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「居酒屋とプリンターの共通点は?」仕事がデキる人ならこの答えは必ずわかる

プレジデントオンライン / 2021年1月21日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Peshkova

ビジネスのアイデアを思いつくにはどうすればいいか。ビジネス数学教育家の深沢真太郎氏は「ものごとの見かけではなく、構造を捉える訓練をすればアイデアを思いつくきっかけを掴める。そのためには普段からたとえ話を考えておくといい」という——。(第2回/全2回)

※本稿は、深沢真太郎『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

■「お酒を出せないと儲からない」の本質的な意味

【演習問題】
居酒屋における「飲み物」と似ているものを挙げてください。
(一見違うけれど、実は構造が同じもの)

この本を書いている2020年秋の時点で、まだ世の中は新型コロナウイルスの混乱の中にいます。中でも居酒屋は極めて大きな影響を受けています。自治体からの要請で、営業時間の短縮や「お酒を出すのは○時まで」といった制限をせざるを得ないお店も少なくありません。そうした中、ある居酒屋の店主はこのようなことを言っています。

「お酒を出せないと、儲からないんですよ……」

居酒屋はその名前の通り、お酒をたくさん注文してもらわないと儲からない構造になっています。冷奴や焼き鳥が安く食べられるのは、別のもので儲けが出ているからです。

そこでこの居酒屋の商売を簡単に構造化してみます。まず「塊」として(食べ物)と(飲み物)の2つがあります。さらに特徴として、(食べ物)にはおかわりはほとんどありませんが、(飲み物)にはおかわりが頻繁にあることも挙げておきます。

こう整理すると、居酒屋の商売はいかに飲み物をおかわりしてもらうかがポイントになりそうです。つまみを1品だけ頼んで後は数時間ずっとお酒をおかわりし続けるお客様が、店側にとっては「いいお客様」ということだと思います。

■居酒屋以外にも適応できる「おかわりビジネス」

この構造と同じ別のものを考えます。私はプリンター本体とインクの関係に似ていると思いました。プリンター本体だけで儲けるのではなく、継続的に必要になるインクで儲けているビジネスモデルはあまりに有名です。売るものとしては2種類ある。儲けの大小がはっきりしている。おかわり(継続的な注文)で儲ける。まさに居酒屋のビジネス構造に似ています。

もしあなたがビジネスパーソンなら、このような思考を使って「自分の会社においてこの構造でビジネスができないだろうか?」と考えたりするでしょう。構造化して似ているものを見つける。とても大事なことだと思いませんか。

最後にここでの思考プロセスを整理します。まずは「塊」を明らかにし、そしてそれぞれの「特徴」を整理しました。ある事物について「こうなっていますよ」と説明するために有効です。これも構造化のコツと申し上げてよいでしょう。

■なぜ稲盛和夫の名言は心を打つのか

【演習問題】
稲盛和夫氏の次の言葉がなぜ名言なのか、「構造」という観点から考えてみてください。

「バカな奴は単純なことを複雑に考える。普通の奴は複雑なことを複雑に考える。賢い奴は複雑なことを単純に考える」

個人的にも好きな言葉です。多くの方が「まさにその通り!」と膝を打つ名言ではないでしょうか。

さっそくこの名言を構造化してみましょう(図表1を参照)。まずは「塊」で捉え、それらの位置を定めます。これは前項で申し上げた、特徴を整理している行為に他なりません。

こうしてみると、「バカ」と「賢い」という真逆の概念を対比構造で表現し、だから真逆なのだとシンプルに説明してくれているように思えます。シンプルな構造なのに本質を、「こうなっていますよ」と説明してくれている。この名言の魅力はそんなところにあるように思います。

稲盛和夫氏の名言を構造化
出所=『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)

余談ですが、私はこのような「シンプルだけれども本質をついている構造」のものを見ると、つい「美しい」と表現してしまいます。一般的に数学者も、シンプルなのに本質を表現している数式ほど「美しい」と評価します。もしあなたにもその感覚があるとしたら、あなたは数学者の感性や彼らに見えている景色がほんの少しだけ理解できたことになります。

■構造が理解できればものごとの本質がつかめる

【演習問題】
先ほどご紹介した稲盛和夫氏の名言を使って、あなたなりの名言をひとつ作ってみてください。

このエクササイズの意図を少し補足します。先ほどの名言には構造がありました。ここでは、それと同じ構造をしている別のものを考えてみるのです。つまりアナロジーを使うエクササイズです。アナロジーとは類推(るいすい)または類比(るいひ)とも呼ばれ、特定の事物に基づく情報を、他の特定の事物へ、それらの間の何らかの類似に基づいて適用する認知過程のことを呼びます。難しく考える必要はなく、できるだけ楽しむことが大切です。

出所=『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』 (PHPビジネス新書)
出所=『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)

あらためて、先ほどの構造を思い出します(図表2参照)。書かれているアルファベットを別の具体的な何かにできれば完了です。ここは想像力を働かせます。このプロセスがアナロジーの楽しいところです。

わかりやすいテーマとして、仕事がデキる人とデキない人という対比を考えてみます。まさに真逆の存在です。そしてそこに「忙しい」と「暇」という概念を当てはめます(図表3を参照)。

出所=『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』 (PHPビジネス新書)
出所=『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)

仕事がデキない人は(実際は)暇なときに忙しそうにしている。忙しいときに忙しそうにしている人は普通の人。

忙しいはずなのにそう見えない、つまり暇そうに見える人ほどなぜか仕事がデキる。もちろんこれが絶対とは申しませんが、ひとつの傾向として頷く方も多いのではないでしょうか。

「デキない奴は暇なときに忙しそうにする。普通の奴は忙しいときに忙しそうにする。デキる奴は忙しいときに暇そうにする」

稲盛氏の言葉と比較してしまうと明らかに見劣りしてしまいますが、本質は表現できているのではと自己評価しています。あなたならこの構造からどんな名言を作りますか。

■たとえ話で構造的にものごとを見る力を鍛える

本稿まとめとして、習慣の話をします。

深沢真太郎『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』 (PHPビジネス新書)
深沢真太郎『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)

「感覚として掴むことが大事」

私が著作やセミナーなどで多用する表現です。構造化は理屈で理解するものではなく、どんな場面でも完璧にできるような方法論も存在しないテーマです。つまり、いかにあなたが普段からトレーニング(に近い行為)をしているかがその定着度を決めます。

そこで私はあなたにこのような提案をします。

「普段から、たとえ話を考えるクセをつけてください」

たとえ話とは、いわゆる比喩と思っていただいて結構です。居酒屋の商売はプリンターのビジネスモデルと構造が似ているという話題を思い出してください。これはすなわち、「居酒屋の飲み物は、プリンターのインクのようなものである」という比喩が作れることを意味します。つまり、「AはBのようなものである」というたとえ話を考えることが、すなわち構造化するプロセスを練習することになるのです。

実際に私が頭の中で構造化を試みた結果をふたつほどご紹介します。あくまで遊び感覚でやってみた結果です。

恋の構造は炭のそれに似ています。
→「恋は炭のようなものである」

離婚は退職と構造が似ている
→「離婚とは退職するようなものである」

いったいどのような構造化をしたのか、あなたもぜひ考えてみてください。

このような類の思考トレーニングは、すぐあなたの仕事に直接的に役立つかどうかはわかりません。しかし役立つかどうかで考えてしまうとそれは習慣として定着しません。ゲーム感覚で、遊びとして捉えてやってみることがコツです。ちょっと時間が空いたときにコーヒーを相棒にして。あるいは通勤電車の中でのルーティーンに。あなたにとって無理のない方法で、ぜひ習慣にしてください。

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深沢 真太郎(ふかさわ・しんたろう)
ビジネス数学教育家
日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。予備校講師から外資系企業の管理職などを経て研修講師として独立。その独特な指導法で数字や論理思考に苦手意識を持つビジネスパーソンの思考とコミュニケーションを劇的に変えている。大手企業をはじめプロ野球球団やトップアスリートの教育研修まで幅広く登壇。SMBC、三菱UFJ、みずほ、早稲田大学、産業能率大学など大手コンサルティング企業や教育機関とも提携し、ビジネス界に数学教育を推進。2018年に国内でただ1人の「ビジネス数学エグゼクティブインストラクター」に就任し、指導者育成にも従事している。著書に『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)、『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』(ダイヤモンド社)などがある。

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(ビジネス数学教育家 深沢 真太郎)

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