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「近いうちにやってくる株価調整」で資産を増やせる人、後悔する人の決定的な違い

プレジデントオンライン / 2020年12月6日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Zbynek Pospisil

■「先」を見越した株価上昇

ファイザーやモデルナなど製薬企業による新型コロナウイルスのワクチン開発への期待に市場が沸き上がる中、米国の主要株価指数は軒並み史上最高値を更新する動きになっている。

ワクチンが開発が進むことで、経済や我々の日常生活も以前のように戻る可能性が高まるだろう。そうなれば、景気や企業業績が回復し、現在の大幅な株価上昇が肯定されるような局面が来るかもしれない。

今回の新型コロナウイルスの拡大は、想定していなかったことであり、今年3月の株価急落もその意味では想像できなかった事態である。実際には使用可能なワクチンがまだ開発段階であるにもかかわらず、それでも株価は値を戻し、米国の主要株価指数は史上最高値を更新している。投資家というものがいかに「先」を見て動いているか、である。

■激しい上下動は「回復の付き物」

今回の株価の回復基調に乗れなかった投資家も少なくないだろう。しかし、株価はいずれ回復するものである。その間には、かなり激しい上下動がみられることがある

1999年からのドットコム・バブル、2008年のリーマン・ショック、今回のコロナ・ショックなどはその好例である。

資産運用の観点では、過去に起きたショックや株価急落に耐えられるように、常日頃から資金をしっかりと管理しておくことが肝要であり、そのためにはリスク分散が不可欠であることは言うまでもない。

そこで、まず米国株の長期的なサイクルを確認しておきたい。

■米国株は33~34年の上昇サイクルを持つ

米国株にはおおむね33年から34年の上昇サイクルがある。世界恐慌後の1932年から1966年の34年間、1974年から2007年の33年間(2008年としてもよい、その場合には34年間)、そして今回の2009年以降である。

米国株が33年間上昇すれば2042年、34年間上昇すれば2043年までの上昇になる。この頃は、インドが人口動態から経済拡大がピークを付けるタイミングであるといえる。

34年のサイクルでは、17年のサイクルを2回に分けて考える必要がある。過去の米国株の上昇サイクルは、17年間で構成されている。これを2回やると大きな上昇相場になる。いまはその17年サイクルの1回目である。起点を2009年とみれば、2026年頃に終わることになる。もしかすると、もう少し早くなる可能性もある。

後述するように、金相場は2026年から27年にピークを付けることになるため、1回目の株価のピーク後の調整時に金相場がピークを付けに行くことになる。金相場はここでピークアウトするだろう。

その後、株価が調整を経て34年サイクルの後半に当たる2回目の上昇サイクルに入り、2043年まで上昇することになる。

■金価格のパターンは「12年間上げる」

一方、金価格の動向はどうだろうか。金価格は上昇し始めると、12年間上げるというパターンがみられる

ニクソン米大統領が1971年8月15日に金本位制の停止を宣言する前の1968年に、金価格は37.9ドルの安値を付け、その後1980年1月に835ドルを付けるところまで上昇した。当時は第2次オイルショックが起き、米金利が20%を超えるほどのインフレになった。その後、1999年8月に金価格は251.70ドルの安値を付けたが、2011年9月に1920.30ドルの史上最高値を付けるに至った。

安値を付けたのは、欧州の中央銀行が保有していた金の売却を進めたことが背景にある。イングランド銀行(英中銀)が保有金売却を開始し、その後に欧州の主要中銀も売却を開始することを決めた。ただし、野放図に売却すれば金価格が下落することから、年間と5年間の売却量を決めて実施する「ワシントン協定」を締結し、売却を開始した。

その後、この協定は改定されながら継続されたが、結果的にこの協定に基づいた金の売却が金価格を抑制した。

しかし、やがてコモディティバブルが発生し、金価格もそれに乗る形で上昇。リーマン・ショックで一時的に下落したものの、その後の欧州債務危機を契機にリスク回避先として買われ、2011年9月に史上最高値を付けたという経緯がある。このときも短期間で上昇したことから、その後は大幅な調整を強いられた。

■金価格は2027年程度まで上昇する可能性

現在の金価格の上昇トレンドは、2015年12月から始まっている。1045.85ドルの安値を付け、そこから現在まで上昇が続いている。

今年8月には史上最高値の2072.49ドルを付けたが、これもまた上昇ピッチが速すぎたこともあり、その後は徐々に調整色が強まり、直近では1760ドル台まで下落している。

現在の金価格の上昇基調がいつまで続くのかは、過去の上昇トレンドの期間を参考にするとよい。前述の2回の上昇トレンドは、おおむね12年間続いていることが確認できる。この傾向を今回に当てはめると、金価格は2027年程度まで上昇する可能性が想定される。

もちろん、これだけで上昇が続くとは言えないのだが、上昇期間を考えるうえで参考にはなるだろう。

コロナウイルスと金融チャート
写真=iStock.com/4X-image
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/4X-image

■財政収支改善は、金価格にはネガティブ

過去の2回の金価格の上昇の背景は、インフレ率の上昇であり、金融市場の混乱だった。今回の金価格の上昇の背景はどうだろうか。そのヒントは、低金利政策と財政出動にあるだろう。

上記のように、米国は今後も財政出動と金融緩和策を継続するであろう。その結果、景気が回復し、税収が増える可能性がある。そうなると、財政出動の規模が縮小され、財政収支が改善していくことが考えられる。

特に過去2回の民主党政権下では、そのようなことが起きており、ドルが上昇する場面もみられている。この点は、金価格にはネガティブに作用することになる。

■石油需要改善とインフレ率上昇の可能性

一方で、景気が回復すれば、原油価格の回復が想定される。

原油価格はOPEC(石油輸出国機構)や非OPEC加盟国などの石油生産者が集まって構成されるOPECプラスが、原油価格の押し上げを狙って来年も減産を継続するとみられており、供給はある程度抑制されるだろう。

他方、ワクチンが開発され、景気が回復すれば、国際間の人の往来が回復し、ジェット燃料需要の回復が想定される。そうなれば、これまで緩んでいた石油需給が改善し、これが原油相場を押し上げる可能性がある。

そうなると、原油価格との連動性がきわめて高い米国の消費者物価指数は上昇し、インフレ率が上がるだろう。

景気が回復し、市場金利が上昇した場合でも、インフレ率の上昇ペースが早ければ、米国の実質金利は低下し、金利水準が上昇しても金価格は上昇する可能性が高まるだろう。こうなると、ドルがある程度堅調に推移した場合でも、金価格は上値を試すことになる。

■強気の投資家がマーケットに溢れるタイミングが「危ない」

短期的に調整が続いている金価格だが、その背景には投資家がワクチン開発の材料に飛びついて、上昇が続く株式相場に資金を振り向けるために、手放してはならない金を売却しているからである。

現時点で投資家はかなり強気に傾いている。このような時は非常に危ない。

株価は今後も激しく上下動しながらも、長期的には上昇基調を続けるだろう。米国株はまず、2025年から26年ごろまで上昇するだろう。その後、1年から2年程度の調整を経るだろう。このときに、金価格が12年サイクルでピークを付けると考えられる。その後に米国株は再び上昇に転じ、2042年から43年ごろにピークを付けるだろう。

まずは今後5年程度の株価上昇時に、金にも投資しておくと、資産価値の変動を抑制でき、安心して運用を継続することができると考えられる。無論、金投資でキャピタルゲインも得られる可能性がある。

少なめに見積もっても、金は15年12月の安値である1045ドルから5倍程度上昇し、5000ドルに到達すると考えている。ちなみに、前回の金価格上昇時には7倍を超える上昇になっており、その前の1980年の際には22倍になっている。

■「下げが来れば買えばよい」

最近は筆者のコメントをどこかで読んだのかわからないが、米国の著名ヘッジファンドマネージャーも筆者と同じような投資戦略を推奨し始めているようである。

これまでそのようなスタンスを示したことがない著名投資家が、筆者と同じことを言い始めているのである。彼らも金の重要性をようやく理解し始めたようだ。

世界の流れがそのようになってきていることを、よく理解しておくことが肝要である。目先の相場変動に惑わされてはいけない。

このような大局的な値動きのパターンを頭に入れておけば、何も慌てることはない。「下げが来れば買えばよい」との判断になることは自明である。

■10%程度の株式調整局面はピンチではなく、チャンス

資産運用では、大きく下げた時に買わないと、株式投資は収益が出ないそれも大きな下げのほうがなおよい。このような下げを利用して買いを増やしていき、資産を積み上げていくのである。

今回のコロナ・ショックもそうであり、その前のリーマン・ショックもそうだが、このような暴落ともいえる下げ局面で、いかに果敢に攻めて買い向かえるかが、資産を増やすうえで重要なポイントになる。また、10%程度の調整は株式市場では頻繁に到来する。このような調整もまた、資産を増やすうえで重要なタイミングになる。

今回もいずれ近いうちに調整は来る。そのような下げを利用しながら対処するのである。

■金融資産の3割を現金にして備えよ

そのためには、現金が必要である。だからこそ、私は常々「現金を常に金融資産の3割を保有せよ」と言っているのである。

江守哲『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)
江守哲『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)

現金さえ保有しておけば、最後には助かる。そして、株が上がりすぎになれば、その一部を売却して現金化するのである。そうすれば、余裕をもって対処できる。

「米国株は常に上昇する」と無責任なコメントする向きもいるが、それは暴論であり、無責任である。資産運用にはポートフォリオ戦略が不可欠である。強気なコメントしかしないことはあまりに不親切であり、完全ではない。言うまでもなく、ヘッジファンド運用者で自分の資金を入れていないマネージャーの無責任な発言にも要注意である。

金投資や金に関する詳しい解説を知りたい方は、拙著『金を買え 米国株バブル経済終わりの始まり』(プレジデント社)をぜひお読みいただければと思う。今後の世界情勢や米ドルの動向、さらには米中対立の結末や金価格の将来見通しなどを知ることができるだろう。

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江守 哲(えもり・てつ)
エモリキャピタルマネジメント株式会社 代表取締役
1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事に入社し、非鉄金属取引に従事。英国住友商事(現欧州住友商事)に出向し、ロンドンに駐在。Metallgesellschaft Ltd.(ロンドン本社、現JPモルガン)に移籍し、非鉄トレーダーとして活躍。2000年に三井物産フューチャーズに移籍し、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場の分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスに入社。チーフファンドマネージャーに就任し、ヘッジファンド運用を行う。2015年にエモリキャピタルマネジメントを設立。自己資金運用を行う一方、株式・為替・債券・コモディティ市場分析・投資戦略に関するメールマガジンの発行、講演、テレビ・ラジオ出演を行う一方、「EMORI CLUB」を主宰し、個人投資家の会員向けレポートの発行および講義を行っている。2020年10月に、初心者向けFXサイト「エフプロ」の監修者に就任。同年、エモリファンドマネジメント株式会社を設立。著書には『ロンドン金属取引所(LME)入門』(1999年総合法令出版)、『米国株は3倍になる』(2017年ビジネス社)など、共著書には『コモディティ市場と投資戦略』(2014年勁草書房)がある。新刊『金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり』(2020年プレジデント社)が好評発売中。

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(エモリキャピタルマネジメント株式会社 代表取締役 江守 哲)

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