「なんとなく良さそう」で就職した人が30代で地獄を見る理由
プレジデントオンライン / 2020年12月28日 11時15分
※本稿は、株本祐己『稼ぐことから逃げるな』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■企業が一方的に学生を評価する就活はおかしい
今の就職活動の仕組みは、おかしな点がたくさんあると感じています。
たとえば一つひとつの会社ごとに、志望動機を書かないといけない点など。内定を取るために、志望動機が1社1社別々にあるわけがありません。
なんとなくで受けている学生が大半であるのに対し、企業側は個別の志望動機を必ず求めてくる。
そんなへんてこりんな構造が随所に見られるのが、就活の現状です。
今の仕組みは急激には変わらないでしょうから、しばらくはこの流れに乗っかっていくしかありませんが、私はなんで面接官ごときに評価されなくてはいけないんだろうと思いながら就職試験に臨み、結果、連戦連敗となりました。
でも、その時に考えていたことはそれほど間違えていなかったと今でも思っており、企業が一方的に学生を評価する今の就活の仕組みはおかしい、と常に感じています。
一方で、大企業だからと学生に偉そうにしている企業も、今後はだんだん立場が弱くなっていくでしょう。
■「とりあえず良さそうな会社」を志望する感覚は危険
なぜなら、以前のような終身雇用が保証できなくなるからです。それに呼応して今後、学生に求められるのが、会社に頼らずとも生きていける“個の力”です。
時代の流れも踏まえると、「大手に入っておけば、ひとまず安心」「有名企業なら親を喜ばせられる」といった旧来型の価値観で企業をなんとなく選んでしまうことは、大きなリスクとなります。
自分の将来が決まるかもしれない選択にもかかわらず、多くの学生がこれといった判断軸がないまま会社を決めていることに、私は非常に危機感を覚えています。
企業選びをする際は、「やりたいことがある人」と「やりたいことが特にない人」で、まず分かれます。
大前提として伝えたいのが、「やりたいことがある人」は、ぜひそちらの道に進んでもらいたいということです。
飛行機にすごく興味がある、観光業界でずっと働きたかった、本を作る仕事がどうしてもしたい。そういう方は、どうぞその道に進んでください。それが一番幸せになれると思います。
ただ私の経験上、実際は多くの人が「これをやりたい」というビジョンが明確にはなく、就活の時期がきたから「とりあえずこれかな」と決めています。それが世の大多数ではないでしょうか。
実際、私も就活時は「マスコミがいいかな」とぼんやり思っただけで、マスコミでなければいけない絶対的な理由はありませんでした。
そして、やりたいことの特にない人がよく陥るのが、「とりあえずよさそうな会社」を志望することです。
その「よさそう」の基準が“大手”だったり“年収が高いこと”だったりするわけですが、そうした感覚は本当に危険だと思います。
■大学生が考える「30歳で年収600万」は恐ろしい
たとえば年収に関して、就活時には「30歳で年収1000万円に到達したら超勝ち組だけど、そこにはいけないから、ひとまず30歳で600万円くらいの会社にしよう。600万円でも悪くはないのだから」といった価値観を持つ人が多いと思います。
でも、30歳で600万円、40歳で800万円という生き方も否定はしませんが、大学生の時にその人生に決めきることは、かなり恐ろしいことだと思ってください。
加えて大手やそこそこ大手の企業に進み、これでひとまず安定した人生を歩めると思っても、実は出向や左遷、リストラなど、安定の人生をそのまま歩める人はほとんどいません。
■大手では20代が下積みで終わってしまう
多くの人が、人生のどこかのタイミングで、何らかの壁にぶちあたっている現状があります。
終身雇用が崩れていく今後、その傾向はさらに進み、むしろ会社の本流にずっとい続けるほうが難しくなるでしょう。
大手にいって人生はひとまず安泰だと思っている人ほど、それが手痛いカウンターとなってしまいます。
しかも大手やそこそこの大手にいくと、20代は下積み仕事で終わることが少なくありません。
そうすると、もし30歳で他の会社にいきたくなっても、個の力が全くついていないことが大きな足かせとなってしまいます。
具体例を挙げましょう。
「本当は30歳で年収1000万円に到達する総合商社がよかった」
「でも、いけなかったので30歳で年収600万円をもらえる専門商社に就職した」
「特に商社にいきたいわけではなかった」
「いざ働いてみると20代のうちは現場の実務ではなく下積み仕事がほとんど」
こんなケースでは、個の力はなかなか上がりません。
30歳で転職しようにも、持っているのはその会社でしか通用しないスキルやノウハウだけなので、なかなか難しくなってきます。
■社内出世の道も閉ざされたら“詰み”になる
これでもし何らかの理由で社内での出世の道も閉ざされてしまったら、以降は一生我慢して働き続ける地獄の日々が待っています。
実際に私の周りには、30歳になって「お金がない」と言っている人がたくさんいます。
20代であれば収入の差もそれほどあらわになりにくいですが、30歳を迎える頃からその差は如実に出てきます。
そんなことは入社前からわかっていたはずですが、いざ「お金がない」「他にいく選択肢もない」という状況に直面してみると、なかなかシンドイようです。
会社員としての安定がなければ、給料もよくない。
そして個の力を高められず、他の会社にいくこともままならない。まさしく「人生の選択肢」が詰まれた状態です。
こうしてやりたくない仕事や、満足できない仕事を我慢して一生やり続けることこそが、最大のリスクなのです。
■選択肢は「ビジネス戦闘力が上がる会社」一択
では、何を判断軸にして会社を選べばいいのでしょう。
もし「これがやりたい!」というものがないのであれば、やはり重要なのは「稼ぐこと」になります。それも短期的に稼ぐのではなく、中長期的に稼ぐこと。
そして中長期的に稼ぐために必要となるものが、「ビジネス戦闘力」です。
つまりは若いうちに戦闘力を上げられるところに身を置くことが、会社を選ぶ一番の判断軸となります。
ビジネス戦闘力とはざっくりいうと、ヒト・モノ・カネを動かす力のこと。
つまり自分が動かすことのできる資本の大きさのことを、私はビジネス戦闘力と呼んでいます。
その人が動かせるビジネス規模とも言い換えられるかもしれません。
よく「手に職をつけておくと一生安心」みたいなことが言われますが、戦闘力をつければ、それ以上に安定した人生を送れます。
好きな仕事を、好きな時に、好きなだけできて、仕事にあぶれる心配もない。これこそが、本当の意味での安定ではないでしょうか。
■30歳以降に自由な働き方をする人が増えていく
この先は「個の時代」にますます移行していくので、前述のように企業の駒として働くことが大きなリスクになるのと同時に、個としての実力=戦闘力を高めることがとても重要になります。
実際、若いうちからビジネス戦闘力を身につけ、30歳以降に自由な働き方をする人が、今後はますます増えていくでしょう。
では、なぜ個の時代になるのか。それは簡単な話で、個人での発信が簡単に行える時代になっているからです。
ネットのインフラが不十分だったこれまでは、会社は必要な人材を1人ひとり育成し、会社に対する忠誠心を高めることに注力してきました。
そのため縁故などのアナログな採用活動も、よく行われてきたのです。必然的に社員側も「この会社と一生添い遂げていくんだ」というメンタリティを抱きがちでした。
■その都度必要な人材を外部から持ってくるようになる
でも今は個人での発信が容易になり、会社は必要な人材のデータベースを簡単に得られるようになりつつあります。
そのため、わざわざ莫大なリソースをかけて人を採用・育成せずとも、その時々で必要な人材を外部から持ってくることができるのです。今後その流れはますます進むでしょう。
今はその移行期間であるため、従来型の会社員も一定の価値を発揮できていますが、これからITリテラシーの高い外部の人たちが現場を多く占めるようになった時に一番損をするのが、そうしたビジネス戦闘力の低い社員たちです。
会社が「わざわざ仕事のできない社員の雇用を維持するより、仕事のできる人を外部から雇うほうがはるかにいいじゃないか」と考えるようになった時、彼らの行く末はかなり悲惨なものになることでしょう。
■規模が小さい会社こそ戦闘力アップの場になる
対してビジネス戦闘力が高ければ、たとえ会社員であろうとなかろうと、さまざまな場面で重宝します。
だからこそ若者世代は、そちら側になることを目指したほうがいいでしょう。
そこで必須となるのが、若いうちから戦闘力を高められるところに身を置くことなのです。
そうした環境に身を置き、「市場に貢献できるバリューやスキルは何だろう」と日々考えながら自分の力を高めていくことが、何より大切になるのです。
では、ビジネス戦闘力が上がる会社とは、具体的にどんな会社でしょうか。
一例を挙げれば、私が当時働いていたようなウェブマーケティング系のベンチャー企業です。
もちろんベンチャー以外にも、あるいはウェブマーケ系以外にも、選択肢はいろいろあると思います。
いずれにせよ会社規模が小さく、20代の早いうちから裁量権が与えられ、実務を通してスキルと人脈を積み上げられる会社こそが、ビジネス戦闘力を高められる会社です。
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YouTube「年収チャンネル」運営者
1990年、ドイツ・ハンブルク生まれ。桐朋高校、早稲田大学卒業。学生時代にベンチャー企業で新規事業の立ち上げ、黒字化を経験。新卒で同社に入社し、その後、大手コンサルティングファームに転職。大手金融機関の管理会計業務支援やネットワーク更改などのプロジェクトに従事。フリーランスとして独立し、2017年にStockSun株式会社を創業。2018年、「年収チャンネル」開設。
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(YouTube「年収チャンネル」運営者 株本 祐己 イラスト=Takako)
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