「おじフードに隠れメイク男子」…2021年に若者に売れるモノの特徴8つ
プレジデントオンライン / 2021年1月1日 13時15分
■「メイク男子」がマジョリティーになる日も近い
2021年の1つめのトレンドは「隠れメイク男子」です。近年はメンズコスメが多く店頭に並ぶようになってきていて、インフルエンサーや一部の美容感度が高い男子だけでなく、普通の大学生の間にもメイクが浸透しつつあります。
ただ、一般的な男子は、まだ「メイク=女性のもの」と思っているところがあり、「自分の容姿をよく見せたいがメイクしているとはバレたくない」という段階にあります。そのニーズをうまく捉えたのが、「uno(ウーノ)」のコップに色移りしないリップや、「BOTCHAN(ボッチャン)」の肌補正クリーム。
いずれも、唇や素肌をきれいに見せながらも素顔感は失わないのが特徴で、メイクバレしたくない男心をつかむことに成功しました。企業のリサーチがすばらしかったからこそだと思います。こうした商品のヒット傾向が続けば、2021年には隠れメイク男子がマジョリティーになる可能性大。メンズコスメが一般化する日もそう遠くはなさそうです。
■プチ個性を追求する「HIP HOPワナビープロダクト」
2つめは「HIP HOPワナビープロダクト」。上記2つとも共通しますが、今の若者は突き抜けた個性よりも「プチ個性」を好む傾向にあります。それは不良のイメージがあるヒップホップカルチャーに対しても同様で、憧れはあってもガッツリ取り入れるのには抵抗がある様子。
そこで流行りつつあるのが、2週間で消える指先用タトゥーや大麻を連想させる自然由来の電子タバコ、自宅で楽しめる小さめサイズのシーシャ(水タバコ)などです。こうした「プチヒップホップ気分」を味わえる商品は、しばらく人気が続くと思われます。
■ホルモン屋に餃子屋……「おじフード」に若者が
3つめは「おじフード」。おじさんの食べ物というイメージがあるホルモン屋や餃子屋に、今、若者が集まりつつあります。これらの店が、若者のインスタ映えニーズに対応しておしゃれに生まれ変わり始めているからです。かわいらしい内装や食器を取り入れる店も多く、僕のようなおじさんにとってはむしろ入りにくい空間に。
悲しいことですが、今後早ければ10年で「見た目は汚いけど安くてうまい」店は消滅するでしょう。若者たちは、どんなにおいしくても、汚かったりインスタ映えしなかったりする店には行きません。今後の飲食店は、このニーズをしっかり押さえておかないと生き残れない可能性もあります。
■加工してレトロに見せる「創作レトロ」
4つ目は「創作レトロ」です。インスタでは今、レトロなものや場所の写真を載せる「レトロ映え」が人気を集めていますが、最近はレトロでないものまでそう見えるように加工する子が出てきました。
インスタ側もそれを察知し、機能のひとつ「ストーリーズ」ではレトロな雰囲気の日本語フォントを提供し始めています。これをネイルに取り入れた「レトロフォントネイル」も人気ですし、レトロな風景に昔のイラストなどを組み合わせた画像の投稿も増えています。この「レトロ」は、若者ウケを狙う上で2021年も引き続き重要なキーワードになるでしょう。
■食べる直前のひと手間だけかけたい「0.5手間料理」
5つめは「0.5手間料理」です。最近は、飲食店で撮った動画をインスタに上げる若者がたくさんいますが、その中でも特に流行り始めているのが、料理に自ら最後のひと手間を加えるシーン。テーブルに並んだ具材を自分で包んで仕上げたり、パンを卓上コンロで焼き上げたりというように、最後の工程だけを自分の手で行うのです。
最後の工程と言ってもどれも非常に簡単で、ひと手間にも満たないことから、僕は「0.5手間」と名づけてみました。これが若者に受けているのは、手軽にオーダーメイド感覚が味わえる上、インスタで発信する際に自分の個性やクリエイティビティをPRできる余地があるからだと思います。
ただ、手間が楽しいからと言って、Z世代がそば粉からそばを打つようになるとは思えません。今の若者向け商品に「面倒くさい」は絶対的にNG。ゴールはあくまでもインスタ映えなので、この例のように、最後の0.5手間だけをあえてかけさせるのがヒットのコツになりそうです。
■とにかくデカさ勝負「インパクト映え」
6つめは、従来のインスタ映えの上を行く「インパクト映え」。若者の間では、他の人の写真と差別化を図りたいというニーズから、とにかくサイズが大きい食べ物や飲み物を載せるのが流行り始めています。
代表的なのは、巨大なグラスを使った「出世サワー」や、金魚鉢にお酒を入れた「金魚鉢サワー」。若者がよく行く居酒屋のメニューのひとつです。今の若者はあまりお酒が飲めないはずなのに……と不思議に思って聞いてみたら、「飲みに行くんじゃない、撮りに行くんだ」と言われて唖然としました(笑)。
巨大な唐揚げ「炎旨大鶏排(エンシダージーパイ)」は、顔と一緒に撮ると小顔効果もあるそうです。結局、こちらもゴールはインスタ映え。従来のかわいさやカッコよさではなく「デカさ」で自分をアピールする傾向は、当面続いていくと思います。
■秘密なのにシェアしたい「オープンシークレット」
7つめは、SNSの新たなトレンドである「オープンシークレット」です。今、若者の間では、自分のスケジュールやダイエット状況など、普通は秘密にしておきたいことをあえてシェアする傾向が強まっています。とは言っても、シェアする相手は自分が選んだ人だけ。
普通にSNSに投稿するとフォロワー全員に見られてしまうので、専用のアプリを使って特定の相手とだけ情報をシェアするわけです。秘密にしたいなら誰にも言わなきゃいいだけなのにと思いますが、それでもシェアしたいのがZ世代。自意識過剰の表れとも言えるでしょう。実際、スケジュールをシェアするアプリ「TimeTree」は、すでに多くの若者が使っているようです。
■とても面倒くさい自己PR「逆自慢」
8つめは、プリクラ投稿やTikTok投稿に見られるトレンド「逆自慢」です。これは、他者と差別化を図るため、あえて本音と逆のことをするというもの。友人とのプリクラに「不仲です」、素顔の写真に「無加工注意」、豪華なローストビーフの写真に「貧乏学生」などというワードを添え、「いやいや仲いいでしょ」「無加工のほうがかわいい」「貧乏じゃないでしょ」といったツッコミのコメントを狙うわけです。
大人から見れば面倒くさい自己PRでしかありませんが、若者にとっては自己承認欲求を満たす手段のひとつ。この手法を使う若者は、これからますます増えていくと思います。
■二律背反なトレンドがやってくる!
新しいトレンドである「隠れメイク男子」や「HIPHOPワナビープロダクト」と、一見古臭い過去に見える「おじフード」や「創作レトロ」。
楽に「インスタ映え」を狙う「0.5手間」と、一見これまでのインスタ映えと相反するように見える「インパクト映え」。秘密を他人と共有したい「オープンシークレット」と既存の友達と仲を深めたい「逆自慢」。
これらの例が示すように、2021年は一見全く逆のトレンドが同時に流行る、という現象が起こると次世代研では予想しています。
一見、矛盾しているように見えるトレンドの数々ですが、若者の頭の中ではまったく矛盾していません。
たとえば「おじフード」。餃子のようなおじさんの食べ物であっても、お店自身がお洒落になっているから若者にも受け入れられるのです。「創作レトロ」もただ古臭いだけではなく、あくまで今のZ世代が「お洒落と感じるレトロ」を取り入れているから成り立ちます。
また「インパクト映え」も、これまでのお洒落でゴージャスなインスタ映えに飽きてきたから生まれた手法。
「オープンシークレット」もSNSで友達とつながりすぎる関係になったからこそ、本当の秘密は他人と共有したほうが、居心地が良くなっているわけで、「逆自慢」もコロナで友達と距離ができたからこそ「絆の確認」がしたくなっているだけです。
このように、2021年の「二律背反」トレンドですが、新旧それぞれの良いとこ取りをしながら、Z世代の若者たちが新しいトレンドを生み出すために頭を絞った結果、一見、矛盾しているように見えるのです。
ぜひ、彼らの知恵の結晶である一見矛盾した「温故知新」にご注目いただければと思います。
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マーケティングアナリスト
1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』などがある。2019年1月より渡辺プロダクションに所属し、現在、TBS「ひるおび」、フジテレビ「新週刊フジテレビ批評」「Live News it!」、日本テレビ「バンキシャ」等に出演中。「原田曜平若者研究所」のYouTubeチャンネルでは、コロナ禍において若者の間で流行っていることを紹介中。
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(マーケティングアナリスト 原田 曜平 構成=辻村 洋子)
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