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40歳以上は「目にプシュッ」だけでは最大の失明リスクを回避できない

プレジデントオンライン / 2020年12月24日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/peakSTOCK

■人ごとではいられない40歳以上の失明リスク

人は情報の約8割を視覚を通して得ているといわれるが、あなたは大切な「目の点検」をしているだろうか。年とともに失明につながる病気の発症リスクが高まることを知っておきたい。

失明原因第1位の「緑内障」は、40歳以上の5%、20人に1人が発病するといわれる。眼圧(目の内圧)などの影響で視神経の障害が進み、見えにくさが出てくる病気だ。ゆっくりと視野が欠けていくため、見え方の異常に気づきにくく、また1度欠けてしまった視野は元には戻らない。東京女子医科大学眼科教授の飯田知弘医師はこう話す。

「実際には見えていなくても、脳がもう一方の目からの情報により、見えない視野の部分を補正して1つの像としてきれいに見せます。たとえ両目で緑内障を発症しても異常に気づかないほど。黒い影ができて欠けるというより、ぼやけて見えることが多く、老眼などと勘違いすることもありますね」

緑内障は発症に対して進行を遅らせることしかできない。そのため早く見つけて治療を始めることが大切になるが、健康診断などでよく行われる、目にプシュッと空気を吹き付けて目の内圧を測定する「眼圧検査」だけでは発見が難しいという。

「日本人の緑内障には眼圧が正常なタイプが多いので、眼圧の数値だけでは診断できません。緑内障をはじめ年とともに生じてくる異常の発見のために、40歳以上の人は1年に1回、『眼底検査』を行いましょう」(飯田医師)

■眼底検査を行ってこそ、失明を防ぐ最大のリスク回避

眼底検査とは、瞳孔を広げる散瞳薬を点眼し、目に光を当てて眼球の奥にある網膜や視神経の状態などを調べる方法。失明など深刻な状態につながる恐れのある病気は、角膜や水晶体などの目の表面に近い場所よりも、網膜や視神経など目の奥に生じるケースが多いため、眼圧検査だけでなく眼底検査を行ってこそ、失明を防ぐ最大のリスク回避になるのだ。

ほかにも年齢が上がるにつれて増加する目の病気に「加齢黄斑変性」がある。加齢や喫煙、偏食、動脈硬化などが原因とされ、“目の生活習慣病”ともいわれる。近年、食生活の欧米化に伴い、国内で患者数が増加していて、予備群も含めると700万人、50歳以上の60人に1人の有病率とされる。

物を見るときに重要な網膜の中央(黄斑)が障害されるため、物がゆがんで見える、視野の中心が暗くなる、欠けるなどの症状が現れるのが特徴だ。片目ずつ進行するために自覚症状が出づらく、発見が遅れることも多い。進行すると見えない部分が広がっていき、最悪の場合失明する。

「日本人で発症するのは50代以上の男性が圧倒的に多い」と飯田医師。

「白人の場合は女性が多く、人種により違いがある病気なのです。進行が早い“滲出(しんしゅつ)型”と、わりと進行がゆっくりな“萎縮型”という2つのタイプがあり、日本人に多いのは滲出型。注射や薬、レーザーなどによる積極的な治療が求められますが、緑内障と同様に、失った視力を元に戻す根本的な治療法はありません」(同)

50歳を過ぎたら時々片目を隠して、方眼紙などの格子状のもので見え方をチェックしよう。黄斑部分の異常を調べる図を掲載した。

「加齢黄斑変性」チェックシート

また予防にはサプリメントも有効だ。

「抗酸化作用のあるルテインやビタミンC、Eを含むサプリメントを服用すると、予備群が加齢黄斑変性に移行するリスクを下げることが明らかになっています。米国の研究報告では約25%も進行が抑えられている。私も10年前から愛飲しています」(同)

もちろん抗酸化作用のある緑黄色野菜を積極的に摂取するなど、食事にも気を配ろう。反対に活性酸素を発生させる「喫煙」は、大きなリスク要因。病気を発症させない、進行を防ぐためには禁煙がベストと知っておきたい。

ちなみに糖尿病の人は、加齢黄斑変性以外にも「糖尿病網膜症」に気をつけよう。実は緑内障などと同様に主要な失明原因でもあり、糖尿病の症状が重い人ほど、また発病してからの期間が長い人ほど糖尿病網膜症が見られるという報告がある。糖尿病を患う人は血糖コントロールをして動脈硬化の進行を食い止めるとともに、眼科への受診も欠かせない。

■目の疲れ対策はほんの1秒の意識から

「失明する病気」の範囲には入らなくても、目の疲れが慢性的であったり、目が乾く「ドライアイ」の症状に悩む人も多いだろう。目の慢性疲労に詳しい梶田眼科院長の梶田雅義医師によると「スマートフォンが普及してから目の疲れを訴える人が急増した」という。さらに2020年は新型コロナ感染症拡大防止のための外出自粛によっても眼精疲労を訴える人が多くなったという。

「視力が良い=良い目ではありません。これだけ近くを見ることが多い現代社会では、遠くだけに焦点を合わせるために作られたコンタクトや眼鏡は“過矯正”になりやすいのです。つまりよく見えすぎるということ。近いところを凝視したままピント調節機能を使わないために、筋肉がこり固まり、疲れ目を引き起こすのです」(梶田医師)

梶田医師が症状改善のために強く勧める方法は2つある。1つは、時々数メートル先に目の焦点を移すこと。

「目の周りの筋肉を動かすことで、疲れ方が変わります。目を酷使する作業を50分続けたら10分の休憩を、とよく言われますが、そんなに休息時間を持てない人のほうが多いでしょう。10分間に1秒でいいので、ごく近くのものを見ていたところから、2~3メートル先に目の焦点を移すようにしましょう」(同)

もう1つの対策は、ピント調節機能が低下してくる30代半ば以降に、遠近両用のコンタクトレンズや眼鏡を使うこと、という。

「遠近両用というと、手元が見えづらくなる老眼の人に向けたものと思いがちですが、そうではありません。たとえると電動アシスト自転車のようなもの。遠近両用では人と話す1メートルくらいの距離が最も見やすいように設定され、目の機能を支えます」(同)

コストは眼鏡の場合は一概に言えないが、コンタクトは通常の単一焦点のものより2割増しとのこと。

また、目の乾きが気になるときは、電子レンジで数10秒、人肌程度に温めた蒸しタオルで目を温めるのも効果的。

「温めることでまぶたにあるマイボーム腺の出口のつまりが軽減し、脂が出やすくなります。マイボーム腺の状態が悪いと、涙の蒸発を防いでいる脂の層がうまく作られずドライアイになります」(飯田医師)

目の表面が乾燥するドライアイや眼精疲労をあなどっていると、視力低下を招く重大な病気を見逃すことも。

“危険な芽”は早めに摘み取り、快適に楽に「見える目」を維持しよう。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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