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「株式市場はすでにバブル」投資のプロが株の儲けでいま買っているモノ

プレジデントオンライン / 2020年12月16日 18時15分

東京証券取引所 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

コロナ禍を契機にあふれ出した世界的な緩和マネーは行き場を失い、ちょっとした材料に反応して株価を釣り上げる危うさがある。株価はすでに「高所恐怖症」に近い水準。高値圏にある株価が一気に急落する局面を心配する声も聞かれ始めた――。

■世界の中央銀行が市中にばらまいた過剰なマネー

株価上昇が続いている。新型コロナウイルスの感染拡大により世界のGDP(国内総生産)は、第2次世界大戦の直後以来で最大のマイナス成長に落ち込んでいる。にもかかわらず米国のニューヨークダウは3万ドル台に乗せ、日本の日経平均株価も2万6000円台と、バブル崩壊後の最高値圏にある。

なぜ、新型コロナ禍で疲弊する実体経済をよそに、株価だけがこれほど高騰するのだろうか。そこには新型コロナ禍に対処するため、緊急避難的に世界の中央銀行が市中にばらまいた過剰なまでのマネーの存在がある。

新型コロナ禍が本格的に世界経済をむしばみ始めた今年3月、日米欧の主要6カ国の中央銀行は新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済クラッシュを回避するため、ドル資金を大量に市場に供給する「ドル流動性供給オペ」を拡充・実施した。

コロナ禍を受けドル資金の需要が急速に高まり、「市場でドルを調達することが困難になった」(大手機関投資家)ためで、邦銀などによる日銀オペの利用残高も一時2000億ドルを超えた。

日本銀行
撮影=プレジデントオンライン編集部
日本銀行 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

■FRBが米国債を担保にしたドル資金貸し出し対象を拡大

この「ドル流動性供給オペ」の本尊は言うまでもなくFRB(米連邦準備制度理事会)であり、FRBはカナダ中央銀行、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行、スイス中央銀行、日本銀行と常設的な通貨スワップ協定を結びドルを供給している。

コロナ禍が本格化した3月中旬にFRBはこの「ドル流動性供給オペ」に、従来の1週間物に3カ月物を新たに加え、その後、オペの頻度も週1回から毎日に変更した。さらに通貨スワップ協定に基づくドル供給先をブラジルや韓国などの9中銀にも拡大した。

そして3月末にFRBは、米国債を担保にドル資金を貸し出すレポ取引の対象を、ニューヨーク連銀に口座を持つ200以上の中央銀行や国際機関に拡大した。新興国のドル資金不足を支援することで、ドル建て債務のデフォルト(債務不履行)を防ぐためだ。

■あふれるマネーが世界を徘徊している

こうしたFRBによる潤沢なドル資金の供給もあり、世界の金融市場は安定を取り戻している。2008~2009年のリーマンショックへの対応が学習効果となって、ドル債務危機を回避できた格好だ。

だが、問題はリーマンショックと異なり、今回のコロナ禍が「第2波」「第3波」と波を打つように継続していることである。その都度、欧米の金融当局はさらなる金融緩和に踏み込み、あふれるマネーが世界を徘徊していることだ。

そしてFRBが供給した大量のドルが向かっているのが世界の株式市場である。

ゴールドマン・サックス証券は11月10日、日経平均株価の2021年の目標値を2万7200円に引き上げた。また、野村証券も同日、2021年末の日経平均株価を2万8000円と予想した。新型コロナウイルスワクチン開発・普及までには時間を要するものの日米の景気・企業業績は底堅く、金融緩和の継続から金利は上がりにくく株価は堅調に推移するとみているためだ。

■イエレン元FRB議長の財務長官指名が後押し

この有力証券会社による強気の株価見通しを後押しするのはバイデン次期米国大統領によるジャネット・イエレン元FRB議長の財務長官指名だ。

初の女性財務長官となる見通しのイエレン氏はニューヨークの下町、ブルックリン出身。1929年の大恐慌を体験したユダヤ系の医師と教師の家庭に生まれた。

ブラウン大で経済学を専攻し、イェール大大学院に進んだ。そこで師事したのが『インフレと失業の選択』(日本語版はダイヤモンド現代選書=1976年刊)の著者でノーベル経済学賞を受けたジェームズ・トービン教授である。

「私にとって失業率は単なる統計数字ではない」と語るイエレン氏の哲学はトービン氏譲りと言われる。

雇用問題の専門家で、「温厚な性格で、周囲の意見に耳を傾けつつも粘り強く相手を説得するタイプ」というのが知人の共通したイエレン評だ。親日派でもある。

特に「イエレン氏はトランプ大統領からFRB議長に再任されず、2018年に退任したが、ブルッキングス研究所で活発に金融政策を論じている。炭素税の導入を提唱するなど環境問題にも明るい。バイデン氏は経済格差問題などでイエレン氏の助言を求めていた」(市場関係者)とされる。

■「財政と金融の連携もスムーズにいき株式市場の安心感も増す」

イエレン氏は民主党リベラル派や米女性団体から圧倒的な支持を得ている。

上院は共和党、下院は民主党が過半数を握る“ねじれ”が生じる可能性があるだけに、議会対応に長けたイエレン氏の財務長官就任は適任だ。

市場関係者は「バイデン氏は4年間で2兆ドルという過去最大規模のインフラ投資を公約しており、米国の歳出増は避けられない。FRB議長時代から金融緩和に積極的なハト派で知られたイエレン氏が財務長官に就けば、財政と金融の連携もスムーズにいくだろうから株式市場の安心感も増す」と見ている。

世界の中銀による緩和マネーは株式市場に流入し、11月は記録的な上昇が相次いだ。世界株全体の値動きを示す「MSCI全世界株指数」は上昇率、上昇幅とも1988年以降で最大となった。

特に買われたのは新型コロナの影響を受けて10月まで出遅れていた銘柄だ。

米市場では航空需要の激減を受け急落していたボーイングが1カ月で5割近く上昇したほか、シティーグループなどの金融株、シェブロンなどのエネルギー株も3~4割も上昇した。

また、日本株でも景気敏感株を中心に物色されている。

■株価はすでに「高所恐怖症」に近い水準にある

しかし、こうした新型コロナウイルス感染症に関連した銘柄高騰には一抹の危うさも伴う。東証が11月中旬に新型コロナワクチン関連の銘柄について異例の注意喚起を行ったのはその端的な表れだ。

東証はすべての上場企業に対して、コロナ関連の事業展開について「公正な開示」をするよう注意喚起を行った。

これについて市場関係者は、「中国企業と提携し、インフルエンザで開発中のワクチンを新型コロナにも試すという情報を発信した企業が投資家の期待買いでストップ高になったものの、実態が乏しく株価が急落、結局、破産した。こうした風説の流布に近いと思われるような未確認情報で拙速な買いに走らないよう注意を促したものだ」と解説する。

コロナ禍を契機にあふれ出した世界的な緩和マネーは行き場を失い、ちょっとした材料に敏感に反応して株価を釣り上げる危うさがある。市場のボラティリティ(変動幅)は高まりつつある。株価はすでに「高所恐怖症」に近い水準にあると見ていい。高値圏にある株価が一気に急落する局面を心配する声も聞かれ始めた。

「実はダイヤモンドがひそかに売れているんですよ」(市場関係者)というのはそのシグナルかもしれない。

■「丑」の相場格言は「つまずき」を暗示

なぜダイヤモンドが売れているのか。株価高騰で潤った一部の株長者の間では金だけでなくダイヤモンドにも資産を移す動きがみられるというのだ。

ダイヤモンド
写真=iStock.com/ilbusca
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ilbusca

その根幹には、株価がいつ調整局面に入ってもおかしくないという深層心理が働いているのは想像に難くない。

株式市場はすでにバブルの領域に入っているのかもしれない。逃げ遅れババを引くのはいつも零細な個人投資家だ。

2021年の干支は「丑(うし)」。相場用語「雄牛(ブル)」は株価の上昇を意味するが、干支の「丑」の相場格言は「つまずき」を暗示する。ちょうど12年前の2009年の「丑年」もリーマンショックのあおりを受け、株価は最悪だった。歴史は繰り返すのか、それとも2021年は株価も「ニューノーマル」な新局面を試す上昇となるのか。いすれにしても新型コロナ禍に一喜一憂する展開となることは確かだ。

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森岡 英樹(もりおか・ひでき)
経済ジャーナリスト
1957年生まれ。早稲田大学卒業後、経済記者となる。1997年、米コンサルタント会社「グリニッチ・アソシエイト」のシニア・リサーチ・アソシエイト。並びに「パラゲイト・コンサルタンツ」シニア・アドバイザーを兼任。2004年4月、ジャーナリストとして独立。一方で、公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団(埼玉県100%出資)の常務理事として財団改革に取り組み、新芸術監督として蜷川幸雄氏を招聘した。

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(経済ジャーナリスト 森岡 英樹)

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