「家族のために働く、安定の収入を得る…」実行すると幸福度が下がる意外な行動11
プレジデントオンライン / 2021年1月6日 11時15分
※本稿は星 渉、前野隆司『99.9%は幸せの素人』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■誰でも自分にメリットがある選択がしたい
早速ですが、あなたに質問です。よろしいでしょうか?
あなたの家の近所には、産地も生産者も同じキャベツを「100円で売るスーパー『A店』」と「150円で売るスーパー『B店』」が隣り合っています。さて、あなたはどちらの店でキャベツを買いますか?
『A店』で100円のキャベツを買う?
『B店』で150円のキャベツを買う?
この選択に迷う人は、まずいないでしょう。
同じものであるならば、誰もが少しでも安いキャベツを買いたい。『A店』で買ったほうが50円も得するわけですから。
つまり、『A店』で100円のキャベツを買うことが、自分にとってメリットがある選択になります。人は誰でも「自分にメリットがある」選択をしたいと思って行動しています。
■状況が変わると答えも変わる
はい、ここまでは問題ありませんよね? でも、少しだけ質問の状況を変えると、あなたの答えも変わるはずです。
あなたの家の近所には、産地も生産者も同じキャベツを「100円で売るスーパー『A店』」と「150円で売るスーパー『B店』」が隣り合っています。
あなたの目の前では、あなた以外の人が全員『B店』に入っていき、次々とキャベツを買っています。ついに『B店』のキャベツはもう残り1個。一方、『A店』には誰も入っていかず、キャベツは大量に残っています。
……さて、あなたはどちらのお店でキャベツを買いますか?
『A店』の100円のキャベツ? それとも、『B店』の150円のキャベツ?
■人間の脳は自分の行動が正しい理由を探し正当化する
状況が変わることで、先ほどはまったく思いもしなかった「『B店』で150円のキャベツを買ったほうがいいのかな……」という気持ちが生まれたのではないでしょうか。実際にこの状況を目の当たりにしたら、『B店』の150円のキャベツを買ってしまう、という選択をする人も多いでしょう(たぶん、私もです……)。
そして人間の脳は、自分の行動が正しかった理由を探す方向に働き始めます。
・『B店』のほうが高いから安心できるキャベツのはず
・誰も入っていかない『A店』はなんか怪しいな
・『A店』に入ると近所から変な人と思われるから『B店』のほうがいい
……など、さまざまな理由を考え出します。
そしてそれ以降、自分の行動を正当化するために「『B店』で50円高いキャベツを買う」という行動を繰り返します。
その結果、いつのまにか“『B店』で50円高いキャベツを買うことが正しい”と思うようになるのです(本当は毎回、50円損する選択をしているにもかかわらず……)。
これを行動経済学では「不合理行動」と言います。
■「頑張ってもうまくいかない」本当の理由
こうして人は、本当は自分にとって損をもたらす選択を“正しい”と思い込み、しかも、日々その選択を繰り返しながら過ごします。
「頑張って努力しても思うような結果や満足感が得られない」
「大きな不満があるわけではないが、なぜか人生に充実感がない」
日常のそんなモヤモヤも、このメカニズムのせいなのです(本当は毎回損をする選択をしているのですから、そりゃモヤモヤするわけです。自分では正しいと思い込んでいるけれど)。
自分が日々「正しい」と信じていることは、本当に100%正しいと断言できるのだろうか? あなたもきっと不安になってくるでしょう。
たとえば次のようなことを、いつのまにか正しいと思い込んでいませんか?
・家族のために一生懸命働くことは素晴らしいことだ
・安定した収入があるほうが安心する
・リスクを冒すような危険なことはしないほうがいいかな
・夢や目標が叶ったら幸せだ
・自分のことは後回しにして子供中心の生活を考えるのが大事
・お金よりも大切なことがある
・嫌なことがあっても常にポジティブでいることが大切だ
・自分に厳しくしたほうが自己成長できる
・嫌われる勇気があれば人間関係で疲れず、もっと楽になれる
・付き合う人は優しい人のほうがいい
・結婚しないよりも、結婚したほうが断然幸せ
いかがでしょうか?
■実行すると不幸になる行動
でも、「本当はこれらのことを実行すると、あなたの人生での幸福度が下がる、つまりは不幸になることが科学的に判明しています」なんて言われたら?
「そんなはずはない!」とイラッとするかもしれません。
いや、もしかしたらあなたは、自分の意志をしっかり持ち、自分の幸せを実現できる“特別な人”かもしれません。
あなたがそんな特別な人かどうかを診断できる質問がありますので、あなたの答えを教えてください。
さあ、用意はいいですか?
![【図表】あなたは自分が選択した箱を変えますか?](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/a/500/img_0a8e1c2539357bd04416349291eb8d3e538794.jpg)
【質問】
・ここにA、B、C、3つの箱があります。
・1つの箱の中には賞金100万円が入っています。100万円が入っている箱を見事に当てることができれば、賞金はあなたのものです。
・あなたは仮にCの箱を選んだとしましょう。
・どの箱が正解かを知っている司会者は、ハズレであるAの箱を開けて「Aはハズレである」ことをあなたに示しました。
・残ったのはBの箱と、あなたが選んだCの箱。どちらかに賞金100万円が入っています。
・ここで司会者があなたに「今なら、CからBに変えてもいいですよ」と言ってきました。
・さて、あなたは選択する箱をBに変えますか?
あなたの答えは?
■9割の人が誤った決断をする
「自分にとってプラスになる選択=当たる確率が高い選択」とするのであれば、この質問に対しての答えは、「変える」が、あなたにメリットのある選択です。「変える」を選択した場合は、「変えない」という選択に比べて、100万円が当たる確率は2倍に跳ね上がります。「そんなバカな」と思いますよね。私がこれと同じように行った実験でも、9割の人が「自分の選択を変えない」と答えました。
![](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/c/1/200/img_c130516d002b0c420ce204bab33fa59513782.jpg)
「残された箱は2つだから、Bに変えてもCのままでも確率は1/2。それなら初志貫徹で、最初から自分で選んだCのままにしよう。うん、変えない!」
ほとんどの人たちがそう思ったのでしょう。
・2つのうちから1つ選ぶ時の確率は「どんな時も1/2」である
・意見が「ブレない」が大切だ
あなたはこれらを「正しい」と思い込んでいたのではないですか? そのせいで、まんまと賞金100万円を逃す確率が高い選択をしてしまったわけです。Bに変えたほうが当たる確率は2倍も高くなるのに……。
■多くの人が正しい選択をできない
これは「モンティ・ホール問題」と呼ばれるもので、箱を10個にするとわかりやすくなります。箱が10個あって、1つの正解の箱を選ぶあなたの確率は1/10。残りの箱のどれかが正解である確率は9/10。つまりは、最初に選んだ箱以外の箱を選んだほうが当たる確率は高くなります。
![【図表】モンティ・ホール問題](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/9/b/570/img_9b511951083210c0f7f959fb8e3ce7cc299489.jpg)
これを3つの箱に置き換えると、あなたがもともと選んだ箱の正解確率は1/3。残りの箱が正解の確率は2/3ですから、CからBの箱に変えると、正解確率はあなたが最初に選んだ箱のままでいるより2倍も高くなるのです。
さて、もう一度、お聞きします。
あなたがこれまで「正しい」と思っていたことは、本当に全て正しい、つまりは、自分にメリットがあることだと言い切れるでしょうか?
知らず知らずのうちに、先ほどの質問のように「確率は1/2だ」という間違ったことを「正しい」と思い込んで、100万円を逃す選択をして生きてきたのかもしれません。
ここまでくると、少し雲行きが怪しくなってきましたね。
そう、私たちが「正しい」と思っていることが、実は私たちを苦しめていたり、私たちに損をさせているわけです。
この真実にほとんどの人が気づいていませんが……。
・あなたを苦しめている思い込み
・あなたの毎日の努力を台無しにしてしまっている思い込み
・あなたに損をさせている思い込み
を手放していきましょう。
先述の11項目の1つひとつは、我々の思い込みであって、続けると不幸になることが科学的な裏付けのもと明らかになっています。本書はそうした思い込みの誤りを手放すきっかけになることでしょう。
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作家、ビジネスコンサルタント
1983年仙台市生まれ。大手企業で働いていたが岩手県で東日本大震災に被災。生死を問われる経験を経て「自分の人生の時間はすべて好きなことに費やす」と決め、独立起業し、心理療法やNLP、認知心理学、脳科学を学び始める。それが原点となり、個人の起業家を対象に「心を科学的に鍛える」ことを中心に置いた独自のビジネス手法を構築。日本や海外で数千人規模の講演会を実施し、グローバルに「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」ための活動をしている。『神メンタル』『神トーーク』(KADOKAWA)はシリーズ累計20万部突破のベストセラー。
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慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
1962年山口県生まれ。84年東京工業大学工学部機械工学科卒業、86年東京工業大学理工学研究科機械工学専攻修士課程修了、同年キヤノン株式会社入社。慶應義塾大学理工学部教授、ハーバード大学客員教授等などを経て、2008年慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授。11年同研究科委員長兼任。17年より慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。研究領域は、ヒューマンロボットインタラクション、認知心理学・脳科学、など。『脳はなぜ「心」を作ったのか』『錯覚する脳』(ともに、ちくま文庫)、『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書)など著書多数。
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(作家、ビジネスコンサルタント 星 渉、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授 前野 隆司)
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