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「親が起こすまでぐっすり」0歳児との朝時間が激変する"超簡単なコツ"

プレジデントオンライン / 2021年1月2日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/FamVeld

赤ちゃんに朝までぐっすり眠ってもらうには、どうすればいいのか。ノーベル生理学・医学賞学者の研究室に所属する睡眠科学者のソフィア・アクセルロッド氏は「最も重要なことは光のコントロール。朝日が差し込むような部屋を寝室にしてはいけない」という――。

※本稿は、ソフィア・アクセルロッド著、綿谷志穂訳『赤いライトで朝までぐっすり 赤ちゃん寝かしつけの新常識』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。

■朝5時に起きた赤ちゃんを、もう一度寝かせるのは難しい

「子どもが早朝に起きてしまい、困っている」という話をよく聞きます。家族全員が朝5時に起きることを、仕方のないことと受け入れてしまっている家族も多いです。でも、そんなことはないんです!

朝5時に起きて1日をはじめようとする赤ちゃんを、もう一度寝かせるのは難しく、あきらめていっしょに起きるという方も多いでしょう。でも、その努力は残念ながら逆効果です。赤ちゃんの要求に応えつづけるのは、朝5時起きの体内時計を強めることになります。

体内時計に影響を与える「ツァイトゲーバー」(ドイツ語で「時間を与える者」の意味)の中で、最大のツァイトゲーバーは、光です。朝起きてカーテンを開けると、目の奥にあるipRGCという特別な細胞が光によって活性化され、光の情報を脳の親時計に伝えます。

ちなみに、ipRGCは視覚とは何も関係ありません。目の見えない人も、多くの場合、ipRGCは機能していて、正常なサーカディアン・リズム(※)で行動しています。

※体の生理的なはたらきを司る、約1日周期のリズム。ラテン語で「約」を意味するcirca(サーカ)と、「日」を意味するdiem(ディエム)に由来している。

ipRGCから光の情報が送られてくると、親時計は1日がはじまったことを知ります。時計はリセットされ、そこから24時間をカウントします。

体内時計をサーカディアン・リズムに合わせることを、「同調」と言うのですが、よい同調のためには、光が欠かせません。

1.光を浴びる時刻(いつ光を浴びるか)
2.光の強さ
3.光の色(波長)

この3つの点が重要になってきます。

■寝つきを悪くする「青い光」

光にはさまざまな波長があり、波長によって色も変わります。虹が7色に見えるのは、そのためです。けれど、日光に含まれる波長(光の色)の割合が1日を通して変化するということは、あまり知られていません。

朝の日光は、青の光が多く、夕方には青が減少して、赤が増加します。赤がもっとも多くなったときに起こるのが、夕焼けです。青い光はほとんどなくなり、世界を赤く染め上げます。

いまでは、この青い光こそ、体内時計と睡眠にもっとも大きな影響を与えるということがわかっています。夕方に強いオレンジ色の光を2時間浴びるより、同じ時間帯に弱い青い光を2時間浴びるほうが、睡眠にはずっと悪い影響が出ました。

目の奥にある特別な細胞ipRGCが青い光に強く反応するため、その情報を受け取った脳の親時計のニューロンも活性化します。そうすると、睡眠をうながすホルモンであるメラトニンが減少してしまうのです。メラトニン濃度が上昇するのは光がないときだけなので、日が沈んだあとは自然に増加するのです。

■ブルーライトを発する画面を見ることで、寝つきが悪くなる

青い光を含むのは日光だけではありません。白熱電球、LED、テレビ、タブレットやスマホの画面などの人工的な光はすべて、青い光を発し、体内時計に昼間のサインを送っています。

近年、夜に光を浴びること、とくに画面からの影響に、科学者や世間の注目が集まっています。「ブルーライト」という言葉を耳にする機会も増えました。たくさんの科学研究が、ブルーライトを発する画面を見ることで、メラトニン(睡眠をうながすホルモン)が抑制され、寝つきが悪くなることを明らかにしています。

小さな子どもほど、光が睡眠に及ぼす影響が大きくなっています。

コロラド大学ボルダー校のモニーク・ルブルジョア准教授たちが、就学前の子どもたちに「光のテーブル」で遊んでもらうという実験をおこないました。夜に1時間、光るテーブルの上で、透明な塗り絵シートやマグネットタイルなど、光に当たりやすい方法で子どもたちに遊んでもらいました。

すると、メラトニン濃度は通常、夜に上昇して眠さを引き起こしますが、強い光を浴びることで、子どもたちの体内からメラトニンが消え、テーブルの光を消したあとも低下したままだったのです。

■夜に浴びる光をコントロールすることで、赤ちゃんの睡眠が改善

この実験で、光が子どもたちに与えた影響は、それまでの実験でわかっていた大人への影響よりも大きかったため、「とくに子どもは夜に光を浴びることによる睡眠不足のリスクが大きい」という仮説が立てられました。

その理由は、外からの光を通過させる目のレンズは、子どものときほど透明度が高く、成長するとともにくもってくるからではないかと考えられています。

赤ちゃんの睡眠リズムを乱すのは青い光だということを示す科学的研究はまだありませんが、自分の子どもや、寝かしつけの相談を受けた多くの家族と試してみたところ、結果は明らかでした。夜に浴びる光をコントロールすることで、赤ちゃんの睡眠が改善したのです。

ところで、わが家の洗面所には、窓がありません。かわりに、鏡の上に明るいライトがあって、合計300Wの光を発しています。歯をみがいたり、顔を洗ったり、メイクをしたり、眉毛を抜いたりするのに十分な明るさです。

ところが、青空の下で鏡を見るといつも、処理し忘れた細い眉毛がたくさん残っていて、びっくりします。そして、眉毛以外にも、だんだんと見えてくる自分の顔のアラ―日光の中で見る自分の顔は、毛穴やしわだらけ。完璧ではない分、個性的です。

なぜ洗面所では見えなかったものが見えてきてしまうのでしょう。

■明るさが1000倍になっても人間はまったく気がつかない

その答えは、体内時計と睡眠に光が及ぼす大きな影響について、あまり気づかずに暮らしていることに関係してきます。どちらも、わたしたちが光の強さのちがいにとても鈍感なのが原因です。

“Color Science”(色の科学/ヴィシェツキ&スタイルズ共著/未邦訳)では、人間が光の強さのちがいをどれくらい過小評価しているかを正確に調査しています。そこでは、明るさが1000倍になっても(月の光とオフィスの差など)、人間は10倍ほどのちがいしか感じないと結論づけられました。そして、バスルームやキッチンの照明と曇りの日の明るさといった10倍程度のちがいには、人間はまったく気がつかないのです。

こうしたプロセスは、「適応」といいます。適応のおかげで、光の強さが大きく異なる場所を、行ったり来たりできるという利点もある一方、人工的な照明があふれている現代では、問題も生じます。日々接する光の強さの変化を感じることができないため、「光が睡眠をさまたげている」という考えを、無視してしまうのです。

■青い光が含まれていれば、「朝が来た」と感じてしまう

一方、脳そのものは、光の強さを正確に感じていて、忠実に反応します。青い光が含まれていれば、「朝が来た」という信号としてとらえます。強さのちがいにも敏感です。その感度はけた外れです。ろうそくの光のような、青い光がわずかしか含まれない弱い光でも反応し、ふつうのリビングの照明のような光では、時差ボケ並みの強力な反応をしてしまうのです。

これで、赤ちゃんのためにすべきことがはっきりしましたね。赤ちゃんに眠っていてほしい時間帯は、たとえわずかでも、青い光を存在させてはいけないのです。

夏には、午前4時頃に日が昇ります。朝4時に寝室に日光がさしこむと、赤ちゃんの脳はすかさず反応します。体内時計は、朝日を「起きて!」の合図だと受け取ってしまいます。

どうすれば、これを防げるのでしょう?

■遮光カーテンを買って、窓に取りつければいい

答えは簡単です。光を完全にシャットアウトする遮光カーテンを買って、赤ちゃんを寝かせている部屋(子ども部屋またはママ・パパの寝室)の窓に取りつけましょう。

ソフィア・アクセルロッド著、綿谷志穂訳『赤いライトで朝までぐっすり 赤ちゃん寝かしつけの新常識』(東洋館出版社)
ソフィア・アクセルロッド著、綿谷志穂訳『赤いライトで朝までぐっすり 赤ちゃん寝かしつけの新常識』(東洋館出版社)

夜にはカーテンをきちんと閉め、カーテンとカーテン、カーテンと壁のすきまをなるべく小さくしましょう。必要であれば、カーテンと壁のすきまをテープでふさいで、光が入らないようにしてもいいでしょう。

いま使っているカーテンが気に入っているのであれば、遮光ライナーをつける、窓枠内にテンションポールで遮光性のあるカフェカーテンやタブカーテンをつける、窓枠内に遮光性のあるロールスクリーンを設置する……といった方法もあります。方法はどうであれ、遮光性のある布で窓をおおうことができれば、問題なしです。

きちんと遮光できているかどうか、実際に光がさしこむ朝にチェックしましょう。カーテンを閉めたとき、夜中と同じ暗さになることが理想です。

■最初は大変だが、数日で効果は出る

赤ちゃんの部屋を暗くすれば、赤ちゃんに起きる時間を知らせるのは、太陽ではなく、あなたの役目になります。起きる時間まで部屋が暗いままなら、体内時計としては、午前4時はまだ夜ということになるのです。

部屋の暗さを保ったとしても、最初は、「起きて遊びたい」と泣く赤ちゃんを数分ごとにあやしに行くことになり、大変だと思います。でも、数日で効果は出ます。

それでも早朝に起きてしまうのなら、お昼寝の時間を見直す必要がありそうです。お昼寝についてのアドバイスは次回、紹介します。(続く)

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ソフィア・アクセルロッド 睡眠科学者
睡眠科学者で二児の母。N.Y. マンハッタン在住。エバーハルト・カール大学テュービンゲン、フンボルト大学で学び、2012年に生物学の博士号を取得。ノーベル生理学・医学賞を受賞したマイケル・W・ヤング氏の研究室に所属し、睡眠についての研究をおこなっている。自身も物心ついたときから不眠に悩まされ、子どもの寝かしつけにも悩んだことから、睡眠科学者としての知識をわが子の寝かしつけに生かすようになる。お世話になったドゥーラ(産前・産後のケアスタッフ)の兄弟の子の睡眠にも効果があったことをきっかけに、2018年より、0歳~6歳の子を持つ保護者を対象に、寝かしつけ教室「How Babies Sleep-A workshop for children aged 0-6」を開催。ドゥーラのクライアントたちからはじまり、これまで100組以上の親子の睡眠を改善している。Photograph by Winter Willoughby-Spera

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(睡眠科学者 ソフィア・アクセルロッド)

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