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「会社が潰れるなら死ぬしかない」世間の多くの社長がそう考えてしまう根本原因

プレジデントオンライン / 2020年12月5日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

新型コロナウイルスの影響で会社が傾いたとき、「会社が潰れるなら死ぬしかない」と思い詰めてしまう経営者がいる。そうやって苦しむのは、会社を「自分のもの」として捉え、自分の成功と重ね合わせて会社の行く末を見てしまうからかもしれない——。

※本稿は、ナミ・バーデン、河合克仁、クリシャナラジ『世界のエリートが実践する心を磨く11のレッスン』(サンガ)の一部を再編集したものです。

■心の根底にある「エゴセルフ」

人はもともと「柵を作る」という行動をします。「柵」と例えても「壁」と例えてもいいのですが、この「柵を作る」という行動は、人間が本来持っている習慣であり、外敵から身を守るために行う行動です。広い野原でテントもなしに野宿するのと、柵や壁を作って家の中で眠るのとでは、安心感が違います。

この「柵を作る」という行動は、生物学的に身を守るという一面もあるのですが、実は同時に私たちのマインドに存在する「エゴセルフ」が働きかけている側面もあります。

「エゴセルフ」とは、自分の「理想像」や「アイデンティティー」とも言えるもので、分け隔てる性質をもっており、これがあると他人と心からつながりません。すなわちこの状態では、無意識の間に「エゴセルフ」が物事を「自分のもの」という柵で囲っているのです。

例えば、自分の子供のことを「自分のもの」として無意識のまま柵で囲っているとどうなるでしょうか。自分の子供がいじめられているのを見ると、非常に苦しく、つらく感じることでしょう。しかし、他人の子供が同じようにいじめられているのを見ても、それほど苦しい気持ちは感じないのではないでしょうか。

また、自分のパートナー(妻、夫、彼女、彼)のことを無意識のまま「自分のもの」と柵で囲っていたならどうでしょうか。パートナーが異性と仲良く話して楽しそうにしているのを見ると、ジェラシーを感じることでしょう。

「私のパートナーなんだから、○○しないでほしい。私のパートナーなんだから、○○してほしい」。このように「私のものなんだから」と束縛して相手をコントロールしようとするのも、心の根底にある「エゴセルフ」の仕業です。

■「会社=自分」という発想は経営者を追いつめる

「自分のもの」と柵で囲うのは悪いことではありません。コンシャスネスの授業では「良い」「悪い」という概念はないからです。コンシャスネスを学ぶ上で大切なことは、自分がそれを意識しているかどうかです。自分が「あれ、今僕は『自分のもの』としていないかな?」と気づくことが大切なのです。

例えば、ある経営者が自分が立ち上げた会社のことを「自分のもの」として扱っている場合を見てみましょう。普段は「自分のもの」とすることで、真剣に会社の成長を願い、より良い企業にするべく努力することができ、何も問題はないように思われます。

しかし、もし経営者自身が会社に自分のアイデンティティーを投影していたとすると、どんなことが起きるでしょうか。

「会社=自分」となることで、会社のパフォーマンスが自分のアイデンティティーと重なり、利益が落ち込んだり、会社に悪い評判が立ったりした瞬間、自分の心の状態は「苦悩の状態」になってしまいます。

ビジネスをしていれば、自分でコントロールのできない状況に陥ることは多々あります。

例えば新型コロナウイルスの影響で金銭的損害を被った場合、会社を自分のものとして捉えている経営者は、自分の成功と重ね合わせて会社の行く末を見てしまうため、非常に苦しい思いを強いられることとなります。

ストレスのたまったビジネスマン
写真=iStock.com/THEPALMER
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/THEPALMER

■「自分のもの」だと捉えるから苦しくなる

誰かが会社を辛口で批評したときも、非常に苦しい思いをします。「会社=自分」となると、自分のアイデンティティーを守ることに必死になってしまい、必要以上の苦悩の感情に左右されながら、本来会社を存続させるために必要であるはずの大きな決断ですらできなくなってしまうのです。

この状況から抜け出すには「会社=自分」というように自分のアイデンティティーを投影していないかどうか気づくことです。これに気づくことで、それが自分にとって健全なことなのかどうかを自分で判断することができ、自分で決断をしていくことができます。

外敵から身を守るために柵を作るのは、人間が本来持っている習慣の1つです。柵を作ると同時にエゴセルフがそれを「自分のもの」としていないかどうか、意識的に気づいていくことが大切です。

「自分のもの」と柵で囲ってしまうと、苦悩に陥りやすくなることを、ぜひ覚えておいてください。

■「恩着せがましい人」にならないためには

ここでインドのヒューマン・コンシャスネス哲学の講師であるジャギー・シン先生から学んだ1つのお話を紹介します。

あるところに大きな川があり、その川岸でグルー(GURU)が岩に座っていました。グルーとはインドでは精神哲学を教える先生のことです。ある日、1人の旅人が通りかかり、川を渡りたいと思いました。旅人は川岸にいたグルーに、川の渡り方を尋ねました。するとグルーは「ボートを使えば川を渡ることができる」と教え、わざわざ旅人をボートに乗せて、向こう岸まで漕いであげました。無事に向こう岸へ渡ることのできた旅人はお礼を述べて、旅路を急ぎました。

さて、グルーは、旅人についていったでしょうか?

いいえ、グルーはまた船を漕いで元の川岸に戻り、いつもの石の上に座りました。彼の仕事は川の渡り方を教えるだけです。

そして、それを手助けするだけです。旅人にいつまでもついていき、自分の恩を忘れないようにしつこくまとわりついたりはしません。ただ川のこちら側で相手の旅路の安全を祈り、旅人の成長を喜んであげるだけです、恩着せがましく「僕が世話をしてやったんだから、一生僕の恩を忘れるなよ」と、旅人についていってはいけないということなのです。

この恩着せがましさは、「エゴセルフ」の仕業であり、それに気づくことで、また一歩コンシャスリーダーへ近づくことができるのです。

自分がもし川岸のグルーだとしたら、自分は川のこちら側にいることを徹底し、そこから知人の活躍を応援するだけでいいのです。

もしこの旅人がコンシャスネスの勉強を始めているのであれば、恩着せがましくまとわりつかなくても、おそらく旅人の心の中に温かな感謝の気持ちが永く抱かれ続けるものだと理解できるでしょう。

■「知識」ではなく「知恵」をつけるべき

先ほどのグルーのお話には、もう1つ大切な教えが含まれています。助けられた旅人のほうでも気をつけなければいけないことがあります。やみくもにグルーのことを信じて、いつまでもグルーに答えを求めて川岸に残るのではなく、自分自身で自分の人生を歩んでいくスタンスを失わないということです。

グルーは川の渡り方は教えられても、あなたの人生に必要なすべての知恵を与えてくれたりはしません。ひとりひとりが自分にとって必要な知恵をあらゆることから学び、気づき、悟り、そして生きていくのが、「それぞれが人生を生きる」ということです。

やみくもに1人の先生についていって、先生の言うことを「信じる」のは、コンシャスネスの学びではありません。

「信じる」という言葉は英語でBELIEVEと書きます。そのスペルにはLIE(嘘)という文字が含まれています。つまり、もしかしかたらLIE(嘘)かもしれないことを、信じてはいけない、ということです。

先人が言ったことをむやみに「信じる」のは、ただマインドのみで覚えていて、そのまま伝えているにすぎません。マインドで覚えただけの言葉は知識(KNOWLEDGE)にはなりますが、知恵(WISDOM)ではありません。

■まずは「疑い」そして「気づく」

「信じる」のではなく、まずは「疑う」こと。先人が言ったことが本当であるかどうか、まずは「疑い」、自分の経験と照らし合わせてください。

ナミ・バーデン、河合克仁、クリシャナラジ『世界のエリートが実践する心を磨く11のレッスン』(サンガ)
ナミ・バーデン、河合克仁、クリシャナラジ『世界のエリートが実践する心を磨く11のレッスン』(サンガ)

すると、そこで初めて自分の中に気づきを得ることができます。一度気づきを得られれば、それは一生忘れることはありません。

頭(マインド)だけで覚えた知識はすぐに忘れることもありますが、一度自分の経験として得られた気づきは一生自分の知恵として残り、自分の経験を基に他人に分かりやすく伝えることができるのです。

もしあなたが、誰かに何かを伝えるという立場になったとき、マインドだけで覚えた知識をそのまま機械的に伝えるのではなく、まずは自分の心の中に落として気づきを得て、自分の経験を通して気づいたことを基に、知恵を教えるということが大切です。

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ナミ・バーデン(Nami Barden)
マインドフルネスビジネスコーチ
フォートルイス大学卒。外資系企業で勤務したのち、ハワイのリテール企業に就職。結婚と出産を経て、夫の投資系会社と不動産系会社の業務を手伝う傍ら、2015年から2018年まで数回にわたりインドのチェンナイにてメディテーション&コンシャスネスの学びを習得。コンシャスネス講師&カウンセラーとして活動を始める。現在は「意識的(コンシャス)に生きる方法」を広めるべく、世界中のクライアントを対象にセミナーや著作活動、個人カウンセリングを行っている。共著に『世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業』(すばる舎)『世界のエリートが実践する心を磨く11のレッスン』(サンガ)などがある。

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河合 克仁(かわい・かつひと)
教育コンサルタント
1982年生まれ。愛知県豊橋市出身。筑波大学卒業後、人材教育コンサルティング会社へ就職。2014年に独立し、2015年にアクティビスタを設立。”みらいをつくるきょういく”をテーマに、人材採用と育成支援というテーマで、子供から経営者まで幅広い層を対象にした事業を展開。現在、筑波大学にて、キャリアデザイン担当の非常勤講師、内閣府、地方創生推進事務局拝命の地域活性化伝道師も務める。共著に『世界中の億万長者がたどりつく「心」の授業』(すばる舎)『世界のエリートが実践する心を磨く11のレッスン』(サンガ)などがある。

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クリシャナラジ(Krishnaraj)
メディテーションコーチ
インド生まれ。トーマス・エジソン州立大学卒。自身が体験したスピリチュアルな体験をきっかけに、16歳のときに修行僧になることを決意。精神哲学やメディテーションの学びを通し、コンシャスネスの力を開花させることに専念する。その後24年間にわたり、インド国内だけでなく、韓国、イギリス、アイルランド、ブラジル、フィジー共和国、日本、その他ヨーロッパ諸国など、世界各地でメディテーション・リトリートセミナーの講師として活動し、その後独立。現在は心理学の修士課程で研究を続けながら、コンシャスネス・デベロップメントの分野で、メディテーション&インテグラル・ウェルビーイングのエキスパートとして、グローバルに活躍している。

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(マインドフルネスビジネスコーチ ナミ・バーデン、教育コンサルタント 河合 克仁、メディテーションコーチ クリシャナラジ)

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