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箱根駅伝「優勝は3強青学・東海・駒澤ではなく、72年ぶり明治大」という大穴

プレジデントオンライン / 2021年1月1日 9時0分

往路を5位でゴールする明治大の鈴木聖人=2020年1月2日、神奈川県箱根町(写真=時事通信フォト)

コロナ禍で沿道での応援自粛を「お願い」している箱根駅伝2021。優勝争いは3強の青学大、東海大、駒澤大と目されているが、元箱根ランナーであるスポーツライターの酒井政人さんは、「3強に迫る実力があるのが過去7度のV経験のある明治大です。1949年以来の72年ぶりの歓喜もありえます」。テレビ観戦を100倍面白くする裏ネタ21を紹介しよう――。

■元箱根ランナーが厳選「テレビ観戦でツウぶれる裏ネタ21」

コロナ禍で開催される箱根駅伝2021(1月2、3日)。はたして今回は、全10区間約11時間の中で、どんなドラマが繰り広げられるだろうか。

優勝を巡る各校の駆け引きやレース展開が気になるが、多くのチーム・選手の取材をしてきた元箱根ランナーの筆者としては、「テレビに映らない」部分にも注目してほしい。そこでとっておきの箱根駅伝2021のトリビア(豆知識)を21個紹介したい。

▼トリビア1 「無観客開催」の謎

一部メディアが2021年の箱根駅伝は「無観客開催」と報じたことが大きなインパクトとなって世間に広がった。そんなことできるわけがない、と思った方もたくさんいるだろう。そこで事実確認をしておきたい。

箱根駅伝を主催する関東学生連合は加盟校に対して応援自粛を「要請」しているが、一般の方には沿道での応援を自粛するように「お願い」している立場。当然、一般の方への強制力はない。

そのなかで関係者は、『応援したいから、応援に行かない。』というキャッチフレーズの下、大会を安全に運営することを考えている。箱根ファンならば、今回は自宅でのんびりとテレビ観戦するのがいいだろう。

▼トリビア2 青学大の元コーチが東海大に“移籍”

前回の箱根駅伝は青山学院大が2年ぶり5回目の総合優勝に輝いた。一方で連覇を狙った東海大は2位に終わった。青学大・原晋監督と東海大・両角速駅伝監督は同学年ということもあり、バチバチのライバル関係だ。

そんな両校間で思わぬ“移籍”があった。昨年度まで青学大のコーチを務めていた瀧川大地氏が退職した後に、東海大のコーチに就任したのだ。瀧川コーチは東海大で主にスカウトを担当しているが、青学大がどんな取り組みをしていたのか、東海大はその内情やスキルを吸収したとすれば、レース展開に与える影響は小さくないだろう。

▼トリビア3 「黄金世代」の1学年下は部員が少ない

前回2位の東海大の立役者は4年生だった。2015年の全国高校駅伝1区で1、2、4、5、6位だった選手が同大に入学し「黄金世代」を築いた。しかし、こうした黄金世代がいるとレギュラー確保が難しいと判断した選手もいて、現在の4年生は8人しかいない(昨年の4年生は18人)。それでも、2016年の全国高校駅伝でトップ3を独占した名取燎太、塩澤稀夕、西田壮志が主軸に成長。今回はこの4年生トリオを軸に王座奪還を目指している。

▼トリビア4 コロナ禍のトレーニングは過酷?

コロナ禍で4月に「緊急事態宣言」が発令されたのに伴い、大半の大学が4~6月は自粛期間になった。たとえば、東洋大は3月27日~6月21日までが自粛期間となり、選手寮も閉鎖。選手たちは実家に帰省して、各自でトレーニングを行った。

一方で、青学大は基本、選手たちが寮に残ることで、外部との接触をシャットダウン。徹底したコロナ対策を講じてきた。自粛期間が終わった後もマスクを着用して練習する機会が増加。ある選手は、「マスクは呼吸がしづらくて暑くなるので、同じ練習でもきつく感じます」と苦笑いしていた。

■「ナイキ厚底」着用率、前回は84.3%、今回は9割超必至

▼トリビア5 箱根駅伝予選会は過去最高レベル

10月17日の箱根駅伝予選会は陸上自衛隊立川駐屯地の周回コースで無観客開催となった。フラットコースで気象条件に恵まれたこともあり、順大が過去最速タイムでトップ通過。一方、高速レースに対応できなかった中央学院大は19年連続出場を狙っていたが、惜しくも逃した。

この予選会では、2人のスーパールーキーが活躍した。三浦龍司(順大)がハーフマラソンで1時間1分41秒のU20日本最高記録を出し、吉居大和(中大)も大迫傑が保持していたU20日本最高タイの1時間1分47秒で走破した。

▼トリビア6 全本大学駅伝は2年生エース田澤廉の活躍で駒大が6年ぶりV

11月1日に行われた全日本大学駅伝(以下、全日本)は7区までに5回の首位交代があり、順大、城西大、早大、青学大、東海大がトップに立った。そして、最終8区は“3強”といわれていた青学大、東海大、駒大がトップ集団を形成。最後は駒大の2年生エース・田澤廉が東海大・名取燎太を突き放した。6年ぶりの日本一に輝いた駒大は学生三大駅伝で最多となる22回目の優勝になった。

▼トリビア7 今季もナイキ厚底シューズが爆走中

全日本は記録の面でも素晴らしかった。駒大が大会記録を2分以上も更新して、5位早大までが大会新。4区間(1、4、5、6区)で合計13人が区間新記録をマークした。

区間賞を獲得した8人全員がナイキ厚底シューズを着用。6人が最新モデルの「エア ズーム アルファフライ ネクスト%」を、2人が前モデルの「ズームエックス ヴェイパーフライ ネクスト%」を履いていた。

前回の箱根は210中177人(84.3%)がナイキ厚底シューズを着用していたが、全日本は出場200人中186人(93.0%)とさらにシェアを伸ばしたことになる。今回の箱根ではその数字を超える可能性もある。

ロンドンのナイキストアのロゴ
写真=iStock.com/code6d
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/code6d
▼トリビア8 冬開催の日本選手権で好タイム

コロナ禍の影響で6月から10月に延期した日本選手権は長距離種目のみ、12月4日に開催された。これは一時凍結されていた東京五輪参加標準記録が12月から有効になるためだ。珍しい冬の日本選手権は好タイムが続出した。

男子10000mは前回の箱根駅伝2区で激戦を演じた相澤晃(旭化成・東洋大出身)と伊藤達彦(Honda・東京国際大出身)が高速バトルを展開。相澤が27分18秒75、伊藤が27分25秒73をマークして、ともに日本新記録&東京五輪参加標準記録(27分28秒00)をクリアした。

10000mでは田澤廉(駒大)が今季日本人学生最高の27分46秒09で8位に入ると、中谷雄飛と太田直希の早大3年生コンビ、池田耀平(日体大)も27分台に突入した。5000mでは吉居大和(中大)がU20日本記録を13分25秒87に短縮して3位に食い込んでいる。

なお有効期限外ながら3000m障害の東京五輪参加標準記録を上回っていた三浦龍司(順大)は障害の練習中に右太腿の付け根を打撲した影響で欠場した。

▼トリビア9 ナイキは厚底だけじゃない、スパイクも大幅進化

世界陸連は7月28日の新規則で、800m以上のトラック種目は靴底の厚さを「25ミリ以下」に改定した。12月1日から適用となったため、日本選手権では厚底ではなく、大半の選手がスパイクで出走した。

そこでも爆発的な威力を発揮したのがナイキだった。男子10000mは出走51人中43人、同5000mは出走25人中24人がナイキの“高速スパイク”を着用。先ほど名前を挙げた相澤、伊藤、田澤、中谷、太田、池田、吉居はいずれもナイキを履いて結果を残した。

■“2年生エース”エントリー漏れの青学大・原監督はトイレで悩む

▼トリビア10 駒大の10000m平均タイムが過去最高

シューズの進化もあり、今回は10000mのタイムが急上昇。箱根駅伝のエントリー上位10人の平均タイムは駒大が“歴代最高”を約3秒更新する28分26秒81に到達した。なお10000m29分切りの人数は青学大、明大、駒大、順大、中大の5校が10人以上。28分台で「エース級」という考え方は過去のものになったようだ。

▼トリビア11 連覇を目指す青学大は“2年生エース”がエントリー漏れ

12月10日に箱根駅伝の「メンバーエントリー」(16人)が行われた。一番の驚きは青学大の2年生エース・岸本大紀が外れたことだろう。岸本は前回の箱根駅伝で花の2区を担当。1年生最高記録の1時間7分03秒(区間5位)で快走した選手だ。

今季は故障の影響で、全日本を欠場していた。順調なら岸本は2区が濃厚だっただけに、青学大は大幅に区間配置を変えなければならない。正月のレース展開にも影響を及ぼすことになりそうだ。

2019年4月の青山学院大学
写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mizoula
▼トリビア12 3年生主将の國學院大は4年生のプライドが爆発

前回の箱根で國學院大は過去最高の3位に大躍進した。2年前と同じように、今季は木付琳が3年生主将に就任して、「2年計画」の1年目として再スタートを切った。すると“置き去り”にされかけた4年生が奮起。前回は1人しか箱根を走ることができなかったが、8人がエントリーに名前を連ねたのだ。今回は4年生の意地で“連続シード”を死守できるか注目される。

▼トリビア13 箱根駅伝の当日変更が6人に変更

今回は新型コロナウイルス感染なども考慮して、箱根駅伝の「当日交代」が4人から6人(1日最大4人)に変更された。箱根駅伝は12月29日に「区間エントリー」が行われ、当日変更で補欠選手を入れることができる。変更枠が増えたことで、「当て馬」を入れて他校の様子をうかがう戦略が顕著になるかもしれない。

▼トリビア14 青学大の区間配置はトイレで完成?

12月10日の「メンバーエントリー」が終わると、16人をどの区間に配置するのか指揮官たちは頭を悩ませることになる。病気などアクシデントでの当日変更も考慮して、“難解なパズル”を組み立てていく。青学大・原監督の場合は、洋式トイレのなかにボードを設置。選手の名前をボードに刺して、区間配置に頭をめぐらすという。この作業は「区間エントリー」が行われる12月29日まで何度も繰り返されることになる。

▼トリビア15 『GoToトラベル』で合宿が安上がりに

11月中旬から12月中旬にかけて合宿を行う大学が多い。近年の一番人気は首都圏からほど近い千葉県・富津だ。授業の関係で参加できない選手もいたが、授業がオンラインになったことで合宿が組みやすくなったという。さらに『GoToトラベル』を活用する大学もあり、ある監督は、「例年よりも合宿費が安く済みます」と喜んでいた。

▼トリビア16 ユニフォームに企業スポンサーが登場

今回の箱根駅伝から、チーム強化や選手の経済的負担を減らす狙いで、ユニフォームに同一のスポンサー名(40平方センチメートル、高さ5センチ以内)をシャツとパンツにそれぞれ1つずつ表示できるようになった。今大会では出場20校中13校が導入する。

東海大は「山王総合」(建物総合管理業)、東洋大は「健康ミネラルむぎ茶」(伊藤園)、法大は「郵生」(ビルメンテナンス業)、専修大は「アマタケ」(鶏肉加工販売会社)。青学大は毎年夏合宿を行っている新潟県の「妙高市」というロゴが入る予定だ。

■3強・青学大、東海大、駒澤大に迫る明治大72年ぶり優勝もある

▼トリビア17 今回は“3強対決”が有力

今回は連覇を目指す青学大、前回2位で全日本2位の東海大、全日本Vの駒大が“3強”という位置づけだ。

青学大は2区に不安があるものの、エース吉田圭太、主将・神林勇太を軸に総合力が高く、箱根駅伝へのピーキングが抜群(神林は今回がラストランの予定で、箱根駅伝のスポンサーでもあるサッポロビールへの入社が内定)。

東海大はスピードが武器の塩澤稀夕、スタミナ抜群の名取燎太、5区で区間賞を狙う西田壮志の4年生トリオを往路につぎ込み、前半勝負に出るつもりだ。

駒大は学生ナンバーワンと呼べる田澤廉で先制攻撃を仕掛けて(筆者は田澤の2区起用を予測)、そのまま逃げ切れるかがカギ。1年生に好選手がそろっており、今回勝つと“黄金時代”が到来する可能性が高い。

▼トリビア18 今年は1年生の当たり年

これまで何度も名前を挙げた三浦龍司(順大)と吉居大和(中大)以外にも今回は楽しみなルーキーが多い。全日本でも1年生3人が区間賞を獲得している。

1区で三浦が猛烈スパートを見せると、4区で石原翔太郎(東海大)が区間記録を32秒も塗り替える区間新。6区では昨年の全国高校駅伝1区10キロメートルを日本人最高の28分48秒で走破した佐藤一世(青学大)が区間記録を19秒更新している。

三浦と吉居は1区で激突する可能性も高く、箱根路でもスーパールーキーたちが火花を散らすことなりそうだ。

フィニッシュテープを切る先頭ランナー
写真=iStock.com/KeithBishop
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/KeithBishop
▼トリビア19 留学生は過去最多タイの5人が出場予定

今回は前回と同じ過去最多タイとなる5人のケニア人留学生がエントリーされた。イェゴン・ヴィンセント(東京国際大)、フィリップ・ムルワ(創価大)、ライモイ・ヴィンセント(国士大)、ジョセフ・ラジニ(拓大)の4人は田澤廉(駒大)以上の走力を誇る。いずれも2区での起用が濃厚。1区次第では2区でトップ争いに加わるだろう。

▼トリビア20 「山の神」は降臨するか?

前回の山登り5区は宮下隼人(東洋大)が1時間10分25秒の区間新を樹立したが、“実質最高”は函嶺洞門を通過していた旧コースで初代・山の神、今井正人(順大/現・トヨタ自動車九州)がマークした1時間9分12秒。この記録に迫る選手が出てくると、「山の神」と呼ばれることになるだろう。なお、5区の連続区間賞は2代目・山の神、柏原竜二(東洋大)以来出ておらず、今回は宮下が挑戦する。

▼トリビア21 青学大、東海大、駒沢大に迫る明治大72年ぶり優勝も
往路を5位でゴールする明治大の鈴木聖人=2020年1月2日、神奈川県箱根町
往路を5位でゴールする明治大の鈴木聖人=2020年1月2日、神奈川県箱根町(写真=時事通信フォト)

青学大、東海大、駒澤大の“3強”に迫る戦力を持つのが過去7度のV経験がある明大だ。前回は17位から6位に急上昇。今年の全日本は青学大を蹴落として、3位に食い込んでいる。エントリー上位10人の10000m平均タイムは2位。

3強と比べて攻撃力は劣るが、優勝ラインが下がると、ビッグチャンスがめぐってくるかもしれない。最後の栄冠は1949年。今回勝つと72年ぶりの歓喜になる。最多14回の優勝を誇る中大も近年低迷していたが、エントリー上位10人の10000m平均タイムは4位。吉居大和という強力ルーキーもいる。「3位以内」を目標に掲げており、実現すれば20年ぶりのトップ3だ。名門校の“復活祭”は見られるのだろうか。

近年は各校の実力が拮抗(きっこう)しており、優勝争いだけでなく、シード権争いも熾烈だ。そのため、どこからヒーローが現れるのかわからない。11時間ものドラマを自宅でじっくりと堪能していただきたい。

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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)

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(スポーツライター 酒井 政人)

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