1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「2021年ワクチン相場を待つ悲惨な結末」下落前に打つべき一手

プレジデントオンライン / 2020年12月5日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/alphaspirit

■楽観視が進む市場

ダウ工業株30種平均が11月25日に史上初めて終値で3万ドルを超え、3万46.24ドルで引けた。また、ナスダック総合指数も25日に終値ベースでの史上最高値を更新。さらに、中小型株のラッセル2000も史上最高値を更新している。

ハイテク株、グロース株、バリュー株が上がっている状態であり、投資家も積極的に株式に資金を投入している様子がうかがえる。新型コロナ感染拡大の中でも株価が上昇している背景には、主要国の財政出動と低金利政策、および資産買い入れが背景にあることは衆目の一致するところであろう。

欧州では新型コロナウイルスの感染第2波が襲い、再びロックダウン(都市封鎖)が実施されるなど、感染拡大の抑制のための政策が導入されている。

将来の経済への影響が懸念されるが、それでも株価が上昇しているのは、最近の市場の関心を集めている新型コロナのワクチン開発の進展があるといえる。これを材料に、投資家の楽観度が強まっているようである。

■「米国株買い」に方針を転じた機関投資家

2019年以降、機関投資家は米国株を売却し、欧州株を買い続けてきたことはあまり知られていない。

その背景には、ポートフォリオにおける米国株の比率が他の株式市場に比べて相対的に上昇したことがある。そのため米国株を売却し、比率が低下した欧州株を買うことを繰り返してきた。四半期ベースでは、19年以降は米国株を売り越し、欧州株は買い越しになっている。

しかし、ワクチンに関する報道を背景に、機関投資家はリスク選好を強め、これまで売却してきた米国株を買い始めている。バンク・オブ・アメリカ(BofA)の調査によると、機関投資家は11月18日までの週に270億ドルを株式ファンドに振り向けたもようである。

■2021年は「ワクチンの年」?

新型コロナウイルスワクチンへの期待を背景に、これまで売られていた銀行や旅行・娯楽関連、原油株が買われている。

BofAによると、直近2週間に世界の株式市場に714億ドルが流入し、過去最高を記録。特に米国や新興国市場への流入が目立ったという。ハイテク株から資金を引き揚げる動きもみられず、直近週に24億ドル流入した。

BofAはこうした動きから「バリュー株に回帰しつつも、ハイテク株は売らない姿勢が見て取れる」という。バリュー株は、ファイザーが開発中のワクチンが臨床試験で好結果が得られたと発表して以降、急騰している。

BofAは21年が「ワクチンの年」になると予想している。バリュー株が成長株を、高利回り債が投資適格債を、新興国株がS&P500を、小型株が大型株を、それぞれアウトパフォームする(上回る)との見方を示した。

■「ワクチンが実際に出回る前」がピークか!?

今回のリスク選好の動きで、金(ゴールド)からは過去最大となる40億ドルが流出した。

金は今年、10年以来の好調なパフォーマンスを示している。BofAは顧客に対し、「ワクチン関連のニュースが出れば売り」を推奨している。

楽観的な見方は実際にワクチンが出回る前に頂点に達するため、クレジット市場や株式市場は今後数カ月以内にピークを付けるという。なかなか興味深い見方である。

■強気に傾きつつある市場関係者

ワクチンが広がることによる安心感は、投資家にとって非常に大きな材料であろう。ワクチンが準備されることで、各国政府はロックダウンを解除し、経済活動を再開するだろう。

その結果、「経済が戻る」というイメージを市場が持つことができれば、株価は堅調さを鮮明にする可能性が高まる。株価は実際に景気がよくなる前に上げていく。株価には先行性があるといわれるが、最近の動きはそれをかなり先取りしているようにみえる。

市場関係者の予想もかなり強気に傾きつつあるようである。約170人のストラテジストを対象に11月12日から24日に実施されたロイター調査によると、世界の株式市場は緩やかながらも少なくとも6カ月間は上昇が継続する見通しである。

過剰流動性や新型コロナウイルスワクチンへの期待によって経済や企業収益が回復するとみられていることを反映している。

ワクチンと注射器
写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MicroStockHub

■すべてはワクチン次第…

世界中を席巻した新型コロナのパンデミックにより経済活動が停止したが、前例のない財政・金融刺激策が打ち出され、資金供給が増大している現状を受け、調査対象者の約75%は強気相場が少なくとも半年続くと回答している。また、強気相場が少なくとも1年間続くと予想した回答者は半数超に上ったという。

欧米では新型コロナ感染第2波が発生しているが、効果的な新型コロナワクチンの開発に期待が寄せられている。今回の調査では回答者の約80%が、自身の見通しは新型コロナワクチンの開発進展に基づいていると答えている。

政府によって課された厳格なロックダウン措置により、企業収益は大きく落ち込んだが、ワクチンによってある程度正常化すると期待されており、企業収益が1年以内に新型コロナ危機前の水準に回復すると予想した回答者は約3分の2に上っている。

■金を売却して株式購入に走る構図

目先は「ワクチン相場」で、投資家がやや舞い上がっている状況であり、それが株価を押し上げている。そして、資産のリスクヘッジ先としてこれまで保有していた「金を売却」してまで、株式の購入に走っている。

このようなことがあると、おおむね株価は調整し、金が買われることになる

市場は学習しないようである。これはリーマン・ショックの際やコロナ危機でもそうだった。それ以外にも頻繁に起きる5%から10%程度の株価の調整場面でも、同じようなことが起きている。それでも、投資家は株価の上昇に焦りを感じ、金を売却してまで株式を購入し、そして株価の調整に見舞われる。

株価の大幅な下落を前に、「やっぱり金を買っておけばよかった」と毎回思うことになるのだが、それでも学習しない。それが市場であり、投資家行動なのであろう。

■目先の株価上昇に踊らされず、現金・金も保有しておくべき

拙著『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)で詳しく解説しているが、これからは株式一辺倒になるのではなく、「株式・金・現金の3分割投資法」をしっかりと実行するべきである。

江守哲『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)
江守哲『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)

実行できていれば、今後も起きると考えられる一定の株価の調整局面でも何も問題なく対処することができる。

金は換金性が高いため、いつでも売ることができる。現在のようにゼロ金利の状況下では、金は現金とほぼ同じである。そして、現金を保有しておけば、下落場面で安い株式を買い増すことができるのである。この点を忘れてはならない。

実際に現金の代わりに金を保有しているヘッジファンドもいると聞く。金はやはり重要な投資先であり、保有しておくべき資産である。いまの株価上昇に踊らされ、高値で買いついてしまうと、最終的に悲惨な結末を迎えるだけである。

----------

江守 哲(えもり・てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役
慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事に入社し、非鉄金属取引に従事。1996年に英国住友商事(現欧州住友商事)に出向しロンドンに駐在。その後、Metallgesellschaft Ltd.、三井物産フューチャーズを経て、2007年7月にアストマックス入社。同社でファンドマネージャーに就任。アストマックス退社後、2015年4月にエモリキャピタルマネジメントを設立。ヘッジファンドを中心とした資産運用や株式・為替・債券・コモディティ市場の情報提供などを事業として展開。

----------

(エモリキャピタルマネジメント株式会社代表取締役 江守 哲)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください