荻原博子が伝授「コロナ年収2割減」を生き抜くために年末年始にすべきたった1つのこと
プレジデントオンライン / 2020年12月29日 11時15分
※本稿は、荻原博子『やっぱり借金減らして現金増やせ!』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■瀕死の日本経済に襲い掛かったコロナ禍
日本は、高齢化と少子化により市場規模の縮小が続き、同時に雇用の不安定化や、格差の拡大が進んでいます。その結果、外的な衝撃を受け止める体力が低下したところに消費税が10%に増税され、まさに“瀕死の状態”になっていました。
そこに2020年になってダメ押しのように新型コロナウイルス感染症が襲いかかってきたのですから、これはもう、ひとたまりもありません。
すでに新型コロナの影響で、観光業や飲食業などでは甚大な被害が出ていることは言うまでもありませんが、2020年後半に入り、それ以外の業種にも影響が拡大しています。
帝国データバンクの調査によれば、「新型コロナウイルス関連倒産」は、12月4日現在、全国で767社にのぼっています。内訳は「飲食店」、「ホテル・旅館」など、インバウンドの消滅や外出自粛の影響をモロに受ける業種が上位を占めています。
その一方で、「アパレル・雑貨小売店」や「建設・工事業」、「食品卸」など、倒産が広範囲な業種にわたっていることも明らかになりました。
■期待できない国の政策
この影響は、家計にも表れてきています。
業績の悪化から、ボーナスのカットを発表する企業も増えてきましたし、新たな採用を見合わせる企業も続出。リモートワークの浸透で“通勤地獄”から解放された人もいる反面、これまでは当たり前のようにもらえていた残業代が減ったり、余った人員を整理するためにパート社員を契約解除にしたりする例も増えています。
結果、家計収入が大きく落ち込む家庭が少なくありません。
本来、こうした危機的状況のときこそ、頼れるのが国の政策です。ただ、残念ながらそれも期待できそうにありません。だとすれば、自分の身は自分で守らざるをえない。多くの人がそう感じているのではないでしょうか。
そこで求められるものこそ、家計における「レジリエンス向上」です。難しく考える必要はありません。やるべきことは実にシンプルです。
■キャッシュ(現金)が家計の生命線
あらゆる無駄を徹底的に削ぎ落とし、筋肉質の家計にする。日々の生活費はもちろん、保険や通信費などの大きな支出は、一度の見直しで大きな効果を得られることが期待できますから、ぜひ取り組んでみてください。
そして、借金がある人はまずはそれを減らす。これから景気が悪くなれば、デフレがさらに進むでしょう。そこで力を発揮するのは、キャッシュ(現金)です。間違っても「収入が減る分、投資で取り返そう」などと考えてはいけません。金融機関は人の弱みにつけ込むことはあっても、救ってくれることはないのです。
一方、国や自治体が用意してくれている援助や支援は、可能な限り利用する。高い税金や社会保険料を払ってきたのですから、ぜひ取り返しましょう。
ただし、こうしたことは誰も教えてくれません。自分で調べて行動するしかないのですが、それが面倒だと思う人も多いはず。
そこで今回、コロナ禍をはじめ、あらゆる不測の事態が起きても倒れない強靱な家計をつくり、みなさんが前向きに暮らしていくための考え方やコツをまとめた『やっぱり借金減らして現金増やせ!』(プレジデント社)を刊行しました。極力シンプルな説明を心がけていますので、ぜひ参考にしてください。
■現役世帯はもちろん、年金世帯も逃れられない…
いまのところ家計をなんとか維持できている人でも、「これから先も安心」とは限りません。新型コロナによる経済への打撃は、最終的にリーマン・ショックを上回るといわれているからです。
あなたの家庭が今後リストラやボーナスカット、給料カットに直面することもないとはいえません。再び自宅での自粛生活ともなれば、食費や光熱費など日常の出費も増えるため、ダブルで家計に負担がかかってしまいます。
こうした家計へのダメージは、高齢世帯も例外ではありません。現在の年金支給額は現役世代の給料と連動しているため、給料が下がれば年金も減額になるのです。
これまでは多少景気が悪くても、現役世代なら妻がパートに出たり、子供がアルバイトをしたりすることでなんとか家計を補うことができましたが、コロナ禍では日本中の景気が悪くなるため、働きたくても仕事自体が見つからないということもありうるのです。
■生活費は現在の8割で暮らすことを目標に
そこで、こうした厳しい状況に備えるために、現在の収入が2割減ったとしてもなんとかしのげる強い家計をつくっておくといいでしょう。
つまり、これから数年間は「家計の収入を増やす」ではなく、「いかに支出を小さくするか」に徹して、家計管理をしていくことが重要なのです。
小さな見直しでも塵も積もれば山となる。たかが1円、されど1円の精神です。たとえば1月1日に1円、1月2日に2円……と毎日節約額を増やしていけば、それだけで1年間に6万6795円も支出を抑えることができるのです。
最終的には現在かかっている生活費を2割カット、つまり現在の8割で暮らすことを目標に家計を細かくチェックしてみてください。
■50歳の時点で負債と資産をプラスマイナスゼロに
また、コロナ禍の経済的な影響は、現役世代の老後資金にも及ぶことは間違いないでしょう。「老後に備えて」といいますが、「まだまだ先」と思っている方も多いのではないでしょうか。しかし、油断していると意外と早くやってくる。それが老後です。
では、どうすればいいのでしょうか。
人生100年といわれる時代ですから、その折り返し地点である50歳の時点で現状の資産をチェックし、これから何をすればいいのかという明確な目標を持ち、対策を立てることで、安心な老後を迎えましょう。生活費を8割にするのと同時にこの点をチェックしてほしいと思います。
結論からいえば、私は、50歳の時点で負債と資産がプラスマイナスゼロになっていれば、老後はまず心配ないと思います。
■コロナ禍の影響が拡大しても変化に柔軟に対応できる家計とは
50歳といえば、子供がようやく社会人になる、というご家庭が増えてくるでしょう。このタイミングまでに、住宅ローンを繰り上げ返済で完済していれば、それまで住宅ローンに支払っていたお金を貯蓄にまわすことができます。
子供が社会人になって養育費や教育費がかからなくなっていたら、その分のお金を貯蓄にまわすことができます。
50歳で、専業主婦だった妻も子育てから解放されていれば、パートなどに出て稼ぐこともできます。つまり、50歳時点で、人生前半の高いハードル(住宅ローン、子育てなど)がなくなっていれば、60歳までのあいだに月10万~20万円くらいは貯金できる。結果、1200万円から2400万円の老後資金ができるのです。
また、今後コロナ禍の経済的影響が拡大していくことがあっても、こうした家計は「レジリエンス」を発揮し、環境変化に対応できる状態になっているはずです。
■「資産の棚卸し」を実行しよう
すでに50歳を過ぎた人でも、コロナ禍の影響は来年以降も広がることが考えられますので、急いでプラスマイナスゼロにするための対策を立てましょう。そのためには、「資産の棚卸し」が有効です。
方法は簡単で、現在のわが家の資産がどうなっているかを調べて、一覧表でまとめるだけ。
具体的には、「預貯金」「株式」「保険」「不動産」「自動車」などの資産、そして「負債」と、項目ごとに、自分が持っているプラスとマイナスの資産を書き出します。住宅ローンや車のローン、カードローンなどのマイナスの資産は、赤ペンなどで書いておくとわかりやすいと思います。
■家計の資産の棚卸しは必ずパートナーと一緒に
一覧表は、ノートでも手近な紙でもかまいませんが、必ず見開きで書くこと。なぜなら、見開きで書いておけば、プラスの資産とマイナスの資産が一目瞭然になるからです。
「まだ住宅ローンがかなり残っているから、これを減らすのに、こちらの低金利の預金を取り崩して繰り上げ返済しよう」「保険が多すぎて、貯金ができていない」「投資商品は多いのに、現金が少なすぎるので現金を増やそう」などと、さまざまな検討がしやすくなるはずです。
この「資産の棚卸し」は、必ず夫婦で行いましょう。夫婦で行うメリットは、それぞれの家計に対する考え方がわかり、家計についての話し合いの土壌が築ける点です。
そして、ここで共通認識ができれば、今後どういう方向で努力していけばいいのか、お互いにはっきりするでしょう。家計のレジリエンス向上を目指して、まずはここからスタートです。
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経済ジャーナリスト
大学卒業後、経済事務所勤務を経て独立。家計経済のパイオニアとして、経済の仕組みを生活に根ざして平易に解説して活躍中。著書多数。
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(経済ジャーナリスト 荻原 博子)
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