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「新型コロナにも有効」1日2回の"痛くない鼻うがい"で感染リスクは低下する

プレジデントオンライン / 2021年1月15日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/wildpixel

感染症の予防にはなにが有効なのか。医師の堀田修氏は「普通のうがいでは十分にウィルスを洗い流せないため、あまり効果的ではない。新型コロナやインフルエンザに効果的なのは、鼻の奥にある上咽頭を洗浄できる鼻うがいだ」という——。

※本稿は、堀田修『ウイルスを寄せつけない!痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「のどの痛み」の原因は鼻にある

風邪のひき始めの症状に「のどの痛み」はつきものですが、この「のどの痛み」は、扁桃腺の炎症によるものと考えている人が多いようです。けれど、IgA腎症(腎臓の糸球体に免疫グロブリンというたんぱく質が沈着する病気)の治療のために、すでに扁桃を摘出した患者さんから「扁桃を取ったのに風邪をひいたらのどが痛いです。なぜですか?」と質問を受けることがしばしばありました。

風邪でのどが痛くても扁桃に炎症があることはまれで、口の中を丹念に診察しても痛い場所を見つけられないことがほとんどです。そんなとき医師は「のどがちょっと赤いですね」などとあいまいな説明をしたりします。それでは扁桃に炎症がないのに、なぜのどの痛みが起きるのでしょうか。

この「のどの痛み」とは、「上咽頭」の炎症による痛みなのです。「上咽頭」はどこにあるのかというと鼻の奥の部分です。口蓋垂(のどちんこ)の裏にあたる位置なので、自分で確認することはできません。上咽頭は左右の鼻から入ってきた空気が鼻腔を抜けて合流し、下向きに方向を変える場所です。空気の滞留が生じて常に湿っているため、ウイルスに感染しやすいといえいます。

上咽頭には多くの免疫細胞が存在していて、外から入ってきたウイルスを撃退する働きがあります。そのため、上咽頭は炎症を起こしやすく、炎症の影響によってのどの痛みや咳、発熱などの風邪のさまざまな症状が現れます。

上咽頭
出所=『ウイルスを寄せつけない!痛くない鼻うがい』

■「のど風邪」には鼻うがいが効果的

風邪をひいて「唾を飲み込むとのどが痛い」とき、痛みを感じるのは中咽頭から下咽頭にかけての部分です。そこで医師が口から綿棒を入れて、中咽頭から下咽頭にかけてあちこち触れても、患者が痛いと感じる部位は見つかりません。

ところが綿棒を上咽頭に入れたとたん、「あっ、そこ!」というように、痛みの本丸に行き当たることが多いのです。このように、痛みの原因である炎症を起こしている部位と、実際に痛みを感じる部位が違う現象を「関連痛」といいます。関連痛は上咽頭で起こる炎症の特徴だといえます。

「のど風邪」をひいたら、上咽頭の炎症がひどくならないうちに治すことが重要だといえます。そのときに有効なのが「鼻うがい」です。新型コロナウイルス感染症の対策に通じるであろう「鼻うがいによる風邪予防」で、「上咽頭」は重要なキーワードなのです。

■鼻うがいなら新型コロナウイルスも洗い流せる

新型コロナウイルス感染症は、普通の「のど風邪」と同じように、初期症状としてのどの痛みや発熱、頭痛が現れることが多いです。人の体内に新型コロナウイルスが入ってから発症するまでの時間(潜伏期)は、4~5日といわれています。ウイルスの量は発症前後が一番多いという報告があり、その期間にウイルスを除去すれば感染を予防できると考えられます。

新型コロナウイルスが多く付着しているのは上咽頭です。このことは、新型コロナウイルスへの感染を調べる「PCR検査」が、鼻から綿棒を入れて、鼻の奥の上咽頭の粘膜をこすって検体を採取することからも分かります。

けれど、以前から風邪やインフルエンザ予防として行われてきた「ガラガラ口うがい」で洗い流せるは、口の中と口の奥の中咽頭だけです。

新型コロナウイルスが多く付着している上咽頭を洗うことはできないのです。それでは、運悪く他人のくしゃみや咳の飛沫を吸い込んだり、換気の悪い場所で長時間過ごしたりして、新型コロナウイルスが上咽頭に付着した可能性があるときは、どうしたらいいでしょうか。

そんなときにも、まだ打つ手はあります。それが「鼻うがい」です。鼻うがいなら、新型コロナウイルスが多く付着している上咽頭を洗い流すことができます。

■鼻うがいは家族への感染を3割減少させる

鼻うがいはさまざまな病気の予防や改善に役立ちます。特に、風邪の治療に関しては、いくつもの医学的に信頼度の高い研究報告があります。

2019年にイギリスで行われた研究では、「のど風邪」や「鼻風邪」にかかった人を対象として、発症後48時間以内に鼻うがいを開始。最初の2日間は1日6回行い、その後も回数を減らしながら鼻うがいを続けました。

その結果、鼻うがいをした人は、しなかった人よりも体内からウイルスがいなくなる時期が早まり、風邪の期間は22%短縮され、薬の使用は36%減少し、家族への感染も35%減少したのです。

鼻うがいをしない群の風邪の症状を1としたときの鼻うがい群の風邪の症状の程度
出所=『ウイルスを寄せつけない!痛くない鼻うがい』

鼻うがいはアレルギー性鼻炎や花粉症の症状も軽減します。これらの疾患では、モーニングアタックといって、朝起き抜けにくしゃみや鼻水などの鼻炎症状がよく現れます。鼻の入り口付近に付着したハウスダストやスギ花粉などが、夜通し鼻粘膜を刺激することが原因です。

就寝前に、鼻うがいで鼻粘膜を洗浄することによって、鼻粘膜に付着したハウスダストや花粉などの抗原(アレルゲン)を除去できて、炎症を抑えられます。

スギ花粉は例年、1~2月頃から飛散し始めるため、これからの時期は花粉症で辛い思いをする人が多くなります。夜寝る前のタイミングで鼻うがいを行えば、症状の軽減が期待できます。

■食塩さえあれば鼻うがいは痛くなくなる

「鼻うがい」を行えば、ウイルスや細菌などに常に接している鼻の奥の上咽頭をきれいに洗い流すことができます。ところが、昔から風邪やインフルエンザの予防法として慣れ親しんできた「ガラガラ口うがい」に比べると、「鼻うがい」はあまり馴染みがないため、ためらう人もいるようです。

また、子どもの頃にプールに入って鼻に水が入ってツンとした経験から、「鼻に水を入れる鼻うがいは痛いのではないか」と誤解しているケースも多く見受けられます。けれど、台所に常備されている「あるモノ」を使えば、簡単に「痛くない鼻うがい」ができるのです。それは何でしょうか。

「痛くない鼻うがい」に必要なもの、それは家庭にある「食塩」です。人の体液とほぼ同じ濃度の「食塩水」を作れば鼻に入れても痛く感じません。これは涙や鼻水が出ても痛くないのと同じことです。真水ではなく体液と同じ濃度の食塩水を使うことで、安心して快適な「鼻うがい」ができます。痛くない食塩水の作り方は、本書で詳しく紹介しています。

■疾患の改善や予防効果が期待できる

ウイルス感染を予防するための鼻うがいは、原則として朝と夜の1日2回行います。症状に応じて回数を増やしてもかまいません。では、鼻うがいはどのように行えばいいでしょうか。実は鼻うがいには2つの方法があります。

堀田修『ウイルスを寄せつけない!痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)
堀田修『ウイルスを寄せつけない!痛くない鼻うがい』(KADOKAWA)

ひとつ目は簡単な「上咽頭洗浄」です。スポイトやお弁当用のしょうゆ入れなどを使います。頭を後ろに60度ぐらい倒した状態で、鼻に少量の食塩水を注入します。口に流れてきた食塩水は、飲んでしまってかまいません。

二つ目の方法は「本格的な鼻うがい」です。上咽頭だけでなく鼻腔もしっかり洗えます。この「本格的な鼻うがい」を行うときに必要な「鼻うがい容器」は、本書で詳しく触れていますが、自分で簡単に手作りできます。自分で作るのが面倒な人は、さまざまな種類の鼻うがい専用器具が市販されているので、それを利用することもできます。

「本格的な鼻うがい」は、食塩水を鼻うがい容器に入れて、少し前かがみになり一方の鼻から食塩水を入れます。このとき「エー」と声に出しながら行えば誤嚥の防止になります。片方の鼻に入れた食塩水はもう片方の鼻と、一部は口から出てきます。最初は濡れてもいいように、入浴のときに行うのがおすすめです。

このように鼻うがいは、上咽頭や鼻腔を洗浄することでさまざまな疾患を予防したり改善する効果が期待できます。鼻うがいを習慣にしていると、風邪をひきにくくなったと感じる人もいるようです。

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堀田 修(ほった・おさむ)
医学博士
1957年生まれ。愛知県出身。防衛医科大学校卒業、医学博士。医療法人モクシン堀田修クリニック院長、認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長、IgA腎症根治治療ネットワーク代表、日本腎臓学会評議員。2001年、IgA腎症の根治治療である扁摘パルス療法を米国医学誌に発表。現在は同治療の普及活動と臨床データの集積や、扁桃、上咽頭、歯などの病巣感染(炎症)が引き起こすさまざまな疾患の臨床と研究を行う。著書に『病気が治る鼻うがい健康法』(KADOKAWA)、『つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい』(あさ出版)など。

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(医学博士 堀田 修)

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