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「これが新型コロナの本当のリスク」いま自粛すべきでない3つのこと

プレジデントオンライン / 2020年12月19日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/itakayuki

■新型コロナの感染者数や死者数は、依然インフルエンザ以下

2020年は言うまでもなく、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)に、全世界が振り回された年であった。これを執筆している20年11月末現在、新型コロナ感染拡大を受け、東京都は酒類を提供する飲食店などに時短営業の要請をしている。

実行することでどれほどの効果を見込めるのかという科学的、医学的根拠に乏しく、また目指すべきゴールも明らかにされないままの要請となり、私は残念に感じている。読者にはぜひ冷静に、多角的な視点から医療健康の分野を見つめてほしい。

今回は「根拠ある医療健康情報」という本趣旨の角度を変え、「現実(根拠)」から「未来への予測(情報提供)」を示そう。

まず最も皆が気になるであろう新型コロナの今後について。

「現在(20年11月末)は21年1~2月の1日に数千人の陽性者発生に向けて上昇しているところです」と東京医科歯科大学臨床教授で秋葉原駅クリニックの大和田潔医師。数千人と聞くと驚いてしまうが、欧米では2020年11月の段階で「1日数万人単位」の新規感染者が発生している。

また国内でも例年、インフルエンザではピーク時に1日数万人が発症し、死者数は平均50人程度。新型コロナは感染者数も死者数もどちらもそれをはるかに下回っていることを忘れてはならない。

■日本で最も救急搬送患者を受け入れている病院の声

そして「医療逼迫」も話題になってきたが、現場はどう感じているか。日本一、救急搬送患者を多く受け入れている湘南鎌倉総合病院救命救急センター長の山上浩医師はこう話す。

「救急病院として“通常の救急診療の質”を落とさず、新興感染症に対応しなければならなかったことが最も苦労したことでした。特に春頃は、検査結果が出るまでに時間がかかったので、新型コロナかどうかわからないけれど可能性はある、いわゆる疑似症を受け入れるのがどこの病院でも難しかったと思います」

■「新型コロナ感染拡大」と「医療逼迫」を安易に結びつけない

私は国に対し、国内の救急医療体制を早急に整備してほしいと思う。それはベッド数を増やすとか、国民に救急医療を受診しないように呼びかけることではない。また「新型コロナ感染拡大」と「医療逼迫」を安易に結びつけないでほしい。体制が整っていないから、新型コロナへの扱いが厳しいから(=2類感染症相当)医療が逼迫するのだ。

平成横浜病院健診センター長の東丸貴信医師が補足してくれた。

「コロナと他の疾患の導線を分けて、新型コロナ感染者のための専用病棟やICUに転用できる十分な病床と治療チームが確保されていれば、この程度の感染者数では医療逼迫を避けられたでしょう。飲食店などに感染防護徹底を具体的に再指導し、国民にも感染予防のルールを厳守した旅行や飲食をしてもらえれば、感染者数は海外レベルまで増えないと思います」

■感染症を診る病院とがんなどを診る病院を分けるべき

また、ある救急医はこう指摘した。

「20年は、各病院の急性期に対応できる能力が示されたでしょう。病院機能を落とさずに対応できた病院と、救急診療の受け入れを制限せざるをえなかった、または実際に制限した医療機関は、今後も医師の働き方改革などでも同様に診療制限をしてくるのではないかと危惧しています」

どういうことかというと、コロナ禍でもスムーズに対応できた医療機関は、今後災害などの非常時や今回のような感染症、また医師の働き方改革によって、常在する医師の人数が少なくなったとしても「診療を閉鎖する」ことはおそらくない。

国は、新興感染症へ対応する病院、新興感染症の疑いのある患者が受診する病院、脳血管疾患や心疾患、交通事故など救急診療を請け負う病院、がんなどの生活習慣病を中心とした患者を診る病院と、地域ごとに医療機関の機能分化を進めるべきだ。そして各所に開業医を含めて当番制などで医師を集約化していく必要があるだろう。

読者にとって重要なことは、あなたが通常かかっている病院が20年に“診療制限”を行ったとしたら、今後もそういったことがある可能性を踏まえて、いつでもなんでも話せる「かかりつけ医」を見つけておいたほうがいい。

■健康診断や人間ドックを受けないことのリスク

そして次にコロナの流行によって、がんや脳卒中など緊急性を要する患者さんの受診控えが世界的に問題になった。20年は健康診断やがん検診の受診者も大幅に減る見込みで、21年以降、病の早期発見を逃した患者が増えるのではないか、と個人的には心配している。特に「働く現役世代」が健康診断や人間ドックを受けなかったことで、病が進行した状態で発見されれば、社会的にも損失になる。

東丸医師も「生活習慣病があっても、軽症や無症状であると、放置しているケースが多い。やはり一般の方に予防医学を訴えていく必要がありますね。生活習慣病があると感染症の重症化リスクも高まります。また自粛生活によって運動不足が問題になりました」と話す。

21年は自粛による健診控え→病の進行、または運動不足→肥満→糖尿病に注意が必要だろう。

■コロナ禍でアルコール依存に拍車がかかるケースも

また、オンライン技術が普及し、AI診断やAIによるデータ解析が進んでいくと考えられる。それにともなって薄れていくのは“人とのつながり”だ。

「21年のおせちは、大人数よりも個別の1人用が人気のようです」と管理栄養士の望月理恵子氏が説明する。

「接待や宴会が減り、レストランもロボットが運ぶなどの技術が進み、人との会話が減っていくでしょう。また、コロナ禍で自宅でのアルコール摂取量が増える方もいます。これまでも高齢者のアルコール依存が問題視されてきましたが、自粛生活中に単身の高齢者が社会的に孤立し、酒で寂しさをやわらげようとして飲酒量が増え、依存に拍車がかかっているとのことです」

自殺者数も20年7月から急増している。実は私自身も20年4月頃は対面取材が激減したことで気持ちが鬱々としてしまったため、「人と会う大切さ」を実感している。

2021年、リスク回避のためにすべきこと

どんな物事でもそうだが、医療と健康においても正と負の面がある。たとえば健康診断を受診することで「必要のない医療介入をすることになる」「早期から薬づけになる」という指摘がされる一方で、早期に病気を発見し、治療を終えられる1人になれば、それは自分の人生に大いなるプラスだ。

人と会うこともコロナが重症化するリスクがあるなら用心しなければいけないが、必要以上に控えることは生活の質を落としてしまう。メディアの情報を材料に、“あなた”が冷静に判断し、自分に必要なリスク管理をしてほしい。

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笹井 恵里子(ささい・えりこ)
ジャーナリスト
1978年生まれ。「サンデー毎日」記者を経て、2018年よりフリーランスに。著書に『週刊文春 老けない最強食』(文藝春秋)、『救急車が来なくなる日 医療崩壊と再生への道』(NHK出版新書)、『室温を2度上げると健康寿命は4歳のびる』(光文社新書)など。

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(ジャーナリスト 笹井 恵里子)

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