「忙しい」「難しい」…成果の出ない人が使っている「5つのNGワード」
プレジデントオンライン / 2021年1月19日 15時15分
※本稿は、鈴木颯人『潜在能力を100%発揮する方法』(KADOKAWA)を再編集したものです。
■「つい言ってしまう」言葉が能力にフタをする
ふだん、つい言ってしまう言葉はありませんか? 実はその言葉が、あなたの能力にフタをしている可能性があります。
日常的に発する言葉が、その人の「思考」を作ります。言葉の選び方を少し変えるだけで意識が変わり、思考が変わります。思考が変わると、潜在能力も発揮しやすくなるというわけです。
まずは、とくに日常で口にしがちな言葉を5つ紹介します。あわせて紹介する言い換え言葉を知ることで、まずは言葉から、潜在能力を発揮しやすい状態を作り出していきましょう。
■「5つのNGワード」を言い換えると能力が覚醒する
仕事でも競技でも、「これは難しい」と言った瞬間、解決する難易度が一気に上がります。工夫次第では簡単に解決できるかもしれないのに、「難しい」という言葉を発することで思考停止に陥り、解決策が見つかりづらくなってしまうのです。
「難しい」と言いそうになったら、「簡単ではない」と言い換えましょう。脳は「否定語」を認識するのが苦手です。「簡単ではない」と言うと、脳は「簡単」だけを認識し、力を発揮しやすくなります。
「忙しい」も思考停止に陥りやすい言葉です。口グセになっている人は要注意。言えば言うほど、時間を作る努力をしなくなります。「忙しい」と言いそうになったら「時間管理ができていない」と言い直し、スケジューリングの工夫に意識を向けましょう。
予定を詰め込むと、余裕がなくなって「忙しい」と口にしがちです。「打ち合わせは一日1回まで」「会食は月2回まで」「取材は週3回まで」などと、自分ルールを決めて実行しましょう。
資格勉強や語学学習など、「重要だけど緊急でない」ことを後回しにしていないでしょうか。「後でやる」と言い続けていると、物事を先延ばしし、実行しないクセがつきやすくなります。自分では「時間ができたらやる」と思っていても、「時間ができた」と思える日はなかなかきません。行動に移す気持ちがあるのなら、いつやるのか、その場で具体的な予定に落とし込みましょう。
「△△しなくてはいけない」という言葉には、無意識に「誰かにやらされている」というニュアンスが含まれます。「△△したい」と言い換えましょう。自分の意思で行動する言葉に変えることで、気持ちも前向きになります。
それでも心から「やりたい」と思えない場合は、そもそも自分にとって本当に必要なことなのかどうか、考え直すタイミングだと心得ましょう。
これはとくに、誰かと話しているときに発しないよう気をつけたい言葉です。「でも」には、相手の発言を否定するニュアンスを含んでいるからです。相手が「自分には無理だ」といった発言をし、「でも」と言いそうになったら、「だからこそやる意味があるんじゃないかな」などと言い換えましょう。
それだけで、ポジティブな印象に転換できます。もちろん、自分に対しても同様。「自分には荷が重すぎる」と思ったときには、「だからこそ挑戦しがいがある」と考えるのです。
以上「5つのNGワード」を紹介しました。
紹介した言葉を使わないように意識することで、徐々に使う回数は減っていくはずです。その少しの意識が、言葉を変え、思考を変え、潜在能力を発揮しやすい状態を作ります。今日からぜひ試してみてください。
■つぶやくだけでポジティブになれる「セルフトーク」
言葉の言い換えによる効果は、計り知れません。ポジティブな言葉を心の中でつぶやくだけでも、パフォーマンスに良い影響をもたらします。
心の中で自分自身に語りかけることを「セルフトーク」といいます。実はこのセルフトークは、潜在能力の発揮に大きく影響しているのです。ポジティブなセルフトークの例は図表1のとおりです。
![『潜在能力を100%発揮する方法』(KADOKAWA)より](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/0/500/img_205d0bb27bd05d2e0856d75092363ebb598462.jpg)
興味深い論文があります。2017年に立命館大学が発表した、セルフトークが脳波にどんな影響を及ぼすかを実験したものです。
それによると、自分自身に心の中でポジティブな言葉をかけたときとネガティブな言葉をかけたときとでは、脳波に変化があることがわかりました。
ポジティブなセルフトークは、自信を作ったり、不安をやわらげたりする効果があります。さらにポジティブなセルフトークを行うと、パフォーマンスの改善・向上につながるという考察もあります。
この実験の参加者は、19~25歳の健康な男性。日常的にセルフトークを行っているアスリートのほか、運動をする習慣も、セルフトークをする習慣もない人も含まれていたため、この情報はアスリートではない読者にも参考になりそうです。
■人は無意識で1日に数万回セルフトークをしている
そうは言っても、そのときの状態によっては、無理にポジティブな言葉を言い聞かせることはとてもハードルが高いと思います。
そこでおすすめなのが、「一人称のセルフトーク」と、発する言葉の語尾に「受け入れます」を付け加えることです。
まず、「一人称のセルフトーク」ですが、これは、セルフトークするときに、自分の名前を付け加えるというものです。
「絶対に勝てる」と思うより、「颯人(ここにあなたの名前が入ります)は絶対に勝てる」と思ったほうが動機付けになり、結果も出やすくなります。加えて、語尾に「受け入れます」と付け加えます。
「私は目標を100%達成します」と言い切ることに抵抗を感じる人もいると思います。語尾を少し変えて、「受け入れます」とするだけで、抵抗感が薄れるのではないでしょうか。この方法は、私がメンタルコーチングを行っている選手もよく使っている手法です。
「颯人は絶対に勝てる」よりも、「颯人は絶対に勝てる自分を受け入れます」とすることで、より自然と、自分の中に言葉がスッと入っていく感覚を得られると思います。
人は一日に数万回ものセルフトークを行っていると言われています。それだけの回数すべてとは言わないまでも、少しずつポジティブなセルフトークを意識するとどうなるでしょうか。きっと、これまでとは違う結果を得られるはずです。
■何気ない断定の一言が能力発揮の機会を損なう
先ほど紹介したネガティブワード以外にも、注目してもらいたい言い回しがあります。それは、次のようなものです。
「◯◯すると◯◯になる」
「◯◯しないと◯◯できない」
「◯◯の人は◯◯ができない」
「◯◯すべきである」
「◯◯でないとダメ(意味がない)」
「◯◯が許せない」
これらの言い回しに共通している点はなんだと思いますか?
それは、断定口調であることと、思い込みが色濃く出ている言い回しであるということです。こうした、思い込みにとらわれた言い回しを使い続けると、思考停止に陥りやすく、それ以上考えなくなります。結果として、潜在能力を発揮しづらくなるのです。
たとえばある日、あなたの同僚が「(東京の)丸の内で働いている人は意識高い系の人が多いよね」と言ったとしましょう。その同僚が、丸の内で働いている人全員にヒアリングしたわけではないことは明らかです。
自分としては何気なく放ったひと言でも、このように断定口調で話す習慣がつくと、本人はあたかも自分の発言が事実かのように錯覚してしまいます。そして、ますます思い込みに気づきづらくなり、潜在能力を発揮する機会を失ってしまうわけです。
■「セルフクエスチョン」で思い込みから解放されよう
この状態を回避し、潜在能力を引き出すうえで効果的な方法が、「セルフクエスチョン」です。これは自分の信念が本当に正しいのかを問うものになります。
![鈴木颯人『潜在能力を100%発揮する方法』(KADOKAWA)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/e/200/img_be01276f86f2c2108725fe7a2baef0be320910.jpg)
「セルフクエスチョン」を習慣にすると、自分の偏った考えに気づきやすくなり、思い込みから解放されやすくなります。
仕事で突破口を思いつかなくて困っているときや、なかなか思い通りにいかないときなど、閉塞感を抱えているときにこそ試していただきたい方法です。
具体的には、冒頭のような考えが思い浮かんだとき、こんなふうに問いかけていきます。
「本当に今やっていることは正しいのかな?」
「100%そう言い切れるのかな?」
「それって思い込みじゃない?」
「世の中の人すべてが本当にそう感じている?」
こうして問いかけることで、自分の持つバイアスに気がつきやすくなり、現状を打破する発想も生まれやすくなります。
■「格上を倒して評価される」と思い込んでいた卓球選手
自身のバイアスに気づき、パフォーマンスが劇的にアップした卓球の選手がいます。彼女の目標は、世界チャンピオンになること。しかし実力は備わっていながら、なかなか実現できていませんでした。
そこで注目したのが、彼女の思考グセです。「自分は格上を倒してこそ評価されるんだ」と、勝手に思い込んでいたのです。
相手を格上扱いするということは、「相手が自分より強い」と最初から認めているようなもの。そのような状態で試合に臨んでも、自然と及び腰になって、実力が発揮できません。
そこで私は、次の質問をしました。
「相手を格上と位置付けることは本当に正しいことなのですか?」
「最終的に世界チャンピオンになっても、まだ“格上”と戦うのですか?」
■無意識に自分でハードルを上げてしまっていないか
彼女はこの質問を聞いて、ハッとした顔をしていました。「世界チャンピオンになる」という目標と、現実の自分の思考の矛盾に気がついたからです。まさに思い込みのフタが外れた瞬間です。このように、私たちは無意識のうちにハードルを上げてしまうことがあります。
彼女はそれ以来、「正真正銘の世界チャンピオンにふさわしい人はどんな人なのか?」と、考え方を変えるようになりました。今では、あらゆる競技の世界チャンピオンを調べることで、自分なりに世界チャンピオン像を作り上げています。目標に対して臆することなく突き進むようになった彼女が世界チャンピオンになるのは、そう遠い未来ではないと確信しています。
「今、思い込みで物事を判断してしまっているかもしれない」
少しでもそう感じたら、思い込みを疑うセルフクエスチョンを行いましょう。
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スポーツメンタルコーチ
1983年、イギリス生まれの東京育ち。Re‐Departure合同会社代表社員。サッカー、水泳、柔道、サーフィン、競輪、卓球など、競技・プロアマ・有名無名を問わず、多くのアスリートのモチベーションを引き出すコーチングを行っている。
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(スポーツメンタルコーチ 鈴木 颯人)
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