一流ビジネスパーソンが必ず持っている「三種の神器」をご存じか
プレジデントオンライン / 2021年1月3日 11時15分
■地盤とは「社外の人的ネットワーク力」
「地盤」「看板」「カバン」は政治家だけに必要な要素ではありません。その中味は変わりますが、すべてのビジネスパーソンにこの三種の神器は欠かせません。
「名刺の数=ネットワーク力」ではない
人生にチャンスを運んできてくれるのは、自分が築いてきた「人との縁」が発端になります。
かつて社外勉強会で異業種他社の人と知り合い、あるいはセミナーに参加して、そこで知り合った人の名刺を増やして満足している人がいました。しかしここで気になるのは、名刺の数がいくら増えても、その後に相手と親密になる人がほとんどいないことです。
業界の実力者と出会っても、相手が自分のことを記憶し、また会いたいと思ってもらえなければ、その名刺に価値はありません。名刺の数が増えても、それだけでは意味がないことに、多くの人たちは気づきました。名刺の数だけでは、人的ネットワークがつくれない典型的な例です。
あなたは「誰に知られているのか」
「俳優の○○とは同級生だった」「経営者の○○とは知り合いなんだ」と顔の広さをアピールする人がいますが、正直なところこの話もあまり意味がありません。知り合いが多いからといって、その人に実力や魅力があるとは限らないからです。重要なのは、その人が「誰に知られているか」という点です。
ひとかどの人から
「あなたに教えて欲しいことがある」
「ぜひ紹介したい人がいるんですがね」
「今度、時間をとってもらえませんか」
相手からもしこう言われたら、相手はあなたを価値ある人として認識しているはずです。
どうすればこのように人的なネットワーク力を高めることができるのでしょうか。
■人的ネットワーク力を高める3カ条
人的なネットワーク力を高めるには、次の3つの方法があります。
①相手が求めるノウハウやスキルを磨く
自分の利益だけを追う人や、人を自分のために利用しようとする人に、人的ネットワークは生まれません。相手が必要としているコトや情報を自分が持ち、その人に提供できるかどうかがここで問われてきます。
相手が求めているノウハウや、必要を満たす情報を提供できれば、懇意になれる確率は高くなります。そうなるためには自分が得意な分野について、相手が必要な時にそのノウハウを提供します。
また自分が不案内なことは、相手に教えてもらうという相互関係を築いていきます。意外に思うかもしれませんが、プロフェッショナルの人や専門家ほど、それなりに情報収集してきた上で尋ねる「良い質問」には答えてくれるものです。情報を集めた上で質問していることが、相手に伝わるからです。
相手に提供できる専門性やノウハウ、相手にメリットのある情報収集力を備えていれば、対等な関係が築けます。そのために自身のスキルを日頃から磨いておきます。
IT業界、不動産業界、金融業界、メーカー、人材紹介業界、アートや美術・音楽など、相手と違う業界の情報なら、あなたが持つノウハウや情報には価値があります。
提供するノウハウや情報は、ビジネスの分野に限りません。
・お洒落で美味しい手軽なレストランをたくさん知っている
・ワインや日本酒を数多く経験していて、非常に詳しい
・薔薇の栽培に長けている
こうした趣味の分野でも、相手が望むレベルに到達しているなら、その人の魅力になります。ネット検索すればすぐに出て来るような情報は、魅力やスキルにはなりません。その人だから持つ知見や経験がここで問われてきます。
②懇意になりたい人のことをよく把握して、相対する
かねてから気になっている専門家がいて、その人のセミナーや講演会に参加する機会を得たとします。こんな時こそチャンスです。その人のことを事前によく調べておき、終了後に「良い質問」をするなり、刊行されている書籍を持参してサインしてもらいながら、会話します。相手のことを詳しく知っていれば、会話に厚みが増し、また良い質問ができます。こうなれば相手は間違いなくあなたのことを記憶してくれます。
しかしここで名刺交換して終わっては、関係は長続きしません。知り合った後に、折に触れてやり取りするようにします。例えばその人の書籍が出たらAmazonに書評を記載して、その内容を相手に知らせる。その人のSNSに定期的に投稿するという方法もあります。こうしたやり取りを続けていけば、必ず相手から連絡をもらえる関係になれるでしょう。
③SNSで定期的に情報発信を行い、親しくなりたい人と縁を持つ
LinkedInやFacebookのようなSNSが登場したことで、面識がなくてもそれなりの人たちと出逢えるようになりました。SNSで価値ある出会いをつくるには、その人のプロフィールを見て詳しく経歴を把握し、ネット検索してさらに詳しく相手の活動を理解しておきます。
その上で自分のスキルや知見を加味して、相手の投稿にコメントをすれば、あなたのことを強く印象づけることができます。誰にでも書ける感想とは一味違う投稿になるからです。
もうひとつ大事なことは、友人申請をする際の礼儀です。SNSで友人申請する際に、「友達になる」「つながる」のボタンをクリックするだけの人が大半を占めています。これでは承認される確率は下がり、多忙な人やひとかどの人物なら、礼儀のない人を相手にしません。プロフィール欄に「必ず自己紹介文を記載して下さい」と明記されていたらなおさらです。
こんな時は申請のお願いを文書にしてメールやメッセンジャーで送ります。自分はどんな仕事をしているのか。なぜ友人申請をしたいのかについて文章化します。これだけで相手はあなたに好感を持ちます。
■看板とは「パーソナルブランド力」
名の知れた企業で働いている人なら、それなりの人でも「一度」は逢ってくれるでしょう。それは企業にブランド力があるからです。しかし2度目に逢ってくれるかどうかは、個人の魅力の有無で決まります。
個人のブランド力を高める要素は数多くありますが、中でも専門性は重要です。特定の分野に詳しく、また秀でていることは、個人のブランド力を向上する資源になります。
知識の量をひけらかすのは逆効果
仕事でも趣味でも専門性が高い人は、用心して欲しいことがあります。それは相手が望まないのに、自身が持つ知識をひけらかしてしまい、相手から疎ましく思われることです。「私はこんなに知っているんだ」と記憶した知識量を誇っても、ネット検索すれば出てくる時代です。相手が望まない知識や情報を披露されても、人はそこに意味を感じません。
自分の専門性を、相手の立場に立って生かす方法を考える
相手が必要としていることに対して、自分の専門性なりノウハウを提供できて初めて、価値が生まれます。専門性を発揮しながら個人のブランド力を高める秘訣は、相手の立場を考え、相手が求めていることを察知し、求めていることを満たしてあげることです。それができれば、あなたは求められる人になります。
専門性を発揮する際に欠かせないのが「スキルの掛け合わせ」
専門性を発揮する際に、もうひとつ重要なポイントがあります。スキルを掛け合わせることです。異なるスキルを掛け合わせることで、他の人が持てない魅力になり、個人のブランド力が強くなります。
例えば世の中には英語力に長けた人は無数にいます。そのため英語という専門性では、よほど卓越しない限り独自の魅力や力にはなりません。しかし英語力にITの専門性を掛け合わせる(語学力×IT)ことができれば、独自性は高くなります。
この他にもイラストを描く能力と教える力(イラスト力×教育)、営業力とコンサルティング力(営業力×コンサルティング力)という具合に、異なる分野の力を掛け合わせたスキルを発揮してみます。こうすれば他者にない力を発揮して、自身の魅力とブランド力の向上につながります。
■カバンとは「自己投資」
政治家に必要なカバンとは違い、ビジネスパーソンに必要なカバンとは、自己投資です。自分にお金と時間を投資していけば、いずれは価値ある知的資産が形成されていきます。
社会人になってから自費でビジネススクールに通った人なら、その学費と引き換えに、そこで学んだ知識と、学校に集った人たちとの人的繋がりという資産を手に入れることができます。
英語力を強化するために自己投資していた人が、日系企業から外資系企業に転職した際に、その語学力が幸いして年俸が大きく増えたという例があります。
お金を掛けずにすぐできる自己投資は「隙間時間の有効活用」
自己投資はお金だけでなく、誰にも平等に与えられた「時間」の使い方も対象になります。移動時間や空いた時間に暇つぶしをする人と、情報収集する人とでは、時間の経過と共にその学習量に差が出ます。
自分にどれだけお金を掛けたか。自分のスキル向上にどれだけ時間を使ったか。それがあなたのカバンの中身になります。
時間という自己投資をする際の最良の方法は、隙間時間の有効活用です。移動中の公共交通機関の中、お昼休み、歯磨きしている時、入浴中、就寝前などが狙い目です。歯磨き中や入浴中などは、動画コンテンツを見るには最適な場所と時間です。
読書(紙とデジタルブックの両方)をする際は、仕事に役立つビジネスコンテンツと私生活を豊かにするカルチャーコンテンツを使い分け、隙間時間毎に読むコンテンツを変え、同時並行に読み進める方法もあります。
仕事に疲れてとてもビジネスコンテンツを見る気がしない時は、カルチャーコンテンツだけにして気分転換を図ります。
まとまった時間を捻出しようとすると、負担が掛かり長続きしないものです。そんな時は5分や10分という隙間時間を有効に活用しましょう。これだけで何もせずにいた人とは、カバンの中身の差は開いていきます。
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マーケティングコンサルタント
学習院大学法学部卒業。事業経営の本質は「これまで存在していなかった新たな価値を生み出し、社会に認めてもらう活動」であると提唱。価値の低いものはいつの時代も、必ず価格競争に巻き込まれ、淘汰されていくとして、一貫して企業と商品の「価値づくり」を支援している。日本経済新聞社が実施した「経営コンサルタント調査」で、「企業に最も評価されるコンサルタント会社ベスト20」に選ばれた実績を持つ。著書に『不況を乗り切るマーケティング図鑑』『デジタル時代のマーケティング・エクササイズ』(共にプレジデント社)、『全史×成功事例で読む「マーケティング」大全』、『成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書』(共にかんき出版)、『コトラーを読む』『商品よりもニュースを売れ! 情報連鎖を生み出すマーケティング』(共に日本経済新聞出版)、『価値づくり進化経営』『中小企業が強いブランド力を持つ経営』『価格の決定権を持つ経営』(共に日本経営合理化協会)、『図解&事例で学ぶマーケティングの教科書』(監修)『男の居場所』(共にマイナビ出版)など多数ある。プレジデント社のオンラインサイト「プレジデントオンライン」で連載コラムを執筆し、多くのファンに支持されている。日経BP社が主催する日経BP Marketing Awardsの審査委員を長年務めている。http://www.ms-bgate.com/
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(マーケティングコンサルタント 酒井 光雄)
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