年収1000万じゃ全然足りない…「子供3人とも私立+一浪」50代夫婦の大誤算
プレジデントオンライン / 2021年1月16日 9時15分
■子供は3人とも私立志望、お金がかかるかかる
「今後は350万円分の投資信託を解約するしか手はないでしょうか……」
都内在住の共働きの会社員Sさん(50)と妻(50)には子供が3人います。一番上の長女は一浪で今冬、有名私大の合格を目指しています。長男(私立高校2年)も大学進学予定です。次女(公立中学1年)も2年後には私立高校受験が控えています。子供3人の教育費は少なくとも月8万7000円。3人とも高校・大学は私立となる公算が大きく、家計を圧迫しています。
Sさん夫婦の人生は、教育費にかなりお金がかかるステージに入ったのです。
ネックは、夫婦の貯蓄が、社内預金の現金約300万円にとどまっていること。ほかに積立投資で投資信託を約350万円分保有していますが、やや心もとないです。以前は、銀行に貯金が約130万円あったのですが、長女の予備校代や、長男の塾代、夏期・冬期講習代や参考書代など、ほとんどを教育関係の支出に使い、ここ2年ほどでなくなってしまったのだそうです。
■年収1000万円世帯だが、家と車のローンに莫大な教育費が…
夫婦の手取り収入は計55万4000円。教育費に加え、マイホームや車のローンなどに月計15万1000円かけていますが、やりくり次第では、貯金は不可能ではなかったはずです。夫婦も先取り貯金をしたり、袋分けで家計管理を試みたりしたそうですがうまくいかず、毎月2万以上の赤字家計になりがちでした。夫婦のボーナスはその補塡(ほてん)などに消え、貯金ができませんでした。
そのため長期休暇時の塾の講習代は、貯金を切り崩して支払うしかなかったのです。銀行の預金を使ってしまうと、次のお金の出どころは社内預金しかありません。もしそれが底を突いたら積立投資を売ってお金を工面するしかないのか、と考えたところ、先々のお金がなくなるという危機感を覚え、家計相談する決断をしたそうです。
■毎月2万円以上の赤字の原因は、教育費だけではなかった
ボーナスを含めた年間の世帯収入は約1000万円。にもかかわらず、お金が貯められなかった。その原因を突き詰めていくと、教育費用の計画が狂ってしまったことにありました。
・長男が通う私立高の授業料は年約100万円。そこで東京都の「私立高校の授業料補助制度」を利用して通わせる予定だったが、それが実現できなかった(世帯年収が一定額以下の家庭に都内私立高校授業料の平均44万2000円が補助されたが、当時、給与のベースアップなどで夫も妻も給料が上がり、非対象に)。
給料が上がれば授業料の支払いも生活も楽になりそうなものですが、おそらく収入増加に合わせて支出も増えたのでしょう。お金を貯めるゆとりはできませんでした。
教育費については想定よりコストがかかってしまったわけですが、世帯収入は増えているので、家計状況がすぐさま悪化するとは考えにくい。原因はどこにあるのでしょうか。
■共働きで作れず…外食、総菜、テイクアウトで食費は10万円超
問題はやはり他の費目にありました。明らかなメタボ家計だったのです。前述しましたが、自動車のローンや維持費に月4万8000円かかる以外にも、食費は月10万円を超え、被服費も月1万5000円と多めです。支出の問題は教育費だけではなく、支出全体にあったのです。
この支出をコントロールしていくには、家庭にとって優先すべき支出とそうではない支出を見極め、優先しなくても良い支出を減らしていくことが必要です。
支出を減らすには何でもかんでも我慢すれば良いと考える人もいますが、それでは長続きしません。払うべきところにはしっかりお金をかけられるメリハリ型の節約をしたほうがよいのです。
一度家に持ち帰り、家族で話し合ってもらった結果、やはり教育費を優先したいとのこと。目標の学校に行くために頑張っている子供を応援することを最優先すると決めたそうです。
その代わりに、節約できるところは食費、通信費、日用品代、被服費、サブスク代など。具体的にどのように削減していくかも話し合ったそうですが、私どもの提案も含めて実践していくことにしました。
まず、10万円以上かかっている食費です。食費が多い最大の理由は、共働きで食事の準備が大変だということ。外食、総菜、デリバリーなどが大半を占めています。妻も娘も料理が嫌いというわけではありませんが、メニュー立案や片づけなどがどうしても面倒、億劫だと感じてしまうようです。それでも少し頑張って、長女が塾などの合間を利用しておかずを1品作ったり、次女が米を研ぎ、味噌汁を作ったりと協力をすることになりました。長女は「一日机に向かうよりも気分転換になり、継続していけそう」とのことでした。もちろん、妻も週末に作り置きをしておくなど、できる限りやります。
あえて外食などは制限しませんでしたが、「1週間2万円」を食費の予算としました。毎月のおよその食費額を5週間分で割った金額です。うまくできると、1カ月は4週間半程度ですから、食費が少し余る仕組みとなっています。
初めは娘たちの協力があっても予算内でおさまらず、苦戦していたようですが、次第に外食やデリバリーなどと自炊のバランスが取れるようになり、3万円以上もコスト削減し目標よりも少ない金額(月7万2000円)でやりくりできるようになりました。
■支出を月6万円もカットして、見事、黒字家計に変身できた理由
通信費は、子供たちが「○○モバイルに変えよう」と格安スマホへの変更を提案してきたそうです。休日にみんなで変更しにいき、簡単に料金を下げられました。違約金がかかりましたが、すぐに元が取れそうです(月2万3000円→1万8000円)。
日用品は、買い物にいく前に在庫を確認することをはじめました。ただそれでも買いすぎや在庫過多になりがちだったので、在庫の写真を撮って家族で共有。買い物前に写真を確認することで、買いすぎ防止ができるようになったそうです(月1万5000円→1万2000円)。目覚ましい協力態勢です。
被服費は、「欲しいのか、必要なのか」を考えて購入することにし(月2万5000円→1万3000円)、無料お試し期間に登録してそのままにしていたサブスクを解約し(月3万2000円→2万6000円)、支出削減を図っていきました。
Sさんの自動車も乗車頻度が少ないので削減を検討する対象となりましたが、簡単に手放すことも決断できす、カーシェアリングの利用に切り替えても満足できるかを考えているところだそうです。
このようにして支出を削減していくと、全部で6万円もコストカットできました。教育費、自動車関連費がそのままでも、家計の赤字が消滅したのです。毎月3万6000円ずつ貯金ができる見込みがたつだけでなく、赤字がなくなったことで夫婦合わせて年200万円ほどのボーナスが丸ごと残せます。今後は、継続して毎月の支出に不要なものがないかを振り返りながら、収入を残していける家計を作っていけば、少しずつでも貯金は増えていくことでしょう。
教育費が必要な時に金額が足りないということもあるかもしれませんが、あとは親の出せる金額をベースに、子供とどのように捻出していくかを話し合えば、なんとかできるはずです。子供たちは大学に入ればアルバイトもできるでしょうし、返還する覚悟があれば奨学金の利用も検討できます。
このようにして、Sさん宅の家計は貯金が作れる家計へと変わっていきました。家族と相談して決めたことで、子供もコスト意識が芽生え、学費の一部を自分で捻出できないか考えているようです。
50代のSさん夫婦は今後、老後資金についてもしっかり準備しなければなりません。350万円分の投資はそのまま保有しておきたいところだったので、今回それを教育費に回さずにすんだことも、家計改善に取り組んだ大きな成果と言えるでしょう。
■【コストカット額ランキング】
娘2人の協力と週予算管理を取り入れた
2位 -1万2000円 被服費
必要なのか、欲しいのか、を考えて買うようにした
3位 -6000円 その他
解約忘れをしていたサブスクを解約した
4位 -5000円 通信費
子どもの提案により家族全員で格安スマホに変更
5位 -3000円 日用品代
在庫の写真を撮って、買いすぎを防止した
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家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は60万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は143冊、累計330万部となる。オンラインサロン「横山光昭のFPコンサル研究所」を主宰。
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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)
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