「読んだ本は忘れない」そんな東大生が実践する"忘れない読書"の3要点
プレジデントオンライン / 2020年12月29日 11時15分
■いつの世も「読書」に付きまとう悩み
みなさんは「読書」は好きですか? 「積ん読」という言葉が広まって久しいですが、テレビやラジオなどの映像・音声メディアが時代から置いていかれてもなお、本という旧式のメディアは一定の地位を保ち続けているような気がします。
社会的地位の高いビジネスパーソンの方々とのハイコンテクストな議論についても(もちろん雑談を含みますが)、知識や教養が身に付いていて得をすることはあっても、損をすることはなかなかありません。ですから、やはり本を読んで知識を深めるということは、社会的な地位を得れば得るほどに避けられないものになるでしょう。
ここで問題になるのが、「読書の方法」です。読書とは読んで字のごとく「書を読む」ことを指しますが、だからといって、本を開いてパラパラとページをめくりながら文章を目で追っていっても、それだけで知識が身に付くものではありません。
■東大受験で編み出した「理解を深めるための読書術」
本を読む。ただそれだけのことなのに、うまくできずに悩み、苦しんできたことは、僕を含む多くの人に覚えがあることでしょう。『独学大全』(ダイヤモンド社)の著者、読書猿氏でさえ、元々は読書が大の苦手であったといいます。
しかし、ある単純な工夫、マインドセットの刷新を行うだけで、本を読むことのハードルがグッと下がるということも確かです。これは「読書術」をうたった本が市場に溢(あふ)れていることからもわかるでしょう。読書にも「うまいやり方」と「まずいやり方」があり、技術を身に付けることさえできれば、どんな人でもある一定以上は書物から情報を吸収することができるのです。
かくいう僕も、かつては本を読んでそこから情報を得ることが苦手でした。活字アレルギーを抑えて文章に目を通すところまでは何とかこぎつけても、いったい何が書いてあったのか? と問われると黙りこんでしまうような、そんなずさんな読書をしていました。
しかし、東大受験の中で「いったい何を聞かれているのだろうか?」「著者はいったい何が言いたくてこの文章を書いているのだろうか?」と考えながら読んでいくうちに、僕なりの「理解を深めるための読書術」を確立させることができました。今回は、その中から代表的な方法を3つ、例文を交えながらご紹介させていただこうと思います。
■読書をしても知見が深まらないワケ
そもそも、なぜ「読書しても意味が理解できない」とか「本で得た内容を実践に生かすことができない」という事態が起きるのでしょうか? 日本語を母語としているわれわれは「日本語の文章が満足に読めるのであれば、文章が何を意味しているのかも理解できる」と思ってしまいがちです。
読めれば、理解できる。そして理解できれば、実践できる。このように考えるならば、本を読み切った時には、必ずあなたはその本で手引きされていた技能が使えるようになっていたり、もしくはその本の著者の思考法を一部でも身に付けることができたりしているはずです。
例えば、あなたがビジネス書を一冊頑張って読み切ったとします。そして次の日に出勤した時、意気揚々とその本に書いてあった方法論を実践してみようと思い立ったとしましょう。しかし、まったく手が動かない。焦って思い返しても、何をどうすればいいのかがさっぱり見当もつかないし、そもそもよく考えれば、筆者が何を言っていたのかもわからない。こんな経験はないでしょうか?
ずばり、この深刻なギャップは「読者が筆者の言うことをそっくりそのままうのみにしているから起きる」のだと僕は思います。つまり、筆者の言っていることに対して、素直に受け止めすぎているからこそ、このような事態が起きるのです。
■本の中の例は「筆者の主張ありきで設定された例」
わざわざ本を書いてまで主張することなのですから、その本の中には、新規性に富んだ「筆者の主張」があるはずです。そこを捉えることこそが、読書の基本であり神髄です。しかし新しいことを主張するのですから、その主張は受け入れがたい、もしくは理解が難しいものであることがほとんどです。
そんなことは筆者もよく分かっていますから、彼らは具体例や比喩を用いることによって、自身の主張をどうにか伝わりやすくしようと試みます。とはいえ、この具体例などは、「筆者の主張ありきで設定された例」でしかありません。その例は、その主張が通ることが前提として設定されたうえで、そこに設置された例なのです。
その具体例を通して私たちに伝わるのは、「そのある一場面においてのみ」その主張が正しいということのみであり、この事実だけでは他の場面について応用することができないのです。本で学んだことを自分の仕事などに生かせない根源はここにあります。
■理解を深めるには真逆の例を考えてみる
ですから、私たちが本を読んで筆者の主張、新しい考え方に触れた時に行うべき1つ目の読書術は「筆者の主張に出ている以外の場面、具体例を想定すること」なのです。筆者の例ではその主張が100%通るとわかり切っていますから、むしろ、「筆者の主張が通らないような状況」を自分で設定してみて、その2つの状況を比較することに理解のカギは沈んでいるのです。
![コーヒーを飲みながら読書](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/f/0/670/img_f0de7354a80794e994a8af967eec2f94244751.jpg)
「恋は盲目である」という主張があったとしましょう。あなたがこの主張を見た時にすべきは、きっとこの後に展開されるであろう「恋は盲目」を体現するような恋愛エピソードを見て共感性羞恥に陥ることではなく、「それでは、『恋は盲目』にならないような例はあるのだろうか?」と考えることなのです。
例えば「恋は盲目なのであれば、盲目的に熱中しなければ、それは恋ではないのであろうか?」もしくは「恋は盲目というが、逆に言えば盲目的に熱中したものがあれば、それは全てが恋と言えるのであろうか?」という具合です。そして、その2つの具体例を考えてみるのです。「友人のAは確かに恋愛をしていたが、盲目と言えるほどには熱中していなかったな」「周りが見えなくなるほどに釣りに熱中した時期があったが、あれは恋だったのであろうか」といったように。
これを通すことで、筆者の主張の整合性を確かめるとともに、自分の中で主張自体の理解度を上げることもできます。「深く理解している」ということは、「物事を多面的にみて、説明することができる」ということに他ならないためです。筆者の主張が当てはまらないようなさまざまな場面を想定し、筆者の出す具体例と検証することで、逆説的に筆者の主張の理解度を深めることができます。
■類似する具体例を考えてみる
2つ目にオススメする読書術は、『
先ほどの「恋は盲目」の例で考えてみるならば、「恋は盲目とは言うが、それでは自分には周りが見えなくなってしまうほどに熱中してしまう/してしまった例はあるだろうか?」や、「実際に盲目的なほどに恋愛に熱中してしまった友人はいただろうか?」といったようにです。
先ほどは真逆の例を考えることによって筆者の主張の有効性を確かめましたが、これは全く逆の方向から、つまり筆者に逆らわないような方向から、その言説の有効性を確かめるという試みになります。
どのようなことについても言えることではありますが、やはり一方向からのみの検証だけでは、どうしても論の検証として不健全ですから、最低でも逆らう方向からの検証と、従う方向からの検証の2パターンは必要かなと思います。この2つを行うだけでも、その主張に対する理解は相当に深まるはずです。
■例外を考えてみる
最後におススメするのが、「筆者の主張の例外を考えてみる」ということです。どんな定理や言説にも必ず例外はあります。これは仕方のないことですが、「その例外はどうして起きたのか」「どうすれば例外が発生しないのか」ということを考えることによって、主張自体の成立する条件や範囲、環境をより厳密に検証することができるのです。
先ほどの「恋は盲目」を例にして言うのであれば、「恋は盲目とは言うが、たとえ恋をしても盲目的に熱中する人と、熱中しない人がいる。それでは、前者と後者の違いはいったい何なのであろうか?」と考えることがそれにあたります。
盲目になる人に理由があるのか、もしくは逆に、盲目にならないようなタイプの人に何か秘密があるのか。このように考えるだけで、ある論に対する理解はグンと深まります。上記2つの検証法に加えて、この検証を行えば、ある程度はその論を理解することができるはずです。
コロナ第3波が叫ばれ、さらなるステイホームが推奨される今だからこそ、家に引きこもって読書にふけるのはいかがでしょうか?
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現役東大生
1997年生まれ。一浪の末、東大合格を果たす。現在は、自身の勉強法を全国に広めるための「リアルドラゴン桜プロジェクト」を推進。また、全国の子供たちを対象として無料で勉強を教えるYouTubeチャンネル「スマホ学園」にて授業を行うなど、精力的に活動している。著書に『東大式節約勉強法 世帯年収300万円台で東大に合格できた理由』(扶桑社)。
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(現役東大生 布施川 天馬)
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