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「文章のプロ」である新聞記者のツイートは、なぜちっともバズらないのか

プレジデントオンライン / 2021年1月23日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Urupong

新聞記者は文章のプロだ。だが、記者のツイートがバズるとは限らない。HONZ代表の成毛眞氏は「記者は物事をロジカルに説明する訓練を受けてきた。だが、SNSで必要なのは、ロジックよりも1行で人を引きつけるノウハウだ」という――。

※本稿は、成毛眞『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■「面白い文章」と「ロジカルな文章」は別もの

文章とは本来テクニカルなものだ。元から文章が天才的にうまい人もいるが、テクニカルなものである以上、テクニックを磨けば誰でもうまくなれる。

「うまい文章」というのは、ひと言でいえば「面白い文章」だ。

面白いから多くの人の目を引き、リアクションを起こさせ、結果としてバズる。そういうことだ。

さらに重要なことに、こうした「面白い文章」と「ロジカルな文章」とはまったくの別ものなのだ。

物事を理路整然と説明していて、面白くない文章というのも、世の中には山ほどある。

たとえば学者や新聞記者は、物事を理路整然と説明する訓練は受けている。彼らはそれが本分なのだから当たり前だ。しかし、その職業的文章力をSNSにそのまま持ち込んでもまったくバズらなかったりする。理由は言うまでもないだろう。面白くないからだ。

では、なぜ面白くないか。ひと言でいえば、SNSで読まれるという前提意識が不十分だからだ。ロジカルに説明することには神経を注いでも、読む人を意識して面白く語る意識が欠けているのである。

■新聞記者のSNSがつまらない理由

たとえば、記者がネット記事をシェアしている投稿がある。ところが、その投稿内容が面白くないために、記事のリンクをクリックする気になれない(それどころか、投稿自体を最後まで読む気にもなれない)。おそらく、あなた自身もこうした投稿に出くわした経験があるだろう。

記事をシェアする投稿の目的は、もちろん記事をクリックして読んでもらうことだ。そのために書く投稿内容は、読者を記事へと誘導する「魅力的なリード文」でなくてはいけない。

しかも発信の舞台は、ひっきりなしにいろんな人の投稿が流れてくるSNSだ。見た人に一瞬で「おっ?」と思わせることができなければ、目に留めてもらえない。となると重要なのはロジックよりも1行で人を引きつけるノウハウということになるだろう。

こういう例に限らず、SNSにロジックはいらないといっていい。

SNS上でバズる文章とは、ロジックありきの論文や記事の類いよりも、じつは一見とりとめのない「エッセイ」に近いものなのだ。

そして誤解を恐れずに言えば、エッセイはじつは文章のアマチュアのほうが伸び代は大きい。

普段ロジカルなものを書いている人だと、SNSで発信するときにもついロジカルな頭が発動してしまう。一方あまり書き慣れていないならば、文章を書く頭がまっさらなぶん、エッセイ的な素養を後天的に身につけやすいのだ。

POINT
・投稿の書き出しは「魅力的なリード文」にする。
・論理的な文章より、気軽なエッセイのほうが拡散しやすい。
・書きなれていない人のほうがエッセイの素養を身につけやすい。

■書くテーマは「ユニークな人」から探す

どう書くか以前に、何を書くか。自分なりに面白く書く方法については別項に譲るとして、いったい何について書いたらいいのだろう。

それをゼロから自分で考え出せる人がいたら、本書などすぐに閉じて、執筆に勤(いそ)しんだほうがいい。そのテーマの先見性によっては、出版社から「うちでエッセイを書きませんか」と言われるだろう。

しかしそれほどの人はそうそういない。ではどうすればいいかというと、書くテーマは「人の頭」を使って探せばいいのだ。自分でテーマを考えつく必要はまったくないのである。

おそらく多くの人が、SNSで自分の友達以外の人をフォローしていると思う。

ユニークな人をフォローしていれば、ユニークなテーマが山ほど目に飛び込んでくる。

ユニークな人というのは、たとえば特殊分野の学者や、珍しい職業の人、一風変わった視点で発信し続けている人などだ。

仮にそういう面白い人を50人フォローしたとして、1人あたりから1週間に1つずつネタをもらったとしたら単純計算で週に50個、1年後には50個×約52週で約2600ものネタが手に入ることになる。

画面上のソーシャルメディアアプリのアイコン
写真=iStock.com/DKart
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/DKart

■フォロー相手の性別や年齢にバリエーションを持たせよう

フォロー相手の性別や年齢などの属性をバラけさせることも重要だ。人は放っておくと、つい自分と似たような属性の人をフォローしがちだが、そこはあえて自分と違う年代、性別の人を意識的にフォローする。

このように習慣づけるだけでも、自分とはまったく違う視点から書かれたものを日々目にすることになり、視野が広がる。自然と自分が書くテーマにもバリエーションが出るだろう。

私もそこはかなり意識して、フォロー相手や友達の性別や年齢のバランスをとるようにしている。

好んでフォローしているのはサイエンス系の人なのだが、それ以外にも欧州在住の音楽家や、さらにはたまたま目にした投稿が面白かったというだけで、何をしているのかすらもよく知らない人に自分から友達申請を出したことも何度もある。

日本だけで考えても約1億3000万人もの人間が生きており、性別や年齢もさまざまなら、ちょっとした味の好みや洋服のセンス、政治的信条まで、じつに多様だ。

見方を変えれば、発信する人の数だけバリエーション豊かな情報源があるということだ。いろいろな年代、性別の人をフォローするというのはいわば、日本のミニチュア版を自分のSNS内に再現することともいえる。

なお、フォロー相手や友達の「整理」をマメに行うことも重要だ。

投稿がつまらなくなってきた人はフォローを外す、不愉快なコメントをつけてきた人は即ブロックといった具合にだ。こうして自分のSNSをつねに自分にとって有益な情報空間として保つのである。

■フォロー相手を多様にすれば、自分の読者も多様になる

少しがんばって英語を読む気があるのなら、海外の人にも目を向けるといいだろう。

成毛眞『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)
成毛眞『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)

たとえばアメリカの黒人差別問題については、やはりアメリカ人のアーティストなど、その国に住んでいて事情に明るい人をフォローするのがもっとも情報が早く指摘も鋭い。

フォロー相手や友達が偏れば、自分が発信するネタも次第に偏る。そしてネタが偏れば、当然読者も偏る。

しかし日々、多様な情報源に触れることで、「今日は20代男性向け」「明日は40代男性向け」「今日は政治ネタ」というように自分の発信が多様になれば、自分の読者も多様になる(さすがに自分とかけ離れすぎている人を対象に書くことはできないが)。

端的にいえば、フォロー相手をちょっと工夫してSNSを多様な情報源とすることで、あなたのSNS上の発信は、日本語を読む約1億3000万人を相手にする発信となっていくはずなのだ。

こうして対象読者層を広げておくことが、バズることにもつながるのである。

POINT
・書くネタは面白い人が発信しているものを拝借する。
・フォロー相手の属性をバラけさせることで、書き手としての視野が広がる。
・投稿をブラッシュアップするには、フォロワーや友達の整理整頓も重要。

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成毛 眞(なるけ・まこと)
HONZ代表
1955年、北海道生まれ。中央大学商学部卒業。自動車部品メーカー、アスキーなどを経て、1986年、日本マイクロソフト入社。1991年、同社代表取締役社長就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社インスパイア設立。2010年、書評サイト「HONZ」を開設、代表を務める。

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(HONZ代表 成毛 眞)

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