「このまま独身でいいのか」迷えるアラサー女性に"未婚のプロ"が差し出す最終結論
プレジデントオンライン / 2020年12月24日 11時15分
■「結婚は誰もがするもの」という価値観は壊されつつあるが…
「結婚は誰もがするもの」と考えられていた昭和の時代と比べ、結婚しないことも人生の選択肢として受け入れられるようになった。厚生労働省の人口動態調査によると、令和元年の婚姻件数は59万8695組。ピークである昭和47年(109万9984組)より総人口は多いにもかかわらず、約半分の水準だ。
同調査によると、女性の平均初婚年齢は29.6歳。この数字から見ると、女性にとって30歳前後は結婚適齢期ともいえそうだが、この年代の女性は2つの価値観の間で揺れる「はざまの世代」のように見える。
彼女たちの親世代は、昭和生まれで「結婚は誰もがするもの」という価値観を持って生きてきた。そんな親から「大人になったら結婚するもの」と聞いて育ってきた人も多いだろう。
彼女たちが大人になった今、その価値観が古いものとされ、開放されつつある。頭では分かっているが、昭和型の家庭で育つと「本当に結婚しないでいいのか」と、どうも躊躇(ちゅうちょ)してしまう。新しい生き方のロールモデルがないのも一つの要因だろう。
結婚を含めた生き方の選択に迷う令和のアラサー女性に、ぜひ知ってほしい人がいる。7年前、女性の生き方に一石を投じたエポックメイキングな女性、ジェーン・スー氏だ。
■「未婚のプロ」が語る言葉
ジェーン・スーという名前を聞いて、「誰、その外国人?」と思うかもしれない。れっきとした東京生まれの日本人だ。47歳の未婚女性で、ラジオのパーソナリティーやコラムニスト、作詞家として活動している。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のメインパーソナリティーとして人気なので、一度は彼女の声を聞いたことがあるかもしれない。
語り口は、サバサバ、ズバズバ。リスナーからの人生相談に、時にやさしく、時に厳しく、人情味あふれる回答を返す。人間の弱みや各世代の悩み、「こういうの面倒くさいよね~」という生活の切り取りを、冷静に分析しつつ寄り添う。
私は、スーさんに過去に2回インタビューをしたことがある。最初にお会いしたのは2013年。彼女は当時、『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)という本を上梓(じょうし)した頃で、「未婚のプロ」と帯にでかでかと書かれていた。一方の私は、独身女性向けサイトの編集長をやっていた。扱う情報は、恋愛、ライフスタイルなど。特に、結婚願望の強い女性から支持を得ていた。
当時は「結婚しなくてもいい」という新しい価値観が産声を上げた頃。今ほど受け入れられていなかったように思う。スーさんは私よりちょうど10歳上だ。今より「結婚しない女性」への風当たりは強かったのではと推測する。そんな彼女が語っていた言葉をいくつか紹介したい。
■結婚願望の強い女性が抱える「矛盾」
結婚願望の強いアラサー女性で、長期間付き合っている彼氏がいるとする。そんな女性が抱える悩みの一つに「彼がプロポーズしてくれない」がある。
「どうしてプロポーズしてくれないの?」と彼に聞けたら楽なのに。真意を聞けずに、女性は苦しみ抜く。そして、勝手な解釈が始まる。「彼って、きっと変わってる人なんだ!」「過去にトラウマを抱えているに違いない」。そんな考えから、プロポーズされない不満を無理やり昇華させる。「あるある」と心の中でつぶやいた女性は多くいるだろう。何を隠そう、私もその一人だった(気がする)。
![クリスマスイルミネーションを見つめる女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/7/7/670/img_7758df79efb33cae8424e566128019b5324908.jpg)
この種の独身女性は、「彼が心を開かない。でも、私が彼を変えてあげる。幸せにしてあげる」と女神的な自分に酔いしれるものである。しかしその裏で「彼にプロポーズされないなんて、自分に価値はないのでは」という大きな恐怖も抱えている。
この悩みについて、スーさんはどう答えたか。こう言うのである。
「矛盾している」
いったいどういうことなのか。ゆっくりした言葉でスーさんは説明した。
「『私があなたを変えてあげる』は彼の優位に立った上から目線で、彼をちょっと下に見ている。一方で、『プロポーズされたい』と彼にすがりついている。つまり、下手に出ている」
(ちょっと何言ってるか分からない……)。不幸にも、当時の私は、こんな残念な状態だった。しかし、成長と共に、この説明の意味がわかるようになった。私は彼をコントロールしたかった、できると思っていた。しかし、コントロールできない自分への絶望感・無力感からくる自己否定。その結果、コントロールできない人間を傷つける。結婚願望が強すぎる女性は、このスパイラルに気を付けていただきたい。
実に不健康な人間関係であった。あの頃の彼には、「幼稚な自分が迷惑をかけました」と菓子折りを持っていきたい気分である。
■「死ぬまで独身を貫くつもりですか?」に対する「未婚のプロ」の答え
失礼な話ではあるが、実際にお会いするまで、スーさんはきっと毒舌で怖い人なんだろうと想像していた。生活指導係の先生のように「そんな生き方はダメ!」と毒舌が飛んでくるのかと思っていたら、180度違った。こちらの話を表情一つ変えずに聞いてくれる。「ふん、ふん、そうなの。そんなふうに思うの?」。否定は一切ない。真っすぐな瞳で。まるでカウンセラーのようである。
「未婚のプロ」と名乗っていたスーさんに、私が一番聞きたかった質問はこれだった。
「本当に死ぬまで独身を貫くつもりなんですか。一生結婚しないんですか」
彼女の口から出てきたのは意外な言葉だった。
「私は結婚するか、しないか、特に決めていない。決める必要もない」
まったくその通りだ。人生はどうなるかわからない。人生100年の時代に、自分の人生を30歳そこそこで決めてどうする。自然体でいいのだな。そんな安心感を与えてくれる言葉でもあった。
さらにスーさんはこう言い切った。
「結婚は人生をアップグレードするものではない」
これも効いた。冷酒のようにグラッと効いた。特に相手もおらず、やみくもに結婚したいと叫ぶ若い女性は、結婚すれば何かが解決すると思っている節がある。取りあえず結婚すれば、仕事のつらさから脱出できる。人生が好転する。そう思い込んでいる。しかし、現実はそう甘くない。
■家庭という所属がなくても人生は楽しい
私はライターとしてこれまでたくさんの人に取材をしてきたが、スーさんの言葉は今でも心に残っている。7年前の言葉が忘れられないというのは、自分としては珍しい。取材をした時には、真意の分からない言葉もあった。しかし、今、ふとした時に思い出す。たとえば風呂でシャンプーをしているときに、彼女の声が頭の中に響くのだ。
現在スーさんは、Podcastでオリジナル番組「ジェーン・スーと堀井美香のover the sun!」を配信している。「オーバー・ザ・サン」という番組タイトルは、どことなく「オバサン」と響きが似ている。
番組では、オバサンであることを包み隠さない語りが楽しい。リスナーと中年女性ならではの日常を語り合い、相方のTBSアナウンサー・堀井美香のふんわりしたかわいらしい声が絶妙にマッチする。
この番組を聞いていると、「オバサンになっても人生って楽しいんだ」と希望に満ちてくる。スーさんは、結婚という家庭への所属がなくても、楽しい人生を送れることを、日本の女性へ教えてくれているようだ。
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鉄道コラムニスト
外資系企業、編集プロダクション、女性サイト編集長を経て現在フリー。主に鉄道、旅行、ライフスタイルのコラムを執筆。All About旅行ガイド。お得な鉄道旅行テクに詳しい乗り鉄。メディア出演多数。著書に『100倍クリックされる 超Webライティング バズる単語300』ほか。
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(鉄道コラムニスト 東 香名子)
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