産業医が伝授「自己肯定感」がダダ下がったときに効く、自分への質問5つ
プレジデントオンライン / 2020年12月7日 8時15分
■「質問」の意外な効用
実は「自分に質問する」のは非常に大事なことです。なぜかというと質問することで、今まで意識を向けていなかったところに、意識を向けるきっかけになるからです。
特に自己肯定感を高めるためには、意識を自分に向けて、より自分を知ることが重要になってきます。ここでは、そのための質問を5つご紹介しましょう。
■①自分の価値基準は何か
自己肯定感が低いときは、何かを人に与えたり仕事で成果を上げたりするなど、とにかく何かをしていないと、自分は価値のない存在だと思いがちです。
当然ながら、人は何かしているから価値があるわけではありません。大切なのは、人に認められることに価値を置くのではなく、自分は自分のままでいいと思える価値基準を持つことです。
今はSNSなどで人と比べやすくなっているため、周りの友人と比べて「いいね」の数が少ない、あるいは友人からフォローをはずされた、そういったことが自分の価値とリンクしがちです。しかしそこは、かなり注意が必要です。
友人の投稿が自分と合わないなら、それは合わないという判断が正しい。自己肯定感を確認するために、まず自分の価値を決めるものは何なのか、自分に質問してみましょう。相手に合わせることなく、素直な気持ちを表現できることを一つの価値基準にもちたいものです。そのうえで、その価値基準を大切にしているかどうかを自分に問いかけてみてください。自分の価値基準を改めて自分に言い聞かせることができるでしょう。
■②ポジティブな面に目を向けているか
もし何か苦しいことや辛いことを感じていたとしても、100%ネガティブなことは、それほどありません。その背景には何かしら肯定的なこと、ポジティブなことが隠れています。
僕が診ている患者さんの中には、病気になったことも含めて、人生のドン底を初めて経験したという人がいます。けれどもそのドン底の中で、自分の心と体を大切にしないといけないことに改めて気づいたり、家族の心と体の健康も守っていかないといけないと思えたり、そこで初めて大切なことが見えてきたという人もいます。
自己肯定感が低いときは、どうしてもネガティブな面ばかりを見てしまいますが、何かしらポジティブな面も見つけるように自分を仕向けるのが、この質問です。
■③本当にしたいことは何か
私たちが考えていることは、頭で考えることが多いもの。でも実は頭で考えて出した答えと心で思っていることが違うのは、よくある話。自己肯定感が下がっているときは、こうした自分の本音を無視して、建前を優先していることが多いので注意が必要です。
そういうときこそ、自分の胸に手を当てて、心から求めるものは何かを自問自答してください。「いやしがほしい」「旅行がしたい」など、パッと出てきたイメージやフレーズをメモにとって大切にしましょう。
これは自分が何を大切にしているか、それを叶えるために今後どうしていくかを導く質問なので、今すぐではなく将来のことでOK。よく考えてみれば、人のことばかり優先して、自分がしたい旅行の計画すら立てられないのはおかしな話です。旅行したいなら、なるべく早く計画して、さっさと叶えていこうということです。
■④絶対したくないことは何か
とはいえ、望みを聞かれても、なかなか出てこないこともあります。そういうときは、まず絶対にしたくないことは何かを問いかけてみてください。
絶対にしたくないことがわかったら、それはやらない方向で一日の行動を決めましょう。そうするうちに気づきが得られて、最後にしたいことが見えてきます。
会社員の人に絶対にしたくないことを聞くと、「絶対に残業はしたくない」という答えが返ってくることが多いですね。そうすると「残業は今日はやらない」という方向で進めると、1日が変わってきます。残業をしなければ仕事後に、習い事をしよう、買い物をしよう……と、何かしたいことが出てくるでしょう。
「通勤に1時間以上かけたくない」というのもよくある答え。そうすると今後は、もう少し通いやすいところに引っ越そうといった計画も出てきます。
やりたくないことがわかると、具体的に行動しやすくなるのです。
■⑤わがままを出せているか?
自己肯定感の低いときは「困っている人を助けたい」「もっとやさしく対応してあげたい」という思いが強すぎて、自己犠牲が多くなりがちです。
自己犠牲が当たり前になると、自分の望んでいることを他の人に譲ってしまったり、自分の望んでいないことを引き受けてしまったりすることがあります。
たとえば、この日に有給をとりたかったけど、他の人とかぶったから譲るとか、自分の仕事が手一杯なのに、頼まれたから引き受けてしまうといったこと。
自分の希望を前に出すと、わがままと思われるんじゃないか、自分がそうすると誰かが不幸になるんじゃないか、そういった思い込みが強くなっているのです。
でも自己犠牲を続けていると結果的に、自分の仕事が遅れて周りに迷惑がかかったり、八方美人ととらえられて人間関係がギクシャクしたり、そういったマイナス面も起こります。ですから、わがままを出せているかどうか自分に尋ねて、出せていなければ小さなわがままから言っていきましょう。
たとえば仕事中なら「そこの書類をとってください」「この荷物を持ってもらえませんか」と周りに頼む。誰かとランチに行ったら「今日はこれが食べたいです」「和食にしましょう」と主張してみる。
そういったわがままが出せていることを自分が確認できれば、自己肯定感アップにつながるはずです。
たいてい悩んで自己肯定感が低くなっているときは、自分に向けている意識が「0」になっていますが、自分に質問することで、それが「1」になります。自分への質問は自分に意識を向けることのできる、とても価値のある行動であると知っておいてほしいですね。
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産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務
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(産業医・精神科医 井上 智介 構成=池田純子)
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