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医師や看護師だけじゃない、コロナで苦しむリハビリの現場

プレジデントオンライン / 2021年1月21日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xavierarnau

■不足する防護具と疲弊する若い理学療法士

新型コロナの第3波が到来し、医療従事者が再び過酷な環境に置かれている。患者のリハビリを専門とする理学療法士にどのような課題があるか、自身も理学療法士としての経験を持つ参議院議員の小川克巳氏に聞いた。

——理学療法士はコロナ禍でどのような役割を果たしているか。

【小川】集中治療室(ICU)に入る重症患者の後遺症を予防・軽減し、スムーズに社会復帰できるよう、早期リハビリを担っています。治療中で安静な状態に置かれていると筋力が低下しますが、この中で見落とされがちなのが呼吸筋の機能低下。生理機能が落ちてしまうことを防ぐため、理学療法士が急性期からリハビリを行うようになってきています。

参議院厚生労働委員長 小川 克巳氏
参議院厚生労働委員長 小川 克巳氏

——どのような課題があるか。

【小川】個人防護具が不足しているために、様々な課題が噴出しています。理学療法士は対象者との接触を伴うサービスであるにもかかわらず、防護具が不足しているために医師や看護師を優先せざるをえない状態です。理学療法士には供給されず、自分で防護具を調達してほしいと病院から言われているところも少なくないと聞いています。

リハビリ室や病室間を移動していたのが、感染を広げる可能性があるということで、病棟専従配置を迫られる、という課題もあります。

一方で、病院や介護保険施設の減収のせいで、自宅待機になったり、非常勤の場合は雇用自体がなくなることもあります。日本理学療法士協会は13万人ほど会員がいますが、平均年齢は32~33歳。ちょうど家庭をもって、小さい子供を抱えながらということが多い年齢にもかかわらず、経済的な苦境に立たされています。仕事ができている人でも、防護具を身につけたり、リモートのリハビリ指導に切り替えたりと、通常ではなかった仕事が付加されて負担感が非常に強くなっています。しかも診療報酬は変わらない。

会員の感染状況を聞いていますが、思ったほど感染者は出ていません。防護具が不足している中で、いかに現場が努力しているかということです。胸が熱くなりました。若い人たちは本当によくやってくれています。

しかし、永田町や国会で議論の対象になっているのはだいたい医師や看護師に集約されてしまっていて、他の専門職まで注意が払われていない現状があります。慰労金はありましたが、あくまで一時金。高い感染リスクを負う職種には、危険手当を制度化する必要があると思っています。

■医療専門職は高度化 教育制度の改革が必要

——制度的な問題はどこにあるか。

【小川】医療領域が拡大していることです。かつては医療、保健、福祉の3つの領域の境界が明確だった。しかし、社会の考え方が変わって、ただ治すだけでなく、よりよく前の生活に戻していくという発想でリハビリテーションという考え方を欧米から輸入した。医療と社会をつなぐ専門職が理学療法士ということになるが、その範囲にも医師が関与するのが今の日本です。

専門職として医師から信頼されるためには、現状3年以上となっている養成課程を4年間の大学教育と1年間の臨床研修にすべきです。卒前卒後教育の充実は不可欠。医師はかつて6年だった養成課程に加えて、2年間の研修が必修化されています。

2020年は理学療法士試験の受験者の中に、全く臨床実習をできていない人たちもいます。医療専門職を育てるための環境整備が追いついていない現状を改善するため、これからも声を上げていきます。

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小川 克巳(おがわ・かつみ)
参議院厚生労働委員長
1951年生まれ。自身も理学療法士として経験を積んだ後、30年にわたって理学療法士養成教育に従事する。2016年、参議院初当選。20年10月より現職。

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(参議院厚生労働委員長 小川 克巳 構成=プレジデント編集部 撮影=金城匡宗)

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