年始に始める「新習慣」が、だいたい挫折で終わる根本原因
プレジデントオンライン / 2021年1月1日 11時15分
※本稿は、古川武士『習慣化のプロが教える 幸福感を高める7つの小さな習慣』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■「新しい習慣」をなかなか身につけられないワケ
「いい習慣」を身につけることは簡単ではありません。新しい習慣を身につけるのは非常に難しく、人間とは、いわば「続けられない生き物」なのです。
では、なぜ習慣化は難しいのでしょうか? その答えは、人間には「新しい変化に抵抗し、『いつもどおり』を維持しようとする傾向」があるからです。
人間を含む生き物は、環境の変化などに対して生理状態を一定に保つようにコントロールする働きを持っています。「ホメオスタシス(生体恒常性)」と呼ばれるこの働きにより、わたしたちは周囲の変化から身を守っているのです。
たとえば、このホメオスタシスは体温にも見られます。みなさんの体温は、気温が40度近い猛暑の日も、気温が氷点下となる真冬の日も、ほとんど変わりないですよね。周囲の環境の変化に流されず、みなさんの体は自動的に体温を調節し、それぞれの平熱を維持しようとするのです。
■「変化」は、心にとって「脅威」
また、ホメオスタシスが作用するのは、体内環境に限りません。心にも作用します。
たとえば、もし性格が周囲の影響でどんどん変わっていくとしたらどうなるでしょうか?
朝に社交的な人と会えばその影響を受けて社交的になり、昼に怒りっぽい人に会えば怒りっぽくなり、夜に心配性の人に会えば心配性になる……。なんだかつきあうのも面倒そうですし、そんな人がまっとうな社会生活を営めるとはとても思えません。
体も心も、「いつもどおり」を維持できなければ、わたしたちは変化の波に振りまわされ、多くの問題に直面することになります。人間にとって「いつもどおり」であることは居心地がよく安全で、変化は脅威なのです。
そして、「いつもどおり」を維持しようとするホメオスタシスは、習慣化のプロセスにも作用します。わたしたちは、新しい習慣を身につけるという変化を脅威に感じるために、なかなか習慣化できないのです。
■習慣化を阻害する「心の機能」
わたしは、習慣化に作用するホメオスタシスの働きを、「習慣引力」と呼んでいます。この習慣引力は、いまお伝えした2つの働きを持っています。
1つは、「新しい変化に抵抗する」というもの。身につけようとしている習慣がどんなにいいものだとしても、変化には変わりありません。変化は脅威ですから、わたしたちの脳は一生懸命に抵抗します。そういう意味では、三日坊主を繰り返すことは、脳が正常に働いている証ともいえます。
そして、習慣引力のもう1つの働きが、「『いつもどおり』を維持する」というもの。過度の飲酒や喫煙など、本人がどんなに「やめたい」と思っている悪習慣でも、なかなかやめられないのは、脳がその習慣を「いつもどおり」だと認識しているからです。
習慣引力が持つこれらの働きを思えば、「新しい習慣を身につけるのは難しい」ことがよくわかっていただけると思います。
でも、見方を変えれば、「習慣引力があるからこそ習慣化できる」ともいえるのです。身につけたい習慣を一度「いつもどおり」に組み込むことさえできれば、その後は特別な努力など必要なく習慣を維持することができます。それが「いつもどおり」のことになったからです。
■「複数の習慣を一度に身につけようとする」から続けられない
新しい習慣を身につけるのが難しいことの要因は、「習慣引力」の働きだけではありません。「複数の習慣を一度に身につけようとする」ことも、習慣化を難しくさせている要因の1つです。
複数の習慣を一度に身につけようとした場合、その習慣化の難易度は、「成功しにくい」といったレベルではありません。多くの人の習慣化をお手伝いしてきたわたしの経験からいえば、「無謀」という言い方をしてもいいでしょう。
でも、多くの人は、つい複数の習慣を同時に身につけようとしがちです。
■「やる気」が習慣化の邪魔をする
みなさんが新しい習慣を身につけようとしているときは、どんな気持ちになっているでしょうか? おそらく、「やる気満々で張り切っている」という人がほとんどであるはずです。
わざわざ新しい習慣を身につけようとしているのですから、「このままの自分では駄目だ!」「わたしは変わらないといけない!」「今度こそいい習慣をしっかりと身につけるぞ!」と思っているのですから、やる気満々で張り切っていて当然です。
すると、人間はつい欲張ってしまいます。
たとえば、「出勤前の朝に勉強をする」という習慣を身につけたいという人がいるとします。では、その人は、「出勤前の朝に勉強をする」という習慣だけを身につければいいのでしょうか? その答えは、「NO」です。
そもそも、出勤前の朝に勉強をするには、その勉強時間を確保する必要があります。つまり、「出勤前の朝に勉強をする」という習慣を身につけるためには、「早起きをする」という習慣も同時に身につけなければならないのです。
■複数のアクションを同時に習慣化することはできない
しかも、やる気満々で張り切っている人の場合、それだけで終わらないということもあります。「せっかくだから」と考えるのです。
「せっかく早起きするんだから、勉強だけでなく運動もしよう」「せっかく早起きするんだから、勉強だけでなく掃除もしよう」というふうに、ついつい欲張ってしまうという具合です。
つまり、この場合には、「早起きをする」「出勤前の朝に勉強をする」「出勤前の朝に運動をする」「出勤前の朝に掃除をする」という、じつに4つもの習慣を一度に身につけようとしていることになります。
冷静に考えれば、そんなことが簡単にできるはずはありません。
■習慣化は1つずつ行うこと
きちんと早起きできたとしても、勉強する気にならないこともあるでしょう。
このケースの場合、勉強に加えて運動も掃除もしようとしているわけですから、たとえ勉強する気になっていたとしても、運動や掃除をする気にならないこともありえます。
そして、どれかひとつでもできなければ、「きちんとできなかった……」と思ってしまう。すると、習慣化の天敵である、「どうせ自分にはできない」という「学習性無力感」におちいってしまうリスクも高まっていきます。
「習慣化」の際は、複数の習慣を同時に身につけようとすることなく、興味を持ったものから1つひとつ身につけていくことを心がけてほしいと思います。
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習慣化コンサルタント
習慣化コンサルティング株式会社代表取締役。1977年、大阪府に生まれる。関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。約5万人のビジネスパーソンの育成と1万人以上の個人コンサルティングの経験から「続ける習慣」がもっとも重要なテーマと考え、日本で唯一の習慣化をテーマにしたコンサルティング会社を設立。オリジナルの習慣化理論・技術を基に、個人向けコンサルティング、習慣化講座、企業への行動定着支援の事業を開始。2016年には中国で6000名規模の習慣化講演を行い、本格的に海外進出をはじめる。著書は現在21冊、累計95万部を超え、中国・韓国・台湾・ベトナム・タイなど海外でも広く翻訳され読まれている。
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(習慣化コンサルタント 古川 武士)
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