今の日本人は「収入格差」よりも「時間格差」で人生に差がついている
プレジデントオンライン / 2020年12月25日 11時15分
※本稿は、本田直之『パーソナル・トランスフォーメーション コロナでライフスタイルと働き方を変革する』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■通勤が無くなって1時間以上時間が生まれた
コロナがもたらしてくれた変化の1つには、間違いなく「時間」が挙げられるでしょう。時間は一気に増えました。そして、増えた時間はこれからもう減らないと私は思っています。
第1に、多くの会社で通勤がなくなった。片道1時間として往復2時間。外に出ることになれば、着替えも必要ですし、女性なら化粧をしたり、洋服を選んだりと、プラス1時間くらいは必要だったのではないでしょうか。そうすると、2、3時間、浮いた人が多い。
完全リモートでなく、週に何度かは会社に行く、という人も少なくないかもしれませんが、それでも毎日の通勤はなくなったわけですから、浮いた時間は大きい。もう元には戻れない、という人も少なくないようです。
また、打ち合わせをするにしても、コロナ前はどこかに出向いて打ち合わせをしていたわけです。そうすると、そのための移動時間も必要だった。そうすると、通勤を合わせて1日4時間くらいは浮いた人も多いのではないでしょうか。移動が多い人であれば、もっと浮いている。それが、丸々自分の時間になったわけです。
■会議はダラダラしないし、呼び止められることもない
その打ち合わせの手段がZoomをはじめとしたオンラインになったわけですが、意外にもオンラインミーティングというのは正確な時間で始まります。
通勤がないので、電車が遅れてしまった、と後から入ってくる人もいない。そうすると、議論もスムーズに進んで、終わる時間も意外に正確です。
会議が始まる前に雑談で時間を費やすこともなくなったし、オンラインだとダラダラしたミーティングをすることもなくなった。会議やミーティングがオンラインになって、これまた時間が浮いたのです。
もしかすると、8時間労働であれば、半分以上浮いた人もいるのではないでしょうか。ミーティングや会議の時間がずるずる延びたり、オフィスにいたために「ちょっといいかな」と呼び止められて時間を取られたり。こうした無駄な時間があったという人も少なくないと思うのです。
こういうものがすべてなくなった。だから、時間はとても増えている。リモートワークになって、それを実感している人も少なくないのではないかと思います。
■「時間格差」がどんどん生まれている
ただ、問題はその増えた時間を何に使っているか、です。これが、最も大事なところです。
家にいるので、時間が増えても自己管理能力がない人は、その時間を浪費に回してしまいかねない。誰も監視していませんから、何をやってもいい。自己管理できない人は、ダラダラとテレビやゲームにはまったりして、せっかくの時間を無駄に使ってしまっているのです。
お金と同じです。自己管理できている人は、お金を自分の仕事に使ったり、自分の力を上げることに使う。すると、これが再投資になって、仕事のレベルがどんどん上がっていったりする。自分自身のレベルも上がっていく。
その意味で、今生まれていることは、実は時間格差なのです。大変な時間格差が、とんでもないレベルで日々、生まれ、広がっているのです。
私のまわりを見ていても感じるのは、危機的な状況の中でも、どんどん変化したり、進化したりしている人が多いということです。ビジネスが厳しい状況にあっても、そこから進化していこうという動きをしている人たちも少なくない。
それができるのは、時間を有効活用しているから。通勤や移動時間、無駄な会議がなくなって、その時間を再投資しているから進化のスピードが速くなっているのです。逆に、時間をうまく使えずに浪費していたりすると、変化も進化もできない。ここで、大きな差が生まれてしまっているのです。
■住む場所から解放され、ライフスタイルも選べるように
もう1つ、コロナで大きく変わったのが、場所の概念でしょう。何度も触れてきましたが、オフィスに出勤しなくてよくなった会社がとても多い。
というより、オフィスに出社してはいけない、というお触れを出した会社もありました。これは本当にかつてない事態です。会社に行ってはいけないわけですから。
会社に行かなくてよくなった、オフィスに通勤しなくてよくなった、ということは、リモートワークができるところであれば、どこでも働くことができるようになったということです。これは、住む場所の選択肢がとても広くなったということ。しかも、能動的に、自分で選べるようになったのです。
会社に近いとか、駅に近いとか、こうしなければならない、というところではなく、こうしたいというところが選べるようになった。こんなライフスタイルで暮らしたいという場所を、選ぶ自由を手に入れることができるようになったのです。
ここでも、通勤しなければならない会社がどこどこにあるから、という消極的な選択から、ここに住みたいから住むという積極的な選択ができるようになってきたということです。
■都心一極集中から地方に分散する流れ
これまでも、サーフィンが大好きで、茅ヶ崎(ちがさき)や湘南に家を構えている人たちは少なくありませんでした。ただ、そこから都心に通勤するとなると、2時間近くかかる。この長距離通勤が、サーフィン好きには大きなネックになっていたのです。
しかし、これからは通勤がなくなる。あるいは、週に数回の通勤で済むようになる。そうであれば、サーフィンがいつでもできる茅ヶ崎や湘南に住みたい、という人はどんどん増えていくと思います。実際、そういう動きは加速しているようです。
これまでの都心一極集中から、地方に分散するという流れは、これまでなかったほどのスピードで広がっていくことになるのではないでしょうか。仕事のために、仕方なしに都心に住んでいた人たちが、どんどん出て行く可能性がある。
また、親の介護、子どもの教育などで地方に住むことを考えていた人たちにとっても、この流れはとてもありがたいはずです。
もちろん、自然が好きだから、といった積極的な理由によって移住していく人も増えていくと思います。さっそく長野に住み始めた知人から、「自然の近くにいるありがたみを感じています。自分には自然が必要だとわかりました」という連絡をもらったりしています。
自然の中を散歩するだけでも気分が断然よくなることを改めて感じたそうです。やはり住む場所は、極めて重要なのです。
■ヤフーの役員も移住を決断した
時間と場所に縛られない新しい働き方にチャレンジしようとしているヤフーでは、友人でもある取締役常務執行役員の宮澤弦さんが、6月に東京の家を引き払って、軽井沢に家族で完全移住してしまいました。
自ら新しい働き方を体現したかった、と語っていましたが、もちろん地方移住をずっと考えていたのだと思います。それが可能になる時代が、コロナによってやってきてしまったのです。そして、役員という要職にありながら、あっさりと移住を決断してしまった。
彼のFacebookには、「今週Zoom以外で会ったのは、子熊に野ウサギ、フクロウなど人間以外の動物達ばかりです」と書かれていました。
住む場所を選び、自分のやりたいライフスタイルを、堂々とできるようになった。これもまた、コロナの大きな恩恵でしょう。こうしたい、という積極的な意思のある人にとっては、本当に魅力的な状況がやってきているのです。
逆に、自分に意思がなければ、その恩恵を活かすことができません。自分に心地よいライフスタイルはどんなものなのか、改めて考えてみることです。それは、間違いなく人生の充実につながっていくと思います。
■勝手な思い込みがポテンシャルを制限している
仕事はオフィスでなくてもできる。仕事とプライベートの境目はなくなる。これは、私自身が10年以上にわたって、ずっと訴え続けてきたことでした。好きな場所に住み、好きな場所で仕事をする。それは可能なのです。
実際、私は東京とハワイのデュアルライフを10年以上にわたってやってきました。また、世界中を旅しながら、いろんな仕事も推し進めてきました。ハワイや旅の日々はプライベートでもあり仕事でもあり、そこには境目はありませんでした。
やればできるのです。日本中どこでもできるし、世界中どこでもできる。プライベートと仕事の境目を作る必要もない。私はそれを、実際にやってきていたのです。
その意味で、最も変えなければいけないものは何かといえば、自分自身の思い込みだと私は思っています。こうしないといけない、という勝手な思い込みが、どのくらい人生のポテンシャルを制限していたか。そのことに、多くの人に気づいてほしいのです。
そして、これからは変わることにパワーを使うべきです。変わることは大変さも伴います。だから、そこに力を入れる。なぜなら、変わらないといけないから。アフターコロナで活躍するような人間になるには、変わっていかないといけないから。
■変われなければ、居場所を失っていきかねない
求められる能力やスキルも、これから変わっていくはずです。何より、オフィスに行かなくてもよくなったわけですから。会社もそうですが、個人も一気に変わることができなければ、そのまま置いてけぼりにされてしまう危険があるのです。
実際、社会も政治も変わり始めています。例えば日本の政治は、「みんな」をよくしないといけないという発想が前提にありました。どうして電子マネーの導入がこんなに進まないのかといえば、わからない人が一部にいるからです。
しかし、こんなことをやっているのは、日本くらいです。世界では、どんどん電子マネー化が進んでいる。「わからない人が一部にいるから」などと、もはや言ってはいられないからです。世界から、取り残されてしまうのです。
だから日本でも、「申し訳ないけど、できない人はごめんなさい」という空気になってきています。この流れは間違いなく進んでいくはずです。わからないから、といって、もう待ってくれなくなるのです。
これは、会社の世界でも同じになるはずです。変われない人は、変われないからといっても、待ってはもらえない。そして変われなければ、居場所を失っていきかねないということです。
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レバレッジコンサルティング代表取締役
日米のベンチャー企業への投資育成事業を行いながら、年の5カ月をハワイ、3カ月を東京、2カ月を日本の地域、2カ月をヨーロッパを中心にオセアニア・アジア等の国々で過ごし、各地で食およびサウナを巡る旅をしている。食やサウナのイベントのプロデュースも行う。
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(レバレッジコンサルティング代表取締役 本田 直之)
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