「高級感だけでは魅力半減」今、百貨店に向けられる厳しい視線
プレジデントオンライン / 2020年12月28日 17時15分
■急速な変化が求められている百貨店業界
私たち消費者にとってこれまでの百貨店は、感度が高く、上質な品揃えで、いつでも欲しいものが手に入る場所だった。それは、ラグジュアリーという言葉がぴったりな空間。しかしながらその存在自体が今、大きく変化しているというのだ。正確に言うと、これまでの信頼度や高級感はそのままに、新たに“サステナブル”という視点が多方面で加わったことによって、百貨店に求められるもの、必要とされることも変わってきたと言えよう。
そこには昨今の人々の意識変革が大きく関係している。いまやサステナブルという言葉はトレンドから常識へと変わりつつあり、多くの人々が「ただ素敵なものを手に入れたい」というだけではなく、その「素敵なもの」の材料がどこで生まれ、どのような工程を経て手元に届いたのかまでを、きちんと考えるようになったからだ。
消費者の意識変化と伴走するように、ここ数年で各百貨店のコンセプトも大きくチェンジする流れが目立っているのだ。
■人気百貨店のいち早い取り組みとは
なかでも今回注目したのが三越伊勢丹グループの取り組みだ。同社は2018年より、企業としてサステナビリティを具現化するため、以下の3点を重要視することとした。
ひとつは「人と地域をつなぐ」こと。私たち消費者がより豊かな生活を送れるよう、世界各国の文化や芸術の紹介、史料の活用、地域産業の活性化支援、そして次世代のクリエイターとの取り組みがそれにあたる。製菓学校生との催事や服飾専門学校生との体験型実学教育など、産学共同はその代表例だ。
ふたつめは「持続可能な社会・時代をつなぐ」こと。これはそもそも安心・安全な商品やサービスの提供、低炭素社会や省資源を推進していくということなのだが、前者は今、依然コロナ禍が続く世の中にあって、通常の商品管理のほかに徹底的な対策を行うことも重要な取り組みのひとつとなっている。社員一人ひとりがコロナ対策への意識を高く持ち、徹底した社員教育などで正しい知識を備えることで、いつもとは違う状況下でのショッピングもより心地のいいものとして提供される努力がなされているのだ。
また後者の低炭素社会や省資源を推進事業としては、店内照明の積極的なLED化やマイバッグの推進、ペーパーレスへの対応、そして食品系廃棄物を焼却ではなくリサイクルすることで、CO2削減に寄与している。さらに一部の店舗では衣料品回収、フォーマルドレスのシェアリングサービス、グループ企業が運営するスーパーマーケットでのプラスチックリサイクルなども行われている。
■働く人にもやさしい、それが新時代のサステナブル
同社のサステナブルな取り組みの3つめは従業員満足度の向上だ。子育てサポート企業として厚生労働省東京労働局からすでに認定を受けている同社だが、さらにどんな立場の人でも働きやすい企業をめざして、育児や介護に関わるさまざまな支援制度を実施している。
三越伊勢丹グループは産前・産後休暇、育児休業制度の復職率が約9割であることでも知られ、2020年8月時点では約440人の従業員が育児勤務制度を利用し、仕事と家庭の両立を図っている。子どもがいる女性従業員に対してはフルタイム勤務への早期復帰に向けた支援策や、育児勤務期間終了後の環境変化に対応した勤務制度、さらに復職後には制度利用経験者からのアドバイスが聞けるセミナーなども行われ、復職やフルタイム勤務に向けサポートも充実しているのだ。
今までにもこの連載で伝えてきたように、これからのサステナビリティは、その恩恵を受ける側だけでなく、努力・提供する側も心地のいいものでなくてはならない。誰も置き去りにしない、すべての人にとってやさしい“三方良し”であるべきなのだ。
■お買い物を通じてサステナビリティを知る
人気百貨店のサステナブルな取り組みがわかったところで、私たち消費者の立場としては、どのような形で参加・協力できるのか?
それはたとえばオンラインサイトの活用。10月にリニューアルした三越伊勢丹のサイトでは、トップページにサステナビリティページへの入り口があり、そこからサステナブルな取り組みの最新のトピックや情報をチェックすることができる。これまでは多くの商品の中からサステナブルなものを探すイメージだったが、今ではより環境にいいものや持続可能な商品、地域のつくり手や生産者と顧客をつなぐ地域産業活性化につながる商品またはプロモーションなどが探しやすくなっている。
また、毎週金曜日に更新される連載「金曜日のサステナブル」では、リアルな目線で店内のサステナブルな商品や取り組みについて具体的に知ることができる。季節のイベントなどで役立つ情報や、今すぐにできるライフハックなどを交え楽しく解説しているので、日々の日常で活用できるアイデアにもたくさん出合えそうだ。
このウェブ企画はもともと百貨店の売り場で接客やバイイングをしていた女性が中心となって運営している。百貨店ならではの“直接多くの顧客と触れ合う”という経験を最大限に生かし、店頭で企画・立案していたときと同じように現場の生の声を大切にしているのだ。求められていることと企業としての発信がかけ離れないよう、今でも日々では内外の情報を収集&店頭に足を運び、現場の担当者と密なコミュニケーションを取り続けているのだそう
企業としてのサステナブルな取り組みによって、私たち個人が地球のため、そして未来のために今すぐできることは増えてきた。つい視野が狭くなってしまう大変な時期だからこそ、さまざまな立場の人が協力して、皆が幸せになる方法を考える。そんないつもと違う年末年始も悪くない。
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フリーエディター/執筆家
新ファッションウェブマガジン「LIV,」主宰。女性ファッション誌のフリーエディターをしながら執筆家としても活動、いくつかの連載を掛け持ちする。現在今年いっぱいで終了する「ANNE MAGAZINE」のラスト講座の参加を募集中。大人の女性に役立つファッション・仕事・サステナブル・独自の人生哲学を発信するほか、パーソナルスタイリングやファッション講座などを定期的に開催している。
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(フリーエディター/執筆家 乙部 アン)
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