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「ダメ、女の子なんだから」つい口から出る一言が娘の人生を潰してしまう

プレジデントオンライン / 2021年1月4日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

女の子に対して「大人しくあるべき」という固定観念はいまだに根強い。娘をもつライフコーチのボーク重子さんは「わが家は、女の子らしい育て方はしないと決めていた。『女の子なんだから』と叱っていると、娘は自分の意思を決められない子に育ってしまう」と指摘する――。

■「女の子だってなんだってできる」と演説

今年の米国大統領選挙で、ジョー・バイデンにも負けない注目を集めたのが、初の女性副大統領に就任予定のカマラ・ハリスです。アメリカで女性が参政権を得たのは1920年のことですから、そのちょうど100年後の2020年に初の女性副大統領候補が勝利を収めました。

勝利宣言のスピーチでカマラ・ハリスは「今、私がここにいるのは、母をはじめ多くの女性たちが道を作ってくれたから」「私は初の女性副大統領になるかもしれないけど、決して最後ではない。今日このテレビを見ている女の子たちがいるから」と発言して世界中の女性の共感を呼びました。ハリス氏が女性の人生に限界をつけてきた「ガラスの天井」に風穴を開けた大きな瞬間です。

これはアメリカの政治の話ですが、この勝利はアメリカだけに終わらない「女の子だってなんだってできる」の実現に向けた大きな一歩ではないでしょうか。そしてそれを叶える土壌が今の日本にもできあがりつつあります。「一億総活躍」の号令の下で、社会が法改正や制度改革で女性の活躍を応援し始めているからです。これからの社会を生きる女の子たちは私たちとは違い、もっと「女の子だってなんだってできる」が当たり前の社会を生きていくのかもしれません。

■「理系は苦手、稼げない」ステレオタイプは根強い

でも、今の社会のままでは「あること」を変えないかぎり、社会に出て行こうとする女の子たちは立ち往生してしまう可能性があります。その変えないといけない「あること」とは、従来の「女の子」のイメージを女性に押し付けない、ということです。

私たちは人を見るときにステレオタイプを押し付けがちです。例えば「アメリカ人だから明るい性格なんだろう」「関西出身だからおもしろい人だろう」など。それらと同じで性にもまた付随するステレオタイプがあります。女の子なら優しくて可愛らしい、良妻賢母であるべきなどです。

一方、ネガティブなステレオタイプもあります。女の子は理系の勉強が苦手、稼げない、男の子より立場が下、母・妻・娘としてお世話できないのはダメな子、などです。

こういうステレオタイプが社会に常識として受け入れられていると、女性は「女の子だからこうするべき」という固定観念に自分を当てはめようとします。特にネガティブなステレオタイプに対して、人間は「合わせないといけない」という恐怖を感じる生きものであり、本来の能力を発揮できなくなるという有名な研究もあります。

「男の子」「女の子」といった性に対するイメージを押し付けるとは、それに付随するネガティブなイメージもまた人に押し付けることになるのです。

■「NO」と言うべきときに言えなくなってしまう

女の子に対するネガティブなイメージを植え付けられると何が起きるのか? 私が最も危険だと思うのは、「NO」と言うべきときに言えなくなることです。例えばパワハラ、セクハラ、モラハラ、DV、望まない性行為など、「NO」と言いたくても「女性は男性の言うことを聞くべき」「夫の言うことを聞くべき」「こんなふうに扱われるのは私が悪い」と感じて、「やめて」と言えなくなる。女の子のイメージに押さえ付けられて自分の気持ちを表現することができない。あえて自分を弱い立場に追い込んでしまいます。そうして自己肯定感はどんどん下がっていき、幸せを手放していくのです。

また頭の良い女性は可愛くない、意見を言う女性は生意気だ、女子力が低いのはダメ、男性より稼ぐ女性はダメ、など女性に対するイメージを全うしようとして、本来の自分はどうありたいのかを考えることがなくなります。そして自分の意思で何かを決めることができなくなり、求められる女の子のイメージを生きようとして自分を見失う。

ベッドに座り込んでうつ病に苦しむ女性
写真=iStock.com/kitzcorner
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kitzcorner

最悪なのは、そこで終わらないことです。そんな生き方は確実に次世代に伝わります。そうして女の子の人生の負の連鎖が起こります。それを見て育つ男の子は「女性はそんなもんだ」と思ってしまいます。そこでもまた負の連鎖が起こるのです。

人は男の子として女の子として生まれるのではなく、人として生まれるのです。一人ひとりに同等の尊厳があります。その子本来の姿を掘り出してあげるのが子育てです。だからこそ、イメージを押し付けるのは危険だと思っています。

■「女の子」らしい育て方をしなかった理由

わが家では私が妊娠中から、娘のスカイを「女の子」らしい育て方をしたくないと夫から言われていました。それはなぜか? 夫は自分より優秀だった姉妹がある年齢から急に大人しくなり、男性に頼り学歴もどうでもよくなって良い妻だけを目指すようになった姿を目の当たりにしてきたからです。

「女」というだけで生き方を限定してしまうことは、とてももったいないことです。だから娘にも「女の子」のステレオタイプを押し付けることで、自ら自分の可能性にフタをする生き方をしてほしくないと思い、「ジェンダーニュートラルな子育て」を実践してきました。

ジェンダーニュートラルな子育てとは「男の子なんだからこうしなさい」「女の子なんだからそんなことしちゃダメ」と性別にまつわるイメージを子どもに押し付けない子育て法です。性別自体が悪いのではなく、性別に付随するステレオタイプ(固定観念)の中で子育てをすると、子どもの個性を限定し、可能性を狭めてしまうからです。

■知らないうちに言われた役割を演じてしまう

「女の子」を押し付けられればそこに付随する「女の子は理系が苦手」「女の子は論理的思考が苦手」「女の子は偉くなれない」「女の子は弱い」「女の子は男の子より稼げない」など女性に対するネガティブなステレオタイプも一緒についてきます。

そうすると、知らず知らずのうちに娘はそれに合わせようとして「男の子より劣る自分」「男の子に守られないとダメな自分」を演じることになります。自分は弱い、偉くない、を演じれば男の子に「NO」と言いたい時に言えなくなります。守られる役を演じてばかりでは自分で自分を守れなくなります。

私たちが娘につけたスカイという名前はドリュー、テイラー、ケネディー、サム、アレックスなどのようにジェンダーニュートラルな名前です。またわが家ではおもちゃを与える時もトラックとお人形の両方を与えていました。

カラフルなおもちゃとぬいぐるみ
写真=iStock.com/monticelllo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monticelllo

自分の性が分からなくなるのではないかという懸念もあるかと思いますが、ご心配なく。社会は容赦なく性別のステレオタイプを押し付けてきます。自分が女の子であるという自覚はきちんと生まれます。だからこそ、家庭でジェンダーニュートラルな子育てをすることで、性別に付随する「限界」を感じさせないことが大切です。

女の子が女性活躍時代を「女だから無理」「女だから男より優ってはダメ」「女だから家のことちゃんとするのが仕事」という限界を感じることなく、思いっきり自分で生きるためにはジェンダーニュートラルな子育ては非常に効果的です。

■専業主婦だって「家庭に入る」ためではない

家庭でのジェンダーニュートラルな子育ての第一歩は、「男の子なんだから」「女の子なんだから」と子どもの行動に限界をつける発言を控えることです。その上で、もっと大切なことは母親と父親の双方がジェンダーにとらわれない家庭運営にあります。子どもは言われたから学ぶのではなく、親のやることをみて学んでいくからです。

つまり、娘のお手本となる母親が女性の役割に縛られないロールモデルになる必要があります。そのために従来の「母・妻・娘が女性の役割」という古い価値観から自分を解放しなくてはいけません。

まず「家のことをきちんとするのは女性の仕事」という考えから「家事育児は夫婦の仕事」にマインドセットを変えます。例えば専業主婦を選ぶのは「家庭に入る」のが女性の役割だからではなく、自分がそうしたいからです。私も専業主婦がしたくて選んだ時期があります。

専業主婦だからといって家事育児の全てを1人でやる必要はありません。それだけで1日が終わってしまいます。自分のための時間だって必要なのだから、夫に積極的に参加してもらいましょう。自分でできることはどんどんやってもらいましょう。女性はお世話係じゃないのですから。夫婦は一緒に家庭を作り上げていくパートナーです。

■共感力と時間の投資で家事分担はできる

でも、ここで家事育児の分担をめぐってパパとママが喧嘩をしてしまっては本末転倒。パパが納得して自然と家事育児分担を増やす方法があります。それはパパに「共感力」を養ってもらい、「時間の投資」で得られる報酬を知ってもらうことです。その詳しい方法はぜひ新著『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』を読んでいただければと思います。

女性の役割というイメージがとても強い家事育児に男性が参加することで、性別に付随するステレオタイプが弱まります。また「女性が全てやらないといけない」という考えも否定されます。ぜひともパパにエプロンをしてお掃除や夕飯の支度をしてもらいましょう。

やりたいことがあったら、「これからママは大事なお勉強にいってくるからね」と子どもを預けて出かけていいのです。自分の好きなことを最優先させる時は必要です。

働くことを選んだら「家のことがおろそかになってごめんね」という罪悪感抜きに楽しむことです。家のことをやるのは、これからは男女の仕事です。男性は罪悪感抜きに働きます。女性もそれでいいのです。

■生き方を自分で選ぶ女の子を育てるために

これまでのいい母、いい妻、いい娘の生き方に逆らうことに罪悪感はいりません。ハーバード大学の研究からも、働くママの子どもは共感力が高まり、ジェンダーロールに縛られにくいという結果が明らかになっています。

ボーク 重子『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』(文藝春秋)
ボーク 重子『子育て後に「何もない私」にならない30のルール』(文藝春秋)

今、子育て中のママたちは価値観の過渡期にいます。古い価値観と新しい価値観が混在している時代の子育ては大変です。でも、いつまでも古い価値観に縛られて「女の子」を育てるのは、激しい社会の変化についていけない女の子を育てることになります。

女の子だってなんだってできる。やりたいことはなんだってできる。女の子は男の子のお世話係ではなく、一緒に何かを作り上げていくパートナーである。そんな感覚をぜひとも女性活躍時代を生きる女の子に身に付けてあげてくださいね。女の子への母親から贈れる最大のプレゼントかと思います。

女性活躍時代を性のイメージにまつわる限界を感じずに、自分の生き方を自分で選び、自分の選択に自信を持って思いっきり生きる女の子を育てるために、ぜひともジェンダーニュートラルな子育てを試してくださいね。

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ボーク 重子(ぼーく・しげこ)
ライフコーチ
ICF(国際コーチング連盟)会員ライフコーチ。ワシントンDC在住。英国で現代美術史の修士号を取得後、1998年渡米、出産。2004年にアジア現代アートギャラリーをオープン、2年後にトップギャラリーの仲間入りを果たしワシントニアン誌上でオバマ前大統領(当時上院議員)と共に「ワシントンの美しい25人」として紹介される。現在は日米での講演会に加え「ボーク重子の非認知能力を育む子育てコーチング」を主宰。著書に『心の強い幸せな子になる0~10歳の家庭教育「非認知能力」の育て方』(小学館)、『「全米最優秀女子高生」を育てた教育法 世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)等。

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(ライフコーチ ボーク 重子)

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