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まだ若いのに「スマホ老眼」に悩まされる人の3つの落とし穴

プレジデントオンライン / 2021年1月3日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

■自宅時間が増えると、スマホを使う時間も長くなる

新型コロナウイルス禍で迎える初めての年末年始。感染者が全国で急増している中、子どものいる家庭にとって、冬休みをどう過ごすかは悩みの種だろう。

冬休み中、巣ごもりを余儀なくされ自宅で過ごす時間が増えると、スマホやパソコンなどのデジタル機器を使う時間が長くなる。そうなると、特に、小さい子どもの「やり過ぎ」「見過ぎ」が心配される。

12月1日に国立成育医療センターが発表した「コロナ×こどもアンケート」第3回調査報告書(子ども2111人、保護者8565人の協力で実施)によると、勉強以外でテレビやスマホ、ゲームを見る時間(スクリーンタイム)が、2時間以上の子どもは42%と半数近いことがわかった。

さらに、コロナ禍以前の2020年1月と比べ、スクリーンタイムが増えた子どもは41%と半数に迫り、テレビやデジタル機器を使う時間が明らかに増えていることがわかる。

しかも、このアンケートは2020年9月1日から10月31日の期間に実施されているので、学校が休みになればスクリーンタイムはさらに増えると考えられる。

■小学生で37.6%、中学生で65.6%がスマホを持っている

内閣府の調査(2020年)でも、小学生の86.3%、中学生の95.1%がインターネットを利用しており、ほとんどの小中学生はスマホをはじめとするデジタル機器を使用していることがわかる。

使用機器をみるとスマホは小学生で37.6%、中学生で65.6%、タブレットとゲーム機は小学生がそれぞれ33.8%、40.8%、中学生が31.1%、30.3%となっている。

さらに、学校の授業でも2019年度から小中学校でデジタル教科書が解禁となり、パソコンやタブレットを利用した授業が増えている。加えてコロナ禍でオンライン授業が拡大したことで、この流れは加速している。

文部科学省の「GIGAスクール」構想では子どもたち一人に1台の端末を与える方針が示され、今年度中に公立小中学校ではパソコンやタブレット端末が1人1台配布される予定だ。

まさにデジタル化は時代の趨勢だが、気になるのは成長期の子どもたちへの影響だ。

■デジタル機器の健康への影響が現れやすいのは睡眠と目

これまでもデジタル機器の健康への影響は指摘されてきた。中でも特に影響が現れやすいのが睡眠と目だ。

睡眠障害を研究している精神科医の間では、スマホやパソコンによる睡眠障害が中高生に増加しており、学業や日常生活に支障をきたし、治療が必要なケースもあるという。

その代表的なものが「既日リズム障害」だ。睡眠障害の一つで、朝起きて夜眠るという自然な睡眠リズムが乱れて、朝、無理に起きると頭痛や眠気、倦怠感などの身体的な不調が出るというもの。そのため、不登校や遅刻、欠勤などを繰り返し、普通の生活ができなくなってしまう。

その原因の一つとされているのが、液晶ディスプレーから出ている青色光(ブルーライト)であるといわれている。この光が睡眠に関係するホルモン、メラトニンの分泌に悪影響を与えるという研究が数多く出されている。

夜間にブルーライトを多く浴びると、睡眠リズムが狂いやすくなり、睡眠障害やうつを引き起こしやすくなるというのだ。

自宅デスクでPCを用い作業するビデオ編集者
写真=iStock.com/zsv3207
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/zsv3207

■子どもや若者に「スマホ斜視」が増えているという研究結果

ブルーライトは目にも悪影響を与えるという説もある。まだ十分なエビデンス(科学的根拠)はないが、紫外線に近い波長のため、瞳孔に影響を与え眼精疲労などの一因となると考えられている。

ただし、これは夜間に長時間浴びた場合だ。昼間の太陽光にはブルーライトも含まれており、昼間浴びるのは問題ない。太陽光を浴びて外遊びすることはむしろ近視の予防にもなる。

デジタル機器が子どもや若者に与える目への影響を研究している、不二門(ふじかど)尚(たかし)大阪大学大学院特任教授によると、コロナ禍の影響で加速するデジタル機器の普及で、子どもたちの近視や目のトラブルが増加するという。

特に目の機能が発達中の児童への影響はより大きくなるそうだ。不二門特任教授らの研究では子どもや若者に「スマホ斜視」が増えているという。

■30歳以下の若者に広がっている「スマホ老眼」も要注意

例えば、突然起こる「急性共同性内斜視」という内斜視(左右どちらかの視線が内側にずれる)が増加しているが、その一因にスマホや3D映像などの視聴の可能性があるそうだ。実際に4歳11カ月の子どもが3D映画を観た後、急性内斜視になったケースが報告されている。

一方で、1日4時間以上スマホを使用して、ものが二重に見えるようになった内斜視の子どもが、スマホ使用を1カ月間控えたところ、内斜視が改善した例もあるという。

最近は子どもたちが日常的にスマホで文章を読んだり書いたりしているが、これも目にとっては要注意なのだ。

「スマホ使用時の視距離は、平均20cmですが、紙の本や雑誌では30cmです。10cm短くなるとピントを合わせるのに1.7倍の負荷がかかり疲れやすくなりますし、近視の要因ともなります」(不二門特任教授)

30歳以下の若者に広がっている「スマホ老眼」もスマホ画面を見続けることで、ピント調整能力が低下するのが一因だ。調査に参加した121人の高校生の約半数が調節不全で、若くして近くにピントが合いにくい傾向になったという。

■デジタル環境に応じた健康対策で目への負担を減らす

とはいえ、デジタル社会ではスマホやタブレット、パソコンは不可欠だ。OECD加盟国の中でも日本は学校授業でのデジタル機器の使用時間は最下位。それだけにコロナ禍をきっかけにデジタル機器の普及がより一層、加速されるはずだ。

木目調のダイニングテーブルの上のラップトップとスマートフォン
写真=iStock.com/AleksandarGeorgiev
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AleksandarGeorgiev

これからはデジタル環境に応じた健康対策が重要になる。少しでも目への負担を減らし、子どもたちや若者の健康を守るにはどうしたらいいのか。

不二門特任教授は以下の3つを勧める。

①学童がスマホやタブレットなどを使う時には30cm以上離す。
②長時間続けて使わず、30~40分に一度、目を休める。
③外で遊ぶ運動をするなど、戸外活動を増やす。

冬休み中、子どものゲーム漬けやスマホの使い過ぎを心配する親は多いだろう。

専門家のアドバイスは決して難しいものではない。子どもへのちょっとした気配りが心身の健康を守ることにつながるはずだ。

■目を守る3つのポイントは「距離・時間・輝度」

なお、日本眼科医会のサイトでは、デジタル機器から目を守るための対策が詳しく紹介されている。眼を守る3つのポイントは「距離・時間・輝度」だという。

①画面を離して見ること

デスクトップPCは50cm、スマホは30cm以上。特に3D映像は通常の2Dよりも近づいて見ている場合が多いため、意識して離すことが大切。

②休憩を取ること

間隔は1時間の連続作業の間に10分程度。さらに、30分に一度、5分ほど5~6m先の遠くを見ること。

③画面の明るさに注意すること

画面は紙面の明るさより暗くする(輝度を低く設定する)ことがポイントだ。

これらを守るだけでも、目の疲れや痛み、肩こり、腰痛、だるさ、めまい、イライラ感などの予防が期待できるそうだ。詳細については国際医療福祉大学の原直人教授の資料「デジタル機器により生じる視機能の弊害」が参考になる。ぜひ一読してほしい。

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油井 香代子(ゆい・かよこ)
医療ジャーナリスト
患者に役立つ医療情報や医療問題を中心に取材し、新聞、雑誌などで、長年執筆を続けてきた。テレビ、ラジオなどへの出演のほか、医療系学会の倫理委員なども務める。最近は予防医療やオーラルフレイル予防に関心を持つ。著書に『医療事故』『あなたの歯医者さんは大丈夫か』『医療事故防止のためのリスクマネジメント』などがある。

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(医療ジャーナリスト 油井 香代子)

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