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「何を」ではなく「いつ」食べるかという新常識

プレジデントオンライン / 2021年1月12日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fcafotodigital

■“朝カレー”で寝ている内臓を起こす

食欲の秋、旬の食べ物もたくさんあって楽しいシーズンだ。

近年、「食べる時間帯」が注目されていることをご存じだろうか。炭水化物(主食)を制限する糖質制限や、主食を最初に食べないといった食べる順番に加えて、「何時に食べるか」が健康を左右する。同じ食事の内容や量であっても、食べる時間帯によって体に悪影響を及ぼすこともあれば、病気や老化を予防し、栄養素の吸収率や効果を高めることもあるのだ。その分かれ目は、体内リズムに沿うものであるかどうか。

体内リズムに合わせ、「何を」ではなく「いつ」食べるか。この視点から考えた食事法を「時間栄養学」という。

例えば、消化に関わる胃や肝臓、膵臓、腎臓は、それぞれ活発に働く時間帯が異なる。臓器の活動に合った食事をすれば、内臓に負担をかけず、栄養素の吸収や老廃物の排出が促進されるというわけだ。

まずは朝食。朝は脂肪の分解に関わる肝臓が活発に活動する。そのため高カロリー食を食べても、脂肪として溜め込まれにくい。

■一番よくないのは、朝食を取らないこと

管理栄養士の望月理恵子氏は“朝カレー”を勧める。

「一日の始まりである朝は、その後に活動量が上がっていくため、カレーのように油分があってカロリーが高いものを食べても太りにくい。スパイスも入っているので昼にかけて体温が上昇する手助けにもなりますし、野菜も加わってバランスが整います」

ただし塩分を処理する腎臓は、朝よりも夜活発に働くため、高血圧症の人は朝カレーを控えたほうがいいという。

そのように塩分を控えめにしたほうがいい人は、朝はツナサンドを。ツナ缶は主にマグロやカツオなどの魚から製造され、その魚油には脳や血管に対する老化防止力があり、心疾患のリスクを低下させるオメガ3系脂肪酸が豊富に含まれる。この吸収率は朝が高いというのだ。早稲田大学先進理工学部の柴田重信教授はこう話す。

「朝食と夕食に魚油を摂取した場合でどちらが血中濃度が上がるかを比較したところ、朝でした。魚油に含まれるさまざまな効能を、朝に摂取したほうがより強く得られるということです」

一番よくないのは、朝食を取らないこと。これは体に朝の時間を教えないことである。

少し専門的な話になるが、人の体の中のあらゆる細胞には「時計遺伝子」が存在することがわかっている。日中に活動状態となり、夜は自然に眠くなるような1日周期のリズムをつかさどっている。時計遺伝子が中心となり、昼夜に合わせて体温やホルモン分泌など体内環境を変化させる機能を「体内時計」と総称する。

体内時計は放っておくと徐々にずれていく。地球の自転による1日は24時間だが、人間の体内時計はほぼ24時間10分の周期でリズムを刻んでいるためだ。毎日のリセットが欠かせないが、朝に日光を浴びたり、朝食を取ることで体内時計の“ズレ”が直る。一方で光を浴びるのと、朝食を取る時間がバラバラだと、体内リズムの足並みが揃わなくなってしまうのだ。

「例えば朝6時に起きて光だけ浴びて、昼の12時まで何も食べないとすると、体内リズムにズレが生じてしまいます。何時が朝であってもいい、朝食べるから朝食というわけではありません。前日から12時間程度の長い食事の空白があり、光を浴びて食事を取ると、体が『朝だ!』と認識する。1週間の中で、同じ時間に『光と朝食』をセットに生活した日が増えるほど正しいリズムが刻めるようになります」(柴田教授)

■高カロリー食が好きなら昼食で

続いて昼食は、朝食から4時間後、遅くとも6時間以内に取りたい。朝食から3時間経つ頃には体に必要な栄養素の多くが消耗しているという。

「タンパク質を消化する胃は、正午から午後2時に最も働きます。朝食と同様にカロリーが多少高くても大丈夫。さらに夕方に体の代謝が高まるので、そのときのエネルギー源としてもタンパク質を十分取ってください」(望月氏)

三食のポイント

逆にここでかけ蕎麦などのあっさり食で済ませると、夕食量が増えやすく、太る可能性大。がっつり、とんかつ定食などの揚げ物類でも、ステーキでも、昼は好きなものを食べよう。

夕方以降は体が休息モードに入っていくため、夕食は20時までに済ませるのが理想だが、仕事などで難しいこともあるだろう。そんなときは「分食」を意識してほしい、と柴田教授。

「夕食を2回に分けるんです。できれば18時頃までにおにぎりやパンなどの主食(炭水化物)を先に取り、帰宅後に肉や野菜などのおかずを食べるといいでしょう。炭水化物は早くエネルギーになり、仕事や勉強の活力になります。また空腹時が長く続くと血糖値の急上昇や体内時計の乱れにつながります。例えば正午に昼食を取り、夜22時まで何も食べないとなると、絶食時間は10時間。体が夜22時を“朝”と勘違いする可能性もある」

絶食を10~12時間設けて朝食をしっかり食べるのがベスト。そしてできれば夕食より、朝食や昼食の比率が高いことが望ましい。会食や夜遅くまで仕事の日は理想通りにいかなくても、できるときだけ意識してほしい。

また夕食量はゼロにするより、消耗した体に栄養素を補給し、疲れた脳や全身の修復に役立たせるために、少なくともタンパク質の摂取は意識したい。

「良質なタンパク源である納豆は特にお勧めです。納豆には血液をサラサラにするナットウキナーゼという酵素が含まれるので、夕食に取ることで翌朝の血栓予防に。明け方は体内の水分が少なくなって血液凝固系が活発になり、血栓ができやすい。実際に心筋梗塞や脳卒中の発症率が高いのですが、ナットウキナーゼの効果は8時間以上持続することが報告されています」(望月氏)

ヨーグルトも良質なタンパク源。空腹時にヨーグルトに含まれるカルシウムの吸収率が高くなるため、夕食を終えて1~2時間してから食べるといい。就寝後に成長ホルモンが分泌され、筋肉や骨がつくられるが、そのときの材料として役立つという。また夜間に起きる筋肉分解をストップするので、特に高齢者には◎。

夕方以降はアルドステロンという塩分を体に蓄えるホルモンの分泌が低下するため、多少塩分を取っても体外に排出されやすい。

カボチャやさつまいも、栗、山芋など、秋冬の旬の食材は炭水化物を多く含むため、それらは朝昼に食べて効率のよいエネルギーとして活用し、夕食は少々塩分が高めの刺し身、今ならマグロ、ブリ、タラなどをメインに和食を楽しむのもいいかもしれない。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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