「インフルエンザの発症率10分の1に」コロナにも効く口腔ケア3ステップ
プレジデントオンライン / 2020年12月4日 13時15分
■新型コロナやインフルエンザ対策には、免疫力の見直しを
ここ数カ月、再び感染者数が増加し続けている新型コロナウイルス。感染を予防するには、免疫力を高めることが大切と森下教授は語る。
「新型コロナウイルスの感染予防として、マスクの着用や手洗い、うがい、定期的な換気といった個人でできる対策はある程度実行され、日常生活に浸透しています。しかし、新型コロナのほか、インフルエンザなどさまざまなウイルス感染症への対策が求められる冬に向けて、改めて感染予防として免疫力を見直し、自衛していく必要性が高まっています」
免疫力を上げるには腸内環境を整えることが重要だが、これはすでに実行している人も多い。実際に、ヨーグルトや納豆、みそといった発酵食品の家計消費金額は、昨年に比べ大きく伸びている(図表1)。
![出典=家計調査 「二人以上世帯」の1世帯当たりの家計支出金額(総務省:2020年10月発表)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/4/500/img_44ec4e7a04389eec72916d0908796123513305.jpg)
■口腔環境の改善が、免疫力アップのカギに
しかし、免疫力を上げるには腸内環境だけでなく、口腔環境を整えることも重要であることがわかっている。
そもそも「免疫」とは、外から侵入してきた細菌やウイルスなどを異物として攻撃し、正常な状態を保つための自己防衛機能のこと。免疫には、人間が生まれつきもっている「自然免疫」と、特定のウイルスに出合うことで後天的に獲得され、そのウイルスだけを退治する「獲得免疫」があり、獲得免疫の仕組みを利用したものがワクチンだ。ところが、新型コロナウイルスのワクチンはまだ実用化されていないため、自然免疫を上げることがポイントとなる。
「自然免疫においては、口腔、鼻腔、腸管といった『粘膜免疫』が第一の防御壁となり、ウイルスの体内への侵入を防ぎます。なかでも、口腔はウイルスの最初の侵入口。飛沫感染、エアロゾル感染、手指感染のすべてが口腔から起こるケースが多いといわれていますが、口腔には『IgA』という抗体が存在し、感染予防の要となる役割を担っています」
IgAは口腔内に侵入した細菌やウイルスにくっつき、粘膜への付着を防ぐ働きがある。細菌やウイルスにくっついたまま、唾液によって洗い流されることで、体内への細菌やウイルスの侵入を防ぐのだ。つまり、口腔はウイルスをブロックするマスクの役割を担っているといえる。
「実際、口腔ケアを行って口腔環境を整えることで、インフルエンザの発症率が10分の1になったという調査報告もあります(図表2)」(森下先生)。
![口腔ケアとインフルエンザ、風邪発症率](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/c/670/img_dce04b2dfaffaa9bc8442a6284d9f5a0149059.jpg)
■口腔環境は、気づかないうちに悪化する
では、口腔環境は、なぜ悪化するのだろうか。
歯学博士の若林健史先生によると、そもそも良好な口腔環境とは、清潔で歯周病などの炎症が起きておらず、本来の機能を発揮できる状態を指す。
「口腔内の環境が悪化する主な原因として、喫煙や乾燥、糖質の過剰摂取、ストレス、家族間の菌の感染が挙げられます。歯肉(歯茎)に出血があるほか、『歯周ポケット』と呼ばれる歯と歯茎の間の溝の深さが4mm以上ある場合に歯周病と判断されますが、45歳以上の過半数が自覚のないまま口腔環境が悪化し、歯周病になっている恐れがあります」(図表3)。
![歯周ポケット](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/9/670/img_89cebdec09fb5402999b62d0e5c10967127943.jpg)
さらに、最近はコロナ禍によるマスクの着用で口呼吸になり、口腔内が乾燥する人が増えている。その結果、唾液が出にくくなって自浄作用や免疫力が低下して菌が増えやすくなり、歯垢などの温床になるという。加えて、コロナ禍によって歯科の受診を控えている人も多く、口腔環境を良好な状態にキープできないケースも多いようだ。
■バクテリアセラピーで、口腔環境を改善
このように、知らず知らずのうちに悪化する口腔環境を整えるには、「プロケア」「セルフケア」「バクテリアセラピー」の三種が必要となる(図表4)。
![口腔環境を整えるには、「プロケア」「セルフケア」「バクテリアセラピー」の三種が必要となる](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/4/670/img_847e61522eb2b65527151425b023104c208680.jpg)
「なかでも『バクテリアセラピー』は、ここ数年、予防医療として注目されています。バクテリアセラピーとは、ノーベル生理学・医学賞選定機関であるノルウェー・カロリンスカ医科大学で30年以上研究されている新しい概念で、優れた生菌の善玉菌(プロバイオティクス)を摂取することで体内常在菌のバランスを整え、健康を維持するもの。善玉菌を用いるため薬剤耐性が起こらないうえ、ヒト由来の善玉菌を用いるため体に定着しやすく、子どもから高齢者、妊娠中の女性まで安心して摂取できます」(若林先生)
バクテリアセラピーに使用されるプロバイオティクスには、「安全性が十分に保証されていること」「もともと腸内フローラの一員であること」「胃液や胆汁に耐えて腸内に到達できること」などWHOが定めた7つの条件があるが、そのすべてをクリアしているのが「ロイテリ菌」だ。
「ロイテリ菌とは、もともと人の体内に生息し、母乳を通じて受け継がれてきた乳酸菌です。世界100以上の国と地域で使用され、200以上の臨床研究がありますが、副作用の報告は1件もありません」(若林先生)
また、ロイテリ菌は、体内で「ロイテリン」という天然の抗菌物質を生成し、虫歯や歯周病菌などの増殖を抑制する効果が期待できるうえ、善玉菌の増加・活性を促進。口腔で働くだけでなく、生きたまま消化管に届いて働くため、バクテリアセラピーに欠かせないものといえる。ロイテリ菌を含むヨーグルトやサプリメントも市販されているので、口腔ケアに上手に活用したい。
この冬は「プロケア」「セルフケア」「バクテリアセラピー」の三種の神器で口腔環境を整え、しっかりと感染症に備えよう。
(ライター 籔 智子)
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