく人も多くいます。しかし私はここ何十年も、精神科医として患者さんと向き合い、いくつかの教育産業を経営し、本を書き、映画監督も続けています。すべて、コミュニケーションが基本の仕事です。

なんとかやってくることができたのは、相手の身になって考える「視点転換」と、自分を客観的に見て修正していく力「メタ認知」のことを、心理学で学んだおかげです。

実は、ほとんどの人は自分が大事、自分が大好き、自分が中心で、相手のことなんてあんまり考えていません。コミュ障の根本原因も「自分にしか関心がないこと」と「視野の狭さ」です。

■人間関係でつまずきやすい人の「思考のクセ」

人との関係でつまづきやすい思考のクセは、

・二分割思考(敵・味方、善・悪……と白黒でしか考えられず、グレーを認めない)
・パーフェクト思考(100点でなければ0点と同じ、など妥協を許さない)
・これっきり思考(仲間にたった一度、反対されただけで敵と見なす、など)
・決めつける(数人を見て「最近の若者は◯◯」と決めつける、など)
・思い込む(○○さんは私を嫌っている、などと勝手に思い込む)
・ネガティブ(人や自分の欠点ばかり見て、長所は「たいしたことない」と否定)
・縮小視(自分の長所を過小評価して、「取るに足らない」と卑下(ひげ)する)
・悲観(単なる仮説や予測を事実としてとらえ、どうせムリ、などと決め込む)
・破局視(好きな人に冷たくされただけで、この世の終わりのように絶望する)
・感情に支配される(その場の気分で「すべてOK」「全部バツバツ」とブレる)
・~すべき思考(~すべき、~ねばならないという使命感が行動の原則)
・レッテル貼り(勝ち組、負け組などわかりやすいラベルを貼って人を判断する)
・自己関連付け(関係ないのに「私のせい」など、すべて自分と関連づけたがる)

どれも自分中心の思考のクセです。ちょっと相手の立場に立ってみよう、と考えるだけで、人間関係はとてもスムーズになります。

ゴールデンルールは「自分がして欲しいことを人にする。自分がして欲しくないことは決して人にしない」。これを守ると、一方的に話し続けるなんてできませんね。

そして、気が合いそうな人が現れたら、「なにか私にできることない?」を口癖にします。自分が関心を示せば、相手も必ずあなたに関心を示してくれて「やりとり」が生まれる。それが、コミュニケーションの第一歩です。

■「甘え」に厳しい日本社会

また、人間関係でつまずきがちな傾向の人に共通するのが、人に甘えるのが苦手ということ

「甘え」と聞いて、どういう言葉が浮かびますか? ずるい。未熟。弱虫。根性がない。いい気なもの。あきらめ。実力がない……?

ポジティブな言葉が浮かぶ人は、とても少ないでしょう。同情を買って打算的に他者を利用するようなイメージがあるのだと思います。

日本には昔から「恥の文化」、まわりに迷惑をかけたり、いやな思いをさせたりすることを「恥ずかしい」と考える文化が根強くあります。ラクしていい思いをすることも、恥ずべき行為。だからこの手の悪い意味での「甘え」に手厳しいのです。

■中高生が「自己責任」を口にする息苦しい社会

最近の若者は恥を知らない? いえいえ「自己責任」「自業自得」という言葉を、中高生がふつうに使っています。「困ったら人に甘えるなんてとんでもない。自分のことは自分で責任持ってなんとかしなさい」と、10代から洗脳されているのです。

20年ほど前から日本型の終身雇用や年功序列が崩れ始めて、「就職したら一生安泰」という甘えが許されなくなったことや、一時期「生活保護受給者バッシング」に火がついたことも、社会を息苦しくしています。

とにかくこの国では、「つらい」「助けて」と言いにくい。しかし、行き詰まってしまったら、自分だけでできる努力には限界があります。だれにも相談できず、救いも求められず、体を壊したり心を病んでしまったりしては、元も子もありません。

日没のなか、祈る女性と自由になって自然を楽しむ鳥
写真=iStock.com/ipopba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ipopba

■本当に強いのは「上手に助けを得られる人」

さて、精神医学の世界でいうところの、いい意味の「甘え」は、素直に人の好意をあてにしたり、受け入れたりすること

このような形での甘え方を知らない人こそ、うつ病になりやすいといってもいいでしょう。「打たれ強い人」「心が強い人」とは、決して「打たれても平気な人」「修羅場(しゅらば)でひとりがんばり抜く人」ではありません。「打たれたときに誰かに頼れる人」「修羅場を生きのびる方法を知っている人」が強い人なのです。

苦しいときには、だれかに打ち明けてみる。行き詰まったら頼れる人や窓口を見極め、「力を貸してください」と駆け込む。そういう「甘え」は、弱さどころか生き抜く力、自己主張できる強さです。

また、相談された=甘えられた側も、「頼られた」「自分が選ばれた」「尊敬されている」と、むしろ喜んでくれることが多いのです。

■自分の心身を守ることが本当の自己責任

甘える勇気を出して、自分の心身を守ることが、なによりの自己責任です。

和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)
和田秀樹『感情の整理学』(エクスナレッジ)

助けを借りてピンチを乗り越えられたら、ひとまわりたくましくなって生きていけます。そして人生は持ちつ持たれつ、社会は「お互いさま」で成り立っていますから、今度は自分がだれかのピンチを救う側に回ります。

いい意味で「相互に依存する」ことが、人間関係も人生も豊かにします

公的無料相談窓口も「こころの健康相談統一ダイヤル(電話0570-064-556)」「精神保健福祉センター」「教育センター」「総合労働相談」など、さまざま用意されています。

お金の問題もたとえば、「困窮しているが持ち家で生活保護NG」の場合、不動産を担保に生活費を借りられる「生活福祉資金」制度があったり、借金、相続、離婚などの法律トラブルの相談窓口「法テラス・サポートダイヤル(電話0570-078374)」などがあります。

まずは、こうした相談窓口に電話をしてみることでも、突破口が開けると思います。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
国際医療福祉大学大学院教授
アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。1960年6月7日生まれ。東京大学医学部卒業。『受験は要領』(現在はPHPで文庫化)や『公立・私立中堅校から東大に入る本』(大和書房)ほか著書多数。

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(国際医療福祉大学大学院教授 和田 秀樹)

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