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「年収500万円の星野源似」を"普通の男"と考える婚活女性の悩ましさ

プレジデントオンライン / 2020年12月22日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■「普通」とは年収500万円以上、清潔感、そして…

定期的にネットで話題になる「普通の男」問題というのがあります。

「普通の男」とは、婚活女子の結婚相手の条件としてよく使われる言葉ですが、この「普通」を紐解いていくと「ちっとも普通じゃない」と炎上します。

12月9日放送のTBS情報番組「グッとラック!」で紹介された「普通の男」像も大いに物議を醸しました。曰(いわ)く、学歴は大卒(日大・東洋大・駒沢大・専修大)以上。ジム通いをしていて、都内在住の場合なら年収500万円以上。清潔感が大事らしく、「鼻毛が出ていない」「ヒゲ・爪が整っている」「美容室は月1~2回」「化粧水をつけて就寝」と、いろいろとツッコミどころが満載なのです。炎上した最大のポイントは、「見た目は、星野源“で”いい」というもの。「“で”いい、とは何様だ」と、星野源ファンの同性の女性からも非難の声があがる始末です。

こうした婚活女子の言う「普通の男」問題は、定期的にあらわれる風物詩のようなもので、過去にもあります。以前は、「年収500万円以上、大卒、正社員、長男以外、清潔感がある、常識やマナーがある」というのもありました。この時も「長男以外?」というのが話題になっています。これは、多分、相手の親との同居が嫌だという意味なのでしょう。

■平均年収が高い東京都ですら2割しかいない

いずれにしても、必須条件として出てくるのが「年収」なんですが、「500万円以上の年収」などはっきりいって普通でもないし、平均でもありません。少なくとも、初婚がもっとも多い25~34歳において、未婚男性で年収500万円以上など少数派です。東京都に限定しても当該年代の未婚男性のたったの22%しかいません。普通どころか上位2割に相当します。

アラサー未婚男性の年収分布

つまり、都内の婚活女性が「年収500万円以上」という条件を提示しただけで、上位22%以外の男性には相手がいないということになります。前回記事「独身が増え続ける原因を「若者の恋愛離れ」にしたがるメディアの大ウソ」(11月30日)で、「男女とも恋愛強者は3割しかいない」という法則をご紹介しましたが、年収500万円以上の未婚男性をゲットできるのは、恋愛強者の女性だけになるということです。

これは東京以外でも同じです。仮に年収条件を400万円以上に下げても、全国でそんな未婚男性は3割もいませんし、その3割は恋愛強者女性が根こそぎ奪っていくことでしょう。

■人口は「男余り」なのに婚活現場は「女余り」の現実

そもそも、日本において20~50代の未婚男女の人口を比べると300万人以上も「男余り」となっています。これは、出生の男女比によるものです。毎年5%ほど女児より男児のほうが多く生まれます。男児は乳幼児段階で死亡しやすかったこともあり、かつてはそれでも成人の男女比は半々に落ち着いていました。医療の発達によって、乳幼児死亡率が低くなると、結果として「男余り」になります。これは日本だけではなく、世界中の先進国で同様で起きている現象です。

さて、300万人も「男余り」なのであれば、女性の婚活は楽なのでは? と思うかもしれませんが、婚活の現場では、むしろ逆転現象が起きています。婚活パーティーなどでは、「男性参加者が少なくて、単なる女子会になってしまう」などという声もよく聞かれます。

レストランでのパーティー
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu

この原因について、詳しくは拙著『結婚滅亡』においてさまざまなデータとともに解説していますが、原因のひとつを簡単に言えば、男女で「結婚したい」という結婚前向き度が、男性4割に対して女性5割と10ポイントの差があるからです。その10ポイントが300万人の人口差のアドバンテージを帳消しにしてしまいます。年収条件云々以前に、結婚に前向きな未婚男性の絶対人口がそもそも少ないという現実は把握しておくべきでしょう。

■「アプリなら簡単に相手が見つかる」の間違い

しかし、だからといって婚活男性に有利かというと、それも違います。

かつてのお見合いや職場縁を代替えする結婚のお膳立てサービスとして、最近婚活アプリなどのマッチングサービスが注目されていますが、あれで「相手を見つけられるだろう」などと考えている婚活男性がいるとしたら、それは認識を改めたほうがよいでしょう。もちろん、相手とマッチングできる男性は存在します。しかし、それは「あなたではない」可能性が高いのです。そのカラクリをご説明します。

まず、マッチングサービス市場は急成長を遂げているといわれます。サイバーエージェント子会社のマッチングエージェントによれば、日本国内の婚活・恋活マッチングサービス(婚活アプリ)の市場規模推移は、2017年258億円から2019年510億円へと2倍に成長しています。さらに、今後の市場予測では、2025年には1060億円に達する見込みと発表しています。

しかし、マッチングサービスの売り上げが、2017年から2019年にかけて2倍になったとしても、肝心の初婚数は、2017年44万5672組から、2019年43万8912組と、増えるどころかむしろ減っています。果たして、これは婚活に寄与したといえるのでしょうか?

確かに、以前と比べてマッチングサービスの利用率は増えているかもしれません。しかし、問題は、どんな人がどんな目的でそれを利用しているか、です。

■アンケートで分かった男女の大きな違い

僕が実施した2020年調査(1都3県20~30代未婚男女 n6054)によれば、20~30代でのマッチングサービス利用率は、男性27%、女性38%でした。これらの男女利用者は、当然結婚意欲は全体平均と比べれば高いのですが、さりとて、全員が「結婚相手探し」という目的で利用しているわけではありません。さらに、興味深いのは、マッチングサービスの利用者=自力で恋愛できない恋愛弱者でもないということです。

グラフは、マッチングアプリ利用経験者と全体平均との差を表したものです。右側に棒グラフが伸びているのは、アプリ利用者のほうが多い、左側に伸びているのは全体平均のほうが多いことを意味します。

マッチングサービス利用者の特性は男女で差がある

一目瞭然ですが、「結婚に前向き」以外は、男女で正反対になります。男性は、マッチングサービス利用者のほうが、全体平均より「恋愛に自信がある」「恋愛に対して能動的」「浮気をしたことがある」「自分の容姿に自信がある」率が高いのです。まさに、恋愛強者男性と言えます。

対して、マッチングサービスを利用する未婚女性は、全体平均と比べて「恋愛に自信がない」「恋愛に対して受動的」「自分の容姿に自信がない」女性が多く、男性と比べて「自己肯定感が低い」女性が多いことも特徴です。

つまり、マッチングサービスを利用するのは、主に「恋愛強者男性と恋愛弱者女性」であるということが分かります。

■一部の男性による「勝者総取りパターン」が起きている

これがどういう結果を生むかといえば、一部の恋愛強者男性による勝者総取りパターンとなるわけです。言葉を選ばずに言えば、「今まであまり恋愛経験のない、結婚相手を探す婚活女性たち」という獲物を求めて、肉食の恋愛強者男性(既婚の不倫目的も含む)が自由に行動できる刈り取り場となっている可能性があります。

中には、そもそも恋愛経験の少ない恋愛弱者男性も、真剣に結婚相手を求めてこのサービスを利用している男性もいることでしょう。しかし、そうした「控えめな誠実さ」は、恋愛強者男性たちが放つ「魅力的な能動性の光」の前に埋没し、いたずらに課金だけを重ねていくという結果になりかねません。どこの誰かも分からない恋愛強者の快楽のセックスのために、恋愛弱者はお金を払っているとも言えるのです。

現状のマッチングサービスが、かつてのお見合いや職場縁の代替え機能を果たすことはなく、単純に自力恋愛できる猛者たちの活躍のフィールドが拡張したにすぎません。これで、日本の非婚化が解消されることはまずないでしょう。

■「普通」って、なんでしょうか?

では、結婚相談所ならいいのか? というと、なかなかそうとも言い切れません。

確かに、マッチングサービスに比べれば、「独身証明書」の提出が義務づけられており、既婚男性に騙(だま)されることはなくなるでしょう。さらに、仲人さんとの面談などもあり、より真剣に結婚相手を見つけたいという人たちの濃度は高いとは言えるでしょう。

結婚相談所もいろいろです。例えば、「うちの結婚相談所に登録している男性の8割以上は年収いくら以上です」というのを売り文句にしているところもあります。登録に年収条件をつければそうなるのでしょう。

いかにも優良な未婚男性がたくさんいるように見えますが、逆に言えば、それだけの年収があるのに、結婚相談所に登録してもなお、現在まで誰ともマッチングできない男性という意味で、地雷以外の何ものでもないのでは、とも思います。

「普通」とは、一体なんでしょうか?

そもそも、「普通の人」とは、婚活などしなくても「普通に出会い、普通に結婚」していきます。その実数は、1980年代からまったく変わっていないというのは、前回書いた通りです。

見合いや職場に頼らない「自力恋愛結婚数」は増えている

時代が変わろうと、景気が悪くなろうと、その数は変わらないのです。婚活の現場にいる時点で、実はもうあなた自身が「普通ではない」という自覚を持ったほうがよいのではないでしょうか。

■現実を受け入れられない人に結婚はやってこない

結婚相談所の婚活面談で、仲人さんたちがよく聞く言葉があるそうです。

「高望みはしません。普通の人でいいです」

この言葉を受けた仲人さんは、口には出さずとも、こう思うでしょう。「ここに普通の人なんていません。普通の人はここに来るまでもなく結婚しています」と。

この言葉、厳しいと思いますか? いいえ、仮にこういうことを言ってくれる仲人さんがいたとしたら、むしろ真剣に、親身にあなたのことを考えてくれていると思います。本当に結婚したいと思う人にとっては大事な「現実への気づき」だからです。

結婚は、ドラマでもマンガでもなく、現実です。現実を受け入れられない人に結婚という現実はやってきません。

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荒川 和久(あらかわ・かずひさ)
コラムニスト・独身研究家
ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。海外からも注目を集めている。著書に『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会―「独身大国・日本」の衝撃』(PHP新書)、『結婚しない男たち―増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。韓国、台湾などでも翻訳本が出版されている。

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(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)

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