精神科医おススメ、本番で驚くほど緊張しなくなるプレゼン前のルーティン4つ
プレジデントオンライン / 2020年12月21日 8時15分
■大舞台でプレッシャーに勝つコツ
「失敗したらどうしよう」「いくら練習しても心配」……、大舞台を前に不安にかられてしまいどうしたらいいか、外来でもよく受ける質問です。
そのときに僕がお伝えしていることは4つあります。
■1.結果を気にしない
私たちはプレゼンなり講演なり何かにチャレンジするときは「うまくやろう」と、つい結果にこだわってしまいます。しかし結果を意識すればするほど当然ながら、うまく力は出せません。
そういうときは、いったん結果を出すことは忘れて、自分にできる最大限のパフォーマンスを出すことを考えてみてください。たとえば自分を育ててくれた人に、自分の頑張っている姿を見せて恩返ししたいとか、チャレンジをしている姿で誰かを勇気づけたいとか、結果に至る姿を見せようと考えれば、結果そのものに揺さぶられません。
結果は、あとからついてくること、だから今できることを最大限にやろう。そういうふうに思えるのです。そうすれば、緊張感から解放されて、リラックスして臨めるでしょう。
■2.一点を凝視する
人間が外から受ける刺激は、80%以上視覚に頼っています。ですから平常心を保つには、視覚刺激をシャットダウンすることが大切です。
ただ目を閉じてしまうと、かえって頭の中でいろいろなことがかけ巡り、余計に緊張したり、ソワソワしたりすることがあります。ですから、おすすめは目を閉じずに、一点をじっと凝視する方法。たとえば自分の手や手元にあるペンなどをじっと見る。今それを見ていることに集中して余計なことは考えない。
プレゼンや講演会を行う会場の広さや人数の多さを知って「うわっ」となっても、一点をじっと見つめているうちに、だんだんと落ち着くでしょう。
■3.仮面をつける
実際に仮面をつけるわけでなく、仮面をつけている自分を想像するということです。
これは、分析心理学の創始者であるスイスの精神科医、ユング先生が言い出したことですが、そもそも人間は生きているだけでペルソナという仮面をつけながら役割を演じているのです。確かに家の顔と会社の顔は違う。そのつど仮面をつけかえているというのが、ユング先生が言っていることです。
それを発展させたのが、この方法。つまり大舞台の本番前、緊張している場面で、自分が理想としている仮面をイメージしてみましょう。それを意識すると、自分の意欲や気持ちが変わってきます。
![黄色いドレスを着て仮面を手にする女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/d/670/img_7d9098efa482dfff42f3ff50c2b56b92222961.jpg)
たとえばプレゼンであれば、スティーブ・ジョブズの仮面をつけてみる。今までの自分の仮面を外して、新しくスティーブ・ジョブズの仮面をつけるという意識を持って臨みます。
幸い自分の顔は自分で見えないので、仮面をつけたと意識したら「プレゼンを聞いている人も自分をジョブズだと思って聞いているんだな」と、ぜひのびのび表現してほしいですね。
■4.ネガティブなことを口にしない
本番前に自分を鼓舞するために、自分に声をかけることはよくあります。
しかし人間というのは、緊張感が高まると無意識のレベルでは、それが否定語か肯定語か判断できず、キーワードでしかイメージできない動物です。
ですから、そのときにネガティブなキーワードが入っていると、そのワードを意識することになってしまうので注意が必要です。
たとえば緊張すると早口になる癖のある人が、本番前に「早口にならないように、早口にならないように」と自分に言い聞かせると、「早口」というワードだけが残り、早口でしゃべっている自分しかイメージできなくなってしまうということです。これは本当に危険。
そういうときは「ゆっくりとしゃべろう」とポジティブな表現で言い聞かせないとダメですね。「緊張しない、緊張しない」ではなく、「落ち着いていこう」「リラックスしよう」ということですね。
また、これは自分だけでなく、人を励ますときも同じです。
大舞台の直前に部下を励ますときに「早口になったらダメよ」というと、部下は早口になりますし、「緊張しないようにね」というと、緊張してしまう。人間というのは、僕たちが思っている以上に、無意識にコントロールされているのです。
■「こうでなければいけない」を捨てていい
平常心を保てない人の特徴として「想定外のことを考えていない」ことがあります。
そもそも本番は、想定外のことが起こるもの。プレゼンならパソコンが急に動かなくなることもありますし、講演会なら聴衆から思いがけない声がとぶこともあります。
本番前はたくさん練習すると思いますが、そこからズレちゃいけない、練習どおりにしなきゃいけないと、あまりに強く思いすぎると、想定外のことが起こると頭が真っ白になって動けなくなります。でも練習から離れて違うことをしてもいいし、パソコンが使えなければパソコンなしでやればいい。「伝える」という目的が達成できれば、やり方は何でもいいわけです。想定外のことが起こっても、臨機応変に進めればいいと最初から思ってほしいですね。
最近こういった相談が多いことからも、社会人として「これができていないといけない」「これぐらいできなければダメだ」など、「ねば」「ならない」という考え方に縛られている人が増えているように感じます。
それも個人が感じるだけでなく、それを許さない環境も目につきます。もはや心の問題は自分だけでは解決できない状況なのです。
ですから、何か心配や不安に感じることがあったら、なるべく一人で抱え込まず、周りに応援を頼む、専門家に相談するなど、SOSを出してほしいですね。事前にSOSが出せれば、軽症ですむ場合が多いのです。
大舞台を前に不安が強いといった場合でも、SOSを出すのはありですよ。
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産業医・精神科医
島根大学医学部を卒業後、様々な病院で内科・外科・救急科・皮膚科など、多岐の分野にわたるプライマリケアを学び、2年間の臨床研修を修了。その後は、産業医・精神科医・健診医の3つの役割を中心に活動している。産業医として毎月約30社を訪問。精神科医・健診医としての経験も活かし、健康障害や労災を未然に防ぐべく活動している。また、精神科医として大阪府内のクリニックにも勤務
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(産業医・精神科医 井上 智介)
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