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ブックオフからパソナまで「消費者から買う」ビジネスが圧倒的に儲かるワケ

プレジデントオンライン / 2020年12月23日 11時15分

ブックオフ(東京都新宿区新宿)=2008年5月26日 - 写真=時事通信フォト

どんなビジネスなら儲かるのか。東大在学中に起業し、現在年商10億円の企業を経営する事業家bot氏は「消費者に商品を売るビジネスよりも、ブックオフのような消費者から買うビジネスのほうが圧倒的に儲かる。特にこれから儲かるのは、肉体労働者の労働力を買う人材派遣業だ」という――。

※本稿は、事業家bot『金儲けのレシピ』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

■消費者に売るビジネスと消費者から“買う”ビジネス

一般的に「商売」としてイメージされるのは、スーパーマーケットや飲食店のような、「消費者に売る」ビジネスである。一方で、バイクの買い取りの「バイク王」や、「ブックオフ」、質屋のように、「消費者から買う」ビジネスも存在する。

この二種類のビジネスを比較したときに、「消費者から買う」ビジネスのほうが圧倒的に事業構造がいい。

何故ならば、消費者というのは文字通り“消費”者なので、消費のプロフェッショナルなのである。10円安い卵を求めて、1キロ離れたスーパーに行く主婦、というのも決して珍しい存在ではないことからもそのことがわかるだろう。価格感応度が高いのである。

一方で、消費者が「売る」ときはプロフェッショナルではない。実際、ブックオフに本を持っていき、「全部1円です」と言われても、持ち帰るのが面倒なので全て売ってしまう人間がほとんどである。

消費者が「売る」ときは、売却の一回性が働くので、価格相場に詳しくなりようがない。一方、買取業者側は複数回の取引をしているので、相場観を理解しているわけである。

■買取専業を掲げて成功した「ガリバー」

ガリバーという中古車屋は、「買取専業」という新しいビジネスモデルで大きく成長した。

車販売
写真=iStock.com/acilo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/acilo

これは、利益の源泉が「消費者からの買い取り」にあることを見抜き、そこにフォーカスすることで利益率を高めることに成功したからなのである。

このガリバーの成功要因は「買取専業」を掲げたことであった。ガリバー以前の中古車屋は、「高価買取」と「安価販売」を同時に謳うというやや矛盾した業態であったが、ガリバーは買取専業にして、買い取った車は業者間のマーケットに流してしまうことで、「消費者から買い取る」というコアバリューに注力することができた。

この戦略の事例は、楠木建『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)にも記述されている。また、この「買取専業」と同じようなアプローチを、他の業態で展開できる可能性もあると考えられる。

例えば、市場価格がある程度ロックされていて、業者間での価格が安定している商材であれば、「安く買い取る」という点にフォーカスして事業を展開し、売る部分は業者間市場で売り払ってしまうという割り切りを行うことで、新たな事業のヒントが見えてくるかもしれない。

■消費者の労働力をまとめ買いする派遣事業者

消費者が「売る」ときに、値段について真剣に考えていないのは、モノだけではなく、自分自身についても同様である。

ほとんどの日本の労働者の給料は、実質的には、「所属する業界×業界内でのランク×役職・雇用形態」によって決定されており、それに疑問を持つ人はさほど多くはない。逆に言うと、企業が労働者から「労働力」を買うときにもチャンスがある、ということである。

この労働力を取りまとめて売る、というのは極めて原始的なビジネスで、例えば山口組が港湾労働者の派遣業から発達したように、わかりやすくマージンを抜くことができるビジネスである。

そして、このビジネスを現代風にしたのが、規制緩和の波に乗った派遣事業者であり、クラウドワークスやランサーズを始めとしたクラウドソーシング系のビジネスであると言える。

【図表】クラウドソーシングの仕組み
出所=『金儲けのレシピ』

■なぜ「労働力取りまとめ業」にはニーズがあるのか

ここまで読んできた皆さんは、単純な疑問が湧くだろう。それは、「何故、直接雇用しないのだろうか」ということである。直接雇用してしまえば、仲介業者への手数料を支払う必要がないため、2割程度は支払いを削減できるはずである。

労働力取りまとめ業の本質的な価値、それは「労働者の質のスコアリング」「すぐに、大量に手配できる」「解雇規制への対応」の3点である。日本市場においては特に、労働者保護のための解雇規制が極めて厳しい。

リストラを行うためには、整理解雇の4要件を満たしていないと、合法的な解雇とはみなされない。具体的には、①人員整理の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③被解雇者選定の合理性、④解雇手続の妥当性の4つの要件が満たされている必要があり、日本における合法的な解雇のハードルは極めて高いと言える。

このことが逆に、派遣業への強いニーズを生んでおり、労働力のニーズがなくなる可能性がある場合、その仕事に対して正社員を雇用したくない、というニーズが働くのである。

また、正社員であればAさんの給料を、同じ部署のBさんの給料の3倍にする、というのは実質的に極めて困難であるが、フリーランスであれば可能である。

このような、流動性の提供とダイナミックプライシングが、法人にとっての労働力取りまとめ業のニーズであると言えるだろう。

■規制緩和の勢いにのったパソナだが…

「労働力を取りまとめて売る」ということが、商売のテンプレートとして有益だということはわかったが、だからといって「とにかく人を集めれば安泰」というわけではもちろんない。

例えば、労働力を取りまとめて手数料を抜くビジネスとして真っ先に思い浮かぶのは、「聖域なき構造改革」と銘打ち、小泉内閣の時に行われた規制緩和を背景に急成長した「パソナグループ」だろう。

小泉内閣のブレーンと言われ、規制緩和を進めた張本人である竹中平蔵が会長を務めるパソナであるが、事業規模は大きいものの、営業利益率は極めて低い状態である。また、市場からの評価としても、親子上場をしている子会社のベネフィット・ワンの時価総額を大きく下回り、市場からの評価を受けている状態とは言い難い。

というのも、派遣業自体は元々儲かるビジネスであるが、近年の派遣法の改正により、労働者保護の声が高まり、労働者派遣の期間が同一社員同一部署であれば原則3年までとなるなど、法律が厳格化されている。

また、それ以上に、元々パソナは「ホワイトカラーの派遣」というのが事業の根幹にあるが、これはRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など、業務効率化の波がきている昨今の社会情勢の煽りをもろに受ける。

つまり、ホワイトカラーで働きたい人は余っており、労働者取りまとめ業も特色がないと生き残りづらくなっているのである。

■「エクセルができます」より「トイレを直せます」のほうが価値がある

では、いまの時代にどのような労働力を集めれば良いのかというと、1つ目は社会的なコンテクストからの逆算である。

事業家bot『金儲けのレシピ』(実業之日本社)
事業家bot『金儲けのレシピ』(実業之日本社)

例えば、「女性の社外取締役を増やそう」という動きや、コーポレートガバナンスの強化において、「常勤監査役が不足している」という社会背景などは、どのような人材が不足しているのかを明確に示していることがわかるだろう。

ホワイトカラー1つとっても、このような特定のニーズにおけるプロフェッショナル人材を集めて派遣するビジネスがあれば、今後伸びる可能性は高いと考えられる。

もう1つは、マクロの人口動態からの逆算である。日本の人口動態は今後ますます逆ピラミッドになっていくため、一生懸命汗をかく必要のある労働スキルを持った人材が、今後重宝される社会になる。

パソナがこれまでやってきた中途半端なホワイトカラー人材はますます余るが、反対に水道工事や大工など、肉体労働を伴う労働スキルの方が、労働人口が減っていく中で希少化し、重宝されるのである。

ベビーシッターを派遣する「キッズライン」は、登録したシッターがわいせつ事件を起こすなどの大きな問題もあったが、ベビージッターという特定の、肉体労働性のある専門スキルを持ったプロフェッショナルを集めて急成長した。

この事例も、上記のようなブルーカラー的プロフェッショナル人材の取りまとめという文脈に含めることができるだろう。

冷静に考えてみると、一応エクセルが使えます、とりあえずVLOOKUPが使えますというレベルのホワイトカラー労働者よりも、トイレを直すことができるスキルのほうが遥かに希少なのである。

そして、その結果として値段もつきやすいのは、少し考えて見ればわかるだろう。これまでは肉体労働は賤業として安く見積もられていたが、地位の逆転現象が起きる日は近い。

■中途半端なサラリーマンより肉体労働のほうが食える時代が来る

正確に言えば、頭脳労働と肉体労働の二極化が進み、その中間に存在していたとりあえずVLOOKUPくらいは使えます的な、中途半端なホワイトカラー労働者は、自動化の波に取って代わられるのだ。

日本企業では、これまで、会議のための会議、その会議のための資料作り、といったような、企業の儲けとは全く何も関係のないような仕事が多すぎたのである。そして、このような仕事が、「働き方改革」「デジタルトランスフォーメーション」により一掃されることはほぼ疑いようがない。

その結果、これまで、適当な資料を作って何となく給料をもらっていた正社員は職にあぶれるような状態になり、頭脳労働と肉体労働の二極におけるプロフェッショナルだけが稼ぐことができる、そして稼げる人と稼げない人の明暗がますます分かれていく、厳しい時代になっていくだろう。

このような時代においてやるべきことは、まず、自分が「どのように会社に利益貢献しているのか、あるいはしていないのか」を分析することである。

そして、自分がもし会社の利益に対して貢献をしていないと自己認識するのであれば、少し資料を綺麗にするとか、エクセルの使い方の勉強をするというような、利益に対しての貢献が殆どないようなスキルの勉強をして自分の無能を解決しようとしても意味がないだろう。

拙著『金儲けのレシピ』にも書いたような「金儲けリテラシー」を養うことで、本質的にどうすれば会社の「金儲け」に貢献できるのかについて、頭に汗をかくべきだ。

そして、頭に汗をかく仕事が向いていないと考えるのであれば、むしろ、中途半端なホワイトカラー労働者の道をすっぱり諦めたほうがいい。

むしろ水道工事のような、肉体労働的な要素と専門知識をかけ合わせた仕事にキャリアを切り替え、1日に何件もトイレの詰まりを直すキャリアを選んだ方が確実に、そして長期的に金を稼ぐことができるだろう。

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事業家bot(じぎょうかぼっと)
経営者
東京大学在学中に起業、のち中退。フランチャイズチェーン企業に事業売却後、売却先企業にて、新規事業及び経営企画管掌の役員を務める。再度起業し、現在年商10億円以上の企業を経営。起業しビジネスを作っていくプロセスの中で、「金儲け」のノウハウが確立していないこと、既存のビジネス書があまり当てにならないことを痛感し、「金儲けのノウハウ」をまとめることを決意。著書に『金儲けのレシピ』(実業之日本社)などがある。

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(経営者 事業家bot)

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