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米大統領選の真相「ツイッターとフェイスブックが民主党に屈した」瞬間

プレジデントオンライン / 2020年11月27日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DKart

巨大SNSフェイスブック、ツイッターが、アカウント停止を含む罰則を連発、多くのトランプ支持者らが他のSNSへと居場所を移し始めたといわれる。トランプ大統領を生み、育てたと言われるフェイスブックとツイッターが、トランプを裏切るまでの全真相を振り返る。

■ツイッター社がトランプを「裏切った」

発端は、2020年5月26日にトランプ米大統領が投稿したツイートからだった。

There is NO WAY (ZERO!) that Mail-In Ballots will be anything less than substantially fraudulent. Mail boxes will be robbed, ballots will be forged & even illegally printed out & fraudulently signed. The Governor of California is sending Ballots to millions of people, anyone.....
Get the facts about mail-in ballots
(翻訳)「郵送投票で現実として不正が起こらないとは言えない(絶対に!)。郵便受けからは投票用紙が盗まれる、投票用紙が偽造される、違法に印刷までされて、不正に署名される。カリフォルニア州知事は何百万の人々、そう誰かれかまわず投票用紙を送りつけている」
※郵便投票について正しい知識を。

11月の米大統領選を控え、郵便投票が不正を招くことを懸念したトランプ大統領のツイートだったが、ツイッター社がこれに郵便投票を擁護するマークを入れたのである。トランプ大統領は「言論の自由への侵害である」と抗議のツイートを投稿するのだが、ツイッター社はさらに警告を付け続けた。

ツイッター社の措置に、トランプ大統領が憤慨し反撃するのは当然だろう。ツイッターはトランプ大統領の政策をことごとく邪魔する既存メディアに対抗するための唯一最大の武器である。そのツイッターが、今度は自分の敵になろうとしていた——。

■2016年の米大統領選が「SNS選挙元年」

「フェイスブックが産み、ツイッターが育てた大統領」——トランプ大統領について、これまでの米国大統領との違いを端的に表すとしたら、そんな表現がふさわしいかもしれない。

前回2016年の大統領選挙では、マスコミでは数々の悪評が渦巻いていた一方で、フェイスブック内では「ドナルド・トランプは米国の救世主になる」というコメントにあふれていた。ビル・クリントン大統領、バラク・オバマ大統領と民主党政権が続き、米国がグローバル化の波にのまれていくと、大都市部以外の地域で、民主党に対する不信感や怨嗟の声が広がっていた。「ビルのあの高慢ちきな妻が民主党から次の大統領になるのは嫌だ」と思っていた米国民はかなりいたのである。

2008年のオバマ大統領が誕生した選挙から選挙運動の中心は既存マスコミからSNSにシフトしつつあったが、2016年はSNSが主戦場となるまさに「SNS選挙元年」となった。とくに、トランプ陣営のブレーンとなったカリスマIT投資家のピーター・ティールと、戦略家で保守系ネットメディアのトップだったスティーブ・バノンの存在は大きかった。

その中でも顕著に効果があったのが、バノン氏が仕掛けたフェイスブックの「ターゲット広告」だった。バノン氏は選挙対策のコンサルティング会社で、2016年のイギリスのEU離脱を問う国民投票でもブレグジット派勝利に大きな影響を与えたといわれる「ケンブリッジ・アナリティカ」の役員でもあった。同社がフェイスブックから不正に入手したといわれるデータをフル活用して、ヒラリー・クリントンに対してあからさまなネガティブ広告を大量に打ち、「ヒラリー嫌い」を劇的に増やし、同時に「トランプ救世主論」が密かに広まっていった。

■「トランプ嫌いが圧倒的多数」は逆だった

ただ、この点についてはメディアではさほど伝えられていないことがある。それは、ヒラリー氏がもともと米国民に嫌われていたということだ。既存メディアだけを見ていると、トランプ嫌いが圧倒的に多いように感じただろうが、実際は逆だった。メディアがトランプ嫌いを増幅させる一方で、SNSではヒラリー嫌いが増幅されていた。SNSには「トランプが自分たちの言いたかったことを代弁してくれる」と溜飲を下げた庶民がかなりいたのである。

トランプ氏ほどあからさまな罵倒をテレビやSNSで展開するような大統領候補はこれまでいなかったが、それを痛快な思いで見ていた米国民は思いのほか多かったのだ。それは、トランプ氏が庶民の気持ちを肌感覚で理解していたからだ。

トランプ米大統領(アメリカ・ワシントン=2020年11月20日)
写真=AFP/時事通信フォト
トランプ米大統領(アメリカ・ワシントン=2020年11月20日) - 写真=AFP/時事通信フォト

トランプ氏は大統領選に当選した直後に、自らニューヨーク・タイムズ本社を訪問して和解を呼びかけている。「米国を愛する気持ちは同じなのだから、協力できるところは協力しよう」というトランプ流の合理主義から出た行動だった。だが、ニューヨーク・タイムズ側はまったく聞く気はなかった。それ以降、米国を分断したのがトランプ大統領ではなくメディアであるのは、このことからも明白だ。

■「フェイク」とののしり合う全面対決

既存メディアが自分と敵対することを悟ってからは、トランプ大統領はツイッターをフル活用して、メディア発表の前にツイッターで発信するようになった。そのため、大手メディアもトランプ大統領のツイートを紙面で発表するというSNS優位の逆転現象が起こることとなった。

ここから、トランプ大統領と既存メディアがお互いを「フェイク」とののしり合う、全面対決となり、米国の分断が進んでいくのである。

この対決は圧倒的にトランプ大統領優位で進んだ。それはトランプ大統領のツイートが抜群に面白いうえに、大統領らしからぬ易しい英語で書かれていたからだ。それまで政治に無関心だった人たちが、トランプ大統領のツイートを通して政治に関心を持つようになった。新聞の長くて難しい記事を敬遠していた人たちも、トランプ大統領のツイートは好き嫌いにかかわらず読んでいる。「大統領らしくない」大統領を庶民は歓迎し、メディアやエリートたちは嫌悪した。

だが、どちらの数が多いかを考えると、少なくとも「再選」に近づくという面では適切だったと言える。多くの人たちが「大統領らしさ」より「共感」を求めていた。

■不在者投票とは違う「郵便投票」は不正の温床か

冒頭の「トランプ対ツイッター」の戦いが、郵便投票を争点としていることは言うまでもない。米国の郵便投票について、日本では「不在者投票に近いもの」という誤解があるようだ。不在者投票は離れたところにいて現地で投票できない人たちが、自分から投票用紙を請求して近くの関係機関などで投票するというもの。それに対して、郵便投票は州政府が有権者に投票用紙を送って、それを郵便で返送してもらうというしくみになっている。

郵便投票は以前から不正投票の温床になっていると指摘されていたのだが、今回の選挙では、とくに民主党側が新型コロナウイルスを口実に郵便投票を大々的に広げようとした。

郵便投票が不正を生みやすいのは、投票用紙が送られるのが有権者であるとは限らない点にある。州政府がすべての住人について有権者に投票の資格があるかどうかを把握するのは、とくに大きな州では不可能であり、他州に移動したり亡くなっている人たちに送られたことも確認されている。

すると、送り返された投票が本当に本人のものかどうかわからない。さらには、認知症の年配者が多い養護施設などに送られている場合に、その施設が一括して送り返してきた投票用紙が、本当に本人の意思なのか確かめようがない。

さらに、郵便投票で集計不正が起こると、確かめようがないという不安もある。そのために、たとえば、民主党が行政を握る州では共和党党員が監視員をするといった措置がとられたのだが、監視がある時間帯に拒否された事例も少なからず報告された。

ただし、郵便投票不正については「ほとんど不可能」から「不正し放題」までその評価にはかなりの隔たりがある。「本当のところはよくわからない」としておくしかないだろう。

いずれにしても、民主党側が郵便投票で自分たちが有利になるということはわかっており、郵便投票を広めることがトランプ大統領の再選阻止の切り札になると考えていたことは間違いない。

だから、トランプ大統領としては郵便投票をできるだけ抑えて、投票所での投票を基本にすることで民主党側が不正できないようにしようとしていたわけである。ところが、そのための武器であるはずのツイッターで、肝心のツイッター社が「郵便投票賛成」に回ったために、今度はツイッターによってトランプ大統領が追い込まれることになってしまった。

■バイデン息子のスキャンダル報道にリンクできない

ツイッター社が民主党の手に落ちる一方で、もう一つの巨大SNSフェイスブックも同様に民主党に狙われていた。フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグは、フェイスブックがトランプ大統領誕生の原動力になっていたことが発覚したことから、民主党やリベラル勢力からあたかも集団リンチのように激しく攻め立てられていた。

簡単に民主党に落ちたツイッター社と違い、民主党側が要求する「ファクトチェックをしろ」(これは「トランプの投稿に制限をかけろ」ということとほぼ同意)という圧力に屈せずにいた。そのため、民主党候補のひとりだった左派のエリザベス・ウォーレンは、「フェイスブック解体」を重要な公約に掲げたほどだ。

ところが、そのザッカーバーグ氏も執拗な攻撃に、投票直前に“ファクトチェック”をすることを認めた。それは、リベラル派の牙城シリコンバレーの企業であるフェイスブックの社員の多くが民主党支持であり、ザッカーバーグ氏が内外から突き上げられたからである。

そして、トランプ陣営の勝利の切り札となるはずだった、民主党候補ジョー・バイデンの息子ハンター・バイデンの大スキャンダルの報道が、ツイッターとフェイスブックでリンクできない状態に陥った(「バイデンのスキャンダル拡散を、SNS・リベラルメディアが阻止している」)。これに怒った共和党は、ツイッター社のジャック・ドーシーとザッカーバーグを公聴会に召喚して締め上げた。特に共和党の重鎮テッド・クルーズ上院議員の怒りは尋常ではなく、「選挙で選ばれてもいないおまえに、なぜ言論をゆがめる権利があるんだ!」と本気の怒りをぶつけて、ドーシー氏を震え上がらせている。ツイッターでハンター・バイデンの記事がリンクできるようになったのは、その直後のことだ。

■選挙不正をめぐる最終決戦

大統領選挙投票が終わり、民主党のバイデン候補が選挙人獲得では優位になっているが、トランプ大統領はこれに真っ向から戦いを挑んでいる。トランプ大統領は民主党陣営が郵便投票で不正を仕掛けてくることをあらかじめ想定して、司法闘争に持ち込むべく最初から準備していたのである。

だが、トランプ陣営からもたらされる不正の報告も、メディアではまったくといっていいほど報道されておらず、その点はツイッターもフェイスブックも同じである。トランプ支持者は選挙不正情報を広めるためにSNSで発信しているが、その中にはフェイク情報がかなり入り込んでいて、支持者側の発信も混乱を極めている。

だが、トランプ大統領の狙いは単に再選することではない。この選挙結果を通して、民主党の不正体質を明らかにして、民主党ごと力をそぐことにある。その意図が成就するかどうかは、結局のところ、市民のメディアであるツイッターとフェイスブックが言論の自由を保てるかどうかにある。いかに、SNSで言論の自由への侵害が強まろうと、既存メディアよりははるかにましな状態にある。

そういう意味で、今回の選挙の最大の敗者は、事前の世論調査で2016年の反省もせず、またも予想を大きく外してしまった既存メディアである。

トランプ大統領が民主党に打撃を与えられるかどうかはこれからの勝負次第だが、少なくとも既存メディアは大きなカウンターパンチを食らってノックダウンしたと見て間違いない。ただし、既存メディア側に反省の色はみじんも見られない。

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白川 司(しらかわ・つかさ)
国際政治評論家・翻訳家
国際政治からアイドル論まで幅広いフィールドをカバー。『月刊WiLL』にて「Non-Fake News」を連載、インターネットテレビ『WiLL増刊号』レギュラーコメンテーター。メルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評。近刊に『日本学術会議の研究(仮)』(ワック)。

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(国際政治評論家・翻訳家 白川 司)

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