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「3000万の物件を4000万で売る」なぜ不動産屋はあくどいほど儲かるのか

プレジデントオンライン / 2021年1月15日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rawpixel

家を買う時はなにに気をつけるべきか。公認会計士の山田寛英氏は「不動産屋はあくどい手口を使うほど儲かる。3000万円の物件をリフォームして4000万円で売るケースについて解説しよう」という――。

※本稿は、山田寛英『不動産屋にだまされるな』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。

■倫理観を崩壊させた方が儲かる場合がある

不動産屋はそのビジネス上、倫理観を崩壊させたほうが儲かる場合があることも否めない。その分かりやすい例が、両手仲介を2回繰り返すことのできる「買取再販」の悪用だ。「買取再販」とは不動産屋が物件を買い取り、リフォーム(リノベーション)したのち、適正価格にして改めて市場に出す手法を主に指す。

たとえば、3000万円で中古のマンションを不動産業者が購入し、お風呂やキッチンを新しいものと取り替え、間取りを変更し、壁紙を新しいものにしたうえ、4000万円で販売、といったケースは典型的だ。

もちろん「買取再販」のすべてが悪いわけではない。適正価格で、実直に売買を行う不動産屋もたくさんいる。しかし、儲け至上主義の不動産屋がいた場合、そのあくどさが如実に表れる販売方法でもある。以下にその一例を紹介したい。

■物件を安く買い叩き、リフォームして高く売る不動産屋

たとえば「古くなったマイホームを売りたい」と考える売主がいたとしよう。その仲介をすることになった不動産屋Aは、知り合いの不動産屋Bと組み、そのままBへ不動産を売る。この場合、不動産屋Aは売主、そして買主の不動産屋Bの双方を1社で仲介。いわば「両手」仲介を行ったとする。

途中、買主の不動産屋Bは不動産屋Aに対して、「売主になるべく安く売らせろ」と、要望を出す。そこで不動産屋Aは売主に対し、「業者しか買わない物件です。ここで売らないと後はありません」などと言いくるめ、市場に出せば4000万円で売れる可能性がある物件を、不動産屋Bへ3000万円で売ってしまう。そして買い受けた不動産屋Bは、この物件にリフォームやリノベーションを行って、利益を十分に乗せて市場へ戻す。

しかし、市場へ戻すといっても、そのまま不動産情報サイトのレインズなどに載せたりするわけではない。ここでのポイントは、リフォームした後に買主へ売却する際、不動産屋Aが仲介をすべく、再度暗躍することだ。

仲介をしてくれる不動産屋は本来、ほかにいくらでもいる。それにもかかわらず、同じ不動産屋Aが「未公開物件」などの名目で、公開前に先んじて買主と交渉。5000万円での売買契約を成立させてしまう。

■あくどくすればするほど「儲かる」という現実

あくまでこれは一例だが、テクニックをフルに用いれば、不動産屋が手にする仲介手数料はどんどん膨らむ。なお今回の場合、不動産屋Aが仲介手数料として得る額を厳密に計算すれば{(3000万円×6%+12万円)×1.1}+{(5000万円×6%+12万円)×1.1}で、およそ554万円。これは売主と買主の双方代理、つまり両手仲介をした取引を2回行うことで、はじめて創出できる額だ。

リビング
写真=iStock.com/imaginima
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imaginima

「安く買って高く売る」のは商売の基本だし、決して悪いことではない。しかし仮に、この不動産屋Aが不動産屋Bと結託せず、素直に市場へ出した場合、売主の利益はどうだったか。

売主が市場の論理に任せていれば、4000万円で直接、買主に売ることができたかもしれない。この時点で売主の利益は大きく変わっている。リノベーションも、業者が先にやらないとならない理由はほとんどないだろう。買主が買った後に自分の好みにやればいいし、おそらく業者の利益が乗っていない分だけ安く済むはずだ。

■「悪いこと」はしていないが、売主や買主の利益を奪った

しかし今回のケースでは、不動産屋たちは最初から、自分たちの利益を最大化することを重視し、売主や買主の利益を毀損することをいとわなかった。客が不動産屋にコンタクトを取った、最初のその瞬間に、自分たちの利益が最大化することを意図して、取引を進めたのだ。この点で「あくどい」と言える。

仲間内での仲介手数料や転売利益については、「今回はこちらに持ち込まれた物件だから、そちらの取り分を抑えてくれ。次回はそちらを儲けさせるから」など、そのときの状況に応じて案分をすればいい。このようにして「あくどい不動産屋たちが、あくどい方法で儲ける」というサイクルが繰り返されていくのである。

■不動産売買は「入札形式」に近づけるべきだ

山田寛英『不動産屋にだまされるな』(中公新書ラクレ)
山田寛英『不動産屋にだまされるな』(中公新書ラクレ)

では、本来あるべき不動産売買の形とはどのようなものだろうか。

私見ではあるが、それを簡単に言えば、取引を入札形式に近い形で行うことだと思われる。情報をなるべく広く拡散し、ときに競わせ、一番高い金額を提示した買主に売る。その際、買主には売主と別の不動産屋が代理として付くのが当然理想的だ。

しかしこの方法では、不動産屋Aの利益が「物件価格×3%+6万円」と最小化する。会社である以上、利益の確保は優先されるべきであり、みすみす最小化させてしまうことは、決して望まない。だから売買の流れが一向に、理想形へと近付かないのである。

■雨後のたけのこのように登場した「リフォーム会社」

ともあれ「買取再販」は不動産屋にとっては、「両手仲介」以上に実入りが大きくなる可能性を秘め、消費者は大きくソンをしかねない取引である。

タケノコ
写真=iStock.com/GI15702993
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GI15702993

また、近年のリノベーションブームを背景に売上を伸ばすリフォーム会社は、雨後のたけのこのように登場した。しかし多くが新しい業態ということもあり、規制する法律があまりないことから、費用がピンキリなのはもちろん、売り方や建て方、進め方などもまちまちで非常に頼りない状況が続いている。

おしゃれな展示場やホームページ、そしてリノベーションした内観などにだまされ、業者たちの術中にはまることがないよう、ぜひ心してほしい。

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山田 寛英(やまだ・ひろひで)
公認会計士・税理士
1982年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒。アーク監査法人に入所。不動産会社や証券会社を中心とした会計監査実務を経て、税理士法人・東京シティ税理士事務所にて個人向け相続対策・申告実務に従事。2015年、相続税・不動産に特化したパイロット会計事務所を設立。不動産を中心とした相続対策・事業承継を専門とする。公認会計士の立場で不動産と接する中、一般人と業界関係者の力に、圧倒的な力関係が温存されている現状に警鐘を鳴らすとともに、インターネットの力で変革が始まる直前でもあることを主張。各種メディアへの寄稿や講演を行っている。著書に『不動産屋にだまされるな』『不動産投資にだまされるな』(いずれも中公新書ラクレ)など。YouTube「会計士・山田寛英の不動産税金チャンネル」運営中。

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(公認会計士・税理士 山田 寛英)

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