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「軽症者にも後遺症の恐れ」新型コロナと"ただの風邪"との違いがわかってきた

プレジデントオンライン / 2020年12月14日 9時15分

写真撮影=川しまゆうこ

新型コロナと“ただの風邪”はどこが違うのか。順天堂大学医学部の小林弘幸教授は「軽症者でも免疫の暴走が起きて、心肺がダメージを受けるなどの後遺症を負う恐れがある。『重症化しなければただの風邪』というわけではない」という——。

※本稿は、小林弘幸著、玉谷卓也監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■重症者はもちろん、軽症者にもある「後遺症」の恐れ

新型コロナウイルス感染症は、健康でさえあれば――つまり、免疫の働きがきちんと作用していれば――重症化を避けられます。

無用な心配をすることはストレスの観点からも避けるべきです。

しかし、奔放に出かけて人と触れ合い、感染リスクのある行動を取っていい、というわけではありません。あたりまえですが、感染しないのに越したことはないのです。

新型コロナウイルス感染症は「重症化しなければただの風邪」というわけではありません。軽症でも肺炎症状を含んでいますから、当然ながら症状は苦しいはずです。

そして、軽症であっても今後の人生に影響する後遺症を残してしまう可能性があるのです。

後遺症の程度は、感染時に重症であればあるほど重いものとなります。重症者の体内ではサイトカインストームの発生によって免疫細胞が暴走し、心肺に甚大な炎症を引き起こします。死の淵から生還し、ウイルスは排除できたとしても、炎症にともなう器官のダメージはそう簡単には回復しません。

実際に、重症まで至った患者の多くが、その後も長期にわたって入院を必要とし、退院後も息苦しさを感じています。

これは、新型コロナウイルス感染症の特異な症状といえます。インフルエンザでもウイルスの毒性によって肺炎を発症し、その影響が続くことはありますが、最終的には完治して後遺症にはあまり発展しません。

こうした後遺症は、同じコロナウイルスに属するSARS患者の海外の症例でも報告があるため、コロナウイルスに特異な現象なのかもしれません。具体的な後遺症の実態については、今後、5年、10年といった長期的なスパンで事例が確認されていくはずです。

■早期に治療で、ウイルスの増殖と免疫の暴走を抑える

繰り返しになりますが、この後遺症は軽症の方にも起こり得ます。

軽症の方でもサイトカインの産生と免疫の暴走は低いレベルで起こっており、自覚のないまま肺炎症状に至っていることは十分に考えられます。

後遺症を負わないためには、症状の初期段階でしっかり医師の診察を受け、症状の進行を抑えることがなにより大切です。

現在、医療の現場では、抗ウイルス薬の「レムデシビル」によるウイルス増殖の抑制だけでなく、免疫の暴走を抑える治療が重要な対策になっています。

2020年7月には、ステロイドの一種「デキサメタゾン」が新型コロナウイルス感染症への処方に対して厚生労働省より承認されました。デキサメタゾンはもともとリウマチの薬で、免疫の暴走を抑制する効果があります。

また、「トシリズマブ」「サリルマブ」「アナキンラ」といった、免疫の暴走をターゲットにした薬剤などについても、承認に向け治験が進んでいます。

早期に治療を開始し、ウイルスの増殖と免疫の暴走を抑えることは、重症化を防ぐだけでなく、後遺症を防ぐことにもつながります。

感染の疑いがある場合は、すぐに医療機関の診察を受けてください。

■ウイルスは「生き残る」ために変化し続ける

新型コロナウイルスは、いまこの瞬間も新しいタイプへと変化を続けています。ウイルスは細胞に感染し、自分自身をコピーして増殖するときに、遺伝子に頻繁にエラーを起こします。

つまり、まったく同じ遺伝子を複製するのではなく、少しずつランダムにちがうものを複製しているのです。

その結果、以前より毒性の強いものや、逆に弱いものなど、その特性をどんどん変化させ、より適応し、生存できるウイルスへと変貌を繰り返しています。

新型コロナウイルスのワクチン開発のイメージ
※写真はイメージです(写真=iStock.com/MrSergiyV)

いま、新型コロナウイルスは生存のためにより感染力を強めている、と考えられています。

現在も世界の感染者数は増加し続けており、アメリカ、ブラジル、インドなどの大国での感染拡大が止まらないほか、現在まで途上国での感染が拡大しています。

6月に世界の感染者数は1000万人を超え、9月には3000万人を突破。また、死亡者数は100万人以上にも達しています。次のページのグラフのように、現在まで新型コロナウイルスの猛威は加速の一途をたどっています。

『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)より
『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)より

■“弱毒化した”“重症化しにくくなった”は誤り

最近の日本においては、感染者数の拡大に対し、死亡者の割合は減少傾向にあります。そのため、「ウイルスが弱毒化しているのではないか」と、一部報道で指摘されています。

しかし、いまのところ新型コロナウイルスの「感染力が高まった」とする報告はありますが、「重症化しにくくなった」というものはありません。

一見このように見える原因は、感染初期の頃は症状が出た人だけにPCR検査を行っていたのに対し、最近では濃厚接触者であれば、症状がなくても検査が行われるようになっていることにあります。

無症状や軽症の感染者も発見できるようになっているため、相対的に重症化患者や死亡者が減ったように見えているのです。

感染者に占める20代、30代の占める割合が多いのもそのためです。

さらに季節の問題もあります。ウイルス感染症ではよくあることですが、夏場は感染や重症化が起きにくくなる傾向があります。

欧米で新型コロナウイルス感染症が高い致死率を示していた3、4月の頃、南半球で夏場であったブラジルでは致死率は低かったのです。ところが冬場となる6、7月頃から急速に致死率が上がってきています。すでに数字にも表れてきていますが、日本でもこの冬、ますます警戒を強める必要があると言えます。

■「外からの感染防止対策」だけでは不十分だ

今後、新型コロナウイルスがどのように変化していくのかは誰にもわかりません。突然、毒性の強いウイルスが感染を広げる可能性も否定できません。

あくまで、現在までゲノム解析によって新型コロナウイルスは多種多様に変化していること、そして結果として感染力が高まっていると推測されているだけです。

小林弘幸著、玉谷卓也監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)
小林弘幸著、玉谷卓也監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)

また、仮に弱毒化したとしても、それがわたしたちにとってただ単純に安心できる変化とも限りません。

なぜなら、重症化リスクを持つ人にとって危険であることに変わりはないからです。感染力が高まっているぶん、重症化リスクを持つ人にも感染する可能性も高まっています。そして、今後さらに感染力を高める方向に進化していく可能性も否定はできません。

そうであれば、わたしたちが取り組むべきことは、外からの感染防止対策だけでは不十分です。

新型コロナウイルスへの対策として、より根本的に大切なのは重症化リスクを下げること。つまり免疫力を高め、健康な身体を維持する生活を心がけることなのです。

また、新型コロナウイルスの感染・重症化リスクの遺伝要因、環境要因が、膨大な研究により明らかになってきています。

このようなリスクについて判定する検査(筆者プロフィールにリンクあり)を受けることにより、自分のリスクを把握することで、適切な新型コロナウイルス感染症への対策が可能となります。

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小林 弘幸(こばやし・ひろゆき)
順天堂大学医学部教授
1960年、埼玉県生まれ。スポーツ庁参与。順天堂大学医学部卒業後、同大学大学院医学研究科修了。ロンドン大学付属英国王立小児病院外科、トリニティ大学付属小児研究センター、アイルランド国立小児病院外科での勤務を経て、順天堂大学医学部小児外科講師・助教授などを歴任。自律神経研究の第一人者として、トップアスリートやアーティスト、文化人のコンディショニング、パフォーマンス向上指導にも携わる。近著に『名医が実践! 心と体の免疫力を高める最強習慣』、『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(ともにプレジデント社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(順天堂大学医学部教授 小林 弘幸)

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