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「中学生になっても持たせたくない」弁護士の母が娘のスマホを絶対に買わない理由

プレジデントオンライン / 2020年12月13日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Alina Demidenko

子どもがスマホをほしがったとき、どうすればいいのか。弁護士の上谷さくら氏は「未成年のうちはスマホを持たせないというのは現実的ではない。しかし厳しすぎるぐらい注意しておいたほうがいい。私は小学生の娘とSNSについて3つのルールを決めている」という――。

■LINEの相手は親が知っている人だけ

子どもにスマホをいつから持たせるか、持たせるとしてどんなルール作りをするかは、親にとって悩ましい問題です。本音を言えば、成人するまで持たせたくありませんが、スマホなしでは学生生活が成り立たないという面もあり、そうも言えないでしょう。

そこで、子どもも親も安心してスマホとSNSを使えるように、わが家では小学生の娘との間に3つのルールを設けています。

1つ目のルールは、使用してよいSNSをLINEだけにすることです。ただし、LINEは親が許可した相手に限ることとし、時々内容をチェックする約束です。なお現時点で、私は娘にスマホを持たせておらず、できれば中学生になっても持たせたくありません。今は親のiPadだけ使っていいことにしています。

2つ目のルールは、平日は祖父母のみOKで、友達とのやりとりは土日に限るということです。時間も15分程度としています。

3つ目のルールは、ゲームの「DM通信機能」を一切禁止していることです。娘にはある着せ替えの無料ゲームを許可しています。平日はしない約束ですが、このゲームにあるDM通信機能が曲者で、知らないユーザーとも直接やりとりできるため、これを利用しての被害がたくさんあるからです。

最初は他愛ない話から、「親切な人」「何でも相談できる人」という信用を勝ち得て、裸の写真を撮らせたり、実際に会ってわいせつ行為をしたり誘拐に及んだり、という事件が後を絶ちません。性被害の対処法については、上梓した『おとめ六法』(KADOKAWA)でも詳しく紹介しています。

■DMの送信元は「全員変態のおじさん」と思ったほうがいい

DM通信機能の禁止について娘に話をした際、「メールをしてくるのは、小学生とは限らない。全員変態のおじさんと思ったほうがいい。高校生や大学生のお兄さんでも、変な人はいるし、小学生くらいの子が遊ぶゲームにわざと紛れ込んでいたりするんだよ」と言いました。もちろんこれは極端な意見であり、相当な反発を覚える人も少なくないであろうことは理解しています。

でも、そう言わなければ娘を守れない、というほどの現実があるのです。今、そこまで厳しくしていても、年齢とともに徐々に緩んでくるでしょう。ですから、それなりの年齢になるまでは、厳しくしてもしすぎることはないと思っています。

一度、着せ替えの無料ゲームのDM機能を通じて「こんにちは! 友達申請よろしくね」というメッセージが来ており、それに対して娘が「了解」という返事を送っているのを見つけ、厳しく注意しました。

「この人がどんな人かも分からないよ? いい人ってなんで分かるの?」「変態さんだったらどうするの?」と尋(たず)ねると、「もうしない」と言っていましたが、日頃から厳しく言っていても、やっぱり気軽に返事をしてしまうんだなと思い、私自身も怖くなりました。娘と話し合った結果、今後同じようなことをしたら、「iPad自体を使用禁止」と約束しました。

■後をつけられるかも…「歩きスマホ」の危険

スマホは持たせていませんが、歩きスマホはダメ、ということは今から徹底して教えています。歩きスマホは、加害者にも被害者にもなりやすいからです。

歩きスマホは、視野がスマホに集中しているため、人にぶつかりやすく、非常に危険です。横断歩道でも歩きスマホをしている人をたくさん見かけますが、そこでぶつかってお年寄りを骨折させたりしたら大変なことになります。その人自身が段差に気づかずに転倒する危険性もあります。

歩きスマホをしている人は、ひったくりや性被害に遭いやすいです。背後から来る不審者の雰囲気や物音に気づきにくいからです。特に夜間に歩きスマホをしていると、暗闇の中でスマホの画面がずっと光っているので、遠くからでも分かります。スマホが誘導灯の役割を果たし、犯罪者に自宅を教える結果にもなります。歩きスマホの人を見かける度に、娘にはそのような話をしており、娘も「あの人、歩きスマホだ。ダメだよね」と言うようになりました。

色鮮やかに光る夜道を背景にスマートフォンを操作する女性の手
写真=iStock.com/ipopba
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ipopba

■今後、スマホを買ったら絶対に禁止したいこと

今後、SNSについてのさまざまな危険性と直面することになるでしょう。安易な気持ちで利用すると、どういうことが起こりうるのか、その都度話をしていくしかないと思います。

特に、絶対に禁止したいのは裸や下着姿などで撮影した自画撮りです。いったん送ってしまったら、それがどういう結末を迎えるか。年頃になって彼氏ができて、その人を信用して送ったとしても、その彼が携帯を紛失したり、間違って他の人に送ってしまったりする可能性もあるのです。そもそも、そんな写真を要求する人ってどうなのか? ということも、中学生になった頃から話してみようと思っています。

犯罪被害という面だけからいえば、子どもにSNSは使わせないのが一番だと思います。でも、最近は部活の連絡もLINEで届いたりするので、そうもいかない部分があることも否定できません。今後、成長するにつれて、子どもが納得したうえでルールを決めるようにしたいと思っています。親が一方的に決めても子どもは反発するだけなので、それぞれどのような危険性があるのか親子で勉強し、一緒に考えていきたいと思います。

■ドラマで逮捕された犯人の「その後」を想像する

私は、娘が物心ついた頃から、世の中は善意だけで成り立っているわけではないことを伝えてきました。「大人だから信用していいわけではない」「ダメな大人はたくさんいる」ということです。

そして、悪意だけではなくて、「どんな人でもミスはする」ということも話しています。パパもママも物は失くすし、忘れ物をする、大事なコップを落として割ったりするのは子どもも見て知っています。だから、一瞬の不注意で交通事故が起きたり、火事になったりするんだよ、と。

娘は、刑事ドラマが大好きなので、テレビを見ながら色んな話をします。ドラマだとだいたい、最後に犯人が逮捕されて終わります。「この後、犯人はどうなると思う?」と尋ねると、「刑務所に行く」と娘は答えます。「刑務所から出てきた後は?」と尋ねると「いい人になってる」と。

テレビにリモコンを向け操作する人
写真=iStock.com/oatawa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oatawa

しかし、大人でも勘違いしていますが、服役しても必ず更生できるわけではありません。再犯もとても多いです。そして、刑事ドラマの場合は殺人が多いので、だいたい服役しますが、罪を犯しても裁判にならない事例が圧倒的に多いですし、裁判になっても執行猶予事案のほうが多いのです。

つまり、大半の犯罪者が刑務所には行かないということです。だから、世の中には犯罪者が溢(あふ)れているのです。もちろんきちんと更生している人もいるけれど、そうではない人もたくさんいる。悪い人ほど発覚しないように上手に犯罪を重ねている。だから、気をつけないといけないんだよ、と話しています。

■刑事裁判の傍聴に行き、犯罪者を実際に見てもらう

夏休みの自由研究を兼ねて、娘と一緒に刑事裁判の傍聴に行ったことがあります。

まだ幼いので、凶悪事件や複雑な事件を避け、窃盗や住居侵入、傷害などの罪名を選んで傍聴しました。「被告人」という人がいる現実や、その人が何をやってしまったために裁かれているのか、という事実を目の当たりにして、「本当に犯罪者っているんだな」という実感を持てたようです。

しかも、いい年をした大人が、小学生でも呆れるような罪を犯しているのです。「お金がないからって盗んじゃダメだよねぇ」「大人なのに空き家に勝手に住み着いちゃうってどういうこと?」「殴るとかあり得ないよ」と素直に感想を述べていました。

世の中には、本当にお金がなくて困っている人がいることも伝え、それはそれとして理解したようでした。娘が中学生になったら、性犯罪の傍聴も誘ってみようと思います。

ニュースでは、日々さまざまな犯罪が報道されています。それを見て、なぜ世の中には犯罪者がいるのか、捕まった犯人はその後どうなるのか、実際に自分が犯罪の場面に遭遇したらどうしたらいいのかなどについて親子で話すのは、とてもいい機会ではないでしょうか。

■人を信じることは大事だけれど…

「人を信じなさい」「もし裏切られたとしても、その人を信じたあなたは立派」というのは、美しい言い方かもしれません。しかし、無垢な心理につけ込み、心身ともに未熟な子どもを狙う犯罪が多いのも事実です。

その事実を教えずに、純真な心で無条件に人を信じたことが仇(あだ)となり、犯罪被害に遭ってしまったら、私は後悔してもしきれません。だから、私の教え方は多少乱暴なのかもしれないけれど、今はとにかく娘を犯罪被害から守りたい一心で、色々なことを伝えています。

世の中の全てを疑う必要はありません。気にしすぎると、怖くて外出もできなくなってしまいます。現実を知ったうえで、「正しく恐れる」ことが重要だと思います。子どもは、無条件に守られるべきです。そのためにどうしたらいいのか。これからもずっと考えていきたいと思います。

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上谷 さくら(かみたに・さくら)
弁護士 第一東京弁護士会所属
福岡県出身。青山学院大学法学部卒。毎日新聞記者を経て、2007年弁護士登録。犯罪被害者支援弁護士フォーラム事務次長。第一東京弁護士会犯罪被害者に関する委員会委員。元・青山学院大学法科大学院実務家教員。保護司。

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(弁護士 第一東京弁護士会所属 上谷 さくら)

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