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天才投資家が断言する20年後に20倍になる日本株銘柄

プレジデントオンライン / 2020年12月22日 9時15分

複眼経済塾株式会社取締役・塾頭 エミン・ユルマズ氏

米中新冷戦の時代、日経平均は30万円になる!? 荒唐無稽にも聞こえる予想を立てるのは、近著が発売後即売り切れになった今注目のエコノミスト、エミン・ユルマズ氏。米中対立の激化を早期から提言していた天才トルコ人が、日本株に対して楽観論を持つ理由とは――。

■リーマン・ショックで人生が変わった!?

私がトルコから日本に来たのは1997年。大学進学のためでした。16歳のときに国際生物学オリンピックで優勝して、海外留学の奨学金を受けられることになり、留学先を検討。その頃、トルコの学生の主な留学先は欧米で、日本に留学する人はいなかった。私は、スーパーマリオなどの日本のゲームやアニメに親しんで育った世代で、日本には親近感を持っていました。しかし、当時、世界第2位の経済大国だった日本の情報はトルコでは少なく、留学によって学べることが必ずあるはずだと考え、日本への留学を決めたのです。

東京大学に入学し、大学院を修了したあと、野村證券に入社しました。金融業界は、いろいろな人と触れ合えるところに興味を持ちました。金融は日々変化して生き物のようだし、お金は血液と同じで、必要なところに流れないとそこが死んでしまいます。金融は、社会のなかで必要なところにお金を回して経済という生命体を生かしているものだと考えると、私が学んだ生物学とそれほどかけ離れているわけではないと思っています。

野村證券に入社して3年目の2008年にリーマン・ショックが訪れます。100年に1度の経済危機が就職後3年目で起きるなんて、「勘弁してよ」と思いましたね。自分の人生設計では、日本企業の数少ないグローバル人材として、中東やヨーロッパに赴任して日本の証券会社の海外営業というポジションでバリバリ働く予定でした。

しかし、リーマン・ショックが起こり、野村證券はリーマン・ブラザーズのヨーロッパ、アジア、中東の部門を全部買収。そうすると、すでに現地にはグローバル人材があふれていて、私が行く必要がなくなってしまった(笑)。それで、機関投資家向けの日本株営業担当として、日本で働き続けました。今思えば、それが日本株の研究をするきっかけにもなっています。

■2013年に始まった日本株の上昇サイクル

日本の株式市場のサイクルは、約40年間の上昇と約23年間の調整からなっていて、1878年の東京株式取引所開設と、終戦に伴い停止していた株式取引が1949年の東京証券取引所で再開したのを起点に2度起きています。サイクル論から考えると、1989年12月の日経平均最高値から23年7カ月続いた調整期間が過ぎ、2013年7月に東京証券取引所と大阪証券取引所が統合され、ここから約40年、2053年までは上昇トレンドが続くと予測しています。

さらに、過去2回の上昇サイクルの40年間には、それぞれ株価が297倍、225倍になっています。戦後初期には株価が極端に安値だったことなどを考慮して、1966年から1986年の20年で見ても、株価は約25倍になっています。2013年後半につけた日経平均株価の1万5000円が、20年で20倍になるとすると30万円、25倍になるとすると37万5000円になると計算できます。このことから、私は令和時代に日経平均が30万円になると予測しているのです。

日本株には長期上昇の周期がある

今の日本株の長期上昇サイクルが始まった2013年は、地政学的に見ると新しい冷戦が始まった年です。

私は以前から、日本のバブルが崩壊した背景には、米ソ冷戦の終結が大きな要因の1つになっていると主張しています。冷戦終結によって、それまでグローバル資本が入れなかった中国、ソ連、東欧諸国に投資ができるようになりました。そういった国々は、ポテンシャルも資源もあるのに経済発展が非常に遅れていて、成長が期待できます。当然、グローバル資本は、成熟した日本市場からそちらに流れ、日本のバブルが崩壊したのだと考えています。

その流れが変わったのが2013年です。シリアの内戦が激化し、2014年にはウクライナ危機が始まりました。東西の対立が再開したのです。この「新しい冷戦」では、米中が激しく衝突しています。米ソ冷戦のときは大西洋をはさんだ対立でしたが、米中新冷戦は太平洋をはさんだ対立です。だから、日本は地理的にも非常に重要なポジションを占めることになります。

中国が成熟しきっておいしいところがなくなったうえにアメリカと対立するようになった。今度は、中国から引き揚げたグローバル資本が日本に流れてくることになります。これも日本株の長期上昇サイクルを後押しする要因だと考えています。

また、米中対立のなかで、香港は事実上中国に統一されて、アジアの金融ハブとしての役割を担うことができなくなりました。香港の代わりの候補は日本とシンガポールしかありません。私は、そうなったときには日本がアジアの金融ハブになる可能性が高いと思っています。

■日本人気と合致する日本株の上昇サイクル

日本株はただ割安だというだけではなく、クオリティが高いのが魅力です。「バリュー株」というと「割安株」と理解されますが、クオリティを伴っているから投資対象として評価されるのです。19世紀後半にヨーロッパを中心に、日本の浮世絵や陶磁器、生活様式や美意識などが注目された「ジャポニズム」が流行したことがありました。そして、この日本人気の時期と日本の株価の上昇サイクルは一致しています。最近また、世界的な日本人気が高まり始めています。今度はマンガやゲームなどの日本文化が注目され、日本のソフトパワーが勢いを増しています。私はこれを「ネオ・ジャポニズム」ととらえていて、「新しい日本人気」「ジャポニズムの再来」に伴って、日本株の人気も高まると見ています。

また、今回のコロナ禍で「安心・安全・安定」という日本の魅力が評価されるようになるでしょう。これまでは「グロース=成長」が世界的なテーマで、そのためには環境や国民の生活など、いろいろなものを犠牲にしてきたという流れがあります。

しかし、これからは成長にこだわらずに環境や社会を守ろうという価値観に変化していきます。日本の強みである「安心・安全・安定」は世界的なテーマになっていくでしょう。日本は、個々人の衛生意識=パーソナルハイジーンが極めて高く、人々はルールを守り、秩序を保って動きます。そして、世界最高のインフラを持っていることを考えると、実は世界でいちばん生活しやすい国の1つじゃないかと思っています。

そのことは、世界第1位の平均寿命からも明らかです。最近は人生100年時代が当たり前に語られますが、そこまで長生きできるのは生活の質が高いから。食文化、生活スタイル、やさしい国民性など、いろいろなところが日本の再評価につながっています。

■4つのテーマに注目、これから上がる日本株

今後、上昇が期待できる日本株のテーマは、大きく4つに分けられます。

ユルマズ氏が教える中長期投資4つのチャンス

まず、米中対立で恩恵を受ける業界。米中対立の激化とともに、日本企業のビジネスが増加します。5Gやその先の6Gの開発も進むIT・通信関連でNTT、NECなどが注目です。また、防衛産業も期待できます。ジェットエンジンなどの開発技術を持つ企業は世界的にも限られています。

そういった観点では、重工業系の三菱重工、川崎重工、IHIなどが挙げられます。さらに、戦後の財閥解体から約70年を経て企業名が元に戻った日本製鉄にも注目。やっと日本の敗戦処理が終わり、元の日本に戻った象徴のような出来事です。日本製鉄株は底値からの反転が始まったところ。日本株全体も上昇トレンドに乗り、さらに上がっていく時代に入ったと言えるでしょう。

続いて、コロナで一時的に業績が悪化しているけれども、回復が期待できる銘柄。コロナで大きく売られている日本の航空関連のJAL、ANAなども、日本がこれからアジアの金融ハブ、貿易ハブになっていくだろうという流れを考えると注目されます。Go Toキャンペーンの盛り上がりを見れば、今後はコロナで落ち込んだレジャー・観光関連株も景気が戻ってくるでしょう。JR東日本やラウンドワン、野外レジャーの再評価で追い風を受けるアルペンなどが挙げられます。

自分が事業内容をよく知っていて、「ここのサービスはいいな」「ここの商品はいいな」と思う会社や、自分が働く会社の関連業界のなかで将来性があると思う会社の株を買うこともいいと思います。日々の暮らしのなかで、必ずいろいろな上場企業とお付き合いがあるはず。ゲーム好きなら任天堂、優待狙いで購入されるオリエンタルランドなどは、消費者視点で「好きだから」と保有する人が多い銘柄です。

最後にニューノーマル時代に成長しそうな中小型株にも注目です。コロナの恩恵を受けて成長する「順張り銘柄」では、日本人の医療データを持つメディカル・データ・ビジョン、セキュリティ関連のデジタルアーツなどが挙げられます。コロナ後に回復していくであろう「逆張り銘柄」では、日本金属、NKKスイッチズ、ペガサスミシン製造といった、技術力を持った日本のメーカーに期待しています。

■現金の価値は下がる、長期の運用で備えよ

ここまでの話を踏まえると、老後資金の運用にも日本株がおすすめです。これまでのデフレの状況では、「キャッシュ・イズ・キング」で現預金を持っていればよかったんですが、今はお金が刷られすぎていて、これからは世界的な資産インフレが起きることが予想されます。現金の価値が目減りしていく時代に入るのなら、資産を現金で持っていてはダメ。やっぱり株で運用するしかないと思いますよ。

発売後、すぐに重版がかかったユルマズ氏の『コロナ後の世界経済』(集英社)でも、お薦め銘柄を紹介している。
発売後、すぐに重版がかかったユルマズ氏の『コロナ後の世界経済』(集英社)でも、お薦め銘柄を紹介している。

日経225やTOPIXのインデックスファンド、あるいはETF(上場投資信託)でもいいですが、できれば個別株投資を検討してみてください。自分がよく知っていて評価できる会社の株を買っておくだけでいいんです。短期的に一獲千金を狙う人は99%失敗しますが、今の仕事は続けて老後のためにちょっとバッファが欲しいという気持ちで余裕を持ってやれば、失敗は少ないと思います。

お金っていうのはネコみたいなものなんですよ。追いかければ逃げる。じっとすると向こうから寄ってくるから、余裕を持って、ちょっとじっとする時間を取りながら運用しましょう。少なくとも2~3年は持つつもりで買って、今すぐ上がらなくてもいいという感覚で持ち続ける。ポイントは、株価の上下で一喜一憂しないこと。特に株価が下がったときは、上がったときよりもエモーショナルインパクトが強いので、疲れてしまいます。

日本株の上昇トレンドに乗って長期運用すれば、それなりのお金になっていると思います。

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エミン・ユルマズ(Emin Yurumazu)
複眼経済塾株式会社取締役・塾頭
1997年、留学のためトルコより来日。東京大学大学院を修了後、野村證券に入社。2016年より現職。近著に『コロナ後の世界経済』(集英社)などがある。

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(複眼経済塾株式会社取締役・塾頭 エミン・ユルマズ 構成=生島典子 撮影=金城匡宗 図版作成=大橋昭一 写真=読売新聞/AFLO、AFLO)

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