歯科医が断言、新型コロナが重症化する人としない人は「口の中」が違う
プレジデントオンライン / 2021年1月19日 9時15分
※本稿は、照山裕子『歯科医が考案した新習慣!免疫力を高めてウイルスを遠ざける7秒うがい』(きずな出版)の一部を再編集したものです。
■歯磨きのうがい不足で、菌やコロナを含むウイルスを洗い流しきれない
「みんな、正しいうがいのやり方を知らないのかもしれない」
これが、長年歯科医師として働き、多くの患者さんの口のなかと、うがいのやり方を見てきた私の感想です。みなさんも歯医者さんに行ったら、治療の合間(あいま)に「口をゆすいでください」と指示されると思います。そんなとき、多くの患者さんは口のなかに水を含んで軽くゆすぐだけで、すぐに水を吐き出してしまいます。なかには、まったく音が聞こえてこないほど静かなこともあります。残念ながら、そのようなうがいでは、治療した歯の削りかすや薬剤などが、口のなかにベッタリと残ってしまっているのです。
もちろん、「治療の最中だから、手早く済ませよう」という患者さんたちの配慮もあるでしょう。あるいは麻酔が効いていれば、うまくゆすげなくて当然です。でも、もしも普段のうがいも2~3回ブクブクするだけで済ませているとしたら、明らかに「うがい不足」です。
これでは、口のなかに歯磨き粉の研磨剤などが残ったままになりますし、ばい菌やウイルスなどを洗い流しきれません。新型コロナウイルスの流行によって、これまで以上に多くの人が「外から帰ったら、うがい、手洗い」を習慣にしていると思います。
でも、そもそも間違ったうがいをしていては、その効果もほとんどなくなってしまいます。これはとても、もったいないことですよね。
■口のなかが汚いとコロナを含む“感染症”が重症化しやすい
しかし人々のうがいが不十分なのは、仕方がないことだと思います。というのも、私たちはだれも「正しいうがいのやり方」を、人から教わったことがないからです。
歯磨きについては、私たちは小さいころからやり方を教えられます。手の洗い方も、「誕生日の歌を歌いながら、爪の間までしっかり洗いましょう」などと教えてもらえます。
でも、うがいのやり方については、だれも教えてくれないのです。じつは「正しいうがいのやり方」は、確立されていません。うがいは日本古来の風習とされ、これまでだれも、うがいについてしっかり研究していないからです。
しかしその一方で、「口のなかの汚さ」と「感染症の重症化リスク」の関係性は多くの研究で明らかにされています。口のなかが汚いと感染症にかかりやすくなり、重症化しやすくなることは間違いないのです。
そもそも、虫歯や歯周病といった疾患(しっかん)も、れっきとした細菌による“感染症”ですから、口のケアが不足していると、まずはそうしたトラブルが発生してきます。
■うがいは長くやるより「強く」やることが大事
そこで私は、自分のこれまでの臨床(りんしょう)経験をベースに試行錯誤を重ね、世界で唯一の「うがいメソッド」をつくりました。照山流のうがいメソッドをこれまで多くの患者さんに実践してもらったのですが、みなさんから
「スッキリ感がまるで違う!」
「口のなかのネバつきがなくなった!」
「歯石(しせき)がつかなくなって、歯医者さんにびっくりされました!」
などと、うれしい反響をいただいています。うがいは、ただ時間をかけてやればいいわけではありません。うがいで大切なのは「強さ」です。
口のなかで激しい水流をつくらないと、歯ぐきや歯の隙間、のどの奥のばい菌やウイルスは洗い流せません。逆にいえば、「強さ」さえ意識してやれば、短時間でもしっかり効果のあるうがいができるということです。小さなお子さんからお年寄りまで、だれでも気軽にできて、しっかり効果のあるうがい。
それが後述する「7秒うがい」なのです。
■「7秒うがい」は全身の健康を守る
口のなかが汚いと、感染症のリスクが高まるだけにとどまりません。近年、口のなかの環境と、全身の健康との間に強い相関関係があることもわかってきました。
その数、じつに100を超える疾患に関与しているといわれています。口のなかが汚い人は、大腸がん、心臓や脳血管疾患、アルツハイマー病など、重大な病気にかかりやすいのです。これは、汚い口のなかで繁殖(はんしょく)した歯周病菌などが全身に回り、あちこちで悪さをするためです。
7秒うがいを習慣化すると、口のなかが清潔に保たれ、国民病ともいわれる歯周病、そして歯周病が引き起こす、さまざまな病気の予防に役立ちます。水だけでカンタンにできて、どれだけたくさんやってもデメリットがまったくない7秒うがい。
ぜひあなたも今日から実践して、口から健康な体を手に入れてください。
■新型コロナウイルスは、口のなかにばい菌が多い人ほど重症化しやすい
前述したように以前から、医師の間では、「口のなかが汚いと、インフルエンザになりやすい、重症化しやすい」というのが常識となっています。
実際、奈良県で行われた調査では、介護施設の高齢者に歯磨きなどの口腔(こうくう)ケアを徹底したところ、インフルエンザの発症率が10分の1に激減したという報告があります。
新型コロナウイルスについては、口のなかにばい菌が多い人ほど重症化しやすいことがわかってきています。そして新型コロナウイルスはインフルエンザと異なり、唾液腺や歯ぐき、舌など、口のなかで増えることも明らかになりました。
コロナウイルス関連の論文は通常より早いスピードで学術雑誌に掲載されていて、どんどん新しいデータが出てきています。そしてそのなかには、新型コロナに感染して重症化した人と、重症化しなかった人の口のなかのばい菌の数を比べてみると、100万倍くらいばい菌が多かったという結果もあったそうです。
もちろん、まだ因果(いんが)関係のすべてが明らかにされたわけではありません。ただ、口のなかを清潔に保つことが、感染症リスクを低下させることは間違いないでしょう。
■舌が白く汚れている人は、感染症の重症化リスクが高い
なぜ、口のなかが汚いと感染症に弱くなるのか。
これは、おもに歯周病菌が原因です。歯周病菌は歯と歯ぐきの隙間の「歯周ポケット」とよばれる場所のほか、舌の表面のデコボコのなかにもたくさん潜(ひそ)んでいます。
とくに、舌が白く汚れている人は、感染症の重症化リスクが高いといわれています。汚い口のなかでは、歯周病菌が繁殖してしまいます。歯周病菌というと、歯周病や口臭など、口のなかのトラブルに限定したばい菌だと思っている人も多いかもしれません。
しかし、歯周病菌はあなたの想像以上に、体にさまざまな悪さをします。たとえば、歯周病菌はプロテアーゼという「タンパク質を破壊する酵素(こうそ)」を出します。プロテアーゼは口やのどの細胞や粘膜を攻撃するので、歯周病菌だらけの口のなかは、つねに傷だらけです。
ウイルスが私たちの体内に侵入するとき、まず細胞の表面にあるレセプター(受容体)という分子に結合します。口やのどなどのレセプターは通常、粘膜を保護する糖タンパク質の層におおわれているのですが、プロテアーゼなどの酵素によってこの層が壊されると、レセプターがむき出しになり、ウイルスが侵入しやすくなってしまうのです。
また、歯周病菌はノイラミニダーゼという、インフルエンザウイルスの増殖を助けてしまう酵素も生み出します。歯周病菌が多いと、インフルエンザウイルスが増殖しやすい環境になってしまうのです。
■新型コロナは舌や歯ぐきからも侵入する
インフルエンザウイルスは、おもに上気道(のどや鼻、咽頭など)から体内に侵入してきます。しかし、最近の研究によれば、新型コロナウイルスは上気道だけではなく、歯ぐきや舌、唾液腺といった口のなかの細胞からも体内に侵入することがわかってきました。
ちょっと極端な言い方をすれば、インフルエンザはのどを洗うガラガラうがいだけでもある程度防げるのですが、新型コロナを予防するには、のどだけではなく、口のなかをしっかり洗うブクブクうがいも重要になるということです。
また、スペインの調査では、ポピドンヨードをはじめ、さまざまな種類の洗口液で口のなかをゆすぐと、2時間ほどは口内のウイルスの量を低下させられるというデータが出ています。「水によるうがいでも効果は十分では?」という議論の余地があるようですが、口のなかを清潔にすることでウイルスの量を減らすことができることがわかる結果といえるでしょう。
■【基本的な7秒うがいのやり方】
1:水を口に含む
(水の量はおちょこ一杯分くらい。「ちょっと少ないかな」くらいがちょうどいい。水の量が多いと、口のなかで水流がつくれなくなる)
2:7秒間、全力でブクブクうがい!
(「ブクブク」としっかり音が出るように。口の奥から唇に向かって水を押し当てる。目標は7秒間で10往復。口がつかれたなら、しっかりできている証!)
3:水を吐き出して、また水を口に含む
(口のなかのばい菌が水に混じっているから、そのままゴロゴロうがいをしてはダメ!)
4:天井を見ながら、7秒間ゴロゴロうがい
(「ゴロゴロ」としっかり音が出るように。むせない程度に喉の奥まで水を入れる)
■【毒出しうがい(天井を見ながら7秒間ゴロゴロうがい)】
❶おちょこ一杯分の水を口に含み、上の歯に向けて
全力で7秒間、ブクブクうがいをし、水を吐き出す
❷おちょこ一杯分の水を口に含み、下の歯に向けて
全力で7秒間、ブクブクうがいをし、水を吐き出す
❸おちょこ一杯分の水を口に含み、右の奥歯に向けて
全力で7秒間、ブクブクうがいをし、水を吐き出す
❹おちょこ一杯分の水を口に含み、左の奥歯に向けて
全力で7秒間、ブクブクうがいをし、水を吐き出す
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歯学博士、東京医科歯科大学非常勤講師(顎義歯外来)
日本大学歯学部卒業、同大学院歯学研究科にて博士号取得。世界でも専門家が少ない『顎顔面補綴』を専攻し、口腔がんの患者と歩んだ臨床経験から予防医学の重要性を提唱する。「日本人の口腔ケアへの意識を変えるにはどうしたらいいのか?」という課題の答えのひとつとして考案、推奨している『歯科医が考案 毒出しうがい』(アスコム)が書籍化され、13万部のベストセラーとなった。現在は大学病院および全国の歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも多数出演。『日経xwoman』のオフィシャルアンバサダーも務める。著書に『「噛む力」が病気の9割を遠ざける』(宝島社)、『歯科医が考案 毒出し歯みがき』(アスコム)がある。
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(歯学博士、東京医科歯科大学非常勤講師(顎義歯外来) 照山 裕子)
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