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「男性、ぽっちゃり、喫煙者は赤信号」"コロナ論文"を追う免疫学者の警告

プレジデントオンライン / 2020年12月20日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/doble-d

新型コロナウイルスの「重症化リスク」に関する研究結果が次々に報告されている。順天堂大学医学部の講師で、免疫学研究に20年以上従事してきた玉谷卓也氏は「新型コロナに適切に向き合うためには、自分の重症化リスクを把握しておくことが重要だ」という――。

※本稿は、小林弘幸・著、玉谷卓也・監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■重症者に共通していること

新型コロナウイルスの発生から、ほぼ1年が経過しました。この未曽有の危機に対抗するために、世界中の科学者が研究を行っていて、すでに8万報以上の論文が発表されています(2020年12月現在)。

このような膨大な研究成果から、新型コロナウイルスの重症化リスクが明らかになってきています。

新型コロナでは、感染者の8割くらいの方は無症状か軽症で済みますが、約2割の方が肺炎症状が悪化して入院することになり、1割弱の方が重症化します。収束に向けた適切な対応のためには、重症化リスクがある人を明らかにすることが重要です。

しかし、多くの方が、感染した場合の重症化リスクを知らないというのが現状でしょう。

重症化し、亡くなった方の多くは高齢者です。高齢であるということは、残念ながら大きな重症化リスクです。

なぜなら、高齢であるほど免疫力は低い傾向にあり、特に、免疫反応を制御するレギュラトリーT細胞の機能が低下していて、炎症を起こしやすい状態になっているからです。

また高齢者は、なんらかの持病を持つ方が多いということもあります。

■欧米での死者数増大の一因は「肥満率の高さ」か

一方、高齢ではないのに重症化、または亡くなられた方の多くは、簡単にいってしまえば「不健康な状態」にあったといえるでしょう。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の発表したガイドラインによれば、重症化リスクの高い症状とは、下記のような疾患を持つ方を指します。

『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)より
『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)より

ここに該当する方は、若年層でも重症化リスクを持っているとお考えください。まして高齢のうえ、基礎疾患を持っている方は、かなり重症化リスクが高いと考えられます。

とくに気をつけていただきたいのは、肥満です。その他の基礎疾患は明確な病気であるため、自分の不健康を深刻に捉えると思います。しかし、肥満については軽く見ている方が多いのではないでしょうか。

新型コロナウイルスによって、甚大な死者数となってしまった欧米では、その多くが肥満の感染者だったといわれており、実際にイギリスでは、ICUに運ばれた重症者の約73%が肥満だったという調査もあります。

肥満
写真=iStock.com/AkiraIto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AkiraIto

■“多少太り気味”でもリスクは2倍

肥満(BMI30以上)は、国や自治体の定める、新型コロナウイルスに感染した場合の入院基準の一つでもあります。ただ、日本人では肥満の人は4%程度しかいません。ほとんどの人は自分には関係ないと思っているでしょう。

しかし重症化のリスクは、BMIが30を超えると急に上がるわけではありません。東アジア人を対象にした研究では、多少太り気味であるBMI24(たとえば身長170cm/体重70kg)以上でも、2倍近く重症化リスクが上がることが報告されています。

日本人の30歳以上の2割以上がこの基準に当てはまります。これを読んでドキッとしている人も多いのではないでしょうか。

■男性なら1.5倍、喫煙歴ありで2倍、55歳以上で2倍

さらに、肥満以外のさまざまな要因によってどのくらいリスクが上がるのかということも、数値としてわかるようになっています。

例えば、男性は女性より1.5倍以上重症化するリスクが高いことがわかっています。ホルモンの関係で、男性の免疫系が活性化しにくいからと考えられています。

喫煙もリスクとなります。喫煙歴があると、約2倍重症化リスクが上がります。喫煙により肺の機能が低下して、細菌やウイルスなどを排除しにくくなるからと考えられています。イギリスでは、重症化リスクを下げる目的で、禁煙する人が急増しています。

年齢についても、感染した場合の入院基準となっている65歳以上では約3倍重症化リスクが上がりますが、実は40代以上でリスクが上がり始め、55歳以上でも約2倍リスクが高くなっています。

基礎疾患についても、どの病気でも同じようにリスクが高くなるわけではありません。糖尿病では2倍以上、高血圧で3倍近く、冠動脈性心疾患や慢性腎疾患では5倍前後、COPD(慢性閉塞性肺疾患)では6倍以上リスクが上がります。

このように、肥満度や基礎疾患、喫煙など統計的データがあるものだけで計算しても、20代の基礎疾患のない標準体重でタバコを吸わない女性に比べて、働き盛りの40代後半の男性の6人に1人、50代後半の男性の2人に1人で10倍以上の重症化リスクがあるということがわかっています。

■生まれながらにリスクが高い人もいる

小林弘幸著、玉谷卓也監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)
小林弘幸著、玉谷卓也監修『免疫力が10割 腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず』(プレジデント社)

なんと、生まれつき重症化リスクが高い人がいることもわかっています。血液型に関連した遺伝子やネアンデルタール人から引き継いだ遺伝子が、重症化に関わっていることが報告されているのです。どちらの遺伝子も免疫の機能に関連していると考えられています。このような遺伝要因のリスクは、DNAを調べることによってわかります。

ここまでにお伝えした環境要因や遺伝要因によって自分がどれだけの重症化リスクを抱えているかを、科学的なエビデンスにもとづいて判定する検査も受けられるようになってきています(筆者プロフィールにリンクあり)。

検査によって自分の重症化リスクを知り、リスクの高い人は特に感染予防を心がけ、感染してしまった場合はすぐに治療を開始するようにすることで、新型コロナウイルスへの適切な対応ができるようになることが期待されます。

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玉谷 卓也(たまたに たくや)
免疫学者・順天堂大学医学部講師
薬学博士。日本免疫学会評議員、順天堂大学非常勤講師、エムスリー株式会社アドバイザー。主な専門領域は、免疫学、炎症学、腫瘍学、臨床遺伝学。20年以上、免疫、がん、線維症、アレルギー、動脈硬化などの研究に従事。監修書籍に、『腸内環境と自律神経を整えれば病気知らず 免疫力が10割』(プレジデント社)。新型コロナウイルス感染症への適切な対応をサポートするために、順天堂大学医学部の小林弘幸教授の監修のもと、感染・重症化リスクを判定する検査をエムスリー社と開発。

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(免疫学者・順天堂大学医学部講師 玉谷 卓也)

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