1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

「プロは重視し、個人投資家は軽視する」投資の成功に欠かせない"ある指標"とは

プレジデントオンライン / 2020年12月31日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/structuresxx

投資のプロフェッショナルとアマチュアは何が違うのか。19歳からウォール街で働いてきた経験を生かしたYouTubeチャンネルが評判の投資家・高橋ダン氏は「ウォール街では常識でも、個人投資家のほとんどは理解していない指標のひとつが『シャープレシオ』。いかに効率よくリターンを出しているかを重視することが多くの財産を築く条件になる」という——。

※本稿は、高橋ダン『僕がウォール街で学んだ勝利の投資術』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■ウォール街では常識だが、個人投資家のほとんどは理解していないこと

短期投資の目的は、長期積み立ての部分を含め、全体のパフォーマンスを上げるためです。ただし、ここで知っていただきたいのは、単にリターンを高めただけでは、投資が成功しているとは言えない、ということです。

今からお話しすることは、金融リテラシーを高めるうえで、非常に重要なポイントです。ウォール街では常識ですが、個人投資家のほとんどは理解していないと思います。ぜひ、あなたに理解していただきたいと思います。

Aさん:ひとつの銘柄(株式)に投資して、年8%のリターン。コロナショックの際には一時、50%の値下がり

Bさん:10の商品に投資して、年8%のリターン。コロナショックの際には一時、20%の値下がり

多くの方はBさんを選ぶのではないでしょうか。僕も同じです。

なぜなら、同じリターンを得られるなら、値下がりの幅が小さい方が望ましいからです。一時的とはいえ、50%もの値下がりに耐えるのはハードであり、ストレスを感じます。ストレスが小さく済むBさんの方がいいはずです。

■収益率の高さも大事だが、標準偏差の低さも重要

もうひとつ例を挙げましょう。

Aさん:ポートフォリオの収益率は12%で、標準偏差は10%

Bさん:ポートフォリオの収益率は8%で、標準偏差は5%

難しい言葉が出てきましたね。

収益率とはリターンのことです。

そして標準偏差とは、バラツキの大きさを表す指標です。標準偏差が低いということはバラツキが少ないこと、標準偏差が高いということはバラツキが多いことを示します。バラツキが多いとハラハラしますから、標準偏差は低いのが望ましいと言えます。

標準偏差が低いのはBさんです。しかし、収益率はAさんの方が上です。さて、あなたはAさんとBさんのどちらを選びますか?

僕が選ぶのはBさんです。なぜか。それは、Bさんの方が「シャープレシオ」が高いからです。

■プロが重要視する「シャープレシオ」を知っているか

シャープレシオとは、いかに効率よくリターンを出しているかを表す指標です。

ヘッジファンドを立ち上げる際、僕はメンターと資金集めに奔走しましたが、そうした場で投資家から問われるのはパフォーマンスではありません。シャープレシオです。標準偏差(価格のバラツキ)を抑えながらパフォーマンスを得ることが重要であり、どれだけ価格のバラツキを抑えられているかが問われるのです。

高橋ダン『僕がウォール街で学んだ勝利の投資術』(KADOKAWA)
高橋ダン『僕がウォール街で学んだ勝利の投資術』(KADOKAWA)

価格のバラツキが大きいと、ストレスは大きくなります。「もう投資なんかやめよう」と思ってしまうかも知れませんし、もしも大きく動いている時にお金が必要になれば損してしまう可能性もあります。バラツキが小さければ安心して投資が続けられますし、値下がりしている時に売らざるを得ない、といった不運に遭う可能性も低くなります。単に収益率が高いだけでなく、標準偏差も低いこと、すなわち、シャープレシオが高いことが重要、というわけです。

シャープレシオの計算式で、分子になるのは、ポートフォリオの収益率から、安全資産の収益率を引いたものです。安全資産の収益率とは、値下がりするリスクのない資産の収益率。分母は、ポートフォリオの収益率の標準偏差です。標準偏差とは、バラツキの大きさのことです。

ウォール街では、シャープレシオが1以上なら合格、2ではかなり素晴らしい、という評価です。3を達成するのはかなり難しく、月単位でパフォーマンスがマイナスになることがほとんどないといった運用でなければ、3にはならないでしょう。

■ウォール街「投資における損にはふたつの損がある」という諺の意味

ウォール街には、「投資における損にはふたつの損がある」という諺があります。ひとつは「お金を失う」という実質的な損、もうひとつは、「痛い想いをする」という、エモーションの損です。

値下がりしたところから気持ちを奮い立たせ、次の戦略を立てるのは、容易なことではありません。損をしてしまったというマイナスのエモーションが邪魔をして、焦りが生まれ、合理的に考えるのが難しいのです。その結果、売却を急いでしまう、投資するのをやめてしまう、といった行動をしてしまう危険性もあります。

ウォール街では、高いパフォーマンスが出て嬉しいという喜びの大きさより、損した時の落ち込みの方が感情の幅が大きいと言われており、多くの心理調査テストでも、そうしたことが指摘されています。このことから考えても、長期的なパフォーマンスをあげること以上に、投資を継続するためにも精神的なダメージを抑えることが重要です。僕が大きな損を出してしまった時、完全に立ち直るまでに何カ月もかかりました。

あなたも、得した経験より、損した時のことを鮮明に覚えている、ということはありませんか? 動物にはそうした傾向があり、襲われて恐怖を体験すると、襲われないような行動をとってしまうのです。再びこんな想いはしたくない、投資など二度としない、と思ってしまい、投資をせず、預貯金だけで運用するというのは、人生においてとてつもなく大きなリスクです。本当にもったいないことになります。それほど変動率の大きさは重要であり、結果的にパフォーマンスに影響するのです。

■投資の成功のカギ「シャープレシオ」をどう高めればいいのか

では、どうすればシャープレシオを高めることができるでしょうか?

分母の数値を低くするために必要なのは、多様化です。商品Cが下がれば商品Dが上がりやすくなるなど、逆の値動きをしやすいものをたくさん集めることが重要です。

例えばCが50%上がってDが40%下がれば、Cの値上がりの多くは打ち消されてしまいます。それではもったいないと思う人もいるかも知れません。確かにリターンを高めることも大切ですが、ポートフォリオを多様化してリスクを抑える方に少し比重を置くべき、というのが僕の意見です。ポートフォリオの暴落を避けることができ、長期的にはいい効果が得られると思います。

■10の銘柄に投資して「すべてが日本の個別株」はアウト

シャープレシオをどうやって高くするかについては、世界中に1万以上ある投資ファンドがみな競って答えを探ろうとしていますが、どんなプロフェッショナルであっても簡単には答えが見つかりません。とはいえ、できることはあります。まずは相関係数が低いものを選んで、多様化することです。例えば10の銘柄に投資しても、すべてが日本の個別株だけではシャープレシオは高くなりません。もし日本で甚大な災害が起きたりすれば、10の銘柄すべてが暴落する可能性があるからです。

高橋ダン氏
高橋ダン氏(写真提供=KADOKAWA)

その10銘柄のうち、ひとつが米国株であれば、9の銘柄が下がっても1銘柄は上昇するかも知れず、あなたの資産全体の下落は少し抑えられるかも知れません。さらに、日本株を1銘柄にして、ほかを米国株、途上国株、米国債、金、原油などと、投資先を多様化していれば、すべてが下がるといった事態を避けられる可能性はさらに高くなります。

例えば伝統的には株と米国債は違う値動きをしやすいですし、先進国と途上国、あるいは国によって、また株とコモディティも相関性が低いときがあります。とくに米国債と米国株は、歴史的には逆方向に値動きしてきたことが多いといえます。経済危機があれば株が下がり、時には債券もコモディティも下がりますが、少し経つとそれぞれが異なるスピード、独自の理由で価格が回復していきやすいなどの傾向があります。

僕がおすすめした長期積み立てのポートフォリオは、多様化の効果についても考慮しており、シャープレシオを高める組み合わせになっていると思います。投資を経験し、メンターから学び、本を読み、たくさんの人と話し、データをたくさん分析し、多様化の提案をしています。

----------

高橋 ダン(たかはし・だん)
1985年、東京生まれ、日本国籍。10歳までの多くを日本で過ごす。その後、アメリカに移り、12歳で投資を始める。21歳のとき、コーネル大学をMagna Cum Laude(優秀な成績を収めた卒業生に付けられる称号)で卒業。ニューヨークのウォール街で19歳のときにインターンとして2年間働く。その後、フルタイム勤務を開始し、投資銀行業務、取引に従事する。26歳でヘッジファンド会社を共同設立し、30歳で自身の会社の株を売却。その後シンガポールに移住。約60か国を旅し、2019年秋に東京に帰国。2020年1月にYouTubeでの動画投稿を本格始動し、わずか3カ月でチャンネル登録者数が10万を超える。納豆と筋トレをこよなく愛する。高橋ダンYouTubeチャンネル(日本語版)登録者数32万人超。

----------

(高橋 ダン)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください