コロナの苦しさには「神様がなんとかしてくれる」と思ったほうがいい
プレジデントオンライン / 2021年1月16日 9時15分
※本稿は、星渉『神メンタル 365日ストレスフリーで生きる方法』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■“不安”が生じる脳内メカニズム
2020年は、新型コロナウイルス感染症が世界中で猛威を振るいました。そんな想定外の出来事によって、不安や心配にとらわれた人も多かったことでしょう。
不安の感情は、「コントロールできないものをコントロールしようとするとき」に生じます。例えば、試験の合否はコントロールできません。合否を決めるのは学校や会社であり、自分にできるのは、あくまでも試験に対して最善の準備をすることです。
でもこのとき、ついコントロールできない結果について心配しはじめると、不安が生じるわけです。ウイルス感染症も、自分でコントロールできるものではないですよね。
逆にいえば、このメカニズムに気づくと、不安は解消できます。自分ができることに最善の準備をしたのなら、もう自分にできることは終わっているからです。
ただし、自分ができることに対してベストを尽くさなければ、不安はいつまでも消えません。試験勉強を一生懸命やっていなければ、心のどこかで「無理かもしれない」と感じて不安になるわけです。
自分でコントロールできるものとできないものに分けるだけで不安が消えるのではありません。
分けたうえで、自分ができることに集中し、「これ以上できない」くらいに取り組んだかどうかにかかっているのです。
■心配ごとが少ない人の共通点
様々な研究で、ネガティブな感情の大小には、「どれだけ心配ごとを少なくできるか」が影響することがわかっています。では、心配ごとが少ない人とはどんな人なのか?
ひとことでいうと、「気持ちの切り替え」が上手な人です。
気持ちをうまく切り替える方法として、もっとも簡単で、かつ効果が大きいのは、不安を感じたときに、第一声で「どんな言葉を発するのか」をあらかじめ決めておくことです。
想定外の出来事が起きたり、嫌な知らせがきたりしたときには、「この言葉をいう」と決めておけば、無意識にしてしまうネガティブな反応を防ぐことができます。「準備」をしておくことで、必要以上にものごとをネガティブにとらえなくて済むのです。
逆にこのルールがなければ、ネガティブな感情に支配されて、雪だるま式に不安な気持ちが大きくなってしまうこともあるので要注意です。
■手痛い失敗をしても「ツイてる!」
不安を感じたとき、あなたは第一声でどんな言葉を発していますか?
「どうしよう」「マズイな」「マジで⁉」でしょうか? 基本的には、どんな不安な問題や、突発的な出来事が起きたとしても、その状況の「いい部分を探そうと思える言葉」を発するのがベストです。
これは、心理学で「リフレーミング」と呼ばれる、ものごとを見る視点を言葉の力で変える方法です。
私の場合は、いつも「ツイてる!」ということをルールにしています。なにか手痛い失敗をしても、「いや、ツイてるな」というのが習慣になっています。そうしていると、なぜツイてるのか、脳が自動的に考えてくれるのです。これは怪しい自己啓発やスピリチュアルの話ではなく、科学的な事実です。
ほかには、「やったね!」でもいいし、「どうにかなるでしょ」でもいいですね。このように、ものごとのいい部分を探す言葉を第一声のルールにしておけば、不安があっても前向きに対処していく気持ちが生まれます。
逆に不安と並走してしまうと、せっかく行動していても、「そうはいってもね」「たぶんダメな気がする」などと、ずっと不安なことばかり考えてしまい、その感情から抜けられなくなってしまいます。
第一声で、状況のとらえ方を一変させてしまいましょう。
■「いい言葉」を使う人が得をする
「いい部分」を探せる言葉を第一声として習慣にするには、とにかくトレーニングするに尽きます。私も、あるときから、なにが起きても「ツイてる!」と口から出てくるようにしようと決めました。
ただ、「ツイてる」という言葉を、そもそも言い慣れていません。そこで、毎日40分言い続けるトレーニングを、1カ月続けました。なにも考えなくても、反射的に出てくるレベルにしたいと考えたからです。ちょうど朝の準備にかかる時間が40分だったので、出かける準備をしているあいだ、ずっと「ツイてる、ツイてる……」というようにしました。
あるとき、セミナー当日の朝、寝ぼけて右足の小指をベッドに思いきりぶつけ、小指の爪が剥がれてしまったことがありました。ふつうは「痛い!」「くそ!」という場面です。
ところが、なんと「ツイてる!」という言葉が自然に出てきたのです。すると不思議なもので、その理由を探してしまいます。「骨折しなくてよかった」「目覚めるのが早かったな」と、突発的な出来事にも動じなくなりました。
また、その日のセミナーでも、「今日は右足が痛くて立てなくてすみません」といったら、いつも以上に参加者の方が優しい雰囲気に。
「なんかツイてるなあ」
そう思っていたら、参加者のなかにも偶然、足の小指の爪が剥がれてしまった人がいて、すっかり意気投合してしまいました。
ものごとには必ずいい部分があります。だからこそ、いい部分を探す習慣をつくるのが、なによりも大切なことです。
■「神頼み」でも不安はやわらぐ
ものごとのいい部分を探せる言葉を使う――これって、ある種の「神頼み」に似ていると思いませんか?
「神様ならなんとかしてくれる」と信じるのと、なにが違うのでしょうか?
実は、プリンストン大学の心理学者エミリー・プローニンの研究では、「神頼みをすると、人は自分が信じたことの裏づけを探そうとする」と、あきらかになっています。
実験では、まずAさんに目隠しをして、バスケットボールのフリースローをしてもらいます。そしてBさんは、神頼みをしてAさんを応援する。Cさんは、Bさんが神頼みをしていると知って、彼らを観察するという役割です。なおAさんは、Bさんが神頼みをしながら応援していることを知っています。
そして実験後、それぞれに感想を聞いたところ、Aさんは「神頼みされたときのほうが、されないときよりも成功率は高かったと思う」と答え、Bさんも「神様にお願いしたときほど、シュートがたくさん入った」と答え、Cさんは、「神様にお願いした影響がありましたね」と答えたのです。
この結果が示すのは、神頼みをしたからシュートの成功率が高まったのではなく、神頼みをすると人の心理状況が変化するということ。気持ちを切り替えて「いいこと」を探すようになると裏づけられたわけです。
簡単にいえば、「大丈夫!」と思えば、人間はいい部分を探すようになる。
だからこそ、不安などがあるなら──極論をいえば、「神様がなんとかしてくれる」と、神頼みをルール化してもいいわけです。
いずれにしろ、不安感情に対処するうえでは、気持ちを切り替えられるマイルールを持っているかどうかが重要なのです。
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作家、ビジネスコンサルタント
1983年仙台市生まれ。大手企業で働いていたが岩手県で東日本大震災に被災。生死を問われる経験を経て「自分の人生の時間はすべて好きなことに費やす」と決め、独立起業し、心理療法やNLP、認知心理学、脳科学を学び始める。それが原点となり、個人の起業家を対象に「心を科学的に鍛える」ことを中心に置いた独自のビジネス手法を構築。日本や海外で数千人規模の講演会を実施し、グローバルに「好きな時に、好きな場所で、好きなシゴトをする個人を創る」ための活動をしている。『神メンタル』『神トーーク』(KADOKAWA)はシリーズ累計20万部突破のベストセラー。最新刊は慶應義塾大学の前野隆司教授との共著『99.9%は幸せの素人』(KADOKAWA)。
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(作家、ビジネスコンサルタント 星 渉)
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