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連載・伊藤詩織「ネットにあふれる、むき出しのヘイト…どう闘うべきか」

プレジデントオンライン / 2020年12月10日 9時15分

2020年9月、川崎駅前にて筆者撮影

■ネットにあふれる、むき出しのヘイトとどう闘うべきか

母親と手を繋ぎ歩いていた10歳くらいの男の子がパッと母親の手をはらい、両耳を塞いだ。連休真っただ中の2020年9月20日、JR川崎駅前は日の丸を掲げ、ヘイトスピーチを繰り返すレイシスト集団、その声をかき消そうとするカウンターデモの参加者、さらにその周りを囲む警察官達で騒然としていた。

川崎市は、全国で初めてヘイトスピーチへの罰則付きの条例が20年7月に施行されたばかりだ。この条例はヘイトと闘ってきた人々にとって大きな「希望の一歩」であった。その一方でヘイトデモやオンラインでのヘイトスピーチは止むことがない。

20年4月、私はNHKの「バリバラ」という番組に出演した。その番組では、川崎市での条例制定に大きく関わり、その一方で自身もヘイトスピーチの被害を受けている在日コリアンの崔江以子(チェ・カンイジャ)さんも一緒だった。川崎の多文化交流施設「ふれあい館」で働く崔さんは温かい人柄で、多くの子ども達から「オモニ」(お母さん)「オンニ」(お姉さん)と呼ばれ、親しまれている。しかし番組に出ることに対し崔さんはとても悩んだ。

■更なるヘイトの標的にされてしまうのではないか

「テレビで声をあげることで、自分や周囲が更なるヘイトの標的にされてしまうのではないか……」

それでも崔さんは意を決して番組に出た。そしてネット上の崔さんに対するヘイトは番組出演後、増え続けた。

崔さんはオンライン上の自分に対する1000万件を超える書き込みの中から約300件を川崎市に届け出た。だが、市がヘイトにあたるとしたのは、たった9件だった。オンライン上のヘイトは瞬く間に拡散する、また匿名で簡単に投稿できる。川崎市の取り組みは先進的だが、被害を届け出られる人が限られているなど、救済に繋がるはずの条例が機能しているとはまだ言えない。ドイツではSNS事業者に対して掲載されたヘイトなどの投稿を24時間以内に削除するように求める法律がある。

ヘイトの言葉は暴力的に、人を追い込み、襲う。当事者がその言葉の暴力を受ける前に、国や行政など然るべき組織が、スピード感を持って回避できる対策が必要である。これ以上、ヘイトの言葉を街中で子ども達に聞かせないためにも。

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伊藤 詩織(いとう・しおり)
ジャーナリスト
1989年生まれ。フリーランスとして、エコノミスト、アルジャジーラ、ロイターなど、主に海外メディアで映像ニュースやドキュメンタリーを発信し、国際的な賞を複数受賞。著者『BlackBox』(文藝春秋)が第7回自由報道協会賞大賞を受賞した。

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(ジャーナリスト 伊藤 詩織)

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